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投稿日:2016/02/12 更新日:2020/04/05
サクラ(桜:英名Cherry blossom、Japanese cherry、Sakura)はバラ科サクラ属の落葉高木。
日本の春の象徴とも言える桜は、多くの品種で新芽に先駆けて花を咲かせます。
園芸品種は400以上と豊富にありますが、盆栽で人気なものは小輪で剪定に強い山桜系や寒緋桜系の品種の他、江戸彼岸系のしだれ桜(糸桜)や十月桜、小輪の富士桜、湖上の舞などがあります。
バラ科の中でも病害虫被害に注意が要る桜は、根頭癌腫病を患いやすく長く持ち込めないことが難点とされていますが、定期的な消毒と日頃の培養次第で長く楽しむことができます。
C o n t e n t s
基本的に丈夫な樹で、夏の西日と水切れさえ注意すれば夏も棚上に置いたままで大丈夫です(フジザクラを除く)。
日当たりと風通しのいい環境を好み、日陰だと花芽が出来にくくなったり、枝が弱ったりして樹形作りに支障がでるので、多少葉焼けをしても陽にあててください。
水と肥料が効いていれば葉焼けも起こしにくいので、管理次第で格段にいい樹になります。
ただし小品サイズや富士桜系の品種は強い日差しや暑さに弱く、根を傷めやすいので日差しの厳しくなる5月頃から盛夏の間は日よけの下に置いてください。
寒さに自体には強い樹ですが、2~3度霜に当てたら棚下やムロに入れてください。特に秋に植え替えをしたものは根が凍らないよう早めの保護が必要です。
水を好む樹種で、葉が開いてからは乾きやすくなります。特に夏の水切れで葉焼けを起こすと後の生育や花芽分化に影響してしまうので注意が必要です。
桜は葉が大きくなるものが多く、単に上から灌水しただけでは葉が水を弾いて用土まで届かないことがあるので、株元にしっかり水をかけましょう。
春の芽出し頃からは1日1~2回で、夏は1日2~3回、冬は2~3日に1回を目安にたっぷり灌水してください。
ただし水を好むといっても、いつも用土が湿っているようではいけません。
特にサクラのような多肥多水で管理する樹種は、用土の酸性化が早く、夏に過水にしすぎて根腐れを起こし、秋頃から調子を崩すケースが多いので表土が乾いてきたタイミングで水をあげてください。
落葉後は乾きも遅くなるので灌水頻度は減りますが、うっかり水切れさせる失敗が意外に多いものです。冬の水切れは翌年の花芽を痛めますし、折角作り込んだ枝も枯れてしまうので注意してください。
桜は春肥が重要で、花後の肥料は枝作りのための芽吹きの力を助けるために必要不可欠です。
特に秋に植え替えしたものは施肥を控えているので、春の肥料は大切な栄養分。
4月~7月上旬にかけては他樹種の5割増しくらいを目安に肥料を効かせてください。
秋は9月~10月の間に施肥しますが、春肥ほどの量は必要としません。花付きをよくするため秋にはリン酸やカリウム分の配合も多めにしてください。
接木で作られたサクラ苗。台木に枝を接いで接木テープを巻いてある状態
一般に出回っている花付きのいい品種は、ヤマザクラを台木にして接木で作られているものがほとんどです。
接木の素材は接口から病気が入る危険があるので、できるだけ接ぎ方が自然で傷が小さいものを選び、根元にコブがないか、弱っていないかなどを確認してください。
素材はできるだけ傷が小さいものを選びたい。このように接木痕が治っておらず樹液がしみ出しているものは、傷口から病気や害虫が侵入しやすい。
根頭癌腫病のように治療が難しい病気を自分の棚場に持ち込まないように、他の鉢と一緒に置く前に一度隔離し、必ず消毒をしておくことも大事です。
また、根元から勢いよく伸びる台木由来の枝は、せっかく接いだ品種の枝の力を奪って枯らせてしまいますから、見つけ次第根元から切り取っておいてください。
実生から育てることもできますが花が咲くまでに年数が必要になるので、挿木のできる「富士桜」や「湖上の舞」などを増やしてミニに作るものよいと思います。
桜に発生する病害虫は意外に多く、一度や二度は被害に困った経験があるかもしれません。特に盆栽では深刻な被害に至る場合も多いので、早め早めの対処が必要になります。
桜につく害虫にはカイガラムシやアブラムシ、チュウレンジバチの幼虫などがありますが、中でもコスカシバの幼虫は接ぎ口などから樹皮下に侵入して縦横に食い荒らし、ヤニを吹いて樹勢を著しく落とします。根元に木屑や虫フンなどを見つけたら、侵入痕に殺虫剤の原液を注入して駆除してください。
桜は剪定痕から水分が逃げたり、病気や害虫が侵入することがあるので剪定時期を守り、傷口には必ず保護剤を塗っておきましょう。
落葉後は幹枝の様子が確認しやすく、病害虫による被害の痕跡にも気づきやすい時期です。よく観察し、不自然な膨らみや侵入痕があれば駆除しておいてください。
ムロ入れ前と冬期保護中には石灰硫黄合剤やサンヨールなどで消毒することも忘れないように。葉のない時期は高濃度の薬剤を散布できる絶好のチャンスです。
サクラの根元に出来た癌腫
また桜をはじめ、薔薇や木瓜、長寿梅などのバラ科の樹種は根頭癌腫病にも注意が必要。
植え替え時にはストレプトマイシン硫酸塩系の殺菌剤(ヤシマストマイ液剤やアタッキンなど)でしっかり殺菌し、用土も綺麗に取り替えてください。
サクラの作業暦
3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
開花期 |
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冬期保護 |
ムロ出し |
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植替え |
芽摘み・剪定 |
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芽押さえ・針金かけ |
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施肥 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
花芽分化 |
十月桜 |
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植替え |
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施肥 |
11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||||||||
上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 | 上 | 中 | 下 |
冬期保護 |
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剪定 |
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針金かけ |
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植替えの最適期は春の芽出し前の3月上旬~中旬頃で、この頃は根の回復も早いので強い切込みをしても樹勢を落とすことはありません。
また、春ほどではありませんが、秋の彼岸頃(9月中旬)からの植替えも可能。この場合は直後に厳寒期を迎えることを避けるため、遅くとも10月中旬までには済ませておきましょう。
昔はバラ科の樹は根頭癌腫病予防のために秋の植え替えが定石でしたが、今は質のいい抗生物質剤や殺菌剤が容易に手に入るので、春の芽出し前でも問題ありません。
根捌き後はマイシン系の抗生物質剤に根や道具を浸漬し、古土も全て取り替えてください。
根頭癌腫病になってしまった樹は、感染拡大を防ぐために処分してしまうことが多いのですが、程度の軽いものなら癌腫を全て切除し、しっかり殺菌すれば完治は容易でなくとも大きな被害になることはありません。
若木の植え替えは枝の剪定と同様に太根をしっかり整理することが大事ですが、切り口から病原菌が侵入したり、腐食が入る危険があります。
大きな傷はもちろん、小さな傷にも必ず保護剤を塗って植え込んでください。保護剤には殺菌効果のあるトップジンMペーストがお勧めです。
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桜は枝の更新が早く、古枝が枯れてしまうことはよくあるので、枝作りが難しい樹種の1つと言えます。
昔から「桜切る馬鹿」と言われますが、花ばかり気にして剪定を怠ると肝心の盆栽としての姿からかけ離れてしまうので、特に若木のうちはしっかり切り込んで枝を作っていきましょう。
花を見ながら小枝をある程度充実させるためには、芽摘みや剪定が重要な役割をします。
剪定は花後すぐ(芽出し前)に伸び過ぎた枝を切り詰める作業と、落葉後の本剪定の年2回で、成長期の間は花芽を意識した芽摘みで小枝を作り、観賞に備えて秋に全体を整えます。
若木の場合は花芽を気にしなくていいので伸びたら摘むを夏まで行い、太らせたい枝は芽押さえしておきましょう。
太枝の剪定はなるべく避けたい樹種ですから、若木のうちに積極的に剪定することがポイントです。不要な枝は思い切って切り除き、目標の樹形に近づけてください。
基本樹形や枝作り段階の養成木の芽摘みは4月中旬~6月頃。新梢を少し伸ばし気味にしてから2~3節の所で摘み取ります。芽摘みはあまり早いうちから行うと枝の力が弱って思うように2番芽が伸びてこなくなるので、一旦伸ばして樹勢をつけさせることがポイントです。
養成木の芽摘みは新梢を一旦伸ばしてから2~3節で摘む
樹勢のある養成木なら6月以降も二番芽が勢いよく伸びてきますが、枝作りの段階ですから、強く伸びるものから芽摘みや芽押さえを繰り返し行います。
頂部の強い枝はあまり伸ばすと太くなってしまうので早めに摘むか、先だけ止めて、枝元を針金で伏せておきましょう。
枝として残したい所は針金で伏せて太らせてから切り戻すなど、各枝の樹勢を平均に保つことが大事です。
完成木は新葉がまだ伸び出さないうちに摘んで抑制をかける
完成木の場合は、維持のための芽摘みをします。
伸ばしてから摘む養成木の芽摘みとは少し違って、新梢はあまり伸び出さないうちに摘むのが基本で、葉が展開する前後で新芽を1~2節残して摘み取ります。
芽摘み後伸び出す2番芽はそのまま伸ばしておくか、針金で伏せて抑制しておきましょう。
品種にもよりますが、一般的な桜の花芽分化は7月中旬~8月頃なので、花芽を作るためには芽摘みや剪定は遅くとも7月上旬頃までには終わらせておく必要があります。
梅雨明け頃からは新芽の伸びも落ち着きますから、花を見る段階の樹は無闇な剪定を控えてください。
桜は枝の更新が早く、枯れては新しい枝ができるを繰り返す性格があります。
「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」ということわざがあるように、桜は枝の維持が難しく、こまめな芽摘みや剪定なしでは盆栽としての樹姿を作ることはできません。
剪定や針金かけの適期は基本的に落葉期ですが、花を見るために長めに残しておいた枝は花後に整枝を行うことが多いようです。葉芽を確認しながら短い位置で切り詰め、枝向きの矯正などもこの時に一緒に行ってください。
多くの品種は芽出しに先駆けて花を咲かせるので、花後=芽出し前と考えておいていいです。
時期は3月中旬~4月上旬頃。花の観賞が終わり、葉芽が動き出す前に剪定します。
本格的な剪定は休眠前ですが、花を見るために長めに残しておいた枝は花後すぐに2節で切り詰め、針金で向きを修正するなどの簡単な整姿をしておいてください。
剪定後は新芽が動き出すので適宜芽摘みや剪定をし、梅雨開け~夏の花芽分化期までに各枝を充実させておきます。
落葉後の11月頃からは本格的な剪定の適期。
花芽と葉芽を確認しながら不要な枝をしっかり整理し、必要に応じて針金で向きを修正するなどの整枝作業をします。
特に若木ではまず樹形作りが課題なので、積極的な剪定が欠かせません。不要枝は思い切って切り詰めて基本樹形を定め、枝作りを始めてください。
桜の場合、太枝の剪定はできるだけ避けたほうがいいのですが、やむを得ない時は枝の付け根部分まで深めに切り込みます。中途半端に切り残してしまうと肉巻きも悪く、そこから腐れ込みが生じやすくなるので注意してください。
また、桜の剪定で最も大事な事は傷口の保護。剪定痕から水分が逃げて衰弱の原因になるだけでなく、傷口から腐朽菌や害虫が侵入する危険が高まります。
大きな傷はもちろんですが、小さな傷でも必ず保護剤や癒合促進剤を塗ることを徹底してください。
桜の整枝はあまり寒い時期までやっていると枝枯れを起こすことがあります。落葉後、おそくとも12月中旬までには済ませ、厳寒期の剪定や針金かけは控えてください。
ある程度枝作りが終わって花を付けさせる段階の樹には、新梢を段階的に切り戻す追い込み剪定も有効です。
やりかたは春から伸びる新梢は芽摘みをしないで一旦伸ばし、樹勢を付けさせておきます。そして葉が5~6枚くらいに達した頃に先端の芽を摘み伸びを止めてしまいます。
植物は頂芽優性の性質を持っているので、残された葉のうち最も先端部に近い葉の腋から2番芽が伸びてきます。そこでこの2番芽が確認できたらその芽ごと先端の葉元の枝を剪定します。
葉数を確保しながら徐々に枝元近くに2番芽を吹かせることで、樹勢を損なうことなく残した枝を充実したものに出来るという考え。
7月~8月の花芽分化期までにこの作業を2~3回繰り返していると、枝元付近に花芽を分化させることができるようになります。
だたし品種によっては2番芽が吹きにくいものもあります。また追い込みを剪定をしているうちは小枝は増やせないので、花芽を付けさせるための芽摘み法の1つとして覚えておくといいでしょう。
桜は枝の更新が早く、毎年姿が変わるといって良いほど枝決めの難しい樹です。
そのため樹形作りはこまめな芽摘みや剪定で整え、針金はあくまで補助的に使うと考えてください。
桜は水分が多く、古枝に針金をかけようとすると枝折れしやすいので、今年伸びた柔らかい枝への芽押さえや、枝向きの軽い直し程度にしてください。
役枝として残したい部分は剪定せずに枝を下げて(芽おさえ)、欲しい太さを得てから元芽の位置まで切り戻してください。
基本的には春と秋の剪定後に補助的に針金かけをしますが、向き修正くらいの軽作業ですから必要に応じて行うことができます。
ただし秋(休眠前)以降にかける場合はあまり遅くなると枝枯れの原因になるので、遅くとも12月中旬までには終わらせておきましょう。
日本に元々自生する桜の原種は山桜や大山桜、大島桜など約10種ほどですが、それらが自然交配した野生種や園芸品種は400種以上にのぼります。花も品種により個性があり……
桜は枝の更新が早く、枯れては新しい枝ができるを繰り返す性格があります。「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」ということわざがあるように、桜は枝の維持が難しく、病害虫の被害……
都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。
アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。
現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。
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