ギョリュウ(御柳)の育て方

投稿日:2012/03/11 更新日:2021/09/16

ギョリュウ(御柳)の育て方

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ギョリュウ(御柳または檉柳、学名:Tamarix tenuissima)はギョリュウ科ギョリュウ属の落葉小高木。

鱗片状の細かい葉は針葉樹を思わせますが、実はナデシコ目の仲間で、春~秋の間に2~3回薄桃色の小さな花を多数咲かせます。

原産は中国で日本には江戸時代に観賞用に持ち込まれ、庭木や公園樹、花材としても親しまれてきました。

盆栽として作られるようになったのは明治の末頃からで、古色を帯びた幹肌や清涼感のある葉姿はマツ類やシンパク等に引けを取らない存在です。

1. ギョリュウの培養の基本

ギョリュウの管理場所

ギョリュウ属の仲間はユーラシアとアフリカの乾燥地帯や塩分の多い土壌などに広く分布していて、水辺近くに特に多く見られます。

他の高木が育たないような場所で日照権を独占して育つ植物ですから、管理場所はマツやシンパクなどと同じように日当たりと風通しのよい場所を用意してやる必要があります。

充分な日照が得られないと枝葉が軟弱になって葉色も悪くなり、枝が間延びした印象になってしまうので、夏も特別な遮光は必要ありません(小さい樹や弱っている樹を除く)。

暖地性の植物ですが耐寒性も強いので、冬も過保護にする必要はなく、霜に2~3度当ててから棚下やムロにいれて保護してあげてください。

ギョリュウの灌水

乾燥地に適応するために根を深く伸ばして水分を旺盛に吸収し、暑さや塩害にも強い性質を持っています。水を吸い上げる力が強いので、水切れには注意が必要ですが、乾きにも強いので灌水は普通でよいです。

1日2回を目安に、乾きの早い夏場は灌水頻度を増やしたり腰水にしたりして水切れのないようにしてください。

夏も特別遮光は必要ないのですが、小さい樹は用土も少ない分乾きが早く、鉢が熱せられて根を傷める危険もあるので、2重鉢にしたり、砂を敷いたり、遮光ネットをかけたりして乾きすぎや高温障害を予防しましょう。

使う用土も極小粒~細粒の赤玉土を主体とした、保水性と排水性のいい用土を使ってください。

ギョリュウにとって、夜露も大事な養水分の補給源です。日除けを設置している場合は、夜露が降りるように夕方はたためるようにするとなおよいでしょう。朝夕の葉水も効果的です。

ギョリュウの施肥

日当たりさえよければ痩せ地でも育つ丈夫な樹ですが、盆栽では比較的肥料を効かせたほうがよくできます。

梅雨を除く生長期(4月~11月頃)の間に月1回のペースで緩効性の有機肥料を置きましょう。

肥料ヤケの心配はほぼないですが、一度に多くの肥料は必要ありません。葉色や樹勢をみて、少ない量を継続的に効かせることがポイントです。

養成木は上記の要領で充分ですが、完成木では控え目にして樹勢を維持する必要があります。

特に夏以降にチッ素を効かせすぎると、せっかく落ち着いた樹形が乱れる危険があるので、生育後半の肥料は少なめにしてリン酸分をしっかり効かせるようにしてください。

2. ギョリュウの増やし方

ギョリュウは発根がとてもよく、5月から8月頃の間なら細枝や太枝を挿してもほぼ活着します。

肥培すれば太りも早いので、挿木2年目くらいから針金で幹模様を入れ、枝を走らせては切り戻す作業を繰り返して、基本の幹模様を作っていきましょう。

枝は古くなると折れやすく針金も効きにくいので、柔らかい新梢のうちに幹模様をつけておくとあとの樹作りが楽です。

3. ギョリュウの病害虫対策

美味しくないのか、病害虫はほとんど発生しない樹種です。

定期的な消毒は他の樹種同様に行いますが、培養条件さえ整えていれば特に気にする病気もありません。

4. ギョリュウの適期作業

ギョリュウの作業カレンダー

3月 4月 5月 6月
 
冬期保護
 
ムロ出し
 
 
 
 
 
 
植替え
 
 
 
芽かき
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定①
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
7月 8月 9月 10月
 
 
 
 
 
 
 
 
 
芽かき
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定①
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定②
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
11月 12月 1月 2月
 
 
 
 
 
 
冬期保護
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定②
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

植替え(3月)

植替えの適期は、芽動き前の3月中旬頃。

水や肥料を多く吸い上げるぶん根のまわりも早いので、ギョリュウの場合は毎年の植替えが基本です。

植替えずに2年目に入ると枝枯れを起こしやすくなるので注意してください。

落とす古土は全体の1/3~2/3を目安に、鉢土の周りや底の土をほぐします。根は雑木類と似て細根がよく出ますから、しっかり処理して新根の伸びる余地を作ってやりましょう。

また、ギョリュウは根張りもよくできる樹ですが、鉢土の周りだけほぐすやりかたを続けると、根元の土が硬くなって水通りを悪くしてしまいます。2年に1度は根元の土までしっかりほぐして、新しい用土に更新してやることも大切です。

植替え時期はムロ出しも始まる季節ですが、4月頃まではまだまだ遅霜が降りる可能性があり、気圧の変動で強風も吹くので植替え後の水切れには注意が必要です。

4月以降は徐々に外気に慣していきますが、気温が下がる夕方以降は棚下などにおいて乾燥した風や霜から新芽を守ってあげてください。

芽かき(5月~7月)

ギョリュウの芽かき

ギョリュウは枝の途中や先端からたくさんの芽を吹くので、不要な芽は掻き取ってください

ギョリュウは芽吹きが非常に旺盛でどんどん胴吹きしますから、必要な芽以外は元から掻き取っておく必要があります。

最初の芽かきは5月頃。新芽が3~5センチ程に伸びたら、必要な位置の芽を3~4本残して、他は元から掻き取るようにしてください。

最終的には枝が2叉に分かれるように芽も2~3本に調整しますが、整枝の途中で枯れる場合もあるので、保険のために多めに残しておいたほうが安心です。

ギョリュウは生長期には旺盛にたくさんの芽を出してくるので、このような芽かき作業がとても大事。多くの芽を残したままにしていると、樹形作りの支障になるだけでなく、枝の力が分散し全体的に弱い枝ばかりになってしまうので、ある程度伸びたら不要な芽を掻くことを忘れないでください。

残した芽がさらに伸びて軸が固まってきたら針金かけができます。そうして伸びた枝を再び必要な位置で切り戻し、出てきた2番芽をまた芽かきするという作業を成長期の間に2回ほど行うことができます。

剪定

①枝作りのための切り返し剪定(6月~7月頃)

枝作りのための剪定は、考え方は芽摘みと似ていて、伸びた新梢を必要な所で詰め(切り返し剪定)、そこから小枝の分岐を作る重要な作業です。

ギョリュウらしい自然に垂れ下がる枝を作るためには、まず必要な枝を針金で下げると同時に模様を付け、2番芽が秋までに伸びきるタイミングで一度切り戻しておいてください。

この剪定は本来立ち性の枝を下げながら枝を充実させることが目的なので、針金かけも欠かせません。

ハサミ作りもできますがどうしても枝が立ってきます。ツンツンと伸びる姿も清涼感があってよいのですが、古木感を出すためにはやはり枝を下垂させる必要がありますから、針金整枝も視野にいれた剪定をするようにしてください。

②樹形を整えるための剪定(芽出し前、秋)

全体の剪定は春の芽出し前(3月頃)か黄葉後の秋(10月~11月頃)に行います。

生長期に針金や切り返し剪定で作った枝は、必要な長さで切り詰め、来年の枝作りに繋げるようにしましょう。

芽吹く力は旺盛ですが、太枝や幹切りのような強い剪定はヤケが入りやすく、枯れる危険があるので避けてください。

古枝を切る場合は、近くに吸い上げを助ける太めの枝があれば枯れ込む心配は少なくなります。

ギョリュウの枝は冬の間に枝先が枯れ込むことがよくあります。翌春には旺盛に吹き直しますから心配はいりませんが、慣れないうちは秋の剪定は軽く留め、枝を多く残すようにしてください。

特に完成樹では寒樹姿も見所ですから、秋の剪定は樹形を整える程度にしておきましょう。

針金かけ(5月中旬~7月頃)

ギョリュウの幹枝は古くなると折れやすく、クセも付くにくいので針金かけは新梢に行うのが基本です。

ハサミ作りも可能ですが、枝が上に立ち上がりやすい性質ですから、柳のように垂れた古木らしい枝を作るためには、針金の力を借りるのが効率的です。

ギョリュウの針金かけ

一枝に見る針金かけの例。葉を巻き込まないように針金を巻き、特に枝元に芸を持たせながら全体を下げる。

作業の適期は5月中旬頃。最初の芽かきで残した枝が10センチ程に伸びて軸が固まったら、新梢を全体に下げるようにして模様をつけていきます。

新梢の途中には複数の側芽が伸びていますから、針金は葉の間を縫うように、できるだけ葉を巻きこまないように丁寧に巻いてください。

枝を下げるといっても単に真っ直ぐに下げるのでは自然味も面白みもないですから、枝先の重みで自然に弧を描く姿を想像しながら、幹模様に合わせて芸のある整枝をすることが大事です。

整枝後2~3週間もすれば、曲げた新梢からさらに側芽が伸びてきますから、上記の要領で芽かきや切り戻し剪定を行ってください。

そうしてその後に伸びた2番芽に針金を足して、枝垂れ柳さながらの枝模様を作っていきます。

この針金かけは芽かきや切り戻し剪定と一連した作業で、成長期に2回も行えば充分です。2回目を迎える6月下旬~7月頃には枝の伸びもほぼ止まっているので、1年でできる枝はここまでということになります。

針金はきつくまく必要はありません。1ヶ月もすればクセはつきますから、遅くても秋までに針金を外して、黄葉~寒樹姿を眺めるのもいいでしょう。

古枝に針金かけを行う場合は、それほど太くない枝なら曲げることは可能です。ただし枝が堅く無理はできませんから、思惑通りに形を作ることは難しいかもしれません。

そのため、幹模様作りは若木のうちに基本形を作っておくことが成功への近道。作業時期も水揚げが盛んな成長期に行うようにしてください。

5. 関連ページ

ギョリュウ(御柳)の魅力

内陸に自生する植物の多くは、塩分濃度が高い土壌では水と一緒に過剰な塩類も体内に蓄積してしまい、正常な代謝ができなくなって生育阻害を起こしてしまいます。ギョリュウ……

コメント

とも さん 2021年09月20日00時05分
素晴らしい記事ありがとうございます✨参考にさせてもらってます。
初めて育てる樹なので切り戻しなど勉強させてもらいます☺️
きみ さん 2021年09月20日07時19分
とも さんへ
お、これは幹模様に風情も感じられていい樹ですね!
これから枝を作っていけばさらに良い樹になってきますね~
このページはイラストも追加しようと思っているので、少少お待ちくださいね~