真柏の針金掛け

更新日:2019/11/14

真柏の針金掛け

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針金掛けに強く、盆栽の基本樹形に捕われない自由な造形が許されている真柏は、松柏類の中でも特別な位置付けにあります。

有名な産地やその他の自生地でも、強風や落石、落雷などで風化して白骨化した幹枝や、厳しい環境で捩れたり折れたりして人知を超えた樹形となった古木が見られます。

真柏の針金掛けは、仕立てる人のセンス次第で盆栽としての価値が決まります。

技術面だけでなく、沢山の自然樹の姿をよく観察したり、盆栽展でたくさんの銘木を見に行って審美眼を磨くことも大事です。

真柏の性質と針金掛けのポイント

真柏は針金矯正による回復力も強いので、適期であればかなり強い曲げ付けでも耐える事ができます。

むしろ強風や潮風、痩せ地や岸壁など厳しい環境で育つ真柏を表現する場合は特に、神や舎利を入れた曲線を出したほうが真柏らしい姿になります。

真柏の場合、枝先までしっかり針金を巻くことが大事で、これができていないと枝がうまく振れません。針金は手で巻くよりもラジオペンチやヤットコを使うと枝にぴったり付き、細かいところまで巻けるので練習してください。

松柏類は一度針金を掛けると数年はそのままの場合が多いので、針金が交差したり緩んだりしないように見たの美しさも意識してください。

曲げる程度は樹皮が多少裂けるくらいなら平気で、年数の経った樹でも矯正可能ですが無理は禁物。

針金が巻きづらい場合は引っ張りや吊るしなどで枝向きを矯正するなど、数年かけて徐々に畳み込み、完成を目指してください。

針金も、アルミ線よりも銅線のほうが動かず巻き上げやすいです。太い銅線は慣れないとやや使いづらいですが、細枝用の銅線は持っていると重宝します。

真柏に向く樹形

真柏は盆栽の基本樹形の域に留まらず様々な姿に仕立てることができます。

主木として天に配する場合はどっしりした幹に枝が左右後ろに配られた模様木がメイン。太幹の素材が手に入れば、舎利の彫刻美を大きく魅せる樹形に作るといい樹ができます。また細幹の斜幹や文人など、「お茶が飲める樹」と賞されるような軽妙で優しい樹形にしても存在感があります。

真柏は舎利や神を入れることで更に風格がでるので、不要な枝を神にしたり、板幹、板神など自由な発想でデザインできます。

ただし、あくまでも自然の造形を表すものですから、芯や樹冠、流れを意識した盆栽樹形の基本は押さえておくこと。

単独で見るのではなく、生育環境や景色が想像できるような樹形作りを念頭に整枝に取りかかってください。

真柏の針金かけの時期

真柏の針金掛けの適期は10月~3月頃で、新芽の動いている時期以外ならいつでも掛けることができます。

秋以降の矯正は樹液の流動が抑えられるため、針金掛けによる損傷も少なくすみます。休眠期は形成層と木質部が密着しているので枝が折れにくく、樹皮も剥がれにくいのです。

太幹や枝への強い矯正は、新芽が動き出す前の2月下旬から3月頃がよいですが、秋の矯正でも冬の管理に注意すれば強い癖付けをしても支障ありません。

強く曲げたものは冬に備えて早めの保護をしたり、霧吹きで葉水をして樹勢回復を助けましょう。

ただし厳寒期(12月~2月上旬)の針金掛けは樹の回復力が低下している時期で、しっかり保護しないと寒害を受けやすいので控えた方がいいです。

若木と古木の針金掛け

針金掛けへの考え方ややり方には人によって違いがあり、どれが正しいということはありません。樹の性質を活かした無理のない矯正が前提ですが、針金掛けはやるならしっかり効かせることが第一です。

特に矯正に強い真柏の場合は、思い切った矯正をしないといつまでも素材の域を脱することはできないので、最小限の負担で効果的な矯正が出来るようになりたいものです。

若木の針金掛け

若木(苗木)の場合の針金掛けは、基本樹形を作るための幹や役枝の矯正が主です。

軽い曲が付いていて、枝も沢山ついている元気な素材を見つけたら、素材の特徴をよく観察して大まかな樹形を決め、不要枝を剪定して樹形の軸となる幹模様を作ります。

不要枝は思い切った剪定が必要で、あまり枝を残していると全体像が見えにくくていけません。枝は多少徒長していても曲げ込んでたためるので、枝先の葉群を残し、フトコロの杉葉や弱く伸びた葉は元から整理してしまいましょう。

樹形にもよりますが、幹を強く曲げる場合は先に全ての幹枝に針金を巻いておき、幹の舎利入れも済ませておくといいでしょう。強く曲げた後では樹皮を剥がしにくく、綺麗な流れの舎利入れが難しくなります。

幹の矯正が終われば次ぎは枝を曲げます。芯を軸に左右、後ろにバランス良く枝が配置されるように枝を曲げながら下げ、先へ行くほど枝が広がるようにします。

不要枝を剪定したことで最初はやや寂しい枝になるかも知れませんが、肥培し芽摘みを丁寧に繰り返すことで次第にこんもりと葉ができてきます。

基本樹形はこの段階でほぼ出来上がりますが、長い培養の中で構想が変わることもよくあることです。胴吹きを活かせば更に小さくすることも可能で、芯の立て替えや改作なども視野にいれた培養をしましょう。

針金掛けと舎利入れ

舎利入れは生きた幹の一部を人工的に剥いだり彫刻したりして、吸い上げを破壊するので樹に負担がかかります。

真柏の場合は吸い上げが1/3程残っていれば生きていけますが、一度に広範囲の組織を失うと枯死する可能性があるので、樹形のある程度出来上がった樹に時間をかけて舎利入れをして仕上げていきます。

真柏の舎利入れ

成長期は樹皮が剥けやすい

舎利入れの適期は6月頃で、吸い上げが盛んな成長期は形成層と木質部に隙間があるので手で引っ張るだけで簡単に剥くことができます。

休眠期の針金掛けと一緒に行うこともできますが、針金掛け後の回復を待ってから成長期に舎利を入れるのが1番負担がかかりません。

舎利を入れた幹はそれ以上の肥大が期待できず、舎利の部分が硬くなってその後の矯正も出来なくなるので、樹形が固まってからの舎利入れの方が失敗も少ないです。また曲げた後に肥大させて幹を癒着させたい場合も舎利はいれないほうがいいです。

ただ、前述したように先に幹を強く曲げ固めてしまう場合は、後から綺麗に彫刻刀等を入れるのが難しくなるので、曲げる前に舎利を入れたほうが都合がいい場合もあります。

舎利を入れたり枝を強く曲げる場合は樹の負担も増すので、保護用に接木テープを巻くことも忘れずに。「接木テープ」を幹に巻いてから曲げれば折れにくく、傷の保護にもなります。

接木テープは半年~1年ほどで外してください。

完成樹、古木の針金掛け

古木(完成に近い樹)では主幹や役枝の矯正は終わっている段階なので、強い針金掛けは必要としません。

ほとんど芽摘みと剪定だけで樹形維持ができるようになるので、全体を乱すような枝や枝先の補助的な矯正に針金を使うくらいで済むようになります。

しかし一度完成した樹でも、日々の成長の中で樹形も変化し、芯の立替えや大きな改作の機会がやってくるかもしれません。

樹形維持も大事ですが、日々自身の技術や審美眼を磨き、よりいい樹を目指す姿勢が大切です。

松柏類の主要樹種の針金掛け

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