五葉松(ゴヨウマツ)の芽摘み

2018年05月09日

五葉松の芽摘み

五葉松は元々葉が短いので、短葉を目指した芽摘みというよりも枝の長さを調節したり、各枝の力の平均化を目的として行います。

芽摘みをしないと葉が混み過ぎてトラブルの原因になったり、枝の間延びや枝の強弱に差がでて樹姿を維持することが難しくなります。

他の松柏類に比べて成長が遅く胴吹きも弱い反面、1つの枝から複数の芽が出る性質があるので、芽数の調整も不可欠。

適期を逃すと枝の間延びの原因にもなるので、作業期間中は芽の状態を毎日観察して正しい芽摘みが出来るようになりましょう。

芽摘みの時期と方法

五葉松にはロウソク芽コンペイトウ芽という2種類の芽があり、ロウソク芽(ミドリ)は勢いよく伸びるのに対し、コンペイトウ芽はほとんど枝が伸びてきません。

樹勢の強い若木ではこのようなロウソク芽が一カ所から複数出ることが多く、樹勢の落ち着いた完成樹や老樹ではほとんどがコンペイトウ芽が出ます。

五葉松の新芽

五葉松のロウソク芽(左)とコンペイトウ芽(右)

五葉松の芽摘みは主にロウソク芽を適当な長さで摘む作業ですが、コンペイトウ芽も伸びに応じて芽摘みします。

五葉松の芽摘みの適期は、まだミドリが柔らかく指で摘める4月中旬~5月初旬にかけて。

新梢がほころびだして葉になるトゲの長さが2mm程に達した頃に、1/2~1/3程残して芽摘みをしてください。

強い芽ほど深めに摘むのが基本で、弱い芽や枝を長く伸ばしたい場合は長めに残すかそのままにしておいてください。

作業が遅くなると軸が固くなり鋏を使わざるを得なくなりますが、鋏を使うと切り口が赤く変色して見苦しくなってしまうので、適期を逃さないように注意してください。

芽摘みの時期が遅れてしまった場合は、5月~6月頃に中芽切りができます。

五葉松の芽処理

五葉松は「くるま枝」になりやすく、一カ所から複数の芽が出る性質があるので最初に芽数を整理する必要があります。

枝の強さによって出る芽の数は違いますが、基本は2芽残しの芽調整をします。

例えば芽が3つでた場合は真ん中の強い芽を元から摘み取り、両脇の2芽が伸びてきたら適当な長さを残して芽摘みしてください。

強い枝からは4~5つの芽を出す場合もあるので、弱い芽を2~3つ残して同じように芽摘みしましょう。

五葉松の芽摘み

弱い枝には芽が1つしか付かない場合もあるので少し伸ばしてから摘むかそのままにしておいてください。

五葉松の中芽切り(5月~6月)

五葉松の中芽切り

芽摘みが遅れたものは、5月~6月頃になって中芽切りができます。

やりかたは新梢の葉が開く直前、まだ葉先がすぼまっている状態の時に軸の途中で切り取ってください。

中芽切り

中芽切り後の状態

中芽切りは多少の枝の間延びは避けられませんが、ある程度枝に力を付けながら伸びを止めたい場合には有効な方法。

枝を伸ばしたい場合や、太さを得たい場合は敢えて時期を遅らせることがあり、芽摘みを補佐する意味で行うといいでしょう。

五葉松は黒松などのように2番芽が吹きにくいので普通芽切りはしないのですが、前年枝がそのまま放任状態になっているような素材で、秋からの肥培が充分なものも3月頃にも中芽切りができます。

八房系品種の芽摘み

八房五葉松の芽

八房種の芽(5月)
伸びてもこの程度で芽摘みの必要がない

「九重」「明星」の他、「那須娘」や「福娘」「葵」「茶臼」などの八房系の五葉松はミドリがほとんど伸びません。

伸びてもせいぜい数mm程なので芽摘みや剪定の必要もほとんどなく、何年経っても樹形が崩れないので小品盆栽向きの品種。

ただし芽吹き自体は旺盛なため、1カ所から多くの芽を出すものは芽数の整理が必要になる場合があります。

枝の強弱によって出る芽の数は違いますが、1箇所から4~5つの芽が出た場合は弱い芽を2~3個残して残りの芽は元から全て摘み取ってしまいましょう。

芽数の整理をしないと葉が混み生育に障害が出ますし、枝元がゴツくなって見た目がよくありません。

五葉松の古葉取り(7月~8月頃)

五葉松はなにもしなければ2年葉(古葉)や3年葉(古々葉)をつけたままの状態になります。

役目を終えたほとんどの古葉は秋になれば茶けて自然に落ちますが、盆栽として培養する以上、夏場の蒸れや風通し、採光の面を考えて早めに取り去っておいたほうが望ましいのです。

これを古葉取り(ふるはとり)といい、五葉松の他に黒松や赤松、錦松などにも行うことができます。

古葉取りは葉数を減らして通風や日照条件を改善する他に、樹勢を調整したりフトコロ芽を保護する狙いも。

適期は7月~8月頃で、新葉が固まりハカマに触れるとポロポロと落ちるようになったら順次行うことができます。

6月下旬から始める人もいればお盆過ぎからやる人もいるので、葉の混み具合を見て始めてください。

やりかたは一昨年に伸びた2年葉(古葉)や3年葉(古々葉)をハカマの部分を残してハサミで丁寧に切り取ります。ただし昨年葉を取ると樹勢を落とすことがあるので、下向きに出た葉や針金かけのための部分的な除去を除き、よほど葉が込んだ状態でなければ残しておいたほうが安心です。

1本ずつ指で引き抜くやり方もありますが、樹皮を傷付けることもあるので鋏が無難。胴吹き芽が欲しい場合は古葉を少し残しておくと芽を呼ぶことができます。

古葉取りはモミジのハカマ取りや葉すかしと同じ原理で、新梢への吸い上げが弱まる分、伸びが抑えられる効果があります。

五葉松の新葉取り(7月~8月)

五葉松の新葉取り

新葉が間延びしてボサボサになった状態

五葉松の古葉取りは仕立ての上で欠かせない作業ですが、逆に古葉を残して新梢の葉を取る方法もあります。

前年に古葉取りや葉すかし等の調整をしなかったものは、芽に勢いがついて葉が長くなってしまうことも。

芽摘みや古葉取りなどをきちんとやれば元の葉性に戻りますが、再び見られるようになるまで1~2年は要してしまいます。

このような場合に新葉取りをすると葉のバランスが即座に戻り、さらに翌年の葉が短くなる効果も期待できます。

五葉松の新葉取り

新葉取りの様子(左)と1ヶ月後の翌年芽(右)

時期は7月~8月頃。

新梢の葉が固まったらピンセットで長くなった新葉を全て抜き取ってしまいます。このとき古葉(昨年葉)も取ってしまうと樹勢が弱り枝枯れしてしまうので必ず残してください。

新葉取り後、一ヶ月もすれば抜いた跡に翌年芽が複数形成され、残した古葉の元部分にはところどころ胴吹きも見られるようになります。

新葉取りをしているうちは葉の更新がなく、繰り返しできる作業ではないので翌年からは通常の芽摘みや芽数の調整をしてください。

五葉松のもみあげ(10月~11月)

各枝をすっきりさせ全体の葉性をこんもりと充実させるために、秋になったらもみあげという作業を行うこともあります。

適期は10月~11月頃。

今年伸びた葉を先から半分ほど残して鋏で切り取ってしまいます。

黒松の芽切り後の葉すかしや葉抜きと同じ原理で、葉数を減らすことで翌年芽の力を抑える効果も期待できます。

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コメント

村中 さん 2019年06月27日17時59分
いつも勉強させて頂いています。
五葉松についてお聞き致します。小品盆栽として一昨年購入し、昨年は新芽も出ず殆ど成長を認めませんでしたが、肥料を与えたせいか今年になりましたら新芽が出てきました。
ご説明の文章からろうそく目ではなく、こんぺいとう芽のようです。(写真を同封いたします)
黒松のような目切りをしようかと考えましたが、「キミの盆栽びより」読ませていただき実施しようとしましたが、今だやり方が分からず本日まで延び延びになり、目切り作業が遅れたようです。説明内容から中目切りを実施したらいいのでしょうか。
しかし、「新梢の葉が開く直前、まだ葉先がすぼまっている状態の時に軸の途中で切り取ってください。」と説明文にありますが、私の場合は開いてしまっているようです。どのようにしたらいいのでしょうか。よろしくご教授お願いいたします。
きみ さん 2019年06月29日11時25分
村中 さんへ
こんにちはいつもありがとうございます。
写真をみる限りですと、葉は長いものの芽自体は伸びていないので芽摘みは必要ないかもしれません。
もう少し他の芽も動いてきて葉も固まってきたら古葉を取ってください。
針金かけで基本の形を作って盆栽に近づけましょう。
村中 さん 2019年06月29日14時28分
きみさん。分かりました。このまま芽摘みはしないで、葉が固まってくるまで待ちます。
葉が固まってきたら、古葉を取りたいと思います。針金かけもやってみますね。
盆栽は分からないことが多くて不安です。また何かありましたらよろしくアドバイスをお願いいたします。
水谷 さん 2020年04月29日17時56分
五葉松にピンクの芽 病気ですか
きみ さん 2020年04月29日20時38分
水谷 さんへ

これは花芽なので病気ではないです。
今の段階でピンセットで摘み取っておいてください
水谷 さん 2020年04月30日17時55分
お返事有り難うございました。元気のない五葉松と言われていたので、心配していました。初心者なので
また宜しくお願い致します。
樹 さん 2021年06月06日12時09分
いつも楽しく拝見しています。
写真の五葉松についてアドバイスをいただけますでしょうか。
今年の新葉がかなり大きく伸びてしまいました。水や肥料のあげすぎかなと思いますが、新葉取りなどで対応した方が良いでしょうか。
また、金平糖芽かなと思っていたら頂部の芽が少し伸びてしまいました。背は大きくしたくないのですが、中芽切りをすべきものか、それともかのくらいは成長分として割り切ってよいものか教えてください。
きみ さん 2021年06月06日16時40分
樹 さんへ

新葉を抜くのは樹勢を落とす危険もあるので、この樹の持ち込みが浅いのであればやめておいたほうがいいと思います。写真のぴょんと伸びたのを数カ所抜くくらいなら支障ないでしょうが、生長期の五葉松はこういうこともよくあることです。

優しく見守って、元芽が吹いたり葉すかしできるタイミングでとればいいと思います。

中芽切りくらいは全然できますし、新葉を抜くよりは負担もありません。ちょっと遅いですが、やっておかないとどんどん強くなので、今のうちに止めておいてください。
樹 さん 2021年06月07日21時38分
勉強になります。長い葉は見守ることにします。
アドバイスありがとうございました。
太田佳吾 さん 2021年10月04日20時09分
こんばんわ

古葉落としについて質問させてください!

アドバイスで古葉落としをした方がいいとの事でしたが、イマイチ古葉と今年葉の違いがよくわかりません(T-T)
いろいろ画像やYouTubeなどで調べてみたのですが明確な答えが見つかりません。

自分なりの答えとすれば
①葉の色がライトグリーンや黄色の葉
②葉の付いている所が茶色ではなく幹と同じ色をしている所の葉

の、二つしかわかりません。

他に見分ける方法はありますでしょうか?
また、古葉ではないが抜いた方が良い葉などありますでしょうか?

度々の質問すいません。
きみ さん 2021年10月05日07時14分
太田佳吾 さん へ
この写真で見る限り、古葉はきちんと整理されているようなのでなにもすることないみたいです。
今葉がついている部分は今年伸びたところで、下の枝は2年枝とか3年枝といわれる部分なのですが、ゴヨウマツはなにもしないとその古い枝にも古い葉を付けたままです(2~3年もすればぜんぶ自然に落ちると思う)。

元気付けるために伸ばしっぱなしにしたような若い素材などは、写真みたいに、古い葉のところにも葉がたくさんついています(ヘタですみません)。

今の感じですと葉も込んでいませんし、そもそもあまり芽が伸びない性質なのかもしれません。
太田佳吾 さん 2021年10月05日20時00分
ありがとうございます!

前の持ち主が古葉整理してから売りに出したんですかね…
古葉落としは来年からのお楽しみにしようと思います☺️

この子は芽が伸びにくいのですね…
芽が伸びにくいという事は新たに枝になる所ができにくいという事ですよね?
何か芽をたくさん出させる方法などありますか?

もう少し大きくしたいので教えていただいた通り少し大きい鉢に入れ枝を間伸びさせ懐芽をださせるしか方法はありませんかね…
きみ さん 2021年10月08日07時20分
太田佳吾 さんへ

芽をたくさんださせる画期的な方法はわかりませんが、、樹勢がつけば土用の頃に芽を持つことはよくありますし、葉が込めばすかしてあげたり、葉水をあげたり、とにかく環境をよくしてあげればそれなりに樹は反応してくれると思います。

ゴヨウマツはもともと成長おそいですしそれが良いところでもあります。わたしもときどぎ枯らすのでまずは枯らさないようにのんびりやってもぜんぜん追いつきますよ^^
太田佳吾 さん 2021年10月10日16時31分
アドバイスありがとうございます!

この記事やYouTubeを参考に気長に盆栽ライフをすごしてみようと思います!

またいろいろと質問させてください(*´꒳`*)
樹 さん 2021年10月27日21時45分
五葉松について教えてください。今年の夏吹かなかった芽(蕾のような状態)は来春に芽吹くものですか?昨年葉を残していたのですがだいぶ茶色くなり取れそうな状態です。芽吹かないなら剪定することも考えている枝なのでアドバイスお願いします。
きみ さん 2021年10月28日07時53分
樹 さんへ
ゴヨウマツは一年に一回しか芽吹きませんから、夏にでた芽(土用芽)は来年から動き出す感じだとおもいます。
古葉はそのままだと2年くらいはついたままですが、茶色くなっているということですし古葉取りしておいたほうが良いですね(夏頃やっておいたほうが良かったかも)
樹 さん 2021年10月28日12時18分
早速ありがとあございます。
聞き方が悪かったのですが、土用芽ではなくて普通の芽です。春に他が芽吹く中、そこだけ吹かなかった芽です。他の場所は古葉とりしたのですか、そこは新葉がないので古葉を残しておきましたが茶色くなりました。
来年吹くことありますかね?
きみ さん 2021年10月29日13時49分
樹 さんへ
たとえば、強い芽をそのままにしているとフトコロの小さい芽は動かずにそのまま眠ってしまうことはあります。
そのため芽摘みや古葉取りなどをして強い枝の力を抑えて、フトコロ芽を吹かせることも大事と思います。
芽がしんでいないのなら、諦めずに残しておいてもいいですし、どうせ要らない枝なら、剪定しておいたほうが必要な枝は守られることになります。

<他の場所は古葉とりしたのですか、そこは新葉がないので古葉を残しておきましたが茶色くなりました。
来年吹くことありますかね?

新芽ものびてなくて古葉も枯れたなら、それは「芽止り」してしまった状態で、そのうち枝ごと枯れてしまうと思います。
二階堂 さん 2022年04月01日17時51分
質問です。
先日五葉松の針金掛けをしていた際、手が触れて芽がポロりと落ちてしまいました…。
こうなるとその枝での今年の新葉が出ることはないのだとは思われますが、来年にでも新しい芽が吹くことはあるのでしょうか?
それとももうその枝に未来はなく枯れるだけなのでしょうか?
きみ さん 2022年04月02日09時34分
二階堂 さんへ

ゴヨウマツは芽吹きがあんまりよくないので、クロマツのようには芽がでないこともあるかもしれないけど、樹勢が充分であれば出ることもあります。

明らかに枯れてしまったら仕方ないですが、枝に古葉が残って居いて、水が上がっていれば期待できるので気長にまっていてもいいのではないでしょうか?
二階堂 さん 2022年04月04日18時24分
ありがとうございます。

気長に待とうと思います。
二階堂 さん 2023年02月19日04時30分
質問です。
このページに書いてある「新葉取り」とはいわゆる「多芽法」の一種と言っても良いものなのでしょうか?(メカニズム的には似たようなものだと感じます)
きみ さん 2023年02月19日16時37分
二階堂さんへ


こんにちは‼多芽法といっていいのか分かりませんが、考え方は二階堂さんのおっしゃる通りだと思います。
新葉の葉(生長点の勢い)を押さえることでフトコロに芽を作らせるのが狙いです。
しっかり肥培して元気なものに出来る作業で、完成木にやると樹勢が落ちることもあるので難しい所です。