松柏類の芽摘み
投稿日:2012/03/11 更新日:2020/05/01
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盆栽作りの上で大切な手入れの1つに「芽摘み」があります。
芽摘みとは春から伸びる新梢を必要な長さで摘みとることで、二番芽の勢いを弱めて全体を小さく作ったり、小枝を増やしたりと様々な効果を持ちます。
特に短葉で締まった枝作りが大事な松柏類では、芽摘みや芽切りが欠かせない作業。
もともと剛健な樹種ではありますが負担のかかる作業ですから、日頃から充分に肥培して手入れに応えられるだけの力を付けさせておくことが大切です。
C o n t e n t s
1. 松柏類の芽摘みの目的と効果
- 1、小枝を増やす
- 代表的な芽摘みの効果は小枝を増やすことです。松類の場合は芽摘みをしたからといってすぐに2番芽が伸びてくることはないのですが、芽切りや葉すかしなどと併せて抑制をかけることで欲しい位置に効率的に2番芽を吹かせ、小枝を増やすことができます。
- 2、サイズを維持する
新梢に芽摘みをしないでいると夏頃まで勢いよく伸び続け、葉は長く、枝は太くなります。松類が一年間に伸びる長さは新梢(ミドリ)の長さで決まるので、芽摘みをすることによって全体の樹高が押さえられ、胴吹き芽を利用してさらにコンパクトな樹姿にすることも可能です。
- 3、樹全体の樹勢を平均化する
- 芽摘みは全て同じ強さで行うのではなく、強く長く伸びる芽は強めに摘み弱い芽は長めかそのままにしておきます。
全体の枝の力を人為的に同じにすることで、下枝やフトコロ枝を維持することができます。 - 4、葉を短くする(短葉法)
- 抑制の意味合いが強い芽摘みは、松類の葉を短くする「短葉法」の1つ。
芽摘みで新梢の伸長成長が抑制されると、胴吹きや周りの枝に力が分散され全体の樹勢が平均化される効果があります。
さらに、灌水や肥培などの培養の工夫や、芽切りや葉すかしなどの調整をすることで葉が葉がより短くなり、全体に締まった樹姿に仕立てることができます。
松柏類の芽摘みの注意点
新芽には害虫対策を
病気や害虫に強い松柏類でも、葉が込み合って風通しが悪いものや、組織がまだ柔らかい新梢にはアブラムシやマツクイムシ、カイガラムシ類、ダニ類などの害虫や葉ふるい病などの被害に遭うことがあります。
特に樹勢の比較的弱い赤松や五葉松、米栂(コメツガ)などは注意が必要です。
新芽の動く4月頃から夏場までは月に1回は定期的な殺虫剤を散布して病害虫を防除してください。松柏類の中には杜松など9月を過ぎても新芽の吹くものがありますから気をつけましょう。
スミチオンやマラソンなどの殺虫剤やオルトラン水和剤、キノンドー(銅水和剤)などの殺菌剤が有効です。
2. 松の短葉法
葉を短くするための培養
短く締まった枝葉が古木の感じを思わせる松柏類では、樹勢を抑えるために鉢を締めたり灌水や肥料を控えめにする「痩せ作り」という培養方法を行うことがあります。
しかし培養面だけで短葉の締まった枝を作るのには限界があり、芽吹く力も弱いため思い切った手入れに耐えられない欠点があります。
松柏類の芽摘みは、芽の力を抑えてその独特の葉を短くする短葉法の1つで、抑制の意味合いが強い手入れ。芽切りや葉すかし、葉刈りや葉抜きなど葉量を調整する作業も短葉に繋がります。
これらの作業は樹勢がのっていることが前提なので、仕立て段階の養成木は多肥多水培養をしたほうがよくできます。
短葉法の注意点
短葉法の効果がある樹種は松柏類の中でも樹勢の強い黒松や錦松、赤松といった葉性の樹種に限られます。
五葉松はもともと葉が短いので、芽摘みをする場合でも短葉が目的ではありません。杉や杜松、真柏の芽摘みも芽の勢いを抑えて枝数を増やすためのものです。
仕立て段階でも要領は異なり、勢いの強い若木はどんどん新梢が伸びてきますが、完成木では芽の勢いも弱いので、若木のような抑制は必要なくなってきます。
また、短葉法を行う場合は事前の十分な肥培が前提で、老樹に肥培をすると樹が若返ってしまい、古木感を失わせてしまうので注意してください。
短葉法や樹形作りは1つの仕事だけで成し遂げられるものではありません。これらの手入れは適期だからといって必ず行うものではなく、樹勢や作りたい方向性によって見送る場合もあります。
それぞれの樹の状態をみて、芽摘みや剪定、針金かけなど他の方法も合わせて行うことが大切です。
3. 短葉に繋がる年間作業
①芽摘み(4月中旬~5月上旬頃)
ミドリを適当な長さで折り取る
黒松や赤松、錦松の新芽は「ミドリ」といって産毛のような鱗片で覆われたつくしの様な状態で、松類の芽摘みはこのミドリを適当な長さを残して摘み取るためミドリ摘みともいいます。
ミドリ摘みの方法は、将来葉となるトゲの部分がまだ開かないうちに半分~1/3くらい残して、軸の途中で折り取ります。芽摘みをすると残した芽の先端部分に生長点が再生され、翌年芽が作られます。
若木の芽は勢いがあるので、強い芽が1本でる枝もあれば3芽以上吹くものもあります。複数の芽が出た時は弱い芽を2つ残して強い芽は元から摘み、残した2芽も適当な長さで芽摘みしてください。
特に仕立て段階の樹芯のミドリ摘みは、摘み取る長さによって将来の樹高をどれくらいにするのかが決まるので大事な部分。側芽や下部の芽の伸びは頂芽より1週間くらい遅いですから、一律に芽摘みするおんではなく、伸びてきたら摘むようにしましょう。
やや樹勢の弱い赤松はあまり強い芽摘みはせず、樹勢をみながら残す芽の長さを長めに残すなどして調整を。
マツ類の芽摘みではその他にも芽摘みの時期を遅らせる中芽切りや、全部の芽を摘み取る盲摘み(めくらつみ)などがあり、どれも葉を短くする狙いがあります。
②葉切り(4月中旬~5月)
葉を半分くらいの長さに切る
葉刈りは黒松や赤松、錦松など葉が長く伸びる樹種の葉を適当な長さで切り取る方法です。
マツ類の葉刈りは主に若木や仕立て途中のものに行う作業で、葉刈りによって葉の表面積を減らして同化生成を少なくし、次にでる葉を短くさせる狙いがあります。
葉切りの効果が最も高い時期は、新芽が伸びる前の4月中旬~下旬頃。1枝ごとに葉を束ね、鋏で葉の長さを半分くらい残して切り取ります。
適期以外でも作業は可能で、葉面積が減ることで採光や風通しなどの培養環境を良くする効果もあります。
鋏で切った葉は切り口から赤く枯れ込みますが、これを鑑賞するわけではないので気にしなくていいです。
次に伸びてくる2番芽を短くするのが目的ですから、古い葉はそのままにしておいて秋になったら取り去ってください。この古い葉は非常に取れやすくなっているので簡単です。
③芽切り(7月頃)
新梢を前年枝との境目の元から切り取る
芽切りはほぼ完成に近い黒松や赤松、錦松の葉を短く作り上げるための方法です。
この芽切りを毎年のようにやっているうちは幹の太りや役枝の伸びは期待できなくなりますので、仕立て中の若木は芽切りでなくミドリ摘みで形を作ることになります。
作業の適期は7月10日前後。あまり早い時期に芽切りをすると秋に観賞する時には葉が伸びすぎてしまうので注意が必要ですが、二番芽の伸びが弱い赤松はやや早めにしておいたほうがいいです。
基本的には芽切りをする樹にはミドリ摘みは行わないで、そのまま伸ばしておいてください。
ミドリ摘みをした樹でも、その後の樹勢が全体的に均一で、枝数もあって力がある樹なら芽切りをすることができます。
芽切りの方法は、新梢の伸びが落ち着いたら今年伸びた新梢を前年枝との境目の部分で、切り口をわずかに残して切り取ります。
芽切り後1週間~10日もすれば残した対の葉の元に翌年芽が複数できてきます。
芽切りは一度に全部の芽をやってしまうと、勢いの強い頂部の芽から2番芽の再生が始まってしまい、いつまでも全体の力のバランスが取れません。
小さい盆栽なら全体の芽が出揃った頃に1回だけで済ますのが普通ですが、中品サイズ以上の盆栽なら適期中2~3回に分けて、弱い芽から段階的に芽切りをします。
芽切り後に大事なことは、葉すかしをして残した枝の葉量を調整することです。
芽切りと葉すかし後に出る芽は伸びが弱く、葉も短くなります。
④葉すかし(6月下旬~7月中旬頃)
葉すかしは芽切り後に残った前年枝の葉を減らす作業です。
枝や芽の強さによって葉量を調整し、芽切り後に伸びる翌年芽の強さを揃える狙いがあります。
葉すかしの方法は、芽切り後の切り口近くに残った前年枝の葉が3対(1対2本)残るように、他の葉をハサミ等で切り取ります。
3対が基本ですが、枝の強弱によって強い芽は少なめに、弱い芽は多めに残すようにしてください。
葉すかし後1ヶ月もすれば残した対の葉の間に翌年芽が形成されます。
葉すかしは芽切り前の5月頃に行う人もいますが、芽切りと同時に行った方が効率的です。
⑤芽かき(8月頃)
2芽残して掻き取る
芽摘みや芽切りをした後、8月をすぎる頃になると残した葉の元に二番芽が複数できます。
芽かきはその複数できた二番芽のうち必要な芽を2つのこし、残りをピンセットなどで元から掻き取ります。
芽かきをしないと車枝の状態になり、この部分が太くなってゴツゴツした印象になってしまいます。
強い芽や上下方向に付いた芽は芽かきの対象で、伸びる芽の方向を見て枝が自然な2叉になるよう芽かきしてください。
⑥中芽切り(8月下旬~9月頃)
幹を太らせるために春のミドリ摘みを控えたものは、秋口に入ったら強く伸びた新梢の途中で芽切りすることで小枝を増やす方法があります。
これを中芽切りといって、松柏類の中でも樹勢の強い黒松や錦松に対して行います。
不要な新梢はこのときに剪定しておき、葉の込んだ部分は葉抜きや葉刈りをして各枝の葉量を調整してください。
胴吹き芽が欲しい時は、一部残しておくとその部分に芽を呼ぶこともできます。
肥培管理が充分であれば1ヶ月ほどで切り口周辺や残した葉の元に翌年芽が形成されます。
樹木の肥大は主に秋に集中するので、中芽切りをしているうちは幹枝の太りはあまり期待できません。
また中芽切りをすると次の芽が育つまで観賞価値が落ちてしまうので、必要な時だけに行うものと思ってください。
特に秋の中芽切りは時期が遅れると2番芽の生育が悪くなるのであまり遅くならないようにしましょう。
春の中芽切り(3月上旬~中旬頃)
中芽切りは秋に行うのが基本ですが、前年伸びた新梢を放任状態にしたものなど荒れた素材の場合は春に行う場合があります。
適期は新芽が動きだす前の3月上旬~中旬頃で、各枝1~2本に芽数を調整して中芽切りをします。
1ヶ月もすれば切り口周辺に胴吹き芽が形成され、6月頃になると力強く伸び出すので必要に応じてミドリ摘みや芽かきをしてください。
⑦葉抜き(10月~11月頃、2月~3月頃)
五葉松の葉抜き
葉抜きは文字通り葉をピンセット等を使って元から引き抜く方法のことで、葉すかしと似た作業です。
葉数が減るので樹勢を抑えられ、翌年芽の伸びを短くしたり、葉を残した部分から胴吹き芽を持たせることができます。
葉抜きは黒松以外で行われることはあまりありませんでしたが、樹勢ののった赤松や五葉松にも有効です。
適期は翌年芽が確認できるようになる9月~10月頃と、芽出し前の2月~3月頃にも再調整が可能。1芽につき葉を3対残すのを基本に全体の枝の強弱を同じにするように葉を抜き取ります。
弱い枝は多めに残すかそのままにして翌年の芽の力が均等になるようにしましょう。
胴吹き芽が欲しい場合は中芽切り剪定をして芯を止めておく必要があります。
葉抜きは慣れないと芽や樹皮を傷つけたり枝枯れの原因になってしまうこともあるので、手で抜かずピンセットで丁寧に抜いてください。難しければ葉すかしのように鋏を使ってハカマの部分で切り取っても構いません。
特に黒松の場合の葉抜きは重要な作業ですが、小さい盆栽では古葉取りだけでも充分です。
⑧古葉取り(10月下旬~11月)
昨年(一昨年も含む)の葉を取り去る作業を古葉取りといいます。全体の葉をすかしたようになるので芽切り後に行う「葉すかし」と同義語に捉える場合もあります。
時期は休眠期に入る10月下旬~11月頃で、前年に古葉取りをぜず葉が込み合っている場合は生育期間中の4月~7月頃の間でも作業できます。
やりかたは古葉をハカマを残して鋏で切り取ってしまいます。胴吹き芽が欲しい時は、一部残しておくとその部分に芽を呼ぶこともできます。
もみあげ
古葉取りをしても、残した新葉が多ければ「もみあげ」をしてください。
もみあげのやりかたは、芽摘み後に伸びた夏芽の葉を先端から半分ほど残して鋏で切り取ります。
古葉取りやもみあげによって風通しや内部への日当たりが改善し、下枝やフトコロ芽を維持することができます。また葉量が少なくなるので、翌年の新芽の伸びを落ち着かせる効果もあります。
4. 樹種別の芽摘み
- 黒松(クロマツ)の芽摘み
- 赤松(アカマツ)の芽摘み
- 五葉松(ゴヨウマツ)の芽摘み
- 蝦夷松(エゾマツ)の芽摘み
- 錦松(ミシキマツ)の芽摘み
- 杉(スギ)の芽摘み
- 杜松(トショウ)の芽摘み
- 真柏(シンパク)の芽摘み
- 檜(ヒノキ)の芽摘み
- 唐松(カラマツ)の芽摘み
- 一位(イチイ)の芽摘み
- 米栂(コメツガ)の芽摘み
