ケヤキ (欅)の魅力

投稿日:2018/05/11 更新日:2020/11/25

欅(ケヤキ)の魅力

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ケヤキ(欅、学名:Zelkova serrata)はニレ科ケヤキ属の落葉高木。

平安時代からすでに人里や街道に多く植樹された樹で、夏はセミ採りや木登り、冬は寒空いっぱいに枝を広げた枯れ姿と、古くから日本人の生活に馴染んできた樹です。

芽出しから夏の深緑、紅葉、寒樹など詩情豊かな姿を通年観賞できる樹で、紅葉する赤芽性の品種もあります。

盆栽では「箒作り」という欅特有の樹形があり、里山の風景を思わせる樹種として、秋の席飾りには欠かせないものとなっています。

1. ケヤキの特徴

ケヤキの分布と自然の姿

ケヤキは本州から九州の丘陵や山地、平地などに自生していて、朝鮮や中国の温帯を中心に広く分布しています。

建材としての質も高く、関東から東北にかけては広く植栽されています。防風林として農家の敷地の周りに植えられ、夏は日差しから家屋を守り、冬には枝を空いっぱいに広げてそそり立つ木姿は里山の風景を思わせ、多くの人に親しまれてきた樹です。

宮城県や福島県、埼玉県では県木として、また全国各地の市町村でもケヤキをシンボルとして指定していて、樹齢1500年以上の山形県東根市の特別天然記念物「東根のケヤキ」は日本三大ケヤキの1つとして有名です。

ケヤキと言えば開けた平地や街路に植樹された姿を想像する人も多いですが、本来は沢筋や渓谷の斜面などの日当たりよく湿潤肥沃な土地に自生している樹で、根は浅く横に広がる性質を持ちます。

欅の老樹

昭和記念公園敷地内の大ケヤキは、樹周381m、樹高20mで樹齢は100年以上(2017年6月撮影)

幹枝は直立性で、自然では直幹で枝が細かく分岐し、その重みで葉幅を広げた姿に落ち着きます。老樹では太く大きな幹が空洞化して側枝が幹代りに立ち上がり、生命力溢れる姿を見ることができます。

ケヤキの根と根圧

欅の老樹の根張り

大ケヤキの根張り

巨木となるケヤキは、地盤の緩い地形で体を支えるために太い根を四方に伸ばし、地をつかむように食い込ませます。

ケヤキは太い道管を持っていて、根は常に土壌中の水よりも高濃度(糖や無機塩等)に保たれています。そのため、浸透圧の作用で根から吸収された大量の水は上へ上へと押し出され、樹全体へと効率よく輸送することができます。

これを「根圧」といい、杉や檜、小楢、楓類、銀杏など水分が多く樹高が高くなるものほど強く水を吸い上げる能力を備えています。

ケヤキも本来は樹高がかなり高くなる樹ですから、その体を維持するためには多くの水を効率よく吸い上げる必要があるのです。

ケヤキと環境汚染

かつては街路樹や公園樹、町のシンボルとして、街道が暗くなるほど普通に見られていましたが、現在は排気ガスや粉塵などの大気汚染がケヤキに及ぼす被害が深刻で、都心から郊外へとその影響が広がってきています。

大気汚染に加え、温暖化や多湿、コンクリート舗装による土壌酸欠、住宅密集などによる風通しの悪化などで衰弱した大木が目に付き、上野公園や新宿御苑のケヤキやムクノキは一時期壊滅的な状況になっていました。

近年は環境問題への関心も広がりつつありますが、自動車の排ガスや粉塵、光化学スモッグなど、特に都心部の汚染はケヤキにとって大変な苦しみとなっていることが現状です。

ケヤキの種類

ケヤキには個体によって葉性に違いがあり、盆栽樹種で一般的な黄葉するものの他、鮮やかに紅葉するタイプの個体も人気があります。

その他、葉に斑が入る「フイリケヤキ」や、矮性品種の「ツクモケヤキ(Zelkova serrata cv. Tsukumo)」、枝が下垂する傾向を示す「シダレケヤキ(Zelkova serrata f. stipulacea)」という珍しい栽培品種もあります。

また、ケヤキの変種で、葉の表裏と柄に短毛の密生するものに「メゲヤキ(Zelkova serrata f. stipulacea)」があり、中国中部原産の「トウゲヤキ(Zelkova schneideriana Handel-Mazzetti)」と同一種であると考えられていて、本州ではケヤキとしばしば混生しています。

ケヤキとニレ

ケヤキの葉

左からケヤキ、ニレケヤキ、小葉性ニレケヤキ

ケヤキと幹肌や葉形のよく似たものにニレ科ニレ属を総称するニレ(楡、学名:Ulmus-)があり、日本に自生するニレ属の仲間にはハルニレ(春楡、学名:Ulmus davidiana var. japonica)とアキニレ(秋楡、学名:Ulmus parvifolia)とオヒョウ(於瓢、学名:Ulmus laciniata)の3種があります。

ニレは立ち性で樹形もケヤキとよく似るため遠目では見分けが付かないことがありますが、葉はケヤキよりも肉厚でやや艶があり、二重鋸歯と呼ばれる鋸歯を持ち、大きな鋸歯同士の間に小さい鋸歯を挟みます。

ニレは「ヌレ」が語源で、切り口からヌルヌルした樹液が出ることから名付けられたと言われています。

盆栽では習慣的に葉の小さいアキニレを「ニレケヤキ」という名前で呼んでいて、石化性とか極小葉性とか言われる矮性種や、鮮やかにに紅葉するタイプのニレケヤキもあります。

ハルニレの葉と枝の翼

ハルニレの葉(左)と枝の翼(右)

ハルニレはケヤキのように葉が薄く、葉形は小さく少しずんぐりした菱形で、表面には微毛が生えて触ると少しザラザラした感触。古枝にはコルク質の翼(よく)が付くのも特徴です。

友禅ケヤキの葉

友禅ケヤキの葉。ハルニレと似ているが全体的にやや細長いものが多い

また、ハルニレと葉が似ていて、芽出しが黄色のユウゼンケヤキ(友禅欅、学名:Ulmus laciniata. Mayr.)も、ケヤキではなくニレの仲間で、オヒョウの近縁種とされています。

友禅ケヤキの盆栽は最近あまり見かけませんが、時々園芸店や盆栽販売店で扱っていることがあります。

2. ケヤキの樹形

ケヤキの樹形

実生の箒作り(左)と取木の株立ち(右)

ケヤキは直立性の樹種ですから、樹形は直幹が基本です。

まっすぐの幹に細かい枝が分れたような樹形にするのがよく、箒作りや段作りの他、枝分れの部分を取木したり、苗木のうちに束ねて作った株立ちや、双幹、寄せ植えにしてケヤキの林を作るのもいいと思います。

ケヤキの箒作り

イラスト1:ケヤキ箒作りの違い。枝は鋭角に広がり、立ち上がりから最初の枝分かれまでの距離は全体の1/3程度であることが理想。

1番おおく作られる箒作りには、作り方の違いで2通りの樹形があり、幹が2叉に分れてそこから枝分れする「芯なし」と、1本の芯から枝分れする「芯立ち」があり、同じ箒作りでも印象が違います(イラスト1)。

箒作りは、他の樹形には必ずある「芯」がないだけに全体のバランスを取ることが大事で、立ち上がりから最初の枝分れまでの距離が樹高の1/3程であることが理想とされています。

大正時代はまっすぐの幹に枝棚をいくらか持たせる「直幹段作り」という作り方が基本でしたが、昭和に入って箒作りが有名になってからはこれに仕立てられることが多くなっています。

3. ケヤキの種木の入手法

将来性のある種木を選ぶ

よく「ケヤキは作るのが難しい、面倒くさい」といわれ、ある程度の形になるまでは手間のかかるものと敬遠されるところがあります。

毎日行う芽摘みや、葉刈り剪定などの細かい手入れは好きな人なら苦にならないのですが、早く見られるようにするにはやはり将来性のある樹を選んで作った方が近道です。

ケヤキの苗

ケヤキをはじめとする雑木類は葉のない時期が見極めやすい。傷がなく、処理すべき太枝がないか、早い段階で整理されているものが理想。

ケヤキの種木は実生ものがほとんどで、3~6年生の苗が作られています。比較的手間の掛かる樹種ゆえに、ある程度形の出来ているものは値段がしますが、多少難があっても見所さえあれば将来性のある素材を手頃な値段で手に入れることができます。

バランスの関係で、最初の枝分れの位置で将来の樹高が決まりますが、取木して理想の高さに作り直すこともできますから、そのことも視野に入れて素材選びをすると良いと思います。

根張りの良さも重要な鑑賞点になりますので、種木を入手するときには根の状態もチェックし、走り根が処理できていないものは根作りからはじめてください。

また、好みにもよりますが、ぶった切りのような種木は太幹ですが傷口が大きく、これをカバーするには大変な時間がかかります。傷が小さくて、嫌な太枝のない素直なものを選ぶようにしてください。

実生のすすめ

欅の実生

双葉の先に本葉が伸びてきたケヤキの実生苗

ケヤキは小さな素材でも枝のよく出来たものはわりと値段のするものなので、低コストで多くの素材を得たい場合は実生から始めるのが1番です。

小葉のものや赤芽性など葉性のいい親木を見つけたら、秋に種を採取して取り蒔きするか、春まで冷蔵保存しておきましょう。

芯は2~3年伸ばして太らせ、枝もある程度伸ばして太らせてから切り戻し、小枝作りを始めますが、小さい樹を作るなら1年目から仕立てを始めます。

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コメント

koku さん 2018年04月09日12時09分
こちらの雲竜石化ケヤキという品種を購入したのですが、本やネットで調べても石化ケヤキと言う品種がありませんでした。キミさん、ご存知でしたら教えて頂きたいです。
きみ さん 2018年04月09日13時33分
kokuさん
雲竜石化ケヤキという名前は初めて聞きましたが、石化というのは矮性の八房種のことですから、小葉性のニレケヤキと同じことなのではないかなと思っています。
見た目も葉の出方もそっくりです。
世話はそう難しくないですよ。剪定しないと枝が伸びっぱなしになります
YOKO さん 2018年09月05日06時54分
こんにちは。半日陰で水遣りにも気をつけてたのですが、二、三日前から葉に斑点が現れ、ついに落葉してしまいました。ここから、どのように管理していけばよいでしょうか。
きみ さん 2018年09月05日10時07分
YOKO さん
こんにちは~。ケヤキは褐班病になることはあるらしいけどあんまり病気とかならないので、今考えられる事と言えばやっぱり水切れとか根腐れでしょうね。写真をみると葉に生気がないですし、土も真っ黒でいい状態とはいえないです。半日陰でもベランダだと日中はかなり高温になりますし、蒸れも心配です。あまり床に近いところには置かないで、風通しをよくしておいてください。
2~3日でこうなる筈はないので、もっと前から調子は悪かったのではないかと思います。
だめになった葉っぱは取ってしまいましょう(全部かな)。あとは乾いてから水やること。鉢に割り箸とか噛ませて水はけよくする工夫してください。
ちょっと遅いかもしれないけど、そう枯れる樹でもないし、今年中に吹き直すかもしれません。
machugorou さん 2019年04月25日15時13分
こんにちは、いつも盆栽びよりを見て勉強してます。ニレケヤキの種類いくつもあるのでしょうか? 
3枚の写真を送ります教えてください。右から1枚目金芽ケヤキ、2枚目ちゃぼケヤキ、3枚目友禅ケヤキとゆうことで購入しました。忙しいでしょうがよろしくお願いします。
きみ さん 2019年04月25日17時52分
machugorou さんへ
ケヤキは小葉性やフイリなど変種や園芸品種いくつかありますよ
同じケヤキでも、黄葉するものと紅葉するものがあります。
といいますか、ニレ科の仲間にはケヤキ属の欅と、ニレ属のニレケヤキやアキニレなどがありニレケヤキと総称して呼んでいます。
葉をみると分かるのですが、写真のものたちはニレ属の方だと思います。友禅はケヤキっぽいですが、ニレの仲間です。
友禅ケヤキも写真をみると、私の葉性と少し違います。最近は見かけない品種なので、どこでお買い求めになったか知りたいです
machugorou さん 2019年04月25日18時41分
こんにちは、早速のご返答ありがとうございます忙しいところ恐縮です。 
友禅ケヤキは10年ぐらい前にホームセンターでかいもとめたものです。その時はニレケヤキと書かれていたと思いますが最近ネットで見ていると友禅ケヤキに感じが似ていたので!
ケヤキの葉性やニレケヤキの葉性がわかる本か方法ありますか?教えてください
きみ さん 2019年04月25日21時19分
machugorou さんへ
文献は昔どこかで読んだもののメモが残っているだけなので、わかりません。
ケヤキをお持ちでしたら、葉の厚みや照り、葉脈の伸び方、葉縁の切り込みなどでなんとなく区別ができると思います。
しんし さん 2020年12月11日08時18分
こんにちは。いつも楽しく読ませてもらっています。
で、少し気になることがあるのですが
ケヤキの芯立づくり、一本の芯が中心に真っ直ぐ伸び、その伸びた芯から放射状に広がる作りと理解していたのですが。
違っていたのかなと。

盆栽に対する愛情が伝わって来て観ていて楽しいです。
これからも頑張ってください。
きみ さん 2020年12月11日08時38分
しんし さんへ
ご指摘ありがとうございます。
芯立ち作りたしかに芯になる枝がなくてはいけませんでした。イラストがオカシイですねすみませんでした。一旦イラストは非表示にさせて頂きます。
こういったご指摘とてもありがたいです。
そして応援まで、、これからも頑張りますので宜しくお願いします。