クロマツ(黒松)の剪定
投稿日:2013/11/03 更新日:2021/12/16
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クロマツは松柏類の代表的な樹種で、その剪定方法は他の松柏類の基本となります。
剪定は樹形を整える他に各枝の力の調節や風通し、日当たりの改善などいくつもの目的がありますが、雑木のように剪定したらすぐに次の枝が出るわけではないので、先を考えた剪定が必要です。
ひとことに剪定といっても、広義では芽摘みや芽切りなどの作業も剪定の1手法です。
樹形作りは剪定だけでできるものではなく、芽摘みや芽切り、葉すかし、針金整枝などと合せて樹勢を調整しながら、徐々に作り上げていくものと考えておきましょう。
C o n t e n t s
- クロマツの仕立てはいい素材選びから
- クロマツの苗仕立てと剪定
- 目的別の剪定(不要枝の剪定・小枝を増やすための剪定・胴吹き芽を呼ぶための剪定・改作のための剪定)
- 根の剪定
1.クロマツ仕立てはいい素材選びから
樹勢の強いクロマツは枝の伸びがよく、とくに若木では生長と共に強い枝がグングン伸びて、上部に側枝が集中してきます。
それと同時に、下の方の枝は徐々に劣勢となって枯れてしまい、いざ盆栽作りを始めようとしても、仕立てる樹形も限られて満足な盆栽作りができなくなってしまいます(図1)。
クロマツの盆栽作りは、剪定や芽摘み、針金整枝など様々な作業によって仕立てられますが、よい作品を作るためにはよい素材を選ぶ(作る)ことが大事です。
放任状態の素材を入手してどんなに手をいれても、よほどの腕がなければ徒労に終わってしまいます。
盆栽の素材としても好ましいものは、元気があり枝が沢山ついていて、根張り、葉性、幹模様や立ち上がりもよく、多少なりとも芽摘みなどの樹勢の管理がなされているような素材を見つけてください。
一方で、痩せた素材でも幹肌の古さや幹の流れなどに見どころがあれば、文人や吹き流しを目指すことができます。
立ち上がりの曲りや葉性、枝の付き方などをよく見抜いて、早いうちに将来の樹形構想を立てておくことが盆栽作りには大切です。
【図1:クロマツ実生苗の生長過程】クロマツは生長と共に加速度的に上に伸び、下枝や側芽の伸びは段々弱くなってきます。
2.クロマツの苗仕立てと剪定
クロマツの苗木は主に実生から作られていて、1年目からミニ盆栽向きに仕立てられることもあれば、3~5年は畑やザルで肥培をし、太らせてから太幹の盆栽に仕立てることもあります。
一般に、植物は枝や根を切られると新しい芽や根を出すために多くの力を使うため、樹は太りにくくなります。
この植物生理を利用して、幹太りを期待するものは枝を走らせ(伸ばし気味にして)、作る樹形の関係でこれ以上太らせたくないものや完成に近いものは伸びる芯を止めて、小枝を充実させ、樹形を維持するための剪定や整枝をします。
2-1.ミニ盆栽向きの苗の場合
最初からミニ盆栽として作る場合、細幹の盆栽か太めの盆栽かの違いはありますが、どちらの場合も、将来の樹高を考えて基本の骨格を作ることから始めます。
文人や寄せ植えのようなやせた作りの樹形なら、あまり太らせる必要はないので、実生1~2年目から春の芽摘みを始めてください。
その年に伸びる枝の長さは、摘み残したミドリ(新芽)の長さに相当します。枝は先にいくほど節間が詰まり、小枝が解れていくようにすると自然ですから、将来のバランスを考えて摘む長さを調整し、幹枝のコケ順を作っていきます。
幹の太さも立ち上がりから樹冠までが寸胴のように同じでは不自然なので、根元から先に向かってコケ上がる(細くなる)ように、芽摘みや剪定で強い枝の抑制をする必要があります。
数年芽摘みを繰り返していると、段々と枝数が増えてきますから、混み過ぎた枝や向きの悪い枝は間引き、だいたいの骨格ができたら、完成に向けて短葉法(芽切り)も始めます。
クロマツは太い枝でも針金で曲げることができますが、若木のうちから基本の幹模様をつけておいた方が負担も少なく済みますし、後の樹作りが楽です。幹が太くなるほど曲げるのも大変になるので、素材の特徴をよくみて、どのような樹形が似合うか構想を練っておくことが大切です。
2-2.太幹ものの苗の場合
天に飾るような太幹の模様木や、樹高のある小品サイズ以上の盆栽では、樹高と樹形とのバランスに見合うだけの幹の太さが必要です。このような樹を作る場合は、数年はよく肥培しながら枝を伸ばし気味にして、ボディとなる幹を太らせる必要があります。
クロマツはアカマツやゴヨウマツよりも太りが早く、台木にも使われていますが、より早く太らせるために畑やザルで培養する方法があります。
鉢で培養するよりも、路地栽培で育てたほうがストレスなくよく育ちますし、ザルの場合もとにかく水はけと通気性が良いので、どんなに水や肥料をくれても根焼けせず、高い肥培効果が得られます。
さらに、苗木のうちに幹元を針金で思いっきり曲げておくと、太る過程で癒着し、短い期間で立ち上がりの太い素材を作ることができます。
ただし、枝を伸ばせば幹は太りますが、強い枝ばかりに力が集中して、いざ鉢上げというときに大事な下枝がなくなってしまってはどうにもなりません。
樹の状態をみながら、強すぎる枝は軽く芽摘みをして抑制をかけ、枝葉が混み過ぎていれば間引き剪定は葉すかしなどで内部の日当たりや風通しを改善し、大事なフトコロ枝を守るようにしましょう。
3.目的別の剪定
3-1.不要枝の剪定
ある程度芽摘みができていて枝数もある素材を入手したら、その樹の特徴を活かして目指す樹形を決め、役枝決めと不要枝の剪定にかかります。
一の枝、二の枝や芯(頭)となる部分、差し枝などを決め、その樹形を作る上で不要になる枝や忌枝の剪定しましょう。
この時、明らかに樹形を乱す枝や、残しておけば樹形作りの支障になるような枝(閂枝や車枝など)から抜き、いつでも切れるような枝は予備枝として残しておくことがポイント。
一度に多くの枝を剪定すると樹勢を落とす危険もありますし、予備枝は将来の樹形作りの時に差し枝やジンとして使えたり、樹形を変更したいときに重要な枝になるかもしれません。
枝の整理をすると全体の姿が見え、針金も掛けやすくなるので、必要であれば幹模様や役枝の整枝を行い、理想の樹形に近づけていきます。
素材を入手するタイミングにもよりますが、強い剪定や針金かけは春の芽出し直前(3月上旬頃)が最適期。樹勢が充分であることが前提で、事前にしっかり肥培しておく必要があります。
秋の剪定整枝も可能ですが、冬の保護は万全に行いましょう。
3-2.小枝を増やすための剪定
3-3.胴吹き芽を呼ぶための剪定(8月~9月頃)
放任状態で枝順の悪い苗木の場合は、改作するつもりで胴吹き芽を呼ぶための剪定をします。
これは樹勢が強い若木に対してよく行われる方法で、強い枝を途中で切り戻し、残した弱い芽と胴吹き芽で新しく樹形を作って行きます。
不要だからと最初から全て切ると、大事な腋芽まで枯れ込むことがありますので、少し残して切り、胴吹き芽が充分に育ってから残りを切るといいです。
切り戻した枝の残った部分は、皮を剥いで自然に枯れるのを待ちます。こうすることで傷跡も小さくなり、後の回復も早いです。
同様に、不要な枝を針金で強く曲げ、枝の勢いを抑えながら胴吹き芽を大事にすることもあります。
3-4.改作のための剪定
剪定・整枝の季節の作業
黒松の樹形作りは樹勢に応じて方法が違いますが、春から夏の生育期間中に行う作業と、秋から冬の休眠期間中の作業の2つに分けることができます。
生育期間中(4月~9月)の作業
| 作 業 | 時 期 |
|---|---|
| ①ミドリ摘み(芽摘み) | 4月上旬~5月中旬 |
| ②芽切り | 6月下旬~7月中旬 |
| ③中芽切り | 8月下旬~9月上旬 |
生育期間中に行う作業は、樹を太らせながら全体の力を均等に保ち、枝作りをするために行うものです。
この期間は強い剪定はしないで、芽摘みなどで2番芽や胴吹き芽を呼び、節や葉を短くする効果があります(短葉法)。
黒松を始め松柏類の生育期間中は、樹液の運搬が盛んで強い剪定には向きません。
①ミドリ摘み(4月上旬~5月中旬)
節目を短くしたり、各枝の力を調節するためには芽摘み(ミドリ摘み)が効果的です。
マツなどの松柏類では、新芽が伸びてまだ葉が開いていないトゲの様な状態のことをミドリといい、マツ類の芽摘みをミドリ摘みといいます。
②芽切り(6月中旬~7月中旬)
樹勢が弱っていて芽の伸びが強くないものは、無理に芽摘みを行う必要はありません。
春の芽摘み(ミドリ摘み)をしなかったものは、新芽の伸びが落ち着いた6月中旬頃になって今年伸びた芽を元から切る芽切りを行うことがあります。
芽切りは一度に行うのではなく、先に弱い芽だけを切ることで二番芽を早く呼ぶことができます。
強い芽は1週間ほど遅らせて切ることで、秋には全体の芽の強弱を均等にすることができます。
③中芽切り(8月下旬~9月上旬)
手に入れた苗木の幹や枝が間延びしている時には、8月~9月頃に今年伸びた枝の中芽切りをして、秋~翌春に新しい芽を出させる方法があります。
1節から芽が3本以上伸びている場合、2芽残して真ん中の強い枝を元から剪定し、残した2芽も伸びの強いものは芽の途中で切るなど、全体の樹勢の平均化を意識してください。
普通真ん中の芽が一番強いので、真ん中の芽を切りますが、枝を太らせたい場合はわざと強い芽の残すこともあります。
芽摘み(ミドリ摘み)や芽切りを行わなかった樹や、ニシキマツなどの特定の樹種は、秋口の芽切りが適しています。
特にニシキマツにミドリ摘みを頻繁にしていると、魅力である幹肌の割れが遅れてしまうので長く伸びた芽だけを他の芽の長さに揃えて摘む程度にしておくべきです。
中芽切りに限らず、どの芽を切れば次の枝がどのように伸びてくるかを考えながら剪定するのが大切です。
休眠期間中(10月~4月)の作業
| 作 業 | 時 期 |
|---|---|
| ④不要枝の剪定 | 10月中旬~11月下旬 |
| ⑤強剪定、針金かけ | 2月下旬~3月中旬 |
| ⑥根の剪定(植え替え) | 3月上旬~4月上旬 |
休眠期間中の剪定は主に樹形を整えるために行うものです。
10月頃から芽出し前までは樹液も少ないので太枝の剪定に適しています。
また、秋以降は樹皮と木質部が密着しているので組織が剥がれる危険も少なく、強めの針金かけも可能です。
ただし厳冬期に強い剪定や針金かけをすると損傷が大きく、枝が枯れたりするので特別な保護をしていない限りは控えてください。
作業ができない時期は、来年からの樹形構想をじっくり研究し、剪定すべき枝を決めておくいい機会です。
④不要枝の剪定(10月中旬~11月下旬)
10月頃には新梢の伸びも落ち着き、生育は休止状態に入っていきます。
このときに出来ることは、間引き剪定や不要枝の処理をします。軽い針金かけも可能です。
また、芽摘みだけでは次第に葉の量が増え、日当たりや風通しが悪くなってしまいます。
特に力の強い枝には葉も多くつきますので、葉抜き(葉すかし)や古葉刈りをして各枝の葉の量を調節し、翌春の芽が均等に出揃うようにします。
枝が欲しい部分に葉を残しておくと、1対(2枚葉)の間に胴吹き芽を持つようになります。
⑤強い剪定、針金かけ(2月下旬~3月中旬)
2月下旬~3月中旬頃は厳しい寒さも終わり、新芽が動き出す直前です。
この時期に太枝の剪定や強い針金かけなどの剪定整枝を行います。
強い剪定や整枝を厳寒期に行うと痛みが大きく枯れ込むことがありますが、生育活動が始まる時期に行えば、多少の損傷でも耐える事ができて傷口の治りも早いです。
⑥根の剪定(3月上旬~4月上旬)
根の剪定はすなわち植え替えのことで、⑤と同時期かその後に行います。
根を強く切り詰めるのも樹にとってダメージの大きい作業ですが、新芽が伸び始める早春に行えば損傷も少なく回復が早いです。
