苔の分布と生息場所

更新日:2018/09/04

苔の分布と生息場所

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もののけ姫の森としても有名な屋久島の「白谷雲水峡(写真上)」や、長野の「八ヶ岳白駒池」、京都の苔寺と唱われる「西芳寺」など苔の名所は国内にもいくつもありますが、注意して見てみると私たちの周りにも多くの苔が群生しています。

苔は私たちの身近な存在でありながら、地味さ、小ささからその存在を日常生活で気にするひとはあまりいません。

しかし最近は苔玉や苔盆栽など、その小さな世界の魅力に惹き付けられる人が増えています。

盆栽も苔と深い関係があり、苔の管理が出来るようになるとなにかと便利。まずは苔がどんな場所を好んで生きているのか、その生態を知れば上手に育てることが出来ます。

1. 苔の生息場所

植物は効率よく光合成をするために、できるだけ日当たりの良い場所を確保しようとします。

小さい苔は日陰~半日陰を好み狭い場所で生きることができるので、樹の株元や幹、岩の上、道路脇やコンクリートの亀裂の間、河原の石の上、庭の隅などといったニッチな場所にコロニーを作ることができます。

いろいろな場所に生える苔

水しぶきのかかる場所や、乾燥した岩にコロニーを作る苔

苔の生息条件

湿度、日当たり

苔は基本的に半日陰を好みます。枝の間から時折木漏れ日が差すような、1日を通じて涼しい環境が適しています。

寒さには強いですが高温下の蒸れには弱いため、夏場でも涼しく明るい日陰が最適。

乾燥に強い種類が多いですが、水しぶきのかかる岩上など常に湿度の高い環境を好む種類もいます。

適度な湿度はどの種にも必須で、培養する上では盆栽と同じで水やりが必要です。

土壌環境

ヒョウタンゴケ

犬の散歩コースか、ややアンモニア臭がする場所に生えるヒョウタンゴケ

苔の生息場所は湿度と光などの環境条件が整えばあまり場所を選びません。

風当たりの強いところでは繁殖できませんが、乾燥にも強くたくましい植物です。

一般に苔植物には養分を吸収する根がなく、体を支持する仮根があるだけなので床は土である必要はなく、岩や樹の幹、コンクリートの割れ目、屋根の上など居たる場所に群生します。

アンモニアを含む土壌を好む「ヒョウタンゴケ」や、胴イオンを含む場所にしか生えない「ホンモンジゴケ」など、特定の土壌環境を好む種類の苔もあります。

2. 苔の分布域

苔は地球上の至る所に生息しています。

胞子で増える「有性生殖」を始め、ゼニゴケの無性芽や栄養繁殖のような「無性生殖」で繁殖できる苔は、条件が整えばどこでも定着可能ですが、その分布域は環境に依存している部分が大きいようです。

苔は他の植物と同様に気温や湿度、日照条件などこれぞれ繁殖に適した条件があり、温かい地域に行くほど種類は豊富になります。

人里の苔(標高0~1000メートル付近)

道路脇に生える苔

道路脇のギンゴケ(左)と、庭の隅に生えるハタケゴケ(右)

人家の周りや庭の隅、境内、公園、道路脇や畑など、標高0~1000メートル付近の人里を主な生息域としている苔は、私たちが何度も見たことがある身近な存在です。

コンクリートや岩の上、樹幹、擁壁、川縁、樹の株元や植え込みなど、日当たりのいい場所から日陰までいろんな場所にコロニーを作っています。

人里の苔には、「ギンゴケ」や「スギゴケ」「ヒロクチゴケ」「ホンモンジゴケ」「ホソウリゴケ」「サヤゴケ」「タチゴケ」「ゼニゴケ」や「ハタケゴケ」の仲間、「タチゴケ」の仲間などがあります。

常緑樹林の苔(標高0~1500メートル付近)

コツクシサワゴケ

コツクシサワゴケ(東京)

樫や椎類などの常緑樹林の苔は沢筋など湿度の高い場所に多くの種類が生息しています。登山に出かけると日陰の腐葉土上や、やや湿った岩上、樹の幹などにコロニーを作って群生している姿を見ます。

「ヒノキゴケ」「コツクシサワゴケ」「カマサワゴケ」「キヨスミイトゴケ」「アブラゴケ」「ラセンゴケ」「カビゴケ」「ゼニゴケ」の仲間などがあります。

落葉樹林の苔(標高500~2000メートル付近)

ホウオウゴケの仲間

ホウオウゴケの仲間(豪徳寺:東京)

標高500~2000メートル付近のやや標高の高い平地や山には小楢や楓類、橅(ブナ)などの林床に生える苔が多く生息しています。

夏場も涼しく、適度な採光と湿度が保たれている環境では、里山付近では見られない種類の苔も豊富。

「サンカクミズゴケ」「チャボスギゴケ」「キセルゴケ」「ススキゴケ」「イクビゴケ」「シッポゴケ」の仲間、「ホソバオキナゴケ」「オウムゴケ」「クジャクゴケ」など。

「スナゴケ」の仲間や「ホウオウゴケ」の仲間、「ハチヂレゴケ」「ケヘチマゴケ」など、人里の境内や林の中に見られるものもあります。

針葉樹林の苔(標高500~2500メートル付近)

オオスギゴケ

オオスギゴケ(白谷雲水峡付近:屋久島)

杉や米栂(コメツガ)、檜などの針葉樹林の森は光が少なく気温も低い環境です。地表は湿度が高く、林床や樹幹に着生した苔が見られます。

「オオスギゴケ」「コセイタカスギゴケ」などのスギゴケの仲間、「シッポゴケ」の仲間、「トラノオゴケ」「フジノマンネンゴケ」「エゾチョウチンゴケ」「ヒカリゴケ」「イワダレゴケ」「イボカタウロコゴケ」など人里では滅多に見ることができない種類の苔が生息しています。

高山の苔(標高1000~2500メートル以上)

オオツボゴケ

オオツボゴケ(八ヶ岳:長野県) :フィールド図鑑コケ(東海大学出版会)より

厳しい気象条件の高山の苔は、寒暖差が激しく乾燥した場所に適応しています。

北海道から本州の高山の他、中国やシベリア、アラスカなどにも分布し、岩陰や痩せ地の上、樹幹、崖壁などでたくましく生息。

「クロゴケ」「ハリスギゴケ」「フウリンゴケ」「カモジゴケ」「シモフリゴケ」「マルダイゴケ」「オオツボゴケ」「ダチョウゴケ」など特有の群落を作っています。

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苔の分類

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