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芽摘みの基本

投稿日:2018/04/25 更新日:2020/04/12

芽摘み

沈黙を破り一斉に活動を始める春の盆栽置き場は生命力が溢れていて、見ているだけで楽しい季節です。枯れたように生気を失っていた枝の先には瑞々しい新芽が膨らみ出し、じりじり主張を始めます。

新芽がほころび樹が活動を始める春は、芽摘みが忙しくなる季節。

春最初に出る芽は、秋から冬の間に蓄えた力の分伸びが強く、そのままにしているとどんどん伸びて太くなってしまいますから、この芽を途中で摘んで勢いを止め、次に出る芽の勢いを抑える必要があります。

芽摘みは樹形作りや維持の他、花芽形成にも関係してきますから、その原理や正しい芽摘みの方法を押さえ、盆栽作りに活かしてください。

1. 芽摘みの定義と原理

植物は「頂芽優性」という性質を備えていますが、その伸長成長を促進する植物ホルモン「オーキシン」は、同時に側芽の成長を抑える働きをしています。

「芽摘み」は剪定の一技法で、伸びる枝の成長点を切り取ることで、側芽の動きが促進されるという一連の植物生理を利用したものです。頂芽を摘むことで側芽抑制が解除され、頂部に近い腋芽が動き出します。

芽摘みは広義では剪定と同じ意味合いを持っていますが、新梢の一部分を摘み取ることを限定的に指していて、ある程度伸びた段階で鋏で切り詰めることを「切り戻し剪定」とも言います。

芽摘みの意味

四季のある日本では、多くの植物は春になると活動を始め、初夏の頃まで勢いよく新梢を伸ばします。葉柄の元部分には次の年に伸びる芽(腋芽)が待機していますが、特別なことがない限り眠ったまま先端の枝が伸びていきます。

ところが強風や積雪、落石などによる枝折れの他、病害虫や害獣による食害などで枝が失われると、植物は失った葉を取り戻すために眠っていた腋芽を動かし、新たな葉を出そうとします。

この植物生理を利用したものが剪定や芽摘みで、小枝の充実や樹形の維持が最も知られる効果ですが、特に芽摘みは「抑制」の意味合いが強い作業。

強い芽の勢いを止めて周りの枝の充実を図ったり、逆に芽摘みを遅らせて周りの枝の勢いを押さえたりと、その方法は仕立て段階や目的によって少し違ってくるのです。

芽摘みと花芽分化

植物学上、花は葉が変化したもので、実は定芽も不定芽も最初から「葉芽」「花芽」と決まっているわけではありません。花芽が多く付くように改良された園芸品種は別ですが、通常花芽は温度や日照時間・一連の植物ホルモン濃度の変化など様々な刺激が要因となって形成されます。

松柏類や葉物類は単に小枝を増やしたり、樹勢や姿を維持するために芽摘みを行いますが、花や実を観賞する花物類や実物類は、さらに花芽が出来る場所と時期を理解した芽摘みをしないといけません。

樹種によって多少異なりますが、ほとんどの植物の花芽分化の時期は初夏7月~9月頃の間で、新梢の先に花芽を付ける樹種が多いため、いつまで先端を摘んでいると花芽が付かなくなってしまいます。

目安としては花芽形成の約2ヶ月前には芽摘みを終わらせ、各枝を充実させておく必要があるため、観賞段階の花物類・実物類に芽摘みが出来る時期は意外と限られています。

2. 芽摘みの効果

芽摘みは枝を増やすことだけではなく、葉数も増えるので光合成や同化蒸散作用も促進され、植物の生育がよくなるという効果もあります。

また盆栽としては葉も樹の大きさに見合って小さくなければおかしな姿になりますが、芽摘みで枝を切り詰めた後に出る葉はより小さくなるという、愛好家に都合のいい結果もももたらします。

芽吹く力が旺盛な葉物類では1年に4~5回の芽摘みができるものもあり、言い換えると1年間で5~6年間分の成長を遂げさせることが可能になります。

芽摘みの効果

  • ・枝数を増やすことができる
  • ・次に出る葉が小さくなり、幹と葉の大きさに調和がとれる
  • ・枝の太りを抑え、サイズを維持できる
  • ・強い芽を切ることによって、全体の枝の強弱を調節することができる
  • ・余分な枝を早めにとることで切り口も小さく済み、採光や通風がよくなる
  • ・植物の成長を早め、盆栽としての鑑賞価値があがる

3. 芽摘みの基本フォーム

芽摘みの時期

芽摘みは新芽が伸びてくる春から初夏の頃が作業時期で、芽吹きが旺盛な樹種は秋口まで行うこともあります。

反対に完成樹や古木は、樹勢が落ち着き新芽の伸びる力も弱いので、芽摘みの頻度も少なくなります。

芽摘みの時期はまだ枝が柔らかく摘めるタイミングがよいですが、樹種によってはあまり早いと思ったように2番芽が伸びなかったり枝枯れすることがあります。

基本は少し伸ばし気味にして樹に勢いが付いてからがよく、広葉樹だと新梢の葉が4~5枚展開した頃が適期。完成木では芽の勢いも弱いので、少し早めに摘んで樹形を維持してください。

杉や杜松(トショウ)、蝦夷松、唐松なども新芽が開いて新しい葉が伸びてきたころがよく、松類の場合は新芽が伸びてまだ葉が出始めていない「ミドリ」と呼ばれる時期が最適。

節の短い枝を作ることが大事な紅葉(モミジ)は早いほどよく、芽出しの時期は毎日のように稚児芽を摘んでいきます。

摘み方

芽摘み

芽摘みの例(ケヤキ)

芽摘みがもたらす1番大きな効果は、小枝を増やすことです。

新梢は1~2節残して摘むのが原則で、これによって盆栽自体が大きくなるのを抑えながら枝数を充実させることが出来ます。

新梢は伸びたものから順次摘むのが基本ですが、すべての芽を同じように摘んでいると必ず強弱の差が生じます。

弱い枝には芽数を多く残して葉量を確保し、枝をしっかりさせてから小枝作りをしましょう。

反対に強すぎる枝や徒長枝は1つだけ芽を残して力を抑えたり、1つも芽を残さずに不定芽を期待する方法などがとられます。

切り戻し剪定と芽おさえ

先にも少し触れましたが、「芽摘み」には伸びた新梢を摘む基本の方法の他に、ある程度伸ばしてから鋏で切り取る「切り戻し剪定」があります。

切り戻し剪定は新梢をそのまま枝として使いたい時など、主に養成木の基本の樹形作りで行う方法で、枝を伸ばすことで枝元を太らせ、さらに1~2節で切り詰めることでコケ順をよくする目的があります。

枝作りには芽おさえを

芽おさえ

芽おさえの例(マユミ)

新梢はそのまま伸ばしてもいいのですが、真っ直ぐ伸びくるので、針金で軽く曲を入れておくと後の樹形作りが簡単。

新梢を針金でしつけておくことを「芽おさえ」といって、基本の枝模様を作る目的の他、枝の勢いを抑制する効果もあるため、花物実物類の花芽形成の1手段としても知られます。

古くなれば癖の付きにくい樹種でも、新梢ならば細いアルミ線で簡単に曲げることが可能で、しなやかさがあるので折れにくいのです。枝先はいずれ切り戻すので、枝元をややしっかりめにしつけておいてください。

ただし、新梢は太りが早く、早いものは2週間もすれば食い込み始めるので、傷が深くなるまえに外し、必要であれば掛け直しておきしょう。

切り戻し剪定のタイミングは、目的の太さを得た段階でOKですが、あまり遅くなると2番芽が秋までに伸びきらないので、遅くとも8月頃までには終わらせておきましょう。

4. 芽摘みの注意点

若樹と老樹の芽摘みで気をつけること

若樹は樹勢が強く成長も早いので、枝を切り詰められてもすぐに次の枝を出そうと活動を始めます。

反対に、完成木は生育力自体は比較的弱いですから、若木と同じようなペースで芽摘みをしてしまうと樹勢を衰えさせる原因になることも。

老樹の芽摘みは枝数を増やすことよりも、全体の勢力を均等に保つことを目的として行います。伸ばしたくない部分は早めに摘み、枝が欲しいところはやや伸ばしてから摘むなど、樹勢や生育段階に応じた芽摘みができれば上出来です。

新芽には害虫がつきやすい!

春の害虫

柔らかい新芽はアブラムシやハマキムシ、ダニ類などの吸汁性害虫の大好物で、発見しにくい葉裏で繁殖し、気がつくと大きな被害になることがあります。ナメクジの食害も問題で、昼間は鉢裏などに隠れているのですが、夜間に活発に動き出して新芽や蕾を食べてしまいます。

せっかく芽吹いた葉に被害がでると後の生育に悪影響を与え、病気にも罹りやすくなってしまうので、特に芽出しから梅雨頃までは定期的な薬剤散布で防除することが大切です。

ただし新芽は組織が柔らかく、浸透性の高いスミチオンやマラソンを使うと葉が萎れてしまうことがあるので多用は控えてください。

薬剤

春に使用する薬剤は薬害の少ないものを正しく使うこと

春に使う薬剤は、GFオルトランCやダントツなどの浸透移行性の殺虫剤の他、汎用性の高いサンヨールなど薬害の出にくいものがお勧めです。

農薬は多量に散布すると光合成や蒸散作用を物理的に阻害してしまうこともあります。エアゾルタイプの近接散布は冷害が起きやすいので使用方法を守って使いましょう。

虫を見るとついべったりと散布してしまいがちですが、本来は予防のために使用するものです。病害虫の発生しやすい葉裏を中心に散布し、表面は軽く付くくらいで充分と思ってください。

5. 樹種別の芽摘み

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都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。

現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。

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