梅擬(ウメモドキ)の育て方

投稿日:2014/03/02 更新日:2023/10/17(2)

梅擬(ウメモドキ)の育て方

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ウメモドキ(梅擬、学名:Ilex serrata)はモチノキ科モチノキ属の落葉低木。雌雄異株。

秋から冬まで赤い実を愉しめる実もの樹種の定番で、野趣に富んだその樹姿は活花や庭木としても人気があります。

モチノキ属では珍しい落葉性で、落葉してからの実姿が一際棚場や展示の席で目を引きます。

盆栽として作られるようになったのは明治30年代以降で、太りも早く、枝作りも容易で、また実の付き方が伸びた枝の先でなく、枝の元からびっしりと付くため、樹形をまとめながら実も眺められるという、盆栽として良い条件が備わっているところも魅力。

ウメモドキの仲間には赤実種の他に、葉や実が極小の矮性種「小性梅」、白実、黄実、絞り縞の実(源平)、大実種「大納言」などの突然変異種や園芸種があり、丈夫で育てやすいことから、園芸的にも愉しまれています。

1. ウメモドキの培養の基本

ウメモドキの管理場所

ウメモドキは本来、湿地や湿った林床など日陰~半日陰の環境に自生があるようです。

自生地の環境から考えると半日陰でも十分育ちますが、締まった樹を作るには十分な日照が欠かせません。

特に春は日当たりのいい場所に置き、枝の余計な徒長を抑えるようにしましょう。夏は日除けを設置して、葉焼けさせないようにしてください。

水切れさえ注意すれば夏越しは難しくありませんが、小鉢ものはとくに暑さの影響を受けやすいので注意が必要です。寒さにも強いですが、乾いた北風や凍結、遅霜に当てないよう、冬の保護は必要です。

ウメモドキの灌水

水を好む性質なので、生長期は十分な灌水が必要です。

軽い水切れなら落葉しても吹き直しますが、開花~結実までの間に一度でも水切れすると後の生育や実付きにも影響するので注意してください。

鉢の大きさや用土の配合にもよりますが、春秋は1日2回、夏は1日2~3回、冬は1~2日に1回(ムロ内)を基本に、表土が乾いてきたらたっぷりと水をあげるようにしましょう。

小鉢ものは乾きやすいので、夏の間は2重鉢や砂を敷くなどの対策をしたほうが安心です。

ウメモドキの施肥

ウメモドキは肥料を好む反面、根が細いために多量の肥料や濃い液肥で肥料負けや根腐れを起こしやすいところがあります。

特に春肥は枝の間伸び予防や花付き実付きにも影響しますので、控えめを心がけてください。

新芽が伸び始めてから置き肥を少量置き(植替えした場合は2週間ほどたってから)、実が固まり膨らみはじめる6~7月頃から少しずつ量を増やし、夏は中止して、充実期の秋(9月~10月頃)には再び十分に肥培してください。

秋肥はリン酸やカリウムの配合の多いものを選び、実持ちと冬越しのための力を付けさせるようにしましょう。

2. ウメモドキの病害虫と対策

エカキムシ

エカキムシに食害されたウメモドキの葉

柔らかい新葉にアブラムシがついたり、幹枝にカイガラムシが付いたりすることがあります。

また、葉が固まる頃になると、ハモグリバエやハモグリガの仲間と思われる幼虫が葉の薄い皮下に潜り込んで、茶色の線を描きながら食い荒らすことがあります。

被害が大きいと見た目をかなり見苦しくしますし、光合成を阻害して後の生育に悪影響を及ぼしますから、見つけたら潰し、オルトランやダントツ水和剤などの浸透移行性の殺虫剤を散布して予防してください。深刻化する病気はほとんどありませんが定期消毒はしておきましょう。

実は10月下旬~11月頃になるとヒヨドリやツグミ、メジロが好んで食べるので観賞を控えているものは鳥かごやネットなどで保護した方が安心です。

3. ウメモドキの適期作業

ウメモドキの作業暦

植替え(2月中旬~3月)

ウメモドキの根

植替えの最適期は芽動き前の3月頃で、ムロで管理していれば2月からでも問題なく行えます。

綿状の細かい根が鉢中に回るので、根洗いをして古土を全て除去し、全体の1/2~2/3を目安に鉢周りや幹下の強い根からしっかり処理してください。

根洗い

根の細かいウメモドキは、根処理後に根洗いもして古土を落としましょう。

根の生長が早いので、完成木でも毎年植替えが必要です。若木のうちは強く伸びる太根や巻き根もあるので、元をたどって元から処理し、細かい根が広がるようにしましょう。

走り根を予防するため、用土は粒の細かい(極小粒~細粒)赤玉土を基本に、桐生砂や日向土などを2~3割ほど混ぜて排水性もよくしておいてください。

春に植替えが出来なかったものは9月中旬~10月中旬頃も可能ですが、春ほどの根処理はできないので、根腐れをしていないようなら竹串や千枚通しなどで水通りの改善をし、植替えは翌春まで待ったほうがいいかもしれません。秋に植替えても落果の心配はほとんどありませんが、やはり切りすぎは禁物で、あまり遅くなると冬越しにも影響しますから注意してください。

開花と受粉(5月中旬~6月頃)

ウメモドキの人工交配

ウメモドキの人工交配(左がオス花で、右が実の成るメス花)

雌雄異株なので交配用の雄木が必要です。

雌雄株を近くに寄せておけば自然交配もできますが、ふでなどで雄花の花粉をとり、人工交配させたほうが確実で、均一な実付きになります。オス株が大きければ(花数が期待できれば)1本で何本も交配できますが、花粉が十分取れない場合は人工授粉を頑張りましょう。

交配がきちんとできれば花の数だけ実がなるので、観賞に備えて徐々に実数を調整していきましょう。

開花調整

毎年、雄木(雄花)の開花がやや早く、メスが咲いた時には花が終わって交配が間に合わないということがあります。

花は一斉には咲きませんから、交配株が大きければ(蕾の数が多ければ)問題ないですが、そうでない場合は雄木を棚下(日陰)に置いて開花を遅らせたり、メスの蕾に霧吹きをかけて開花を早めたりすることで開花のタイミングを早めたり遅らせたりすることができます。

どうしても間に合わない時は、花粉をガラス容器などに乾燥材と一緒に入れ、一般家庭の冷蔵庫で2~3日くらいなら保存できます。

花粉の保存

雌花が咲く前に雄花が咲き終わってしまいそうな時は、容器に花粉と乾燥材をいれて冷蔵庫に保存してみてください

ちなみに、他の樹種でも共通して言えることですが、オス木は幹模様が優しく、盆栽に合う木振りですが実は付かないのが残念なところ。暴れる枝振りのものがメス木と言われています。

実は1月いっぱいまで観られますが、できれば年内~遅くとも年明けには全て摘果して樹勢を落とさないようにしてください。毎年実を成らせるとだんだん樹が弱るので、2~3年に1度は休ませるようにしましょう。

芽摘み(養成木5月~6月頃、完成木4月~5月頃)

ウメモドキの芽摘み

ウメモドキの芽摘みは養成木と完成木で目的や方法が異なります。

ウメモドキは芽の伸びが早いので、花を期待せず樹形作りが目的の若木なら秋までに2~3回の芽摘みが出来ます。完成樹の場合は実を付けさせることが第一なので、新芽が伸びる度に芽摘みをしていては花芽がつきません。

養成木の芽摘み

枝作り段階の養成木の場合は、雑木類の芽摘みと同じ要領(伸びたら摘む)と考えればOKです。

芽吹きのいい樹なので、伸びたら摘む作業を生長期の間に3~4回行うことができます。

全ての枝が同じ勢いで伸びてくるわけではないので、5月上旬~6月頃に新梢が10cm(葉が6~7枚)くらいに伸び止まった頃に2~3節まで切り戻し小枝を増やしていきましょう。特に勢いの強いものは6月~7月頃に葉刈りと一緒に行うこともできます。

枝元を太らせたい場合は、芽押えで抑制しつつ、必要なところで切り戻し樹形を作っていくようにしましょう。

完成木の芽摘み

完成樹の場合は、できるだけ多くの花芽を付けさせることが大事です。

ウメモドキの花芽は春最初に伸びる新梢(一番枝)に多くつくため、来年の花芽を多く付けさせるためには一番枝をできるだけ残す必要があります。そのため養成木のような芽摘みを繰り返し行うと、枝は出来ますが来年の花芽はほとんど期待できないので注意してください。

作業適期は養成木よりもやや早めの4月~5月頃。春から強く伸びる新梢(1番枝)は、1~2節、2~3節と摘まずに、柔らかい芽の先だけを摘んでおいてください。

摘まれた枝の先から次の芽が伸びてくるので、その部分を再び詰めて抑制しておきます。全体的には樹形は崩れますが、強い枝を残しておくことで周りの枝の勢いが抑制され、それが短枝となって来年多くの花芽を付けることができます。

切り残しておいた枝は芽動きが止まる秋(10月末頃)になったら1~3節のところで切り詰めるか、不要なら元から剪定しておいてください。

完成木の芽摘み

来年実を観たい場合(半完成木~完成木)の芽摘み

剪定(10月~12月、2月~3月)

ウメモドキは太りが早く芽吹きもいいので、剪定は「必要な太さになったら切り戻す」のが基本です。

全体を整える剪定は落葉後~休眠期間中(厳寒期を避ける)で、吹かせ直しや太枝の剪定は、春の芽出し前(2月~3月上旬頃)に行った方が安全です。

太枝を剪定したらできるだけ滑らかに削り直し、保護剤を塗って綺麗な肉巻きを目指しましょう。

実を観賞するために長めに残しておいた枝は、観賞後に改めて芽の向きを見ながら1~2節、または2~3節のところまで切り詰め、不要枝も枝元から切り除いて、全体を整えておいてください。

ウメモドキは時々、幹元からヒコバエを伸してきますが、これを放置すると古枝が枯れやすくなりますから、不要なら地際で切り詰めておいてください。

針金かけ(5月中旬~6月頃、休眠期)

芽おさえは5月中旬~6月頃、全体の整枝は剪定と同じ10月~12月と2~3月

ウメモドキの芽押さえ

針金かけは若い枝のうちに済ませましょう。枝の先は切り戻してしまうことがほとんどなので、枝元1~3節の模様を大事に。樹冠はしっかり、横枝は流れのある模様付けをしましょう。

ウメモドキの枝は細枝でも比較的ポッキリと折れやすく、古くなるほど難易度は高くなります。そのため、できるだけ若木の段階で幹枝の模様を作っておくことが大事で、その基礎作りには新梢への芽おさえが効果的です。

芽おさえの適期は新梢の組織がやや固まってくる5月中下旬~6月頃。この時期の新梢は曲げやすく折れにくいので、初心者でも安心して行うことができます。

枝元にしっかり模様が入るように模様を入れ、枝を伏せるようにおさえてください。

ウメモドキの針金かけ

ウメモドキの針金傷は治りにくいので、心配な人は雑木のように紙巻き針金を使うとGOOD

作業後2週間もすれば針金が喰い込んでくるので、傷になる前に外し、必要に応じて芽摘みや切り戻し剪定をしてください。

2~3年枝くらいまでなら矯正可能ですが、芽おさえほどの操作性は低く、無理はできません。

古枝への針金かけは生長期(葉刈りと合わせて)でも可能ですが、樹へのダメージが少ない落葉(黄葉)前後~12月頃か芽動き前もいい時期で、生長期よりも長い期間かけたままにできるというメリットもあります。

4. 関連ページ

梅擬(ウメモドキ)の魅力

葉がウメに似ていることからこの名前が付けられ、日本には近縁種が数多く分布しています。中国や日本(本州~九州)の湿地や湿った林などに自生していて、庭木や公園樹とし……

コメント

カッパさん さん 2016年11月20日12時30分
梅擬のことよくわかりました。

  あと植え替えの、土質について、ご教授いただければ
   幸甚に存じます。

    現在5年物の樹高40cm幹太さ5cm位いの、盆栽です。
     菊大鉢に 植えていますが、小枝の芽吹きが少なく、実付きが悪く
     用土、剪定が原因かと思っています。

     粘っこい土と、腐葉土がよいとの事ですが、
      ①鉢植えの外形、深さは、何cm位い。  
      ②用土
        1) 粘っこい土について(粘土系?)
        2) 腐葉土の割合?  

                    以上
きみ さん 2016年11月22日11時23分
カッパさん
コメントありがとうございます。
ウメモドキの用土の配合は黒土に赤玉主体で腐葉土を混ぜたりしていいと思いますが
私は他の植物と同じで、赤玉7に桐生3、くん灰をすこし混ぜて使ってます。
腐葉土は細かくしないと私には使いにくいし、根詰まりしやすくなるので水はけのいい土にしています。

細根が多くでるので赤玉は粒径の細かいのがいいです。
カッパ さん さん 2016年11月22日20時16分
早速の、ご丁寧な 御助言 ありがとうございます。
 来年春 植え替え準備 してみます。

  御専門家のようなので、
   お伺いしますが、盆栽の木々の改良は
    実用新案、特許は適用されるのでしょうか。
きみ さん 2016年11月23日14時28分
カッパさん
私は専門家とかでなくただの趣味者の1人です(。・ω・。;)
ご質問の「盆栽の木々の改良は実用新案、特許は適用されるのでしょうか。」の意味もよくわかりませんでした...
え、トッキョ?
カッパ さん さん 2016年11月23日20時03分
そうなんです。
 特許(トッキョ)だれにもまねされない
  様に防御するために、許諾証を得ることです。

  木々に、異種の接ぎ木とか、寄木をして
   見栄えを良くする改良は、一般にされていますが
    A、木々を傷をつけたり、せずに、 
    本来の木を、同じよう「見栄えを良く」するために
    傷をつけない育て方で、改良することを、考えていますが。
    B,そのノウハウを模倣されないような、防御ができないかと。。。
                    
    参考として、記させていただきました。
     ありがとうございました。
     
シミズシンイチ さん 2017年10月13日14時28分
盆栽を始めたばかりです。赤い実がなっているウメモドキをいたた゜いたのですが、
雄木と雌木があり受粉しないと実がならないそうですが、雄木を手に入れるにはどんな所がありますか? 実がなっている木は交配しなくても大丈夫と言う人もいますが、正しい
答えを教えてください。よろしくお願いします。
きみ さん 2017年10月13日17時22分
シミズシンイチさん
初めましてコメントありがとうございました。
園芸品種も多いのでそのウメモドキをくれた人に聞くのが一番ですが、やっぱ雄木ないと実は付かないんではないでしょうか。
薬で結実させる方法もあるでしょうけど
雄木は盆栽屋さんに交配用の樹を置いていることもありますし、ネットでも売られているのをみたことあります。
お住まいの近くに盆栽園や大きな園芸店ないですか?
シミズシンイチ さん 2017年10月16日10時11分
ご教授ありがとうございました。花木センター等で、雄木を探して手に入れたいと思います。また、わからないことがあったらご指導いただけるとありがたいです。
sora さん 2022年11月10日09時42分
   キミ様 
いつもブログ、ユーチューブ拝見しています。
昨年実が一杯付いた大納言を購入したのですが、今年は花が咲いたのですが実が付かなかった、
①原因を教えてください
②この大納言を梅擬に挿し木したいのですが付くか教えてください。
  ユーチューブで実生1年の紅葉ケヤキどうなっているのか見せてください。
  お忙しいところ恐れ入りますがよろしくお願いします。
きみ さん 2022年11月11日09時28分
sora さんへ

いつもありがとうございます^^

>①原因を教えてください

オス花ときちんと交配をしても付かなかったということなら、わたしにも原因はわからないです...
以前、違う方から同じようなご質問を頂いて、よくよく聞いてみたら、雌花同士で受粉していたり、雌しべに付けていなかったなどありましたので、どのような状況かをもう少し教えてください。

>②この大納言を梅擬に挿し木したいのですが付くか教えてください。

接木のことだと思いますが、比較的活着はしやすい樹種です。そんなに接木する機会もないので、参考になるか分かりませんが、私は接ぎ穂を接ぐよりも、回し接ぎのほうが失敗なかったです。

>ユーチューブで実生1年の紅葉ケヤキどうなっているのか見せてください。

リクエストありがとうございました!
sora さん 2022年11月11日17時18分
   キミさんへ
  お忙しい中回答ありがとうございました。近くに雄木があったので特別に受粉させなったので、 花が咲いても実がつかなっかのでしょうね。来年頑張ってみます。
②挿し木でなく接ぎ木の間違いです。
 これから寒くなりますが頑張ってください。