実物類の芽摘み
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実物類は樹形を作りながら実を付けさせなければいけないので、他の樹種よりも難しいところがあります。
樹形を作るために剪定や芽摘みをすれば枝が充実せず開花結実をしなくなるし、実をつけさせるために枝を充実させようとすれば樹形がどうしても乱れてしまうからです。
花芽をとまらせ、実を付けさせながら樹形を作ならければいけないので、計画的な芽摘みが必要になってきます。
- 枝葉の数を増やし、健全な樹を育てることができる
- 適切な時期に芽摘みを行うことによって、開花結実と樹形作りを同時に行う(完成樹)
- 次に出る葉が小さくなり、幹と葉の大きさに調和がとれる
- 樹形を作る(若木)
実を付けさせるための管理
植物は樹勢が旺盛な栄養生長をしている間は花芽はあまり多くつきません。
花芽を多く付けさせるためには、木を老化させる(樹勢を抑える)必要があります。
また、実物類は毎年多くの実と付けさせていると樹が弱ってきますから、付ける実の数を少なくするか2~3年に1回は結実しても実を切り取り、樹を休ませてあげることも大切です。
花芽を多く付けさせるためには、次のような管理をして樹勢を抑えるようにします。
若樹、未完成樹はまず樹形作りから
芽摘みを続けると枝数は増えていきますが、枝を充実させることができません。
花芽は枝が充実しなければ作られないので、花を見るためには花芽分化期に枝が充実するように芽摘みを終わらせておく必要があります。
ただし、若木の場合はまずは枝を充実させることが重要です。
枝を増やすために芽摘みの回数を増やして、樹形を作ることに重点を置き、花や果実はそのあとのことと思ってください。
日当たり、肥培管理は十分にしておくこと
生殖生長をしている老樹や完成樹でも、日当たりのよい枝とそうでない枝では、日照条件のよい枝によく花芽はとまります。
また、芽摘みを正しく出来ていたとしても、事前の肥培管理が十分にできていなければ次第に樹が弱って枝数を増やすどころが枯れてしまいます。
日頃から日当たりと肥培管理には注意して元気な樹をつ育てましょう。
灌水と肥料は控えめにする
ただでさえ灌水は難しいところがありますが、花芽を付けさせるためには水を控えて樹の生長を抑える必要があります。
花芽分化期に水や肥料を与え過ぎると、樹に勢いがついて枝が伸張しいつまでも花芽がつきません。この時期には施肥や灌水を適度に控えて日当たりよくし、花芽分化を促します。
また、花が咲いたら施肥を中止し、結実して実が親指くらいに大きくなって落果する心配がなくなってから再び施肥を開始します。
枝を下げて樹勢を抑える
植物は上に枝を伸ばし太陽の光を葉に取り入れて光合成をしています。
芽摘みや剪定などで勢いを抑えることは可能ですが、この枝を針金などで下げること、その枝の伸びは止まり、短果枝(短く充実した枝)が出やすくなります。
徒長枝は早めに剪定する?
あまり勢いが強くいつまでも伸びるような枝(徒長枝)には花芽は付きにくいものです。
通常は他の枝に力を分散させるためにも徒長枝は早めに切るのがよいです。
しかし、敢えてこの徒長枝をそのまま伸ばしておくことで、徒長枝に多くの栄養を消費させ、他の枝を栄養不足にして老化させる方法もあります。
樹形作りのために、一度大きく伸ばした枝を秋に切り戻すこともありますから、残すか切るかは樹勢や樹形を考えて決めます。
実物類の花芽分化期
樹種名 | 花芽分化期(頃) | 開花時期(頃) |
---|---|---|
マユミ | 8月上旬 | 新梢に分化→翌年5月中旬 |
ユスラウメ | 8月 | 新梢に分化→翌年4月 |
ウメ | 8月上旬~中旬 | 新梢に分化→翌年2~3月 |
ウメモドキ | 7月下旬~8月下旬 | 新梢に分化→翌年5~6月 |
カリン | 7月上旬 | 新梢に分化→翌年4~5月 |
カイドウ | 6月~7月 | 新梢に分化→翌年4~5月 |
クチナシ | 7月中旬~下旬 | 新梢に分化→翌年6~7月 |
ザクロ | 4月~6月 | 新梢に分化→翌年6~7月 |
ヒメリンゴ | 6月~7月 | 新梢に分化→翌年4~5月 |
ピラカンサ | 5~6月(橙黄実)、9月~11月(赤実) | 新梢に分化→翌年5~6月 |
ベニシタン | 7月~9月 | 新梢に分化→翌年5~6月 |
美男カズラ | 6月~7月 | 新梢に分化→翌年7~8月 |
実物類の樹種別の芽摘み
- ヒメリンゴの芽摘み
- マユミの芽摘み
- ウメモドキの芽摘み
- カリンの芽摘み
- ピラカンサの芽摘み
- ベニシタンの芽摘み
- グミの芽摘み
- 美男カズラの芽摘み
- ユスラウメの芽摘み
ヒメリンゴの芽摘み
ヒメリンゴの蕾(4月下旬:東京)
ヒメリンゴの花芽は6~7月頃にとまり、翌年の4月頃に開花します。
花芽は今年伸びた短い枝の充実したもの(短果枝)にとまります。
完成樹や老樹ならば短果枝が出やすいですが、若木や樹勢の強いものは枝の伸びが強いので、樹形が崩れてしまいます。
しかし花芽を付けさせるためには、春から伸びた枝は芽摘みせず、そのまま伸ばしておく必要があります。
カイドウの花を近くに置いておくと受精する
ヒメリンゴは両性花ですが自家受精がほとんどありません。
結実させるためには、同じバラ科リンゴ属のズミやカイドウの花の近くに置いて自然交配(もしくは人工交配)させる必要があります。
ヒメリンゴの若木の芽摘み
春から伸びた新芽(5月頃)
ヒメリンゴの枝を作るためには、芽摘みはほとんど行いません。樹形をひどく乱すような枝のみ枝先を摘んだり剪定をします。
徒長枝もそのまま伸ばしておき、秋~冬の剪定で2~3節残して切り戻し、形を作ります。
徒長枝以外の枝もそのまま伸ばしておき、伸びが落ち着く6月頃に針金を掛けて整枝します。
ヒメリンゴの完成樹の芽摘み
ヒメリンゴの結実したばかりの実
完成樹でも花芽を付けさせるためには芽摘みは控え、先を伸ばして枝を充実させます。
樹形はかなり乱れますが、そこは目をつぶり花芽を付けさせるようにしてください。
樹形作りは秋~冬の剪定で行います。
老樹ならそれほど勢いよく枝が伸びることはありませんが、樹形をひどく乱すような枝のみ先を摘むようにしてください。
また、花芽を付けさせるためには灌水や肥料を控えますが、開花結実後は水切れや肥料切れが落果の原因になりますから、灌水や施肥には十分注意してください。
マユミの芽摘み
マユミの花芽(3月下旬:東京)
マユミの花芽分化は夏場8月頃で、翌年5月頃に今年伸びた枝の芽元から2~3節くらいまで花芽が付きます。
基本的には、春から伸びた枝には芽摘みを控えて徒長させ充実させるとともに、他の枝の勢いを抑えて多くの花芽を付けさせます。
ただし、あまり徒長枝を放置していると枝は間延びしてよくないですし、弱い枝が枯れることにもなりますから、花芽が確認出来る頃になったら花芽を残して切り戻してください。
マユミの若木の芽摘み(4月下旬~5月頃)
花芽は早めに切って芽摘み剪定で枝作りをする
若木のうちは樹形作りのための芽摘みをしますから、花は諦めて枝に力がいくようにします。
花が咲くことで栄養分が取られてしまいますから、もし花芽がついた時には早めに切り取って枝の充実に栄養がいくようにするのです。
4月下旬~5月頃になると各枝の伸びも落ち着いてきますから、2~3節残して切ればいいでしょう。
全体の樹形作りは秋以降の落葉後に剪定をします。
枝は対生にでるので、交互に出るように形を考えて剪定します。
マユミの完成樹の芽摘み(花後5月頃)
花芽が確認できたら枝先を必要なだけ残して切る
老樹ならば徒長枝もあまり出ることはありませんので細かい芽摘みも必要なくなります。
徒長する枝も伸ばし気味にすることで、他の枝の力を抑え、花芽を沢山付けさせることができます。
春から伸びた枝は芽摘みをせず、花後の4月下旬~5月頃になったら花がらを残して必要な長さで先を切ります。
花芽の付かない徒長枝でも、あまり伸びてくるようだったらこの時に先を詰めておいてください。
この時先端に葉を2~4枚(1~2節)残しておきますが、秋に観賞する時には見た目を考えて先の葉の部分は切り取っておきます。
樹形を整えるのは落葉後の剪定で行います。
また、他の樹種でも共通のことですが、いつまでも実を付けていると樹が弱りますから鑑賞後は早めに実を切り取るようにしてください。
毎年沢山の実を付けさせるのも避け、隔年で樹を休ませることをお勧めします。
ウメモドキの芽摘み
ウメモドキは7月頃が花芽の形成期で、翌年伸びて充実した枝に花芽がつきます。
雌雄異株なので、結実させるためには雄木と雌木の用意が必要です。
基本的な樹形作りは秋の剪定で行います。
また徒長枝や不定芽が伸びてきますから、不要な場合は全体の樹勢をみながら切り取ります。
ウメモドキの若木の芽摘み(春~秋)
ウメモドキも若木の芽摘みの目的は樹形作りですから、花は期待せず枝が伸びてくるに従って芽摘みをします。
必要な枝を2~3節(葉を2~3枚)残して先を摘むと、2番芽が伸びてきます。ウメモドキの枝は伸びるのが早いので、秋までに3~4回の芽摘みをすることができます。
なかには勢いの強い枝や不定芽が伸びてきますが、不要だからとすぐに切ってしまうと木が弱ったり、他の枝に力がいきすぎてしまいます。
徒長枝は全部切らないで、一度伸ばしっぱなしにしてから秋に剪定するなどの方法をとるといいです。
ウメモドキの完成樹の芽摘み(4月下旬~5月頃)
ウメモドキの完成樹の芽摘み:
盆バカひこさんの盆栽道楽
実を付けさせるためには、若木のように芽摘みを繰り返していては花芽がとまりません。
春から伸びてきた枝に7~8枚の葉がついたころに、枝先をつまんで伸びを止めておきます。
その後伸びてきた2番芽は1~2節残して芽摘みをし、残した枝の充実を図ります。
新芽の伸びは9月~10月になればとまるので、元から2~3節残して切り詰めれば元芽に花芽がとまります。
樹形作りのための全体の剪定は秋~冬が適期です。
カリンの芽摘み
カリンの花芽は7月~8月頃に形成されて、翌年5月頃に前年枝(2年枝)に開花結実します。
若木や樹勢の強いものでは徒長枝が出やすいですが、この徒長枝には花芽はとまりにくく、充実した短い枝(短果枝)にとまります。
花芽を多くつけるには、この徒長枝を切り詰めて、充実した短い枝を付けさせることが必要です。
カリンの若木の芽摘み(4月~7月上旬)
春から伸びた枝で必要なものを2~3節(葉を2~3枚)残して先を摘み、枝数を増やしていきます。
徒長枝や不要枝は早めに切り取り、針金や秋の剪定で形を整えるようにします。
カリンの完成樹の芽摘み(6月中旬~7月上旬)
花芽を付けさせるためには、勢いの強い枝は切り詰めて、次に出る枝を充実させなければいけません。
完成樹でも樹勢の付いた樹ならば枝が50cmくらい伸びてくるものですが、早い段階で切らないことがコツです。
早い時期に芽摘みをすると花芽は付きにくくなりますので、あまり早く芽摘みをしないようにしてください。
芽摘みの時期は6月中旬~7月頃になります。
6月中旬になって、徒長枝や不要な枝は元から切り、必要な枝は2~3節残して剪定します。
短く切り詰めることで、翌年には短果枝が作られやすくなります。
ピラカンサの芽摘み
ピラカンサの枝につくトゲ
ピラカンサは赤実のトキワサンザシ(常磐山査子)や黄~オレンジ実のタチバナモドキ(橘擬)の総称で、花芽分化はトキワサンザシは10月~11月頃、タチバナモドキは6月頃。
いずれも翌年の5月~6月頃に開花します。
どちらも同じピラカンサとしてまとめられますが、注意しておかなければいけないことは、タチバナモドキをトキワサンザシと同じように芽摘み剪定しているといつまでも花芽を付けることができないということです。
つまり花芽を付けさせるためには、トキワサンザシは8月頃まで、タチバナモドキは開花前の春先3月~4月頃までに芽摘みや剪定を終わらせておく必要があります。
性にもよりますが、普通ピラカンサの花芽の付く枝は、トゲの有無で分ります。
トゲのある枝や短果枝には花芽が付きやすく、徒長枝には花芽は付きません。
ピラカンサの若木の芽摘み
ピラカンサの花
ピラカンサも若木の芽摘みは樹形作りのために行いますから、開花しても結実しないように早めに取り除くようにしてください。
実をつけさせるとその分栄養が消耗し、弱い枝しか出なくなってしまいます。
トキワサンザシの芽摘みは基本的には5月頃に2~3節残して先を切ります。2番芽もあまり伸びるようでしたら先を止めておきます。
弱い芽はそのままにしていいですが、管理がよければ6月~8月の間には徒長してきますので、これも2~3節残して切るようにしてください。
タチバナモドキの芽摘みは春先には済ませておく必要があるので、この時期に樹冠から伸びた徒長枝や不要枝は2~3節残して芽摘み剪定しておきます。
ピラカンサの完成樹の芽摘み(6月頃)
ピラカンサの花芽がつく枝にはトゲが出る
完成樹は実を付けることが大切ですから、トゲのある枝や短果枝を特に大切にします。
トキワサンザシの場合、徒長枝は5月頃から芽摘みができますが、さらに6月頃になれば結実した枝としない枝がわります。
トキワサンザシの花芽分化期は10月頃なので、芽摘み後に伸びてきた枝は8月頃までは芽摘みを繰り返しても大丈夫です。
ただしあまり細かい剪定や芽摘みは控え、一度伸ばしてから切り詰めるようにしてください。
ピラカンサは多くの実を遅くまで付けていても樹勢が落ちにくいですが、小さい樹は力の消耗も早いので、肥培管理はもちろん時には樹を休ませることも大事です。
また、ピラカンサは下枝が弱くなりやすいので、下枝の葉を多く残して全体の力を均等にするように心がけ、不要な枝や徒長枝は早めに切ってください。
ベニシタン(シロシタン)の芽摘み
ベニシタン(シロシタン)の枝は横に伸びるため
針金整枝をしてもいい
ベニシタンは7月頃に花芽はとまり、翌年5月頃に開花します。
同じコトネアスター属には、斑入り性のものやシロシタンという品種も盆栽に仕立てられていて、ベニシタンによりも実が大きくなります。
ベニシタン(シロシタン)の枝は横に伸びる性質があり、まっすぐ上に伸びたり下垂する枝もよくでますので、この様な枝は早めに切るようにします。
全体の樹形作りは秋~冬の間の剪定で整えるのが普通です。
ベニシタン(シロシタン)の若木の芽摘み(4月~9月頃)
若木では主に枝数と増やして樹形をつくるための芽摘みをします。
春から伸びる枝は2~3節残して先を切り、2番芽~3番芽も伸びに応じて芽摘みをします。
樹勢のいい木なら年に2~3回の芽摘みで小枝を増やすことができます。
残した必要な枝は針金をかけて形を整えます。
立ち上がる枝や下垂する枝は樹形を乱しますので、早めに切り取ってください。
ベニシタン(シロシタン)の完成樹の芽摘み(5月頃)
シロシタンの花
完成樹では花芽を付けさせることが重要です。
ある程度樹形が乱れるのは目をつぶって、全体の樹形作りは、実を鑑賞した後の秋~冬の剪定で整えるようにします。
春から伸びる不要枝(立ち枝や下垂枝)は早めに元から切り取りますが、そのほかの枝は花後に花を残して先を切るようにします。
ユスラウメの芽摘み
ユスラウメは8月頃に花芽をつくり、翌年春に開花します。
サクランボに似た実は、痛みやすいので流通していませんが、食用にもなります。
他の実物類と同じで、若木と完成樹では芽摘みの方法が違います。
若木、完成樹ともに全体の樹形作りは落葉後の秋~冬の剪定で行います。
ユスラウメの若木の芽摘み(6月頃)
若木のうちは樹形作りのための芽摘みをします。
苗木の場合は幹を太らせるために、春から伸びた枝は切らずにそのまま伸ばし、秋~冬の剪定で樹形を整えます。
ある程度形になっているものなら、春から伸びてくる枝は6月頃になったら2~3節残して先を切り、枝数を増やします。
ユスラウメの完成樹の芽摘み
完成樹ならば実を付けさせることが大切ですから、春から伸びた枝は切らずにおいて花後に必要な長さを残して先を切り詰めます。
不要枝や徒長枝は早めに切り、全体の樹形作りは落葉後秋~冬の剪定で行います。
ユスラウメの実はそのままだと実がたくさんつきすぎてしまいます。
沢山の実を付けていると木が弱ってしまいますので、早めに摘果するか付ける実の数を少なくすることによって長い時間鑑賞することができます。
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