盆栽に向いている苔

更新日:2018/09/08

盆栽に向いている苔

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世界には約2万種以上の苔があり、立ち性でフワフワとしたものや這い性でロゼット状に広がるものなど性質は様々。

苔は盆栽に欠かせない存在ですが、種類によっては害となる場合もあります。

ここでは盆栽の苔のメリット・デメリットと、お勧めの苔、避けたい苔を紹介します。

1. 苔の利点と欠点

利点

見た目がよくなる

「苔むす」とは、ずっと前から変わらずそこにあるものを表す言葉。

盆栽の鉢や表土は大地を表現する部分で、ここに根付く緑も当然あるはずです。

石や草などを使うのも1つの方法ですが、苔を使うことでその状態で長い間持ち込まれてきた印象を受けます。

また用土がむきだしの場合よりも鉢と樹が馴染み、鑑賞上の価値が上がります。

保水効果

苔はそのスポンジの様な構造上、吸水性と保水性に優れているので灌水したときの水持ちがよくなります。

植え替え直後にミズゴケを張るのも、水はけのよくなった用土の乾燥を防ぎ根を守るため。

空中湿度も保たれ、植物の生育にも良い影響を与えています。

用土の流出を防ぐ

特に植え替えしたばかりのものは、灌水のたびに用土が鉢から流出して根が露出してしまいます。

苔はこの用土の流出を防ぐ役割も担っているため、ミズゴケの代わりに生きた苔を張るのも良し。

ミズゴケは時間が経つにつれ汚れてしまいますが、生きた苔なら時間とともに馴染んで楽しめます。

欠点

乾き具合がわかりにくい

灌水頻度に、「表土が乾いてきたら灌水する」という表現を使いますが、苔が密生していると土が見えないので乾き具合が分かりにくいものです。

苔は乾くとカサカサと捩れたり縮んだりするので、灌水のサインにもなるのですが、初心者が一見しただけでは判別しにくいかもしれません。

苔自体は乾燥に強いものが多いですが、慣れないうちは過水や水切れの原因になる場合もあります。

蒸れや病害虫の温床となる

吸水性と保水性に優れている苔は、夏場は逆に根の生育を阻害したり、病害虫発生の原因となることがあります。

苔も夏の暑さや蒸れには弱く、猛暑で枯れてしまうことも。通気性も悪くなり、腐って雑菌や害虫の温床となります。

その対策として、夏に備えて繁盛した苔をいったん取り除いておきましょう。もったいない気もするかもしれませんが、この一手間で夏場の土壌環境が改善され、根腐れ枯死や病害虫発生を抑えることができます。

2. お勧めの苔

盆栽には直立性で小型の苔が最適

蘚類

お勧めの苔

盆栽には蘚類のうち、直立性で水はのいい小型の苔が向いています。

日向~半日陰を生息範囲とする人里付近の苔が培養にも好ましく、葉が密についているものがいいでしょう。

苔玉や苔テラリウムなどで使われる「山ゴケ」といわれるものは、「ホソバオキナゴケ」や「ハイゴケ」「シラガゴケ」など茎や葉がやや長めの苔で、小さい盆栽には不向きです。

また乾燥によわい「スギゴケ」「ホウオウゴケ」の仲間や、涼しいところを好む高山性の苔も、気温や湿度管理が難しく盆栽との相性はよくありません。

地衣類

お勧めの苔

松柏類には「日ゴケ」といわれる地衣類が幹に付着していると老樹の風貌が出てお勧め。

樹状地衣類といわれる立ち性の「ヒメレンゲゴケ」の仲間がお勧めで、梅や桜には「ウメノキゴケ」などの葉状地衣類も適しています。

地衣類は成長が遅い上に、大気汚染に弱く培養が難しい種類ですが、湿度や日当たりなどの環境条件が合えば自然に増えます。

3. 避けたい苔

見た目のよくない苔、水はけの悪い苔はNG

蘚類の一部

避けたい苔

蘚類の中でも、這い性の「ハネヒツジゴケ」は幹まで貼り付いて蒸れの原因となるので発生したら小まめに掃除してください。

また、「カマサワゴケ」のように立ち性でも水を弾く性質の苔も、密に生やすと土中に水が届かず水切れの原因となります。

苔類、ツノゴケ類

避けたい苔

這い性の「ゼニゴケ」「ハタケゴケ」「ツノゴケ」の仲間は見栄えがよくないので、雑草として嫌われる事も多い苔です。

表土を覆い、水はけを悪くするので見つけたら小まめに取り除いてください。

共生藻類の仲間

共生藻類の仲間

その他、地衣類のような共生藻類の仲間や微生物・バクテリアなどが異常発生してしまうことがあります。

これらは光合成をする酸素発生型の細菌で、色は黒~黒っぽい青緑色の海藻のような姿。

陸棲藍藻(らんそう)の一種で無定型~粒状の「イシクラゲ」の仲間、イワノリの様な「アオキノリ」「トサカゴケ」の仲間など、未同定のものも含めると数え切れない種類があります。

また微生物が盛んに繁盛すると、用土の表面に墨汁やカビのような匂いを発生させることがあります。河川水を原水にしている浄水場では、気温の上昇とともに微生物が異常発生し、同じような状態になることがあり、オゾンと活性炭処理で微生物の繁殖を抑える処理がなされています。

見た目の汚さや水はけ、通気性の悪化などの原因となるので取り除く必要がありますが、これらは細胞分裂で増えるので簡単には駆除できないのが難点。

苔と同じで、どこにでも存在する生物なので、環境さえ整っていれば増殖してしまいます。

いつもジメジメしている場所に発生しやすいので、小まめに汚れた土を取り替えて、水のやり過ぎに注意したり風通しをよくするなどで繁殖しにくい環境作りを心がけてください。

その他のカテゴリ一覧

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コメント

M さん 2019年03月11日10時04分
こんにちは。たいへん参考になる記事ばかりで、困った時にいつも有難く読ませていただいています。
今回、うちの鉢に勝手に生えてきている苔の種類をハッキリさせたくて、お尋ねします。
この「盆栽に向いている苔」のページの一番上に掲載されている写真と、まったく同じ胞子体が出てきています。葉状体も同じ形なので、この写真の苔と同じ種類に間違いないと思います。
この苔は何という苔なのでしょうか。宜しくご教示ください。
キミ さん 2019年03月11日18時14分
M さんへ
いつもありがとうございます^^
トップ画像のは、ケヘチマゴケの胞子体だと思っています。
松五郎 さん 2019年03月24日22時48分
こんにちは。たいへん参考になる記事ばかりで、困った時にいつも有難く読ませていただいています。 盆栽にお勧めの苔,
4種類みました。Yahoo!のショッピングでさがしましたがみつかりませんでした。  どこで販売してますか良かったら教えてください。
きみ さん 2019年03月25日14時33分
松五郎 さん
いつもありがとうごじざいます!
ギンゴケはたまに園芸店やネットでも売っていますが、楽天とかyahooではみかけないですね。
このページに載せている苔は、買ったものではなくて勝手に生えているものです。
盆栽の数が増えて、適度に森化してくると苔も繁盛してきます。
わりと身近な所に生えているので、採取して増やすといいですよ

殺菌したものを一度天日干しして手で揉んで細かくして、赤玉の上に播いておくと増えます。風の強くない明るい日陰でたまに霧吹きするだけです。
0からだと何ヶ月と時間かかりますが、綺麗だし、乱獲(?)したくないし、いつでも使えるので自分で培養しています。
さと さん 2019年06月08日16時29分
いつも参考になる情報に感謝しています。
一つご相談させてください。
購入した盆栽に付いてきて、鉢を越えて周りに広がり始めた名前の分からない苔なのですが、見た目が青々しいからと庭に拡げて良いか心配しています。
乾いたコンクリートの上でも枯れないので、増え始めたらスギゴケなどを駆逐してしまうものでしょうか。
添付させていただく写真の植物の名称と手入れの上での留意点がありましたら、どうかご教授ください。
きみ さん 2019年06月08日17時14分
さとさんへ
写真のものは苔ではなくてセダムとかいう多肉の一種です。
マンネングサの仲間だと思います。
繁殖力はとても強いので、サボテンみたいに乾いていても平気なのでどんどん広がります。日なたカラッカラだとそこまで伸びません。
庭に使われたりは普通にするみたいなので、伸ばしたくないところはカットするなり手入れをすればそんなに悪いヤツではありません。
さと さん 2019年06月09日01時28分
ありがとうございます。
セダムという植物なのですね。
乾いた場所でも育ってくれるのなら有難いです。
スギゴケと共存出来るのかどうかは重要なので、しばらく様子を観てみたいと思います。
早速のご丁寧な返信に感謝しております。
この度はありがとうございました。
酒が好き さん 2019年07月04日07時12分
苔の話、大変参考になりました。
ありがとうございます
植替えのたびに苔には苦労しています。
大量に使うのでヤフーで買ったりしてますが、盆栽に合う苔はなかなか手にはいりません
今年は秋になったら、探しに行こうと思ってます。
最良とされているビロードゴケとはホソウリゴケでしょうか?
ミズゴケと言われてるのは何ものでしょうか?

ミズゴケを手でもんでホソウリゴケなどと混ぜたものを鉢面全体にまくと1月ほどで青くなってくるので、業者さんから勧められ使い始めました。
以前はサツキにミズゴケを使うのはダメ(夏には腐ってガスを出すとか・・・)、かならずヤマゴケを使うと言われていました。
時代とともに変わってくる?
きみ さん 2019年07月04日08時46分
酒が好き さんへ

ビロード苔と言われているものは、一種類ではないと思います。
毛足の細かい種類の苔がコロニーを作ってそういう風にみえますからね
ミズゴケはミズゴケ属の仲間の総称です。多孔質で水を含みやすい性質です。寒い地域に主に生息していて、日本では採取が禁止されている地域にいますから、市販の乾燥ミズゴケは海外から輸入されてきたものです。

皐月に苔を生やさない方がいいというのは私も聞きました。鹿沼土は苔にとっても成長のいいものですし、ただでさえ蒸れに弱い皐月ですから、繁盛しすぎるのがよくないのかもしれないですね。
K さん 2019年08月02日15時34分
はじめてメールさせていただきます。
大変参考になる情報をありがとうございます。

名前のわからない苔について教えてください。

夫が大切にしている五葉松の盆栽に、いままで見たことのない苔が生えてきたのですが、水をはじいてしまうので取り去ってしまおうか迷っています。

写真が下手ですみません。

夫は、苔は盆栽に必要だからと、頑として「取るな」と頑張ってるのですが、私は、この猛暑の中で朝晩の水やりも無駄になっているように思えるのですが、あわせてお教え頂ければ嬉しいです。
どうぞ宜しくお願いたします。
きみ さん 2019年08月02日16時16分
K さん へ
こんにちは。添付してくださったものは日ゴケと言われる地衣類の仲間です。
五葉松は特に水は辛めにするので、日ゴケが付いたのでしょうね
これは成長も遅く、ご主人がおっしゃるように松柏とは相性のいいものなので、取る必要はありません。
どうしても水が届かないようなら、ドボ漬けするといいですが大きい盆栽なら難しいですからね、頻度を増やす必要はないので、下から水が流れるまでしっかり水あげしてあげてください。五葉松は朝露で育つと言われるくらいなので、苔が弾くくらいでちょうどいいのかもしれませんが。
富士 さん 2020年06月08日12時39分
初めて質問します。
購入した、ヤマモミジとケヤキに苔が敷き詰められていたのですが、暑さのせいか枯れてきました。
ネットで調べてみると、苔は土の状態が把握できないから取り除いたほうがいいとか・・・

かといえば、保湿性を高めるためにそのままにしたほうがいいとの意見もあり、どうしたものか悩んでおります。

どうすればよいのか教えていただけませんでしょうか。
きみ さん 2020年06月10日14時01分
富士 さんへ

返事を書いたつもりになっていてお返事が遅れてすみませんでした。
たぶんネットとか園芸店で売られている盆栽(?)に張られている苔は、シラガゴケ科のホソバオキナゴケとかだと思いますが

大抵は張り苔といって、マット状に仕入れた苔をそのまま用土に張り付けて見栄えをよくしただけの状態です。こういう苔は、湿った森林とか、半日陰の涼しいところに自生しているもので、日当たりいい盆栽に張り付けてもなかなか根付きません。
なので、日差しが強くなる夏頃にはほとんど茶色くなって全滅してしまうことが多いと思います。

苔は基本的には湿度をたもったりなによりモリモリな感じが癒やされるので、大抵はそのままでいいのですが、夏の蒸れは盆栽にとって枝ガレとか、根が傷む原因になるので、盛夏だけはわたしも苔掃除をします。
特に、幹にへばりつくような這性の苔は、変なところから根がでたり幹がひび割れたり虫が付くので、綺麗にとっておいた方がいいですね。
富士 さん 2020年06月10日15時46分
きみさんへ

お返事ありがとうございました。
最近盆栽を始めたばかりで、分からないことばかりでご迷惑をおかけいたしました。

苔は盛夏には取り除いたほうがよいのですね。
梅雨が明けたら取り除いてみようと思います。

また、いろいろご質問させていただくと思います。
その際はよろしくお願いいたします。
きみ さん 2020年06月10日20時43分
富士 さんへ
お役に立てるか分かりませんが、何かありましたらまたコメントください
お待ちしてます
太田佳吾 さん 2021年10月20日20時14分
こんばんわ
お久しぶりです

苔について質問させてください。
購入した旭山桜盆栽にこのような苔が添えてありました。
もっとモコモコにして敷きたいと思っているのですがなんの苔かわかりますでしょうか?
また、林道で採取した他の種類の苔を繁殖させて敷きつめてもいいなと思っているのですが、いろんな菌がいるのでやめた方がいいとサイトに書いてありました。
やはり採取した苔をひくのはやめたほうがよいのでしょうか…
きみ さん 2021年10月21日07時28分
太田佳吾さんへ

写真のコケは「ホソバオキナゴケ」だと思います。林下の樹の根元などによく生えています。湿気のあるところを好みますが直射日光や蒸れに弱いので、日照を好む盆栽との共生は長い目では難しいと思います(段々弱って茶色くかれていきます)。

わたしはコケは自分の棚場で勝手に繁殖するので今は採取していませんが、採取する場合はたしかによくない雑菌や害虫の卵などがあると思うので、そのままコケ貼りに使うことはないですね。とくに下についている古い土は使わないほうがいいです。
よく水で洗ったあと、殺菌殺虫剤を散布してよく乾かしたあとに張りゴケなり播きゴケしていました。
それで問題ななかったです。