
キミのミニ盆栽びより > 盆栽の育て方 > 葉物類の育て方 > 欅(ケヤキ)の育て方
投稿日:2018/02/18 更新日:2020/06/30
欅(ケヤキ)はニレ科ケヤキ属の落葉高木。
涼やかな深緑や、秋の里山の風景を思わせる黄葉、冬空いっぱいに枝を広げる枯木姿など詩情豊かな欅は、日本人に古くから親しまれる樹種の1つです。
欅は萌芽力が旺盛で、春から夏にかけて次々に芽が伸びてくるので、手入れを怠るとすぐに樹形を崩してしまいます。
丹念な芽摘みや葉刈り、剪定をして細やかな枝先をつくる欅は、日頃から元気に育てて樹勢を維持することが大事です。
基本的には日当たりよく風通しのいい場所で管理しますが、欅のような葉物樹種は、夏場の強い光線に当てないことが葉を青々と保つポイントです。
モミジやブナのようにひどい葉焼けを起こすことはありませんが、強い紫外線に当たると葉がかすれたように汚れてしまい、黄葉(紅葉)も綺麗にでません。
芽出しの春はよく陽に当てて生育を助け、梅雨明けから夏場は半日陰~日よけの下で管理してください。
葉が混みあい日当たりが悪い部分がでてくるので、時々鉢を回して全体に陽が当たるように工夫することも大事です。秋以降は日よけを外して再び陽に当て、黄葉を促します。
欅は冬の寒さには強いので特別な保護は必要ありませんが、霜や乾燥した風に当てると小枝が枯れ込みます。
鉢の小さい小品サイズは根まですっかり凍ってしまうので、冬は2~3度霜に当ててから棚下などに移してください。
欅は水を好む方で、葉が展開し始めると水の乾きも早くなりますので水切れのないように注意してください。
ただし過水は節間の間延びや根腐れの原因となるので与えすぎもよくありません。特に葉刈りをしたものも水は控えめにしてください。
春は1日1~2回、夏場は1日2~3回、冬は1~2日に1回を目安とし、表面の土が乾いてきたのを確認してからたっぷり水を与えてください。
細くほぐれた小枝が美点の欅は、枝を太らせないために極端に肥料を減らす培養方法が知られますが、肥料が少ないと樹勢を落として枝枯れを起こし、また枝作りのための力も付かないので作乗りが悪くなります。
特に芽摘みや葉刈りで何度も芽を吹かせるような作り方をする養成木では、充分肥培して樹勢を保ちながら作ったほうがよく出来ます。
4月から10月の間は月1ペースで肥料を交換。梅雨~真夏の間は一旦中止するか極薄い液肥を与えてください。
完成木の場合は、多肥にすると枝が徒長したり、枝が太ってゴツゴツした印象になってしまうので、「樹勢を維持する施肥」に切り替えていきましょう。
芽出しの4月頃に春肥を与えたら、5月頃に2回目の施肥をして葉刈り前に樹勢を付けておきます。
梅雨から夏場は一旦中止するか極薄めた液肥を時々与え、冬越し~芽出しのために秋肥をしっかり効かせてください。春に植替えをしたものは春肥はやめて、5月に最初の施肥をします。
細かい枝が観賞点となる葉物類の場合は、花物実物樹種のようにリン酸分を多く与えてしまうと枝が硬くゴツゴツした印象になってしまうので、油かす単用かグリーンキングの使用を勧めます。
あまり害虫や病気に悩まされることはありませんが、新芽に時々アブラムシが付くことがあります。
特に欅は葉数も多く枝が混み合いやすいので、日当たりや風通しの確保できる場所で管理することが大事。
定期的な薬剤散布も効果的ですが、高濃度の石灰硫黄合剤や、銅系薬剤で薬害が生じやすいので注意してください。
欅の作業暦
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
冬期保護(寒樹) |
ムロ出し |
芽摘み |
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植替え |
葉刈り |
葉すかし |
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本剪定 |
軽剪定 |
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針金かけ |
針金かけ |
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施肥 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
芽摘み |
|||||||||||
葉すかし |
|||||||||||
軽剪定 |
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施肥 |
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
黄葉(紅葉) |
落葉 |
冬期保護(寒樹) |
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葉刈り |
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軽剪定 |
本剪定 |
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針金かけ |
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欅は他の葉物樹種に比べてやや芽出しが遅く、4月中旬に入ってからようやく動き出します。ただそれに合わせて植替えをすると新芽の伸長や施肥のタイミングが遅れることになるので、植替えは3月中旬から遅くとも下旬頃には終わらせておいてください。
芽自体は3月頃には活動を始めていて、よく観察すると硬く小さい芽がわずかに動き出しているのが分かると思います。
欅は根の成長が早く根詰まりしやすいので、完成木でも2年に1回の間隔で植替えをしてください。若木や小さい木は、根詰り具合にもよりますが毎年植替えします。
完成木を毎年植替えたり強く切り込むと、樹が若返って根が強く走り、必然的に枝も強く伸び出して樹形を崩してしまうので注意してください。
養成木では全体の半分くらいを目安に周囲や根と根の間の古土を取り去り根張り作りを。完成~半完成のものは全体の1/3を目安に古土を更新するつもりで整理しましょう。
欅は八方に伸びた根張りも見所の1つなので、絡み合った根はほどき広げ、太くて長い根は短く切り詰めて細根だけを残していくようにすることがポイントです。
根は浅いですが、仕立て段階ではやや深めの鉢で作って樹勢を付け、完成に近づくにつれ徐々に浅い鉢に植え付けるようにしましょう。
排水性のいい用土であることは絶対条件ですが、細かい根を多くださせるために多少細かい粒土を使うのがよいとされます。
小品サイズでは細粒(1~2mm)、中品では極小(2~3mm)サイズの用土が適当で、粒がしっかりして崩れにくい硬質赤玉土を主体に配合してください。
ホームセンターなどで売っている園芸用の赤玉土は崩れやすいので、盆栽用の用土を揃えましょう。
特に完成木では、植え付ける鉢がとても浅く下にゴロ土を敷く余裕もありませんから、土台となる用土は保水性と排水性を備えた質のいい用土を選び、微塵も綺麗に取り除く必要があります。
赤玉単用でも平気ですが、より排水性を高めるために桐生土を1~2割混ぜてもいいでしょう。仕立て段階では腐葉土を1割ほど混ぜると生育がいいようですが、腐葉土なしでも充分作れます。
欅の芽は成長期の間伸びてくるので、そのたびに摘んで間延びを防ぎながら小枝を増やします。
新梢の葉が3~4枚に達したら指かピンセットで1~2枚残して摘み取ってください。
枝骨格を作る段階ではある程度伸ばしてから切り戻し剪定をしますが、芽摘みの場合は指で詰めないくらいまで伸ばしていては遅いので、小まめに摘むことです。
芽吹き旺盛な欅でも、夏を過ぎると次第に伸びも止まってくるので、9月以降は深く摘まず飛び出す枝の先だけつまんで輪郭線を維持してください。
欅は生長が旺盛な樹で、芽摘みを怠るとすぐに間延びして枝が太ってしまいます。欅は自然樹形を習った箒作りに仕立てるのが基本。先にいくにつれてほぐれた細かい枝は、芽摘……
欅の葉刈りは、主に樹勢のいい養成木に対して行う作業で、柔らかい小枝を増やし、各枝の力を均一にして葉の大きさを揃えるなどの効果があります。
葉刈りは6月上旬~中旬頃が最適期で、良く肥培した若木などは9月までに2~3回の葉刈りが可能。
葉刈りのやり方は、フトコロのごく小さい葉を除き、全ての葉を取ります。葉こぎといって手で一気にむしり取ることもできますが、芽や小枝を傷めることがあるので出来れば鋏で1枚1枚切り取ってください。
しっかりした剪定は落葉前後の休眠期に行いますが、葉刈り後は枝がよく見えるので、不要枝の整理や不定芽の処理など、整理できる枝は細いうちに剪定しておきましょう。
春先は不定芽もよくでるので、特に枝分れ付近に吹く芽は見つけ次第掻き取るとこも大事な作業です。
葉刈りは負担の大きい作業で、樹勢の弱い樹や、老樹になんども葉刈りをすると枝枯れを起こしやすくなります。
しかし葉刈りをしないでいると葉が密生して内部に陽が入らず、風通しも悪くなって下枝や弱い枝から枯れ込んでくるのは必至です。
葉刈りの代用としては葉すかし(葉切り)が有効で、葉刈りよりも負担が少なく済み、内部の環境を改善して下枝やフトコロ芽を守る効果があります。
芽摘み剪定後に目に付く大きい葉は、内部の小さい葉の大きさに合わせて半分程度に切り取ってください。小枝を増やすという点では葉刈りほどの効果はありませんが、樹形を維持する完成木ではとても大事な手入れです。
葉刈りは黄葉(紅葉)後にも行います。
黄葉はだいたい11月頃から始まり、11月下旬から12月上旬には自然落葉しますから、落葉する前にピンセットで1枚づつ葉を取ってください。この時期には葉柄に離層が形成されているので比較的簡単に取れます。
剪定は自然落葉後でも構いませんが、冬期に太枝の剪定をするとヤケが入ることがあるので注意が必要になります。
ムロ入れ前の剪定を兼ねてこちらから葉刈りをかければ、寒樹姿も観賞できます。
本格的な枝の切り込みは新芽の動き出す前の2月下旬から3月中旬頃が好機で、太枝の切り込みや芯の立て替えなどはこの時期に行うと回復も早くなります。
ただし傷が大きく残る太枝の剪定はできるだけ避けたい事態で、切り込みよりも芽摘みや剪定で作るように心がけてください。
全体の剪定は落葉前後の休眠期に入る頃に行います。黄葉後にピンセットで全ての葉を取り、樹冠から飛び出している枝を切り戻し、不要枝は元から剪定してください。
欅をはじめとする葉物樹種の整枝作業のほとんどは芽摘みや剪定が占めていて、針金かけは基本の幹模様や枝向きの軽い矯正など補助的に行う場合がほとんどです。
箒作りの針金かけは、幹が真っ直ぐ立っていることが大事ですから、幹が曲がっているものは真直に矯正し、枝もバランス良く広がる様に立ち上げてください。
古枝や幹の矯正は芽出し前の2月下旬から3月中旬頃、新梢の矯正は組織が固まる5月から6月頃が最適期です。
葉物類の針金傷は治りにくく、観賞面で大変な致命傷になってしまうので、食い込む前に外すことが大事。2ヶ月もすればしっかり矯正できている筈なので、傷になる前に外し、必要であればかけ直してください。
欅の樹形は主に芽摘みや剪定で作られますが、枝が充実するにつれて全体がどうしても扇状に広がっていきます。
欅特有の箒作りは、枝の角度が重要で、だらしなく広がっている状態では美しい箒作りにはならないので、枝を束ねて枝の広がりを直す「結束法」という整枝方法があります。
落葉後(葉刈り後)、麻紐や針金などで枝を結束した状態で棚下などで保護し、翌春の芽吹き前までそのまま管理してください。
小枝を束ねることで枝が鋭角に出るように癖が付き、乾燥した風に晒されないので寒害のリスクも減る効果があります。
枝が暴れやすく、こまめな手入れが必要なので手が掛かりますが、剪定を繰り返すことでよく枝数が増えるので作り甲斐があります。欅と樹皮や樹形などの見た目が似ていて、さ……
欅は生長が旺盛な樹で、芽摘みを怠るとすぐに間延びして枝が太ってしまいます。欅は自然樹形を習った箒作りに仕立てるのが基本。先にいくにつれてほぐれた細かい枝は、芽摘……
ケヤキのタネが入手できたら、実生にチャレンジしてみましょう。同じ親木のタネでも芽のでかたはいろいろなので、それらをどうケヤキらしく作るかの経験にもなりますし、箒……
都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。
アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。
現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。
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