苔の増やし方と管理
更新日:2018/09/10
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小さくて弱いイメージのある苔。
育てるのはおろか、増やすのは難しいと感じる人もいるかもしれませんが、苔は思った以上に丈夫で繁殖も簡単です。
一番大事なのは湿度と光。環境さえ整えてあげればいつまでも元気な姿を維持することができます。
1. 苔の生活環
有性生殖
図:スギゴケ類の生活環
私たちがよく目にする苔の姿は単相(n)の配偶体で雌雄があり、シダ植物と同じように世代交代を行います。
雌株の造卵器で卵子、雄株の造精器で精子が作られ、雨などで水を得ると鞭毛をもった精子が雌株の造卵器まで泳いでいって受精し、複相(2n)の胞子体を作ります。
スギゴケの仲間の胞子体
胞子体は配偶体の上に寄生している柄のついた胞子嚢のことで、減数分裂によって単相(n)の胞子を放出。
この胞子は枝分れした糸状の原糸体へと分化し、着生・成長。
再び単相の配偶体が現れるといった生活環を繰り返しています。
無性生殖
ゼニゴケの無性芽器と無性芽
ゼニゴケを代表する一部の種類には、有性生殖の他に無性芽器といわれる杯状の特殊な構造体を作ります。
この中には「無性芽」と言われる新個体の細胞がたくさん入っていて、雨などでばらまかれることで無性的に増えていきます。
無性生殖は、ヤマイモ科の植物などにみられる「ムカゴ」や、挿木などの栄養繁殖も含まれます。
苔も自身の体の一部からクローンを作ることが可能で、配偶体から伸びた匍匐枝やちぎれた葉などから不定芽を出し、再びコロニーを形成します。
胞子による有性生殖は、雨や風、気温、地形などの環境に依存するため、必ず効率がいいとは言えません。無性芽や不定芽による繁殖は、環境の悪化や災害、害獣等による踏みつけなどの危機に直面した時にも種を維持する術なのかもしれません。
2. 苔の増やしかた
張り苔した状態
庭園の苔庭や、展示前の大物盆栽には「張り苔」といって、苔を仮根ごと切り出したマット状の塊をそのまま貼り付ける方法があります。
国風展に出されるような大変貴重な大物盆栽には、苔張り専門の業者がつくほど。数種の苔がコロニーを作って盛り上がった様子は時代を感じさせ、盆栽を一層引き立てています。
しかし張りゴケは早く仕上げることができますが、下手にやると苔山が不自然に目立ち「いかにも」な印象になったり、雑菌や虫の住処となっている可能性もあります。
貴方の小さい盆栽に張りゴケをするのは技術的にも難しいので、挿し苔法や播き苔法といった人工的に苔を増やす方法がお勧めです。
苔専門の業者から状態のいい苔をその都度入手するのもいいですが、栄養繁殖を利用した繁殖法なら手近な苔を簡単に増やすことができます。
苔は成長が遅いので落ち着くまで多少時間はかかりますが、比較的衛生的に管理でき、仕上がりも綺麗です。
挿し苔法
挿木の要領で、苔の緑色の部分だけを表土に移植する方法です。張り苔法の「成長点だけ」バージョンで、土に触れた箇所から仮根が伸びて短く詰まった苔を自然に生やすことができます。
まず、苔の配偶体の先端(成長点)部分に鋏を入れ、切り出した葉先の塊をそのまま用土の表面に載せて指で押さえます。
苔山に鋏を入れ、塊のまま切り出す
これを全体に繰り返し、用土の表面に敷き詰めていきますが、目地張りでも次第に覆われるの疎らに隙間が空いていても問題ないです。
苔が安定しない間は灌水の時に流れやすいので、霧吹きなどで対応してください。
粒径の細かい赤玉土などを上から薄く播いておくと「重し」の役割をして灌水の時に苔が流れにくくなります(。
張った苔の上に用土を薄く播く
挿し苔法は綺麗に敷き詰めれば一面美しく仕上がり、すぐに見られるようになるのがいいところ。
動く余地がなければ数日で根付いて自然に馴染むので、ミニ盆栽では展示前に鉢合わせと一緒にやるとちょうどいいのです。
蒔き苔法
播き苔後は、棚下などで管理
蒔き苔法は挿し苔法より仕上がりにやや時間がかかりますが、大量に苔を増やしたい時に最適。
化粧にいきなり使うのではなく、植え替えや鉢合わせ後の常備苔として仕込んでおくと便利です。
まず最初は害虫と菌の駆除。苔を仮根ごと採取したものを1日天日に干して乾燥させた後、殺菌剤を散布しておきましょう。
次に殺菌した苔を手で揉んで細かくします。鋏などで粗く切り刻んでも構いません。
苗床には小粒の赤玉土や鹿沼土、あるいは乾燥ミズゴケを薄く敷き、その上に細かくした苔を蒔いてください。
用土や乾燥水苔の下に、段ボールを1~2枚敷いておくと湿度を保ちやすくなります。
苔を全体にまんべんなく蒔いたら、上から優しく押さえ水をかけ、風と直射日光が直接当たらない涼しい半日陰で管理してください。
2~3週間くらいで落ち着いてくるので、薄めたハイポネックスを時々散布してやると綺麗な緑色を保てます。
3. 苔の管理
管理場所
苔は夏の暑さや蒸れに弱い植物です。
ただ苔も光合成をする植物なので、真っ暗なところや風通しのよくない室内管理は不向き。
夏場は直接日の当たらない明るい日陰~半日陰で管理し、できるだけ涼しく過ごさせてあげることです。風の強い場所では生育不良になるので、置き場所を工夫してください。
ギンゴケのように一年中黒松の置き場所でも平気な種類もありますが、多くは雑木や山野草を置くような、明るい木陰のような場所を好みます。
苔も冬は休眠期に入りますが寒さに強く霜に当たっても平気なので、冬は特別な保護は必要ありません。乾風に直に当てないような対策をすれば充分です。
水やり、肥料
苔の良好な生育には適度な湿度が必要。
乾燥に強いので「乾いたら灌水」でいいですが、盆栽と同じで夏場の直射高温下で水をやると蒸れの原因になるのでやめましょう。気温の下がる朝方や夕方はしっかり水やりしてください。
また、苔は光合成によって必要なエネルギーを作っていますが、体表面からも幾分かの養分を吸収しています。
肥料は多く必要ありませんが、週に1~2度のペースで規定量より気持ち薄めに希釈したハイポネックスを霧吹きなどで散布してあげると綺麗な緑色を長く維持できます。
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コメント
- 酒が好き さん 2019年07月06日06時44分
- ここは本当に参考になるブログです
もう少し早くここを知ってたら(残念無念)m(__)m
苔には一杯お金を使いました
盆栽関係情報は、口伝・秘伝も多く、怪しい知識が多すぎます
「真昼に水をかけてはいけない。葉っぱにかかった水滴がレンズの役をしてしまう」
水をかけなきゃ枯れるでしょ
私の意見に反対する方は多かった。 - きみ さん 2019年07月06日21時17分
- 酒が好き さんへ
どうもありがとうございます励みになります。
人により作り方やりかたいろいろあると思うので、そういうやりかたもあるのだなと思って私はやっています。
ただ人がこう言っていたからと自分で工夫しないのもどうかなと思います。