黒松(クロマツ)の芽摘み
更新日:2020/03/29

黒松の芽摘みは新芽の長さを一定にして小枝を充実させる目的で行うもので、芽切りや葉すかしなどの一連の手入れは針葉を短くする(短葉法)ための大切な作業です。
松類は成長が遅い一方で、樹勢はとても旺盛。肥培管理が充分できていれば、新芽を切ったり掻き取ったりしても平気に芽吹く樹種なので、仕立て段階に応じてしっかりを手入れをしたいところです。
C o n t e n t s
1. 芽摘みの時期と方法
芽摘みの時期は4月上旬~5月頃で、新芽がややほころんでくる頃が合図。
黒松や赤松などのマツ類の新芽は「ミドリ」といって産毛のような鱗片で覆われたつくしの様な状態で、芽摘みは伸びてきたミドリの葉がまだ開かないうちに必要な長さを残して摘むのが基本です。
特に樹芯の芽摘みは、摘み取る長さによって将来の樹高をどれくらいにするのかが決まるので大事な部分。側芽や下部の芽の伸びは頂芽より1週間くらい遅いですから、一斉に摘むというよりは伸びてきたら全体を見て摘むという要領で芽摘みをしていきます。
マツ類が1年間に伸びる枝の長さは葉が開き始める時期にはもう決まってしまうので、ミドリの状態のうちに今後の枝の伸びを考えて適当な長さで摘む必要があります。
芽摘みのやりかたは伸びてきたミドリの葉がまだ開かないうちに指で折り取るようにして摘みます。摘む程度は全体の半分~1/3くらいを目安に、強い芽は短めに、弱い芽は長めに残して全体の力を平均的にするよう意識してください。
残した芽からは新葉が伸び、新梢の先端部分には生長点が再生されて翌年の芽が作られます。

黒松の芽摘み:新芽を半分~1/3くらいの所で摘む
芽数の調整
樹勢の強い若木や肥培してある養成木は特に勢いがあるので、強い芽が1本でる枝もあれば3芽以上吹くものもあります。
複数芽はそのまま残していると「車枝」になって枝元が太る原因となるので、複数の芽が出た時は真ん中の一番強い芽を元から摘んで、向きのいい弱い芽を2芽に調整しておいてください。
1週間もすれば残した弱い芽が伸びてくるので、芽摘みと同じ要領で伸びたものから適当な長さの所で摘み取ります。
マツ類の芽摘みではその他にも、芽摘みの時期を遅らせたり、全部の芽を摘み取る盲摘みなどがあり、どれも葉を短くするのに効果があります。

黒松の芽かき:1箇所から複数の芽が吹くものは芽数の調整をすること
2. 黒松の芽切り、葉すかし
芽切りは主に完成木の葉を短くする目的で行う作業で、養成木でも幹の太りが充分で、基本樹形の出来たものは芽切りで小枝を増やしていきます。
よほど芽の勢いの強いものは「抑制」のために春に軽い芽摘みをすることもありますが、一般的には芽切りを行う予定のものは春の芽摘みを控え、勢いを付けてから摘むことで2番芽の芽吹きを促進させます。
芽切りの時期は7月10日~20日頃で、今年伸びた新芽を付け根の部分を少し(3~4mm程)残して切り取ります。作業時期が早いと秋に観賞する時に葉が長くなってしまうので注意してください。

黒松の芽切り:新梢を付け根を少し残して切る
芽切りと葉すかしはセットで
芽切り後、前年枝を整理していない場合は葉すかしも行ってください。
成長点を止め、さらに葉量を減らすことで樹勢をおさえつつ、2番芽の動きを促進させることが目的で、芽切りとセットで行うことでより効果的に小枝を増やすことができます。
葉すかしのやり方は、前年枝に付いた古葉のうち、頂部の葉を2~4対残して取る作業で、ピンセットで抜くか鋏を使ってハカマの所で切り取ります(ハカマはいずれ自然に取れます)。

黒松の葉すかし:芽切り後、前年葉を2~4対残して切る
頂部の強い枝は2芽、下枝は芽切りを見送るか3~4芽と残す芽数を調整し、全体の力のバランスを平均的にするよう意識してください。
葉を残した部分から優先的に2番芽が作られるので、希望の場所から枝を出させることが出来ます。
将来枝が伸びる方向を考え、残す芽の配置にも気を配ってください。
いくら樹勢の強い黒松でも、芽摘みや芽切りは樹に負担のかかる作業の1つです。前年の秋から充分に肥培をし、樹勢の弱っているものには芽摘みや芽切りを見送るなど樹の状態に応じた手入れができるようにしましょう。

黒松の葉すかし:将来伸びる枝の向きを考えて、バランスよく葉を残す
3. 黒松の夏芽かき

写真1:芽切りの後に出てくる夏芽(2番芽)
芽切り葉すかし後、1ヶ月もすれば残した対の葉の間から2番芽(夏芽)が伸びてきます(写真1)。
葉すかしの際に多めに残した場合は1箇所から3つ以上出てきますから、2芽2芽となるように向きのいい芽を残して芽かきをしてください。
黒松の夏芽はミドリ(冬芽)の形状と違って、草のような扁平で柔らかい芽がでるので驚く人がいますが、秋には通常の葉になるので心配いりません。
ただ、付け根の部分の葉(スソ葉)は枯れても草の状態で付いたままなので、新梢が固まったら切除して内部をスッキリさせておきましょう。
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黒松は照葉樹でとても日光を好み、暑さや冬の寒さにも強い剛健な樹です。年間を通じて朝から夕方まで日当たりと風通しのよい場所に置いてください。厳寒期でも乾燥した強風……
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コメント
- jang seil さん 2021年05月10日01時06分
- クロマツの芽摘みの方についてよく学びました。
どうもありがとうございます。 - きみ さん 2021年05月10日15時25分
- jang seil さんへ
コメントありがとうございます!
これからも頑張ります~ - 樹 さん 2021年08月23日19時40分
- いつも楽しみに拝見しています。
黒松の芽切りについて教えていただけますでしょうか。
7月上旬に小品サイズの黒松の芽切りをしましたが、2番芽が吹きません。十分な樹勢がなかったのかと反省してます。
今年は吹かなくても、来春は芽切りしたところから吹くものでしょうか。かなり切ってしまったので今後が不安です。 - きみ さん 2021年08月24日18時02分
- 樹 さんへ
たしかに芽が全くふいていこないのは心配ですね。
かなりとはどのくらい切ったんでしょうか、、、葉は残っていますよね?
弱っていたのに芽切りしたとかなら、一時的に樹勢はおちますが、枯れていないのなら9月までにはなにかアクションがあるかもしれません。
それか来春に小さい芽が作られると思います。 - 樹 さん 2021年08月24日21時14分
- ありがとうございます。
割と勢いよく芽が伸びていたので、弱い芽を残して8割くらい切ってしまいました。葉は残しています。また、残した芽は元気です。
肥料は取り除いていますが、あげた方が良いですかね。 - きみ さん 2021年08月25日10時19分
- 樹 さんへ
秋肥はこれからあげてください。
葉がしっかり残っているなら大丈夫です。年内に芽ができると思いますよ。来年に期待ですね! - 樹 さん 2021年08月25日21時04分
- いつもありがとうございます。
アドバイスいただきほっとしました。芽が出るのを楽しみに待ちたいと思います! - 栄 さん 2023年01月17日22時12分
- YouTubeを含め、いつも参考にさせていただいております。本日、千寿丸の苗木(樹高15㎝)を手に入れたのですが、頂部には冬芽が5-6個あり、他の枝にも3-4個の芽がついています。芽数を減らすために芽かきをしたいと思いますが、タイミングがよく分かりません。今でもいいのか芽摘みのタイミングまで待つのか、ご指導いただけませんか。よろしくお願いします。
- きみ さん 2023年01月19日09時40分
- 栄 さんへ
ありがとうございます!
芽かきは休眠期の間でもいいですし、少し吸い上げが始まって芽がほころんできたころでもいいと思います。2月から3月頃
そちらの方が柔らかくてもぎ取りやすいです。 - 栄 さん 2023年01月19日10時53分
- きみさん
早速のご連絡ありがとうございます。来月、針金成形と鉢上げをしようと思っていますので、そのタイミングで芽かきをしてみます。アドバイスありがとうございました。 - 健 さん 2023年03月16日10時09分
- みきさん
わかりやすい黒松の記事に感謝します。頂いた黒松(樹齢50年位)大物盆栽です。昨年芽摘みがされて無く伸び放題です。この場合はどのように対処すれば宜しいのでしょうか。悩んでいます。
自分なりに手入れしたこと、枝枯れも多く取り除き、一作年の古葉はすべて取りました。
手入れ法をお教え下さいますようお願いいたします。 - きみ さん 2023年03月16日16時42分
- 健 さんへ
芽摘みや芽切りがなされず伸び放題の状態のものなら、取り敢えずはミドリが伸びてきたら軽く芽摘みをしておくといいかもしれないですね
これは、枝を太らせないようにするためです。
放任状態で悪いことばかりではないはずです。枝に勢いがついて胴吹きも期待できますから、そのような枝を大事に、切り戻せるところは切り戻しておきます。
そして、7月の芽切りのタイミングで前々年枝(去年伸びきってしまった枝)の任意の位置まできると、古枝にも芽ができたりします。
中芽切りする要領で、葉があるところで切らないと水があがりませんので芽がでません(芽止まり)が、4月~8月頃の間に行えば芽が育ちます。
葉がないなら、通常の芽切りをして、そのうちできるフトコロ枝を大事にするようにしましょう。
一旦樹形がくずれてしまうと全く同じ姿に戻すのは難しいですが、芽摘みや芽切り、葉すかしなどで適度に抑制をしていると、いいところに芽を作ってくれますから、新たに枝を立て替えたりして作り直します。
十分に樹勢があれば、葉があるところから優先して(ないところにも)芽を作れます。
ただ今回は樹齢があるので、樹勢は少しおちついているかもしれません。
多少若返るかもしれませんが、春からしっかり肥料をあげて元気を付けさせ、切込みに備えておくと安心です。 - 健 さん 2023年03月16日19時23分
- きみさんへ
アドバイス頂き有難うございます。お言葉に従い取り組んでみたく思います。
育てる希望が湧いてきました。良い経過のご報告が出来るように取り組んでみます。
有難うございました。 - 太田佳吾 さん 2023年03月30日08時09分
- 芽切り、葉すかしについて質問させてください。
所持している黒松の小枝を増やしたいと思い、芽切りを考えているのですが、小枝を増やしたい枝に新芽がありません。
(赤丸の二本の枝)
この場合、新芽がある枝は芽切り・葉すかしを行い、新芽がない枝は葉すかしのみを行えばよいのでしょうか?
それとも新芽がない枝は勢いがないと考え葉すかしも行わない方がよいのでしょうか?
また、枝の中間あたりに一昨年葉を残して葉すかしをした場合、そこから芽がふく事はあるのでしょうか?
去年は植え替えをして芽切りを見送った為、今年こそ芽切りをしてみたくウズウズしています(笑) - きみ さん 2023年03月30日16時16分
- 太田佳吾 さんへ
赤丸で囲ってくださっている部分はたしかに元気がないですので、芽切りもできませんし葉すかしするほどの葉量もないのでそのままにしておいたほうがいいと思います。
植替えするとときどきこんな感じになりますが、しだいに元気になってきますから、そのときにどうするか考えても遅くないです。
写真を確認しますと、芽があるところもそんなに強い芽ではないので芽切りできるかな?
取り敢えずミドリを伸しておいてこちらも様子見かと思います。
植替えして2年目ですからやっと樹勢ももどっってくるころです。
芽切りしてみたい気持ちとってもわかりますが、もうすこし我慢です。
黒松は丈夫なのでこの状態から枯れるということもないですから、本格的な短葉法や小枝増やしは来年以降を目指して今年まで養生させておいたほうがいいのではと思います。
葉を残して枝の途中で切ると芽ができますが、これも樹勢が十分であることが前提なのです。
この黒松の場合は、やっと芽が準備できました。という感じなので、しばらくは無理なことはしないほうがいい結果になるのではと思います。 - 太田佳吾 さん 2023年03月30日22時02分
- むむむ…芽切りは控えた方がよいですか。
では我慢してもう一年は養生期間にしようと思います。
今年行える作業とすればいつにどんな作業がありますでしょうか?
あまり間伸びもさせたくないので芽摘みくらいは行っても良いのでしょうか?
それとも樹勢回復第一に考え芽摘みも控えた方がよろしいでしょうか?
また行えるとしても先になると思いますが間伸びしてしまい葉の無い所に芽を持たせる方法などもあれば教えていただきたいです。 - きみ さん 2023年03月31日07時18分
- 太田佳吾 さんへ
今できることは葉すかし、伸びに応じて芽摘みくらいはできると思います。
芽切りをする予定なら肥料も今時期からしっかり効かせます。
間伸びした所は、葉が残っていることに優先して芽ができたりしますので
そういう芽を活かして切り詰めることができます。
中芽切りで芽を作らせることもできますし、強く曲げたところにも芽ができたりします。
でもこうすれば絶対こうなる。ということはないので、お役に立てるコメントができないです。
申し訳ありません。
どちらにしても樹勢がのらないと芽も出来にくいです。
