梅擬(ウメモドキ)の魅力
投稿日:2018/01/08 更新日:2023/10/29(4)
ウメモドキ(梅擬、学名:Ilex serrata)はモチノキ科モチノキ属の落葉低木。雌雄異株。
葉や枝ぶりがウメに似て、これに赤い実が成った姿を梅花に見立てたことから、梅に「もどき」の名前が付けられています。日本の固有種で、本州~九州の湿地や湿った林などに自生があり、庭木や公園樹としても利用されています。
古くから園芸でも愛され、元禄八年(1695年)に植木屋の伊藤政武が著した園芸書『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』には「梅嫌」と書いて「うめもどき」とあり、次いで元禄十一年(1698年)に刊行された『花譜』では「梅茂登岐(うめもとき)」と記されています。ウメモドキの漢名は「落霜紅」で、中国にも自生があるとの記載が多くありますが、『自然と盆栽 No.31 10月号’72』には、似ているが本種は日本固有のもので、中国種とは別の種類のものであるとも書かれています。
ウメモドキは明治時代の中期にはすでに盆栽として作られていて、実が小さく上品な点が本格盆栽にも好まれます。落葉後も実が付いたままなので、寒樹姿に散らばった紅が一層際立ち、鮮やかな実を長く眺めることができます。野趣味のある実成りの風情が魅力の定番樹種で、丈夫で小さく作りやすいところも盆栽向きです。
紅実が普通ですが近縁種や園芸種もあり、葉色や鋸葉の切れ込みも個体差があります。白実や黄実の他、小実の『小姓梅(こしょうばい)』も人気。庭木、生け花向きの大実種『大納言』や、風鈴ウメモドキなどもあります。
Contents
1. ウメモドキの特徴
自生地と樹形
ウメモドキは日本の本州、四国、九州の落葉広葉樹林帯に分布があります。主に山中の湿原や湿った林床などに生えていて、肥沃な土壌を好みますが、庭木や公園樹など人の手によって植えられたものもしっかり根付き、環境への適応力も高いようです。
根元からヤゴ芽が伸びやすい性質で、自生樹では株立ち状になりやすく、主幹というものがはっきりしません。樹高は高くても2~3メートルほどの灌木で、幹枝は己の重さで緩やかな曲線を描きながら野趣感のある姿にまとまります。
ウメモドキの花(6月)
ウメモドキは雌雄異株で、花は全開しても3mm程でとても小さいです。柄はとても短く、枝の各基部に小さな花がつきます。
開花期は6月頃。メス花は中央に柱頭があり、緑色の子房が目立ちます。花弁は4~5枚で、白~薄いピンク色です。
オス花の花弁も淡紅色で、枝の基部に数個ずつまとまってつきます。雄しべは4本立ち、先端(やく)には花粉が沢山ついています。
ウメモドキの花は風媒花で、風にのり広範囲に飛散し受粉します。結実させるためには交配用のオス木が必要で、自然受粉でも人工授粉でも結実が望めますが、どうしてもまばらになってしまうので、全体に実を付けたいならば人工授粉が確実。小筆などで花粉を取って、雌しべにつけてください。
ウメモドキの実(10月~1月)
ウメモドキは赤実のほか黄実や白実などがあり、だいたい10月頃から色付いてきます。実の色付きが進むにつて段々と葉が黄葉し、落葉して最後には実だけになります。枝の基部にびっしりと小さく鮮やかな実が付き、冬の間も楽しませてくれます。
実姿は1月頃まで観賞できますが、たくさんの実を遅くまでつけたままにするとさすがに枝枯れしやすく、全体に樹が痩せてきてしまいます。
樹勢の維持のためにも観賞が終われば早めに実を摘果して、樹に力を残してあげるようにしてください。できれば実は毎年つけずに、2年に1度は休ませて枝作り(と樹勢回復)の年と観賞の年を設けるようにするといいでしょう。
ウメモドキの実はヒヨドリやメジロ、ツグミ、ムクドリなどの野鳥が好んで食べます。食料が少なくなってくる11月頃からは本格的な鳥除けの工夫が必要です。
2. ウメモドキの繁殖法
ウメモドキの素材は入手しやすく、接木や挿木も比較的簡単です。多いのは挿木素材で、挿木の難しいとされる「小姓梅」は接木苗が出回っていますが、腰高のものが多いのでなかなかいい素材に出会えません。
実生もできますがメスが出るのは少ないと思います。
挿木は前年からしっかり肥培して樹勢が十分であればコブ挿しや古枝挿しでも発根が望めます。梅雨挿し(6月頃)、春挿し(2月下旬~3月)どちらも可能ですが、挿木の場合はどちらかというと芽が動き出す直前が好成績です。高温多湿の時期は発根はいいのですが、雑菌も繁殖しやすいので、コブ挿しや太枝挿しは失敗に終わることがあります。
取木は梅雨頃(6月頃)でも春(新芽が出る前)でも可能です。
ウメモドキのコブ挿しの例。コブ状になった枝や、コケ順の悪いものはかえっていい素材になります。取木が難しい場所なら、コブ挿ししてみてください。
3. ウメモドキの主な樹形
根元からヤゴ芽(ヒコバエ)がでやすく、自生では株立ち状になりやすい性質です。盆栽ではこれを活かして株立ち仕立てにされることが多いですが、ヤゴ枝を処理して古枝を残すようにすれば単幹にも作ることができます。
枝を走らせれば幹もよく太るので、予め幹模様を作っておいて切り戻し、太幹の模様木にもできます。萌芽力があり、よく枝をだすので双幹、斜幹、寄せ植え、懸崖などいろいろな樹形にできます。
4. 関連ページ
ウメモドキは本来、湿地や湿った林床など日陰~半日陰の環境に自生があるようです。自生地の環境から考えると半日陰でも十分育ちますが、締まった樹を作るには十分な日照が……
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