イチイ(一位)、キャラボク(伽羅木)の育て方

投稿日:2018年05月21日 更新日:2026/04/10(3)

本ページに記載の商品・サービスは広告を含むことがあります。

イチイ(一位、学名:Taxus cuspidata var. nana Taxus )はイチイ科イチイ属の常緑針葉高木。

鮮やかで肉厚な深緑色の葉と独特の紅い実が特徴で、刈り込みに強い丈夫な性質から、庭木や生け垣などにも利用されています。

本来、イチイは寒冷な亜高山帯に自生する寒地性の樹種で、天然生の樹は大変貴重ですが、イチイの変種のキャラボク(伽羅木、学名:Taxus cuspidata var. nan )は比較的暖地性の性質も持っていて、庭木にも利用されています。

両者を混合して同じ手入れをすると樹勢を落とすなど失敗しやすいので、培養や仕立てでは両者の性質の違いを抑えておきましょう。

イチイ、キャラボクの管理場所

イチイ-暑さに弱い、強い日差しを避ける

イチイは、北海道から九州(南部を除く)までの日本全国の山地、特に寒冷な亜高山帯に自生があります。北海道では標高の低い地域にも分布がみられます。

北海道~東北ではトドマツやエゾマツ、アカエゾマツ、コメツガ、シラビソ、モミなどと混生していたり、本州ではブナやミズナラ、カエデ類の中にポツポツと見られ、ブナ林の中の陰樹として存在しています。

単独で群生することはあまりありませんが、屈斜路(くっしゃろ)湖周辺などではまとまった林(オンコ林)が確認されています。

夏の間も樹勢を落とさず丈夫な樹ですが、耐陰性の性質があり強い日照は好まないため、管理を間違うと急激に弱らせてしまうことがあります。

特に梅雨明けから夏にかけては、ツバキやモミジと同じように日除けの下に置いて、強い日差しや暑さを凌げる環境作りをしてあげてください。

キャラボク-暑さ寒さにも強い、夏はイチイを同じく半日陰で

一方、キャラボクは、主に日本海側の山地に分布があります。亜高山~高山の尾根筋や岩場、山頂付近の風当たりが強い斜面、樹林下の半日陰など、イチイと共通して分布するところも見られます。

性質はイチイととても似ていますが、夏の暑さには強いので、イチイほどむずかしくないと思います。強い日差しを避けた明るく風通しのいい場所を確保してください。

暑さで弱りやすいイチイに対して、キャラボクはやや暖地性の性質もあり、都市部の暑さにも強いため、庭木としてはイチイよりも広く利用されています。

やはり盆樹としてはキャラボクよりもイチイの方が、厳しい環境で生きる姿や希少性から価値が高いようですが、イチイよりも暑さ寒さに強く丈夫で作りやすいので、初心者でも育てやすいと思います。

イチイ、キャラボクの灌水

どちらも水辺など湿潤な土壌環境を好む樹なので、水は不足のないようにしてください。

水や養分を吸う細い根がよく出る分、水切れに弱く、すっかり乾かしてしまうようなことがあると一気に弱ってしまいます。

ただ過水(特に夏)も根腐れの原因になるので、表土が乾いてきたらたっぷり水やりしてください。

比較的根が浅く張る性質があるようで、浅めの鉢にも合わせられますが、その分水切れしやすいので注意が必要。

春1日に1~2回、夏2~3回、秋1~2回、冬は2~3日に1回が目安で、葉水も樹勢維持に効果的です。

イチイ、キャラボクの施肥

どちらも湿潤で腐葉土が充分な土壌を好むので、肥料は適期に充分に与えるのがいいと思います。

とくに幹太りを期待する養成木の場合は、完成木の倍量を目安に肥料を効かせて、ボディ作り、枝作りをしましょう。

イチイはもともと成長が遅く維持しやすい樹種ですが、特に若木や挿木苗の初期の勢いは旺盛ですから肥培するには絶好のタイミングです。

梅雨と夏場を除いた春4月~5月頃と、秋9月~10月頃の間に月1~2回の間隔で、油かすなどの有機肥料を与えてください。

肥料が効いていて、芽摘みができていればフトコロ芽がたくさんできてくるので、その芽を活かしてコンパクトに作ることができます。

イチイ、キャラボクの作り方

植替え(3月中下旬~4月中旬頃)

どちらも芽動き前の春(3月中旬~4月)が植替えの適期です。

根は赤色をしていて細根も多くでますが、シンパクよりもやや太くちぎれやすいところがあります。

植替え作業中に残す根を傷めることがあるので、特に何年も植替えせずに鉢土が硬くなっているものは力任せに解さず、包丁などで周りを切り取った後、周りの根を少し解して植え付けしてください。

だいたい、全体の1/3程を整理できれば充分です。底根と株周りの根を崩してください。

頻度は成木で2年に1回を目安に。根の成長が旺盛な若木では毎年植替えが必要になる個体もあると思います。鉢は浅めの鉢にも入ると思いますが、無理は禁物です。

根の張り具合や樹形によっては浅鉢や小さい鉢にいれたくなるかもしれませんが、水切れのリスクもありますし、締まった鉢では樹勢がのらないので、無理のない大きさ(深さ)の鉢と合わせてください。

松柏類ですから合わせる鉢は焼き締めの泥鉢が定番で、少し彫りを凝らしたものや木瓜型と合わせるといいと思います。絵鉢なども案外合うかもしれません。

芽摘み(4月中旬~6月)

関東ではだいたい4月中旬頃、葉桜の頃から芽動きが始まります。芽動き後、2週間もすれば新芽も2~3センチくらい伸びてくるので、その葉や軸が柔らかいうちに新芽を半分~1/3程残して指で摘み取ってください。

放っておけば頭が強くなるので、上は強め(短め)下は弱め(長め)に摘むようにしましょう。

雑木のように芽摘みしたところから年内に2番芽が伸びてくることはないのですが、芽摘みすることでフトコロ部分の遅れ芽が動いてきます。

その遅れ芽も同様に、伸びてきたら輪郭をみて芽摘みをしてください。

イチイやキャラボクの新芽は、春から秋までずっと伸びてくるということはないので、最初と遅れ芽の芽摘みさえしておけば結構小枝は充実してきます。

芽摘みの刺激により形成された胴芽については、動いてきても芽摘みせずそのまま残しておいてください。伸びても秋までには短いまま伸びが止まりますから、秋の剪定までは伸ばして充実させておいた方が枝としてしっかり残せます。

もし長すぎるようなら軽く摘んでもいいですが、生長期は多少姿が崩れるものだと思います。

イチイ(一位)の芽摘み

一位は芽吹きが旺盛で、剪定したところから胴吹きもするので作りやすい樹種です。 芽摘みは小枝を増やすためには欠かせない作業で、各枝の力の調...

剪定(3月~4月、10月~11月)

イチイ・キャラボクの剪定は、秋(休眠前)と春(芽動き前)の追い込み剪定があります。

秋の枝の追い込みは生長期に生じた胴吹き芽を活かしてよりコンパクトにする剪定で、秋までに伸びきった枝は適当な所で切り詰めておきます。 不要枝やその年に伸びた長すぎる枝なども輪郭をみて追い込んでください。

芽出し前になると頂芽の冬芽の他、2年枝からも胴吹き芽がだんだん膨らんでくるので、適当な箇所まで切り詰めて全体をコンパクトにすることもできます。

ただし、この不定芽や胴吹き芽を狙った切り詰めは、生長期や秋に行うと芽ごと枝枯れすることがあるのでやるなら春の芽出し前だけにしましょう(肥培も必須)。

本来は、胴吹き芽がしっかり伸びきったところで先を切り戻すのが安全です。胴吹き芽がでたからといってすぐに切ってしまわないようにしてください。

イチイ(一位))の剪定

一位はとても丈夫な樹種で芽吹きもいいので、剪定によって簡単に枝数を増やすことができます。 逆に芽摘みや追い込み剪定をしないでいると、枝が間延...

針金かけ(10月~3月)

針金掛けの時期は休眠前から芽出し前で、剪定作業とい合わせて行うことができます。新芽が動き出した後では芽を痛めることがあるの注意してください。

夏は樹勢が上がってくる反面、針金で曲げると急に枝枯れしたり芽が動かなくなることがあるので避けたほうがいいと思います。

寒さの厳しい時期に行う場合は、作業後の保護を万全にしてください。

イチイは元来深山に自生する樹ですから、庭の刈り込みの様な端正な樹形よりも、朽ちた部分や雪の重さで枝の付け根から鋭角に落ちた枝を作ると、ミニでもイチイらしい姿を現すことが出来ます。

よく肥培し樹勢を付けたら、先に幹や太枝に針金を掛けて基本樹形を作りましょう。できるだけ細い時期にしっかり作っておくのが一番ですが、粘りのある枝は針金がよく効きますから、割と太い枝や古木でも技術次第で思い切った矯正に耐えられます。

太枝を枝元から下げる場合は、枝の付け根の下部(根側)を「くさび型」に切り取り、切り取った両面がぴったり付くけるように下げておけばよく癒着してくれます。

小枝の整枝は基本樹形ができてからで、葉と葉の間を縫い枝先まで針金を巻いてください。枝先は棚枝ごとにそれぞれ広げて、全体に光や風通しよく整枝しましょう。

古葉取り(10月中旬~11月上旬)

マツ類では新芽を切って古葉の所から胴吹き芽を出させる方法が一般的ですが、イチイの場合はその逆で、古葉を抜いた場所に芽を作る性質があります。

古葉取りの適期は休眠に入る前の10月から11月頃で、今年伸びた新梢の下に付いている古葉(2年葉)を鋏かピンセットで全て取り去ってください。

自然に落葉させると胴吹き芽の形成数が少ないですが、秋に人為的に古葉を取ることで芽出し前までに多くの葉芽を作らせることができます。

最も適した時期は10月頃。翌春までにしっかりした芽を作らせることが目的なので、古葉取りの時期は遅くとも11月上旬頃には終わらせておいてください。

できた胴吹き芽は、頂芽を切れば優先的に動き出しますので、4月頃にしっかり膨らんできたのを確認して切り戻すか(春の追い込み剪定)、枝を太らせたい場合は遅れ芽の扱いをしてください(芽摘み、剪定参照)。

小さすぎたり、芽のないところで切ることはできません。

夏の間も樹勢を落とさず丈夫なイチイですが、成長期に針金掛けや葉すかしを行うと急に樹勢を落としてしまうので注意してください。

イチイの古葉取り

イチイは自然落葉ではそれほどでもないが、秋に古葉(2年葉)を抜くと多くの胴吹芽をつくります

関連ページ

イチイ(一位)の魅力

「一位」という名前の由来は諸説ありますが、仁徳天皇の時代に正一位の貴人が持つ笏(しゃく)を一位で作らせたという話が通説です。 深山性の樹で全...

コメント

盆クラ さん 2018年10月01日10時06分
ご教授ください。
手に入れた一位がはじめ葉がパラパラと落ちてから,全体的に茶色く変色してきてしまいました。枯れ初めてしまったのでしょうか?
手元に来てから2か月あまり、9月から骨粉混じりの油粕を与えただけで、その他は来た時のまま、いじっていません。何か手立てがあれば教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。
きみ さん 2018年10月02日10時14分
盆クラ さん
一位って、よっぽどのことが無い限り枯れるまでいかないと思うんですよね。
ただ、一位は意外に陰樹の性質があるので、夏は日よけの下で管理したほうがいいとかはあります。ホースで水やりしていたなら、炎天下だと残留水はかなり熱湯なので、それに気がつかず水やりして枯れる...というケースもあります。
水切れさせたとか、原因に心当たりがなければ、手に入れる前に販売者が無理な植え替えや針金かけをしたとかもあります。
ともかく、常緑の木なので全体に葉が茶色くなったとなれば枯れてます。ただ、胴吹きの力が強いので、根さえ生きていれば枯れた枝を剪定しておくと新しく芽吹く可能性はあります。
盆クラ さん 2018年10月02日11時08分
きみ さん
ご教授ありがとうございます。
ご指摘の原因のひとつの、日よけの管理はしてませんでした。日差しがかなり強い日がありましたので、気を付ければよかったと反省しています。その他は心当たりはございません。まだ、葉先が主で中間まで茶色くなっているのは三割程度です。
根が生きていることを願って茶色くなった部分を剪定をしながら、管理し芽吹く可能性に賭けたいと思います。ありがとうございました。