ムラサキシキブ(紫式部)の魅力

投稿日:2015/02/11 更新日:2023/06/09(7)

ムラサキシキブ(紫式部)の魅力

本ページに記載の商品・サービスは広告を含むことがあります。

ムラサキシキブ(紫式部、学名: Callicarpa japonica、別名:ミムラサキ、コメゴメ)はクマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。

日本を始め中国、台湾、朝鮮半島に自生し、日本では北海道から沖縄まで広く分布しています。雑木林やや明るい林床、林縁などに普通にみられ、紫色の美しい果実と、黄色した葉とのコントラストが秋を感じさせる定番樹種です。

ムラサキシキブの紅葉

秋には黄葉するものがほとんどですが、条件や性によっては紫色に色づくものもあります。

名前の由来には諸説あり、実のなる樹種の中では意外と珍しい紫色の果実を、「美女」として名高い歌人、紫式部に例えた説はよく知られています。他には、紫色の実がびっしりと付いている様子から呼んだ「紫敷き実(むらさきしきみ)」や「紫茂実(むらさきしげみ)」が訛化したという説もあります。

ムラサキシキブは日本やアジア圏に自生している樹種ですが、海外の愛好家に高い人気があります。学名のCallicarpa japonica(カリカルパ ジャポニカ)はギリシャ語で「日本の美しい果実」という意味があり、英名はJapanese beautyberry。実もの樹種としては意外と珍しい紫色の小さな実や、控え目ながらも目を引く花姿に、日本の盆栽としての見どころを感じさせるのかもしれません。

性質は丈夫で培養や挿し木も難しくないので、初心者でも育てやすい樹種です。

実の他にも、秋の黄葉(条件によっては紫に色付くことも)や落葉後の裸芽の姿も趣があって十分に眺められます。

1. ムラサキシキブの特徴

ムラサキシキブの花と受粉形式

ムラサキシキブの花(拡大)

ムラサキシキブの花。花冠から突き出した雄しべの「やく」は上に穴が空いている。雌しべは少しねじれながら横を向いて伸びている

花期は関東ですと5月中下旬~7月頃で、対生の葉の葉腋に5mm程の小さい花がまとまって咲きます(集散花序)。

ムラサキシキブの個々の花は漏斗形で、色は優しげな赤紫色。花冠からは黄色い「やく」が先端に付いた4本の雄しべと、触手のようにすこし曲がって伸びた雌しべが飛び出しています。

花粉が入った雄しべの「やく」は細長く、しかも上だけに穴が空いた袋の状態で花粉が収納されていて、風や昆虫の接触などの単純な刺激では花粉が飛散しにくいような構造になっています。

ムラサキシキブは虫媒花ですが、その受粉を助けているのは主にミツバチの仲間のマルハナバチで、高い震動数を持つマルハナバチの羽音によって雄しべが共振し、穴から花粉が飛び出して受粉が可能になる(震動受粉)と考えられています(※参考:森・樹・花・実の自然誌、ムラサキシキブの花の秘密より)。

盆栽のムラサキシキブは花が咲いても実が成らない・実が成ってもまばらに付くという印象を持つひとも多いかもしれません。

ムラサキシキブの花

ムラサキシキブの花は7~8節に伸びた新梢の中程~先端につき、枝元から順に開花していきます(写真はコムラサキ)

ムラサキシキブの個々の花は1~2日もすれば終わってしまいますが、枝元に近い方から先端に向かって順次開花するため、1つの株に満開の花序もあれば、既に花が終わったもの、まだ蕾のものなど開花のタイミングにはタイムラグがあることに気付きます。

受粉を特定の昆虫の飛来に頼る虫媒花植物にとって、開花のタイミングに同調性を持たせずにずらすことは、株全体の開花期間を長め、結果的に受粉の成功率を上げているようです。

美男カズラやロウヤ柿、姫リンゴ、アケビなど、受粉を虫に頼る虫媒花的な盆栽樹種は意外と多いのですが、特にムラサキシキブの花の構造は人工授粉が難しく、それに加えて自家不和号性の性質もあるため、人の手で花の数だけ実を成らせるのは至難の業かもしれません。

ムラサキシキブにはいくつかの変種や園芸品種があるので、開花中は近くに寄せておき、虫の飛散を待ちましょう。鉢をゴムハンマーで軽く叩いて花粉の飛散を助けようとする人もいますが、どのれくらいの効果があるかは不明です。

実付きのいい性の品種もあるので、花数を十分に確保すれば実をたくさん成らせることも可能です。

ムラサキシキブの種類

流通している「ムラサキシキブ」のほとんどは「コムラサキシキブ」

ムラサキシキブ(Callicarpa japonica)には変異種や園芸種が多くあり、流通の都合で総称的な名として呼ばれることがあります。園芸店で扱っているムラサキシキブのほとんどは、実は近似種のコムラサキシキブ(Callicarpa dichotoma、別名:コムラサキ、コシキブ)です。

両種は見た目がとてもよく似ていて、流通上はコムラサキも含めてムラサキシキブとして販売されていることが多く混同されやすいのですが、2つは別種で、多くの点ではっきりとした違いがあります。

ムラサキシキブは樹高2~3mになるのに対して、コムラサキはその半分程度の樹高でまとまり葉もコンパクト。実の付き方も、ムラサキシキブはまばらに付くのに対して、コムラサキのほうが枝にびっしりととまるため、小型で実付きのいいコムラサキが一般に好まれ、多く流通しています。

ムラサキシキブの個々の花弁は4~5mm程の漏斗形で、色は鮮やかな赤紫色。花冠からは黄色い「やく」が先端に付いた4本の雄しべと、さらにその先に、触手のようにすこし曲がって伸びた雌しべが飛び出しています。

コムラサキの花もほぼ似た形ですが、より全体に小型で、花色はムラサキシキブよりやや優しい色合い。

雄しべの軸の色も淡い紫色で、ムラサキシキブのような湾曲がなく長さは短めです。「やく」もムラサキシキブほど細長い形ではなく、少しの刺激でも花粉が飛散しやすくなっています。

ムラサキシキブの葉

もう1つの見分け方は葉の形で、ムラサキシキブは葉の縁全体に鋸歯があるのに対して、コムラサキの葉は少し巻いていて、半分から先端部分にだけ鋸歯を持ちます。

また枝の付き方も、ムラサキシキブは立ち性で上や横にまっすぐ伸びるのに対して、コムラサキシキブの幹枝は細く、枝垂れるような姿に落ち着きます。

その他、毛(星状毛)や腺点の有無、葉の大きさ、花色など細かい違いがありますが、同じ株の枝でも葉形に変化が多く、さらに中間種や変種も多く存在するので明確に見分けるのは少し難しいかもしれません。

ムラサキシキブの枝の毛の有無

毛深いイヌムラサキシキブとコムラサキシキブの枝。前者は枝の毛(星状毛)の他、葉裏にも細かい毛があり触ると少しザラザラします。

盆栽でも小さくまとめやすく実もまとまってつきやすいコムラサキを好んで使うことが多いのですが、まとめてムラサキシキブとして飾ったり流通したりしたため、混同してしまうことも多いようです。

ムラサキシキブの仲間には、海岸型の変種「オオムラサキシキブ」や暖地性の「ヤブムラサキ」、ヤブムラサキとの雑種の「イヌムラサキ」の他、葉の小さいコバムラサキシキブ(Callicarpa japonica Thunb. var. japonica f. taquetii (H.Lev.) Ohwi)、白実の「シロシキブ」(Callicarpa japonica Thunb. var. japonica f. albibacca H.Hara)、白実のコムラサキ「和名:シラタマコシキブ、別名:シロミノコムラサキ」(Callicarpa dichotoma var. albifructus)、ピンク実の「モモシキブ、別名:ピンクパール」、一才性(一才コムラサキ、見沼ムラサキシキブ)、驚くべき実付きの「中吉小吉(なかよしこよし)」など、変種や雑種、園芸種が多様にあります。

培養にはもともと日本各地に自生があるムラサキシキブやコムラサキが向きますが、南方系や暖地性の品種も丈夫で、環境変化への適応力も高く、庭木や園芸的な扱いから盆栽仕立てまで愉しむことが出来ます。

2. 関連ページ

ムラサキシキブ(紫式部)の育て方

植替えの適期は、芽動き前の春先。今年植替えする予定であったもので、うっかり適期を逃したものは梅雨頃に葉刈り剪定と合わせた植替えもできます。根の成長が早くすぐに根……

コメント

この記事へのコメントはまだありません。