シンパク(真柏)の育て方

投稿日:2018/07/03 更新日:2021/10/22

真柏の育て方

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シンパク(真柏、植物名:ミヤマビャクシン、学名:Juniperus chinensis var. sargentii ) はヒノキ科ビャクシン属の常緑針葉樹。

ビャクシンの仲間は日本各地の高山帯から丘陵地、海岸など広い分布域を有していて、栽培品種として知られる「貝塚イブキ」は庭木や生垣としても利用されていますが、盆栽で使われるのは高山性のミヤマビャクシン(深山柏槇)で、葉性に優れ幹模様も素晴らしい新潟県の「糸魚川シンパク」は世界的にも有名です。

強い曲付けにも耐えるのでいろいろな樹形に作ることができ、ジンシャリの芸や葉の細かさ、幹肌の美しさなど魅力が沢山。平地でも丈夫に育つ上、挿木繁殖が容易で、ビギナーでも素材から愉しめるのもよいところです。

芽摘みでよく枝ができ、針金かけにも強いシンパクは、定型の樹形に留まらない、作り手のセンスによって変幻自在な姿を創造できる面白さがあり、まさに盆栽趣向の神髄ともいえる樹種です。

シンパクの培養の基本

管理場所

高山性のシンパクは、昼間の日差しが強烈で昼夜の寒暖差が激しく、霧深い環境で生きているため、年間を通じて日当たりと風通しの良い場所で管理しましょう。

ミニサイズや樹勢が弱っている樹は多少の保護が必要ですが、基本的には真夏でも日除けなしでよく陽に当てることで、色艶よく締った枝葉の充実に繋がります。

耐寒性も強いので、冬も特別な保護は必要ありません。霜に当たると一時的に葉が茶色く灼けることがありますが、過保護にするといつまでも年輪がつきませんから、2~3度霜に当ててから、棚下やムロなどに入れて冷たく乾燥した外気から守ってあげましょう。

灌水

締った枝葉を作るために辛めの灌水をするところもありますが、本来は水を好む性質なので乾かしすぎは禁物です。

灌水頻度は用土の配合や根の回り具合によっても異なりますが、春秋は1日2回、夏は2~3回、冬は2~3日に1回(ムロに入れているもの)を目安に、鉢土の中まで乾いてきたらたっぷり灌水してあげてください。

空中湿度の高い高山性の樹種なので、霧の代わりとして朝夕の葉水も効果的です。ただし水を好むといっても、鉢内の蒸れは根を傷める原因となるので、水はけのよい用土を使うことが重要です。

施肥

基本的には、新芽が動き出す4月頃から梅雨入り前の6月中旬頃まで春肥を置き、夏場は一旦中止して、9月~10月いっぱいまで秋肥を与えれば充分です。

成長期の芽摘みに耐えられるだけの力や葉色を維持するためには肥料は欠かせませんが、シンパクの場合は多肥にすると枝の徒長やスギ葉を生じさせる危険があるので、与える量は少なめに。特に春肥は控え目でよく、樹勢を抑えるために6月頃に最初の肥料をおく愛好家もいます。

枝葉の充実が目的ですから、肥料はチッ素分主体でリン酸とカリウムのバランスもよい緩効性の有機肥料が基本。生育後期はリン酸も多少効かせて、冬越しに備えさせておきましょう。

石灰岩質の高山の岩場などに自生するシンパクは、酸性土壌を嫌う性質があり、多肥は土の酸性化を進めてしまう原因となるので注意が必要です。

日頃から葉をよく観察し、葉の伸び方や色艶が悪くなるようなことがあれば、肥料が効きすぎている可能性があります。特に梅雨明け後は、溶け残った肥料成分によって鉢土が酸性に傾いている状態ですから、苦土石灰や草木灰を少量撒いて酸性土壌を中和してやりましょう。

春に植替えをしたものは2週間~20日ほど経ってから施肥を開始してください。 また、杉葉がでている間は肥料を控えた方が戻りが早いようです。

シンパクの病害虫と対策

病害虫には強い樹種ですが、培養条件の悪いものや樹勢の落ちているものでは、葉に褐色の斑点を生じるサビ病が発生することがあります。

また、ビャクシン類には幹を食害するズイ虫(メイガ幼虫)や、葉を食害するウチジロマイマイ(ドクガ幼虫)などにも注意が必要です。

防除には定期的な薬剤散布と培養環境の整備が重要。サビ病の中間宿主となるナシやバラなどのバラ科樹種とは離して管理し、病害虫が発生しやすい成長期(5月~9月)と、冬には必ず越冬病害虫の消毒を行うようにしましょう。

とくに休眠期は石灰硫黄合剤などの殺菌殺虫薬でしっかり消毒することも大事。サンヨールやオルトランCなど代替薬もありますが、高濃度で散布出来る休眠期間は石灰硫黄合剤がとても効果的です。

またシンパクは葉水が好きで害虫予防にもなるので、朝夕に霧吹きなどで積極的に葉水をあげてください。

シンパクの適期作業

シンパクの作業暦

3月 4月 5月 6月
冬期保護
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
植替え
 
 
 
芽摘み・葉すかし
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
ジン・シャリ彫刻
 
 
 
 
 
ジン・シャリ入れ(剥皮)
 
 
 
 
 
春肥
 
 
 
 
 
7月 8月 9月 10月
 
 
 
 
 
植替え
 
 
 
 
 
 
芽摘み・葉すかし
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
ジン・シャリ入れ(剥皮)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
秋肥
 
 
 
11月 12月 1月 2月
 
 
 
 
 
 
冬期保護
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
 
ジン・シャリ彫刻
 

植替え(3月中旬~4月中旬、9月)

シンパクの根

シンパクの根は細根が多く、根回りも早いので植え替え頻度も松柏類としては短い

シンパクの植替えは2月下旬頃から可能ですが、寒いうちの植替えは作業後の管理に気を遣うので、少し陽気が暖かくなる春の彼岸頃の植替えをお勧めします。秋の植替えも可能で、暑さが和らぐ8月下旬~9月頃の間に済ませるようにしましょう。

発根がよく、細根がよく回るので植替え頻度は他の松柏類よりも短い周期がよく、若木では1~2年、完成木でも2~3年に1度の間隔で植替えてください。長く植替えをしていないと根詰りを起こして樹勢を落としてしまうので注意が必要です。

整理する根の量は根の状態や仕立て段階によって異なりますが、全体の1/2~1/3程度を目安に、底根や鉢周りの古土を落とし、伸びた根を丁寧にほぐして切り詰めてください。

切込みに強く、あまり根張りを気にする樹種でもないので、不要な走り根は早めに整理し、細根が多くでるようにしましょう。

用土は土地柄によっても異なりますが、赤玉土主体に桐生砂や川砂を3~4割混ぜた水はけの良い用土を使ってください。排水性の良さは松柏類では特に重要ですが、シンパクの根は細いですから、粒径もそれに合わせたもの(極小粒くらい)がよく、走り根や枝葉の勢いを抑える効果も期待できます。

竹炭

酸性土壌を嫌うシンパクや、長年植え替えをしない松柏類には、植土に竹炭を混ぜると良いと言われています。

シンパクは酸性土壌を嫌う性質があるため、植土には土壌pHを中和する働きを持つ竹炭等を混ぜておけば万全です。

また、強い剪定整枝をした年に植替えも同時に行うと、スギ葉が生じやすくなるので、植替えは1年以上置いてから行うようにしましょう。

芽摘み(5月~10月)

シンパクの新梢

春から秋の成長期の間に次から次へと新芽を出すシンパクは、丹念な芽摘みが枝作りに欠かせない重要な作業です。

勢いを付けるために新芽を伸ばしておくこともありますが、強い枝を残すと周りの弱い芽や下枝が枯れてしまうので注意が必要です。

シンパクには一枝の中に1番強い芽(芯)があるので、その芯を樹冠の輪郭に沿って摘み取ってください。

芽元を指先で軽くつまんで引き抜きますが、細かいところはピンセットでひと芽ずつ摘み取っていきましょう。芯を摘むと腋芽が伸び出してくるので、同じように芽摘みを繰り返して小枝を増やしていきます。

シンパクの芽摘み

樹冠から飛び出す新梢を指でつまんで引き抜きます

芽先を揃えて一様に摘んだり、ハサミで刈り込んだりすると葉先が灼けて芽止まりを起こす危険があるので、枝葉の分岐を確認しながら丁寧に摘むことが大切です。

勢いを付けるために伸ばしたものや芽摘みが遅れたものは、指で摘むことはできないので無理せずハサミで切り取ってください。

葉すかし(7月~10月)

芽摘みは枝の充実に欠かせない作業ですが、芽摘みだけ何年も繰り返し行っていると次第に枝先が混み合って団子状になってきます。

そのままにしていると強い枝ばかりに力が集中してバランスが崩れるだけでなく、内部の日当たりや風通しが悪くなって枝枯れや病害虫の発生を引き起こす原因となってしまうので、必要に応じて葉すかしや込み合った枝の間引きを行ってください。

各枝棚がこんもりと扇状に広がるように、枝作りで不要となる枝元の芽や下向きに下がった弱い枝などを元から取り去り、幹模様や枝すじがよく見えるようにしましょう。

葉や枝をすかす強さを調節することによって各枝のバランスも平均的になり、培養条件も改善されます。また、幹枝が見えるようになれば将来の構想も練りやすくなり、あとの剪定や針金かけにも着手できるようになります。

剪定(9月下旬~3月)

養成木の剪定

ある程度幹が太って枝数もある段階の養成木では、まず仕立てる樹形を考えておおかたの役枝を決め、不要な枝を剪定することから始まります。

樹形作りの支障になる忌み枝や不要枝を剪定し、使う枝に力が付くようにしましょう。

剪定は針金かけと合わせて行うほうが効率的で、秋から芽動き前の休眠期間(厳寒期を除く)が作業適期ですが、秋に負担の大きな作業をすると冬の保護に気を遣いますから、強い切込みは樹が活動を始める前の2月中下旬~3月頃に行ったほうが安全です。

シンパクはジンやシャリの芸も重要な見どころになりますから、太さのある枝は元から切り落とさずに長めに残して皮を剥いでおくと案外に赴きのよいものができます。

完成木の剪定

完成木でも、維持のための剪定や葉すかしが欠かせません。

成長期の間は枝元付近からもよく胴吹きしてくるので、不要な芽は発生しだい元から切り取っておいてください。

シンパクの剪定では、強い枝を切り詰め、弱い枝を活かすようにして樹勢を平均的にすることが大切です。

間延びした枝の元に芽が出た場合はその芽を活かして短く切り詰め、全体を小さく維持するようにしてください。培養に悪影響を与えるような混み過ぎた枝の間引き剪定は適宜行えますが、改作を伴うような強い剪定や整枝は芽動き前の2月~3月頃に行ったほうが回復も早くなります。

針金かけ(9月下旬~12月上旬、2月中旬~3月)

シンパクは大胆な整枝にも耐えられるので、事前に構想をよく練って思い切った矯正をする必要があります。

適期は9月下旬~12月上旬頃と2月中旬~3月頃。樹液の流動が落ち着き、形成層と木質部が密着している休眠期間中(厳寒期を除く)に行うことが多いですが、シンパクは針金で捻られることに強いですから、軽い針金かけなら周年可能です。

ただし幹曲げや太枝の整枝など負担の大きな作業は、回復の早い2月中旬~3月頃に行った方が失敗は少ないと言えます。

他の樹種でも共通して言えることですが、樹作りはまず基本となる幹模様や根を作る最初の段階があり、次に枝模様を作り、最後に小枝の先まで神経の行き届いた整枝をして完成に近づけていきます。

樹が古くなれば技術的にも強い整枝が難しくなるので、樹勢の強い養成木のうちにしっかり幹模様を入れておくことがのちの樹作りの成功に繋がります。

ジン・シャリ作り

シンパクは幹枝の一部が折れたり枯れたりしたあとに雨風に晒されて白骨化したシャリやジンも魅力の1つで、その姿に厳しい環境で生き永らえてきた生命力の強さや古さを感じ取ることができます。

ことシンパクに関しては白いシャリと赤褐色の水吸いが織りなす幹芸や、瑞々しい緑葉と朽ち果てたジンとの対比が樹格を左右する重要な観賞点ですから、是非チャレンジして欲しいところ。

ジンシャリ作りは基本的にいつでも可能ですが、不要枝をジンにする場合は、皮を剥ぎやすい活動期の方が向きます。

生きている幹への大きなシャリ入れを生育期に行うと、樹液の流出や枝枯れを起こす可能性があるので、厳寒期を除く11月頃から3月頃の間に行った方が安全です。特に広範囲を削るような大手術は回復の早い2月下旬~3月頃まで待った方がよいでしょう。

シンパクはわずかな吸い上げでも生きていける丈夫な樹ですが、ジンシャリ入れは樹への負担も大きいですから、年数をかけて範囲を拡げ仕上げてください。

彫刻は個人のセンスと経験がものをいう難しいテクニックですが、小さい樹では樹皮を剥ぐだけでも観られる場合もありますから、樹をよく観察してデザインしてみましょう。

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