黒松の針金掛け
更新日:2019/10/29
樹勢の特に強い黒松は、芽摘みや剪定だけでは樹形が思うようにまとまらないため、針金掛けが整枝目的以上に重要な役割をします。
針金で各枝を曲げたり下げたりすることで全体の力が均等化し、採光や風通しなどの環境も改善されることで各小枝を育てる狙いもあります。
黒松の性質と針金掛けのポイント
黒松は針金矯正による回復力も強いので、適期であればかなり強い曲げ付けでも耐える事ができます。
むしろ強風や潮風、痩せ地や岸壁など厳しい環境で育つ黒松は、優しい樹形よりも強い曲を付けたほうが松らしい姿になります。
幹が太り樹皮も荒れる黒松は、成長の過程で幹模様が消えてしまうので、基本樹形は仕立て段階でしっかり曲げておいてください。
樹皮の一部が多少裂けるくらいなら全く平気で、年数の経った樹でも矯正可能ですが無理は禁物。
引っ張りや吊るしなどで枝を矯正するなど、数年かけて徐々に畳み、完成を目指してください。
黒松に向く樹形
黒松は素材によって様々な姿に仕立てることができます。
主木として飾られるため、模様木や懸崖、斜幹などに作られることが多いですが、締めて培養すれば文人風や寄せ植えなどにもできます。
ただ、黒松らしい剛健な姿を出すにはやはり軽妙な樹形よりもどっしりしたほうがよく、培養上も無理がないので素材の持つ性格をよく観察して樹形構想を練りましょう。
一度決めた樹形でも、培養の過程で姿が変わるものよくあることです。樹形の維持も大事ですが、時には芯の立て替えや改作も視野に入れてみましょう。
黒松の針金かけの時期
作業の適期は、10月~11月までと、2月下旬~4月上旬頃までです。
秋の矯正は休眠期に入り樹液の流動が抑えられるため、針金掛けによる損傷も少なく、ある程度樹形の出来上がった古木などに手軽く行うのに適しています。
太幹や枝への強い矯正は、新芽が動き出す前の2月下旬から4月上旬頃。
この時期が最も適している理由は、整枝後すぐに生育が始まるので癒合組織の形成も活発で、少々の損傷でも回復が早いためです。
厳寒期の針金掛けは樹の回復力が低下している時期で、寒害を受けやすく、損傷部はそのまま死滅あるいは樹全体の樹勢を著しく下げるので控えて下さい。
若木と古木の針金掛け
若木(苗木)の場合の針金掛けは、基本樹形を作るための幹への矯正が主です。
ただ若木は樹勢が旺盛なので、2~3年もすれば当初の姿も変形し、それに合わせて樹形を変更することもよくあること。
芯の立て替えや針金の掛け替えをしながら必要に応じて最も良いと思う樹形に直し、徐々に形を固めていけばいいのです。
古木(完成に近い樹)では主幹や役枝の矯正は終わっている段階なので、強い針金掛けは必要としません。
針金を掛けるとしたら小枝を中心とした樹全体を整えるための矯正で、小枝の先まで行き届いた針金掛けが求められます。
樹は古くなればなるほどフトコロ枝や新芽の伸びが弱くなり、通常の培養では下枝は枯れ、強い枝がどんどん伸びて次第に樹形を乱すことになります。
そこで強い枝には芽摘みや剪定、針金で押さえるなどして全体の力を均等化し、樹形を維持する必要があるのです。
松柏類の主要樹種の針金掛け
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