
キミのミニ盆栽びより > 盆栽の育て方 > 葉物類の育て方 > モミジ(紅葉)の育て方
投稿日:2013/03/07 更新日:2020/10/14
モミジ(紅葉、学名:Acer palmatum)はムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の落葉小高木。
昔から松柏類と同様に日本人に親しまれてきた樹で、春の芽出し、夏の深緑、秋の紅葉から寒樹と四季折々の姿を楽しむことができます。
盆栽でモミジと言えば本種「イロハモミジ」と、オオモミジの変種の「ヤマモミジ(山紅葉、学名:Acer amoenum var. matsumurae)」系のモミジを指していて、園芸品種や中間種も多く存在しています。カエデと比べて葉が傷みやすく、培養には多少気を遣いますが丈夫で作りやすい樹種です。
C o n t e n t s
モミジの置き場所は風通しのいい明るい場所を確保。遮光アイテムはできれば日没後に仕舞える作りにして、朝露(天然の葉水)に当てる工夫も施してやりたい
モミジの仲間は山野の谷沿いや平地、低地の森林などの明るく風通しのいい場所を好みます。
本来は好光性の樹木ですが、西日を嫌うため、夏場は強い日差しに直接当てない工夫をしてください。夏の強光に晒されると組織が痛み、葉が硬く縮れたり葉色が悪くなって観賞に耐えなくなります。
日差しが強くなれば防風ネットに遮光ネットを重ねてもOK
遮光期間は、日差しが本格的に強くなる梅雨明けから9月上旬頃までで、遮光率50~70%程度の遮光ネットやヨシズ等を用意しておきます。
ただし近年は5月頃から急に日差しが強くなるので、本格的な遮光に入る前の遮光アイテムとして暴風ネットを張っておくのもお勧め。
防風ネットの編み目が日差しを和らげ、春に急に吹く強風からも守ってくれます。
モミジは本来明るい場所を好む樹種なので、夏場以外は基本的に日当たりのいい環境に置くのがいいのです。春の芽出し頃はもちろん、秋の日照条件も紅葉の美しさや冬越しのためのエネルギー貯蔵にも影響しますから、日よけを外した後はよく陽に当てて紅葉を促してください。
光が不足すると枝が間延びし、葉が軟弱になって病害虫が発生する原因にもなりますから、間隔を空けて配置したり、葉すかしをしたりして全体の採光や通風にも注意してください。
枝を作るためには多少葉焼けしてもよく日に当てることも必要で、樹作り中のものは遮光なしで管理する培養者もいます。樹勢をつけ根痛みに気を付ければ葉も傷みにくくなりますから、水と肥料をしっかり効かせ、麻布などで鉢を包んで鉢が高温にならないようにしてください。
ただし、小鉢で培養しているものは乾きやすい上に環境変化の影響を受けやすく、遮光なしでは夏越しは困難ですから、必ず日よけ対策をしてください。
寒さには強いですが、冬は乾風や遅霜に当たらないように保護が必要です。落葉後2~3度霜に当て、寒さを経験させてからムロにいれてください。
多少の乾きには耐えますが、葉が展開してからは水の乾きが早くなるので水切れのないようにしてください。
単に上から水をかけるだけでは、葉が水をはじいて根元まで届かないことがあるので、根に届くように株元を目指して灌水しましょう。
春の芽出し頃からは1日2回で、夏は1日2~3回、冬は1~2日に1回を目安に、表土が乾いてきたらたっぷり灌水するようにしてください。
特に夏場の水切れには注意が必要で、水切れで葉焼けを起こすこともあります。葉水も好みますから、気がついたら霧吹きしてください。
維持の段階の完成~半完成木に肥料を与えすぎると枝が徒長するので、控え目を心がけてください。
ただし肥料が少なすぎると樹勢を落とす原因になりますから、秋肥を重点的に、春肥は伸張成長を少し手助けしてやるつもりで与えるといいでしょう。
4月中旬頃、新葉が開いて固まってきたら有機油かす肥料を与え、勢いを見て5月頃にもう一度追肥をしたら秋まで無肥料で構いません。葉色が悪いものがあれば、薄めたハイポネックスや少量の固形肥料を置く程度にしておいてください。
秋肥は気温が下がってくる8月中旬以降から始め、9月には終わらせて紅葉を促してやります。
枝作り段階の養成木は、枝を太らせたり2番芽を出させたりと力を消耗させるので、完成木よりもやや肥料を効かせて小枝作りをします。
実生、挿木、取木、接木などほとんどの繁殖法が可能です。
特に実生は種も入手しやすく、太りも早いので実生から作るのがお勧めです。太らせた実生モミジは継木や接木の台木としても使うことができます。
葉が小さく葉形のいい樹を見つけたら、秋に種を採取して取り蒔きするか、冷蔵庫で保管して早春に撒いてください。モミジの種は発芽に一定期間の低温を必要とする「低温要求発芽種子」なので、寒さに当てないと発芽率が下がります。
実生床に普通に撒いて作る他、網伏せで自然な模様を付けて楽しむ方法もオススメ
実生の場合は親の性を継がないこともありますが、いい葉性(葉が小さいとか、発色がいいとか)のものも発現するので楽しめます。
モミジは挿木繁殖も可能で、山モミジ系の品種や、矮性種(織姫、舞姫、琴姫、長良川など)は発根率も高く、簡単に増やすことができます。発根の悪い品種(紅千鳥やシダレなど)でも取木や接木なら成功率も高いので、品種ものは増やして楽しむことも考えて素材を入手しましょう。
アブラムシやカイガラムシなどがつくことがあり、梅雨頃からはうどんこ病も発生しやすくなります。
カエデのように何度も葉刈りをして2番芽をださせると、葉が弱ってうどんこ病になりやすいので注意してください。
有効な薬剤には、混合剤(殺虫殺菌剤)や浸透移行性の薬剤が充実しています。ベニカDXやオルトラン、サンヨールなどがありますが、モミジの葉はカエデよりも薄くて弱く、浸透性の高いものや、高濃度の農薬を使うと薬害が生じることがあるので濃度を守って散布してください。
また市販のスプレータイプのエアゾル剤は、近接散布で葉に冷害が生じることがあるので、距離を守って使用しましょう。
病害虫の予防には培養環境の整備も大事で、日当たりや風通しのいい場所で管理し、時には葉すかしや鉢回しをして、内部の通気性にも気を配ってください。
モミジの作業暦
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
冬期保護 |
ムロ出し |
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植替え |
芽押さえ |
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剪定 |
芽摘み |
葉すかし |
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施肥 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
遮光 |
紅葉 |
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芽押さえ |
葉刈り |
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剪定 |
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施肥 |
針金かけ |
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
紅葉 |
落葉 |
冬期保護 |
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葉刈り |
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剪定 |
剪定 |
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針金かけ |
植替えの最適期は芽出し前の3月頃。春に植替えが出来なかったものは、梅雨時期に葉すかしや剪定を兼ねて植替えすることもできます。
根の生育がはよい方ですが、あまり頻繁に根を切ると枝が暴れますから、2~3年周期で植替えしてください。ミニ盆栽は1~2年に1回を目安にしてください。
モミジの繊細な枝分れを作るためには、細かな根を作ることが大事ですから、植替えの際は走り根を段階的に追い込み、小根をできるだけ多く出させるようにしてください。
根上がりや石付きなどに仕立てる場合は、走り根を活かして作っていきます。
根張りも見所とするモミジは、まず根作りを優先します。若木のうちは根洗いをして古土を綺麗に落とし、太根や底根は元から切ってできるだけ薄く作るようにしましょう。
植え付ける際も八方に広がるように固定し、徐々に薄い鉢に植え付けるようにすると見栄えが格段に良くなってきます。
モミジの芽摘みは小枝作りに欠かせない作業で、節間を短く間延びさせないために行います。芽摘みの方法は、春に伸びてくる新芽(稚児芽)が膨らんできたところで中心の芽をピンセットで摘み取る方法が一般的です。
あまり遅くなると節が伸びてしまうので、節間が短いうちに芽摘みをすることがポイントです。
新芽は一斉に動き出すわけではないので、芽摘み期間中は水やりのついでに必ず状態を確認するようにして、伸びてきたものから適宜芽摘みをしてください。
特別に伸ばす目的がなければ、指で摘めるうちに芽摘みを済ませておきましょう。鋏で切らないといけなくなるほどにタイミングを逃してしまうと、節が間延びして枝として使えなくなってしまいます。
上記の方法が芽摘みの基本フォームですが、稚児芽が見えてくる段階ではすでに第一節が伸び始めていて、二番芽の形成の過程でさらに節間が離れてしまいます。
そこで、成長点であるハカマ(芽鱗)や托葉・苞葉と言われる部分を、芽摘みと一緒に取り去ることで、第1節を短く作る「ハカマ取り」と呼ばれる方法が実践されています。
稚児芽が開く前にハカマと托葉と取り除くと芽元の組織が乾燥で固まり、第1節の伸長が抑制される
ハカマ取りの方法は、最初の稚児芽が開く前にハカマと托葉をピンセットで丁寧に取り去り、さらに稚児芽を開いて中心の芽を摘み取ります。ハカマや托葉は新芽を保護する働きをしていて、新芽の成長と共に自然に取れますが、これを強制的に取り去ることで芽元が乾燥し、組織が固まって芽の伸長が抑えられる効果があります。
ハカマが硬く小さくて取りにくい場合は無理をせず、托葉だけ取ってもある程度の伸びは抑えられます。
また、あまり一般的ではありませんが、ハカマだけ残して新芽を全て切り取る「盲摘み(めくらつみ)」という方法もあり、ハカマの付け根から新たに新芽を作らせることを狙っています。
ただ、この方法はいかに節の短い枝を作るかが大事な小さい盆栽では有効ですが、新芽を痛める危険があり、その後の成長に悪い影響がでる場合もあります。
通常の芽摘みよりも手間がかかり、枝の多いものほど作業が大変になりますから、作りたいサイズや樹勢によって芽摘みの方法を決めてください。
モミジの春の手入れで最も重要な作業が芽摘みです。芽出しの時期には毎日のように新しい芽が伸びてきますから、丹念に芽摘みをして細かい枝作りを目指します。ある程度形が……
葉刈りは主に枝作り段階の養成木が対象で、内部の培養条件(日照・通風)を改善し、2番芽を出させたり、枝の太りを防いだり、フトコロ枝の活性や胴吹きを促進するなど多くの効果が期待できます。また、葉焼けで傷んだ葉を更新して、紅葉を美しくする目的で葉刈りをかけることもあります。
作業時期は葉が固まる6月中旬前後。
モミジはカエデのように何度も芽吹く力がないため、仕立て段階や樹勢によって減らす葉の量を調節します。
樹勢があり枝数のある養成木は、全葉刈りができる
勢いの付いた養成木ならば全葉刈りをしても2番芽が出揃いますが、ミニサイズの樹や樹勢が今ひとつのものに葉刈りをすると樹勢を落として思うように芽が吹かなくなるので、そのまま維持するか、必要なものは葉すかし(片葉刈りや葉切り)で対応してください。
維持の段階の完成木への葉刈りも、枝が暴れたり不定芽を吹いて樹形を崩す原因になるので、枝の込んだものは日照や風通といった培養条件を改善する目的で葉すかしを行いましょう。
ミニ盆栽や樹形維持の段階の樹は、葉すかしで日照を通風を確保
葉刈りや葉すかしは基本的にはこの時期1度だけの作業です。
作業後も枝は伸びてきますが、特に強く伸びる枝以外はそのまま伸ばして樹勢を維持し、秋に伸びた枝を切り込んで観賞期に備えます。
葉刈りの目的は2番芽をださせることですが、秋の葉刈りは芽の動く心配のない紅葉後に行う作業で、休眠期前の剪定と合わせて行います。
作業時期が早いと2番芽が動く可能性があり、この枝は休眠期までに伸びきらずに枯れる可能性があるので注意してください。
落葉樹の中には冬に剪定をすると樹液が止まらず枝枯れするものがあるので、その危険が少ない紅葉~落葉前後が剪定の適期となります。
自然落葉を待っていると秋の剪定整枝のタイミングを失ってしまうので、強制的に全ての葉を切り取りましょう。
モミジはカエデの仲間ですが、カエデよりも樹勢が弱く、葉刈り後に調子を崩しやすい性質があります。そのため全葉刈りのような負担の大きい作業を何度も行うことはできませ……
モミジは針金傷が付くと治らないので、樹形作りは鋏作りで作るのが一般的ですが、直線的な枝の模様付けや枝向きの修正などはやはり針金の力を借りた方がよく出来ます。
落葉樹の針金かけは生長期に新梢の「芽押さえ」程度に済ませる事が多いですが、葉刈り後や落葉後に剪定と合わせて行うと効率的で、葉が落ちて全体が見えやすくなっているので作業がしやすくなります。
モミジに食い込んだ針金。生長期は葉の下に隠れて見落としやすいので、かけたものは目印を付けるなどしておくと安心
生長期は枝の太りも早いので、針金をかけた場合は傷が付く前に外すこと。1ヶ月もすれば食い込んでくるので、葉に隠れているものも見落とさないようにしてください。
落葉後は比較的長くかけておくことできるというメリットがありますが、枝が硬く折れやすいので注意が必要です。
モミジの針金かけは、鋏作りを補助するものとして行うといいです。針金に頼るとモミジらしさを失ってしまうことがあるので、基本の樹形ができたら芽摘みや剪定で仕上げるつもりでいてください。
実生から始める場合は網伏せ等でいろいろな曲ができるので、そのままを活かして作る楽しみもあります。
モミジの剪定は、生長期に葉刈りと一緒に行うと効率的で、葉が固まる6月頃に葉をすかし、見えてくる徒長枝や不要な枝の間引き剪定などを行います。
作業後も気がつく忌み枝などがあれば、適宜透かして内部環境を改善し、不要な不定芽は早めに掻き取って枝の余計な太りを防いでください。
秋の観賞後も剪定の適期ですが、モミジは冬場に剪定をすると樹液が止まらず枝枯れする危険があります。落葉前後ならその現象はみられないので、紅葉後に強制的に葉刈りをかけて伸びた小枝を短く切り詰めておきましょう。
傷を嫌う樹種なので太枝の剪定もできるだけ避けたい所ですが、どうしても切る必要がある場合は、傷の回復が早い芽出し前まで待って剪定してください。
カエデ類の仲間で、秋に木々の葉が赤く色付くことを指す「紅葉する」という文字が当てられる程、秋の色彩の変化が美しく古くから愛されてきました。一般にモミジと言えばイ……
モミジの春の手入れで最も重要な作業が芽摘みです。芽出しの時期には毎日のように新しい芽が伸びてきますから、丹念に芽摘みをして細かい枝作りを目指します。ある程度形が……
モミジはカエデの仲間ですが、カエデよりも樹勢が弱く、葉刈り後に調子を崩しやすい性質があります。そのため全葉刈りのような負担の大きい作業を何度も行うことはできませ……
都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。
アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。
現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。
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