盆栽の飾り方
投稿日:2015/01/11 更新日:2023/10/09(4)
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盆栽は作ったり育てたりするだけでなく、飾って仲間や観賞者に評価されることで取り組む姿勢が変わり、技術面も上達します。
盆栽をやっていると飾る機会も増えてきますが、最初はなにをどう飾ればいいのか悩むもの。
盆栽には大品、中品、小品、ミニ(豆)盆栽と、愛好するサイズがなんとなく分かれていて、飾り方にも違いがあるのがわかります。
国風・貴風サイズの比較的大きな盆栽では、主となる盆栽に添えの草を配して観賞されることが多いようですが、小品~ミニ盆栽の飾りの1番の魅力は、数点飾った時の全体の総合美で、景色やテーマを大事にします。
これまでなんとなくみていたかもしれない観賞の心得や、飾りのポイントを考えてみましょう。
1.飾りと観賞の心得
飾りの心得
1、保ち込みの良い樹を飾る
陳列する樹は日頃からよく手入れされ、保ち込みのいいものを選ぶようにしてください。若木や未完成の樹では、盆栽に求める古木感や大木感がなかなかでにくいものです。
展示のコンセプトにもよりますが、きちんとした飾りの場では、全体に古さがでて、樹形作りがある程度終わった完成樹に近いものを飾りましょう。
展示のために完成された樹と鉢を即席に買って飾ったのでは、あまり展示する意味がないようにも思います。始めて間もないうちはやむを得ないこともやはりあるのですが、そのような飾りを目指すように心がけていきたいものです。
2、樹は綺麗にしておく
樹や鉢に汚れがついたままだと、せっかくの展示が台無しです。
培養中はコケや汚れが付くのは当然ですから、展示の前は特に入念にチェックし、観賞上不要な枝や、枯れ葉、花がら、ゴミなどを取り除いておきましょう。
幹に貼り付いた苔や汚れは歯ブラシ等で軽くこすれば綺麗になり、害虫予防にもなります。鉢についた汚れは全体を乾拭きし、仕上げに植物油を薄く塗って軽く拭き上げておいてください。
しつこいカルキ汚れには、クリーンメイトやサビトールなどの消しゴムタイプの錆落としを水で湿らせ、軽く擦って落とすのが簡単です(絵鉢は避けましょう)。
3、展示道具も綺麗にしておく
展示に使う棚や卓、地板、添配などの道具類はそれだけでも高価なもので、展示品を引き立てる重要な役目をしています。
展示の前には綺麗に乾拭きし、ウレタンスプレーなどで塗装してあるものは、定期的に植物油などで軽く拭き上げておきましょう。
紫檀、黒檀、カリン、黒柿、スギなど材はさまざまですが木製の道具がほとんどです。白木のものは乾拭きし、湿気にあたらないように保管、管理します。水分が残るとシミや歪みが生じますから、できるだけ水分が付かないように取り扱ってください。
4、展示数は2つか、3、5、7...と奇数でまとめる
飾る盆栽の数は、添えの下草や石、添配も数えて奇数にまとめて飾るのが基本です。
空間の取り方によっては、樹と下草、樹と添配を1つとして数える場合もあります。掛け軸や水石はそれぞれ1つとして数えましょう。
5、樹と鉢の調和を取る
古い樹には、同じく時代のついた観賞用の鉢を合わせないと見た目にも調和がとれません。高価なものでなくでもいいので、よく使い込まれた鉢を使ってください。
樹に対して極端に大きかったり小さかったりした鉢や、安定しない鉢はよくありませんし、培養鉢をそのまま展示に使ったのでは台無しです。
根の浅く広がる葉もの樹種には浅く柔らかい色味の釉鉢、松柏には泥鉢、懸崖樹形にはやや深さのある鉢など樹種や樹形によって合わせる鉢を検討しましょう。
6、充分に準備をしておく
展示の準備は周到に計画を立てておくことも大事です。
展示のテーマに沿ってどの樹を飾るか、どの鉢が合うか、どの卓とどう合わせるかなどを事前にじっくり考え、必要なものを揃え、直前の予定変更にも対応できるような準備をしておきましょう。
展示直前の無理な鉢替えも禁物です。無理をすれば根を傷めたり、蕾や実が落ちる原因にもなりますし、用土が真新しく落ち着かないので見た目によくありません。
鉢合わせが必要な場合は早めに済ませ、表土にコケを張っておけば展示する頃には全体が落ち着いて飾れるようになります。
7、針金は外す
展示会でたまに針金がかかったままの盆栽が陳列されていることもありますが、本来は針金は仕立て途中の盆栽にかけるもので、盆栽を飾る時は外しておくのが正解です。
目立たない箇所ならそのままでもかまいませんが、正式な展示の際には、一時的でもいいのでできる限り針金は外しておきましょう。
針金かけは仕立て中の作業だからと適当に行うのではなく、日頃から綺麗にかけるようにしましょう。針金が細部まで丁寧にかけられた盆栽は見た目にも美しく、効き目も上がります。
8、特別な目的がない限り同じ樹種・樹形は避ける
春は新緑の美しいものや花物、秋は紅葉や実物、冬は松柏や雑木といったように季節ごとに主役となる樹種がありますが、基本的には松柏類の隣には花物類か葉物類といったように、展示では各樹種を平均的に並べるのがいいでしょう。
似たような種類のものを近くに並べるとバランスが取りにくくなります。
ただし、同一樹種を異なる樹形で陳列したり、鉢の形や絵柄に統一感を持たせたりと、飾り手のコンセプトがはっきりしている場合は例外です。自由な感性での飾りも愉しいものです。
観賞の心得
1、盆栽に対する理解者である
観賞する側は、盆栽についての基本的な知識を持ち、盆栽の観賞点をしっかり見極め、飾り手の雅味や洒落、飾りの意図を総合的に理解しましょう。
また、そういう形で陳列した飾り手の心をくみ、飾り手への理解や配慮の気持ちも待ち合わせておかなければいけません。
2、鑑賞眼を持つ
根張りや立ち上がり、幹味、枝振り、葉性、花付きや実付き具合など、盆栽の観賞点を隈無く観賞し、美点や欠点を直感できる観賞眼を持ちましょう。
また陳列品の配列や卓の使い方、空間の取り方、樹と鉢、樹と下草との調和だけでなく、それらを選び陳列した飾り手の意図まで理解する心得と感受性を持つよう努めましょう。
3、話を聞く
展示者に話を聞く機会があれば、陳列品の日頃の培養方や管理の工夫、鉢や樹の見所など気になることを失礼のないように聞いてみてください。
話を聞いたあとでもう一度陳列品を眺めてみると、新しい見方や発見があり、知見も深まります。
愛好会の展示会では、勉強会や交換会なども企画されることがあるので積極的に参加して、盆栽への理解を深めると良いと思います。
4、マナーを守る
盆栽への理解が深まれば欠点にも気づくようになりますが、展示の場で批判をするような行為は大変失礼です。展示場では自分自身も見られていると思って、陳列側と観賞側の心得を持ち合わせておきましょう。
盆栽を観賞するマナーとして、まず陳列品や陳列の仕方のよさに気づき、それを誉めることも大切です。もちろん、飾りには一般的なルールはありますが、飾り方に絶対の正解はないのですから、自分の知識や思う正解と違うからといって批判することは止めましょう。
あとで仲間うちで批評の時間を設けることは今後の成長にも繋がりますが、会場で周りに聞こえるように批判することは自分を落としていることと同じです。
また、陳列台に手をついたり、陳列品に触れることも絶対にしてはいけません。特別な理由でどうしても手に取りたい時は、近くの会場係や出展者の許可を貰った上で、両手で持ち丁寧に扱ってください。
私的な写真や動画の撮影はほとんどの展示会で許可してくれますが、インターネットやSNSが普及した昨今では作品の所蔵者や個人情報などを危険にさらしてしまう可能性もあります。SNSや動画に投稿する際は、先に会場係に声をかけておくと失礼になりません。他の人の観賞の邪魔にならないように注意して観賞を楽しんでください。
2. 展示の道具
展示に使う道具には、卓や飾り棚、地板などの展示物を乗せるための道具や鉢、展示物を引き立てる小道具、水石などがあります。
個人で飾りを楽しむなら、アイデア次第でいろいろなものが飾り道具になりますが、歴史のある正式な飾りの席では、その場しのぎの物を使わないようにしましょう。上級者の飾りを見てみると、さりげない配置の中でも使われる道具は一級品ばかりです。
少しずつでいいので、盆栽を人生の道楽と決めたなら、道具もいいものを揃えていきましょう。
地板(じいた)
地板とは盆栽や水石、添配などの陳列物の下にしく敷板のことで、展示品は必ずこれらの地板や飾り台の上に置くのが鉄則です。
いろいろな材の地板があり、紫檀や黒檀、花梨などで作られた「唐木地板」や「竹地板」、杉や桑などの「白木地板」、漆を塗った「漆地板」などがあります。他にも樺や梅、楠などの根っこの部分を切り出して杢目を活かした「根杢(ねもく)地板」もあり、切り出した部分によって杢目に面白味があります。
形は長方や正方、丸、楕円、六角、八角など様々で、厚みがあるほど重厚な印象を持ち、価格は大きさや材により幅がありますが小さいものなら安いもので数百円。大きくなれば数千円~数万円です。その他、陶器製の陶板は根洗いやこけ玉などを置く時にも使われます。
卓(しょく)
卓とは木材を組んだり削り出して作った台のことで「卓台」「机卓」「飾り台」ともいいます。卓は足や桟(足と足に渡す横木)や幕飾りの装飾、足の長さ、重厚さや軽さ、大きさ、デザインなどにいろんな種類があり、それに合う樹種や樹形も異なります。
材質は高価なものに紫檀(したん)や黒檀(こくたん)、鉄刀木(たがやさん)などの唐木。その他には花梨(かりん)や樺(かば)、桐(きり)、竹、黒柿、桑、欅(けやき)などがあり、木目や色合い、漆仕上げのあるなしでそれぞれ異なる良さがあります。
卓には脚の長さと天板の大きさのバランスにより平卓(台)、中卓(台)、高卓(台)と分けられ、これらの組み合わせや配置、空間の取り方によって様々な自然の風景を演出することができます。
平卓(ひらじょく)
平卓(ひらじょく)は脚が低い机状の平たい卓台のことで、天板の形には長方、正方、丸などがあります。
平地でどっしりと構える樹や里山の風景を演出するのに適していて、直幹や斜幹、模様木、寄せ植え、文人、細幹で作りの優しい寄せ植えや吹き流しなどの樹形のものを合わせるといいでしょう。水石の台にも使われます。
高価で重厚感のある紫檀や黒檀で作られた平卓には松柏類や太幹の雑木類を合わせると良く、花梨や桐など柔らかみのある材質のものは優しい作りの雑木類や花もの類、実もの類が似合います。重厚な盆栽に薄い作りの平卓を使うとバランスが悪いので、文人や寄せ植えなどの細幹ものを合わせるといったように卓と樹の強さのバランスを取るようにしましょう。
数点飾りの場合、平卓は比較的里山~低山の景色を見せたい時に使われる飾り台です。樹形や見せ方にもよりますが、高山性の植物を平卓で飾るのは避けてください。
中卓(ちゅうじょく)
中卓(ちゅうじょく)は平卓よりやや脚の高い卓台のことです。
平卓と中卓の境界線はデザインや見た目のバランスに頼る部分が大きいのですが、小品盆栽では天板の一辺(もしくは直径)の半分くらいの長さの脚のものを中卓と区別しています。
里山の風景を演出するのにもよく、半懸崖や吹き流し、根上がり、吹き流しなどの樹形のものを合わせても似合います。樹種は選びませんが、あまり樹高の高くないものやツルもの樹種も合うと思います。
優しい作りの雑木を乗せるときはやや印象が弱めの卓を合わせるなど、卓とその上に乗せるものの強さにバランスを取るように留意してください。
高卓(こうじょく)
中卓よりも脚の高い卓台で、小品盆栽では天板の一辺(もしくは直径)の半分より脚の方が長いものをいいます。シンプルなものや装飾の凝ったもの、高さ、華奢なものから厚みのある重厚な印象のものなどデザインや材質はいろいろあります。
高卓を使うことで、深山や高山に見立てた山岳地や、岩場や崖などの風景を演出することができます。樹形は幹枝の下がった懸崖や半懸崖、吹き流しなどがよく、華奢な作りのものには細幹物を合わせると調和が取りやすいです。
普通は黒松や赤松、蝦夷松、真柏や杜松などの松柏類を主木として合わせることが多いですが、ツタやアオツヅラフジなどの蔓性植物を飾る時にも使います。
高卓は高山の景色を表現する時に使われる飾り道具です。樹形にもよりますが、平地の樹種や山野草には高卓を使わないようにしてください。風の吹き荒れる高山の岩場を連想させるのに適した道具なので、模様木や直幹とは相性が悪いです。
飾り棚
小品盆栽を飾る棚を飾り棚といっていろいろな種類がありますが、代表的なものに箱型で2段以上の違い棚のある箱卓や、半円形に違い棚のある丸卓などがあります。
二段棚や違い棚の上に小品盆栽や草もの、小さな水石や添配などを配置しますが、棚の上にさらに地板や平卓を使う場合もあります。
飾棚の中にも主木と受けを意識した陳列が必要です。一番上の棚には主木を置き、向かいの段に受けとなる樹高の低い盆栽や水石などを配します。
棚飾りは飾る樹が多いので、流れと弾みを意識して、同じ種類・樹形の樹が重複しないように注意してください。
箱卓の飾り方
箱卓を使った飾りは棚飾りともいい、各棚に樹や水石、草などを配して1つの飾りになります。大きさのバランスも重要な所で、卓に対して樹が大きすぎたり、小さすぎるのもよくありません。
飾棚を使った陳列は、飾棚だけで完結させるのではなく、棚全体を受ける役目をする盆栽や水石、草などを樹の流れに応じて適当な間を取って配置します。
飾棚そのものの印象が強いので、受けとなる盆栽は少し大きめの半懸崖や株立ちの松柏類や雑木類など、棚に向かって流れのあるちょっと強い印象の樹形が好ましいとされます。
棚飾りの仕方(例)
①天に置く主木は、樹高が低く力強い印象の模様木や半懸崖の樹形が好ましく、松柏類や高山性樹種が使われます。
②に置く樹は、①の主木に対して少し軽めの樹形がよく、半懸崖や斜幹、吹き流しなどの実物類や葉物類を持ってくると良いです。軽妙な動きのあるものなら松柏類でも構いません。
③に置く樹は、②よりも樹高が低いクチナシやウメモドキなどの実物類や花物類の他、チリメンカズラ、トショウなども合います。
②の受けとなる役目を持つので、②が単幹なら③は双幹や株立ちなど二幹以上の樹形がバランスを取りやすいです。
④に置く樹は、直幹の杉や欅、檜などの雑木類やトショウなどを置くと締ります。
⑤に置く樹は、低い位置にあるので株立ちなどの樹高が低くどっしりした印象の樹形の樹を置くといいです。
⑥は飾り棚の受けとなる役目なので、松柏類や雑木、実物などの少し大きめで強い印象になる樹形の樹を置きます。棚飾りの方向に流れるような樹形がよく、下草や添配、石などを据えてもよいです。
丸卓の飾り方
丸卓は箱卓よりも印象が軽い分、天に置く主木も斜幹か半懸崖などの動きのある軽妙な樹形の樹種が好ましいです。
また全ての棚に展示物を置くとくどくなる場合があるので、特に丸卓では全体のバランスをみて必要なければ何も置かない方が良いこともあります。
小品盆栽での丸卓飾りだと、印象はさらに軽妙で洒落た感じになるので、小さい花物や実物だけを陳列したり、水石や銘鉢で魅せたりと、いろいろな飾りを楽しむこともできます。
丸卓飾りの仕方(例)
①に置く主木は、斜幹や懸崖などの軽妙な樹形の松柏類や雑木類が主ですが、軽い印象の丸卓なら実物や花物を合わせてもよいです。
②に置く樹は、①の受けとなるものなので①よりも樹高が低く、①に向かって流れのある樹を陳列してください。
樹でなくても、遠山石や滝石などの水石を持ってきても合います。
③に置く樹は、少し空間がとれるように小さな季節の草や石、添配などを置くとよいです。
④はスペースが狭く、ものを置くとくどくなるので何も置かなくてよいです。
⑤は丸卓全体の受けとなる役目なので、松柏類や雑木類などの少し大きめで強い印象になる樹形の樹を置きます。丸卓の洒落た軽い印象を受けるので、樹形は株立ちの他、半懸崖や懸崖、斜幹などの樹形の樹を高卓の上に置いてもよく合います。また石や季節の草、添配などを流れに合わせて据えると全体に調和が取れてさらに良くなります。
床の間飾り
「床の間」とは日本住宅の客間の一角に設けられた座敷飾りの1つで、壁には掛け軸をかけ、生け花や陶器などの置物を飾るための空間です。
かつては有力者の家臣が、仕える主人を迎え入れるために作ったことが始まりで、茶室建築や書院造りにみられるように、床の間に違い棚や付書院が揃って正式な座敷とされていました。
江戸時代には次第に庶民の住宅にも床の間飾りが浸透し、明治時代以降~昭和の日本住宅には一般的なものとして備え付けられるようになったようです。
盆栽の飾りにおいても、掛け軸や屏風を飾ったミニチュアの床の間に、盆栽や下草、添配を陳列する「床の間飾り」という遊びがあります。盆栽を引き立てるため、掛け軸の絵柄は人物画などの存在感のあるものは避け、月や雲、遠山、滝などのあっさりした風景画を描いたものを選ぶといいでしょう。
盆栽は卓に乗せて飾りますが、飾る盆栽の樹形や強さによって合わせる卓や添えのものも違ってきます。主となるものと受けとなるものの調和を考えた陳列が大切です。
水石、添配(てんぱい)
水石とは、一般に山水の形状をした天然の石(初心石:うぶいし)のことで、連山の姿や滝、荒磯などの景色を連想させるものとして、台座や水盤に乗せて単独でも観賞されます。水石愛好の歴史は深く、格式高いものとして主役的な存在で、時には盆栽のほうを引き立て役として配置することもあります。
盆栽飾りで水石を使う場合も例外ではなく、遠山や高山の景色を表わす水石を主役として、その景色を引き立てるような配置をしましょう。水石と合う樹は、石の印象によりますが、古さのある文人や懸崖などの高山性樹種や、野梅や橘もどきなどの質素ながらに華のある山裾の樹種、掛け軸、笹などの山野草などもマッチします。
添配は、カニや蛙、鹿、鶺鴒(セキレイ)、カタツムリなどの動物や、茅舎(くずや)などの建物、小舟、橋、釣り人や人形、地蔵などの小さな置物のこと。
素材は鉄や青銅、錫などの金属製のものや、陶磁器、木彫り、竹彫りなどがあり、平安英正(大正~昭和初期)や曙山、秀明、横田秀峰などの名工の作品が有名です。これらの添配は小品盆栽に添えることで景色や季節感を演出することができ、席飾りには欠かすことのできないものの1つとなっています。
他にもいろいろなものが添配として使うことができ、自分で見つけた面白味のある河原の石や乾燥したハスの実、小さな落ち葉やドングリ、松ぼっくりなどを季節を感じられるものが好まれます。
3. 飾り方の例と考え方
ここでは比較的サイズの小さい、小品~ミニサイズの盆栽を使った飾り方を簡単に解説します。
大きな盆栽では主となる盆栽そのものの完成度や鉢との調和を見せることが主な観賞点で、添えの草などと合わせた飾りが多いのですが、ミニ盆栽を使った数点飾りの場合は、一席にテーマ(見せたい景色や情景など)が込められていて、それぞれが独立したものでなく、お互いが引き立て合って1つの飾りとして成立しています。
ただ飾りたい樹や道具を一列に並べるのではなく、数ミリ単位の間の取り方や流れ、道具の向きや配置にも神経を使った陳列を愉しむのが、ミニ盆栽の飾りの難しさであり、醍醐味なのではないかと思います。
「主木」と「受け」
盆栽の飾りで大切なことは、ただ飾りたいものを数多く陳列するのではなく、主役になるものを一番に引き立てることです。
サイズや陳列数に関係なく、展示においてはいつも主役となる主木(しゅぼく)があり、主木の流れを繋げたり、受け止める受け(うけ)の存在も重要になります。
もちろん、飾り手の思いや展示のコンセプトによっては、小さい盆栽を一同に並べてみたり、同じ樹形、同じ樹種を並べて、見る人を愉しませる遊び心のある展示も面白いものです。
主木(しゅぼく)
主木には、格式高いものとして扱われる五葉松や真柏、黒松、杜松などの松柏類が使われることが一般的ですが、飾り方によっては雑木類や他の樹種も主木になり得ます。
主木になる木は、力強く端正な樹形のものがよく、特に飾棚を使う場合の主木は樹高の低い模様木や半懸崖の樹形の樹が好ましいとされ、場合によっては水石を天に置くこともあります。
受け(うけ)
平飾りや棚飾りでは、主木に対して「受け」と言われる盆栽や下草、添配を置きます。
受けは主木の樹の流れを受けて引き立てる役割をしていて、主木が右流れの樹形を用いた場合は、受けは主木の流れを受け止めるような姿であるのが好ましいです(例外もあります)。
受けはあくまで主役である主木を引き立てるためのものなので、主木よりも大きすぎるのはもちろん、小さすぎるのもよくありません。盆栽の飾りは単純な強弱ではなく、「動」と「静」、「ゆるやかさ」と「厳しさ」といった取り合わせにすることで全体に調和が取れます。
陳列のレイアウト例
平飾りの陳列を上から見た例をいくつか考えてみましょう。オレンジの範囲は地板や卓などで、大きさや形は樹の大きさや空間の取り方により違いを持たせます。地板や卓の天板は同じ形で統一してもいいですし、調和が取れれば四角と丸、八角、菱形などを混ぜて使ってもいいと思います。
また、飾りの道具はできるだけ同じ素材で、一式揃ったものを使うようにしましょう。バラバラの場合もせめて色味や杢目に統一感を持たせたほうがごちゃごちゃせず、主役の盆栽がより引き立ちます。
席数や展示場の広さにもよりますが、一席の面積は横70~90cm×奥行き50~60cmくらいが理想的で、このくらいであれば十分な空間が取れます。
3点飾りの場合
上図は小品サイズ3点飾りの例で、1番奥に主となる松柏類や水石を置くといいと思います。この時、主となる樹や水石をど真ん中に置くのではなく、左右どちらかに少しだけずらしてみてください。陳列は水平方向、垂直方向に揃えて並べないで、互いを少しずらして空間に弾みを持たせるといいでしょう。
主の左右どちらか手前「受け①」に主を受ける雑木や実もの、花もの類。主に水石を置いた場合は、石の強さを受け景色を引き立てる樹種や樹形のものを置くようしましょう。
反対側「受け②」には、「主木」と「受け①」の流れを最後に受けとめる雑木や山野草、添配などを置くと、全体がまとまり、『展示品はここまでですよ』という句読点の意味合いにも受け取れます。
配置は離れすぎても近すぎてもよくありません。深山の樹種と里山の山野草を近くにおくと全体の景色に違和感があります。それぞれの植生の距離感や見せたい景色によって、間の取り方を工夫してみましょう。数ミリの違いで印象が変わります。
5点飾りの場合
3点飾りより展示品が多いので難しそうに思えますが、省略の美という言葉があるように、5点飾りの方が比較的飾りやすいかもしれません。
使う樹種も、主木(水石でも可)があって、実もの、花もの類、雑木に下草といろいろな樹種を並べて見せることもできますし、前にも書いたように、同一樹種の異なる樹形を飾ってみたりと見せ方もいろいろにあるので、最もよく飾る点数の陳列です。
数点飾りの場合は、全部の樹が主木のような立派なものである必要はありません。主木を引き立たせ、受ける「受け①」、「主」と「受け①」の流れを受け止める「受け②」、「受け③」、「受け④」と、それぞれが単独でなく全体をまとめるような陳列を目指すようにするといいと思います。
この場合も、互いの配置が同一線上に並ばないように適度な「間」を取って、景色を目で追わせるように樹の流れや向きを工夫してみてください。
また、主木は必ずしもいつも1番奥に置くものとは限りません。どの目線からの眺めを見せたいかで、手前に置くこともあります。吹き流しや斜幹、株立ち、双幹などの大きめの盆栽は手前に、文人や直幹などの小さくとも樹高のある盆栽を奥におくと、小さい樹でも遠近法で巨木感を感じられます。
ちょっと上級?な陳列①
3点飾りの応用編です。配置のバランスを取るには「ヘの字」や「ハの字」にするのが簡単なのですが、図の様にどちらか片方に盆栽を配置することもできます。
この場合は、左側の空間(余白)になにが広がっているか?を想像する想像力と表現力が試されます。
例えば、余白の部分が「海」だとすると、主は荒磯の山や黒松になるかもしれません。添えの草や添配には、イソザンショウやハマゴウなどの塩性植物を置くと、大海原を望む景色が見えそうです。
ちょっと上級?な陳列②
一見4点(偶数)飾りにも見えますが、「主」と「受け①」の2点と、右の「受け②」「受け③」をまとめて1点と数えての3点飾りと取ることができます。
「主」と「受け①」を受けるため、右側に配置した「受け②」の地板は大きめのものを使って強さのバランスを取ります。地板が大きい(強い)ですから、その上に置く盆栽は、文人や懸崖などの少し弱くとも存在感を失わない印象のものを、余白をもたせて置くと洒落た飾りになります。茅舎石などの姿石でもいいかもしれません。
杢目のあるものは、杢目の流れが繋がるようにして向きを決めてください。
「受け③」は、「受け②」の流れを受け止めながら、「受け②」とともに左側の「主」と「受け①」も引き受ける役目があります。「受け②」の地板が強いですから、あまり重すぎない山野草や添配などを選ぶとうまくまとまると思います。 「受け②」と「受け③」の間隔が遠いとまとめて1点と見えずらいですから、絶妙な間を取ることがポイントです。
このように、数点飾りの場合は空間の取り方や飾り道具の使い方によって、陳列数の数え方(捉え方)が異なるというのも頭においておくといいと思います。
コメント
- ENZO さん 2023年10月13日18時47分
- Thanks for the article it's very clear and provides interesting things to think about.
It is pleasant and informative to read the contributions on the blog - kimi さん 2023年10月14日14時34分
- ENZO-san
Thank you for reading my blog so enthusiastically even though it's in Japanese! Yes, I love writing articles^^