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蝦夷松(エゾマツ)の育て方

投稿日:2016/01/13 更新日:2020/08/23

蝦夷松(エゾマツ)の育て方

エゾマツ(蝦夷松、学名:Picea jezoensis )はマツ科トウヒ属の常緑針葉高木。

北海道や千島列島などの北国に自生している樹で寒さに強く、短い葉が密生し幹肌が荒れやすいところが好まれます。

霧深く湿度の高い環境を好み、乾燥や大気汚染には弱い性質があるのでやや培養が難しいと言われますが、気温変化に対する順応性があるので、苗木から慣したものは温かい平地でも育ちます。

本来丈夫な樹種なので、特性を知り夏の管理さえ万全にできれば長く保ち込むことができます。

1. 蝦夷松の培養の基本

管理場所

寒冷地に自生する樹で、トドマツとともに「北海道の木」に指定され、暑さや乾燥には弱い面があります。

ただ環境変化への順応性も備えているので、若木のうちから慣せば暖地での培養も可能。

日差しの強くなる5月~6月頃から9月中頃までは風通しのいい日よけの下で管理し、乾燥や暑さから守ってあげてください。特に小品サイズのものは環境の変化に影響を受けやすいので注意が必要です。

寒さへの耐性は持っていますが、からっ風や霜に当たると枝枯れを起こしますから、厳寒期(12月~2月頃)は棚下の日だまりやムロ内で保護しましょう。

灌水

蝦夷松は一年中、高い湿度の中で生育しているような樹で、他の松柏樹種の中でも特段に水を好みます。

四六時中過水状態では根が傷みますが、特に新芽の伸びる時期は多くの水を欲しがりますし、梅雨明けから夏場にかけても乾きが早いので、水切れには特に注意が必要です。葉水や霧吹きも樹勢維持や回復にいいですから、朝夕与えてください。

春と秋は1日2~3回、夏は3回が目安ですが、乾き方は棚場環境やサイズによりますから、表面の土は白く乾いてきたら水やりするようにしましょう。

また、根詰りしているものは水をやったつもりでも内部が部分的に乾いている事がよくありますから、2~3日に1回は鉢ごと水にどっぷり漬けて、鉢の隅々まで水が行き渡るようにしてください。水に沈めた時にブクブクと気泡が浮いてくるようなら中が乾いている証拠です。

冬はムロ内で保護していれば1~2日に1回くらいでもよくなりますが、冬の乾燥した外気や風が想像以上に乾きを早めますし、冬の水切れはそのまま枯死につながる危険性が高まるので注意してください。

施肥

どちらかというと肥料を好む性質で、肥料の効いていないものは芽吹きも悪く枝枯れを起こしやすくなります。ただ多肥への害も生じやすい樹なので、仕立て段階や樹勢をみて調整してください。

基本的には幹太りを期待したり、芽摘みや剪定で枝を作る養成木は肥料を多めに効かせ、維持の段階へいくにつれて控え目にしていきます。

樹勢の落ち着いた完成木や古木に多く肥料を与えると、枝が暴れて樹形を崩してしまいますから、特に春の肥料は控えめを心がけてください。

基本的には新芽の動き出す直前の3月から5月頃の間と、9月~11月の間に月1回のペースで肥料を追加・交換。葉色の悪いものは油かすの代りに2000倍以上に希釈したハイポネックスを与えてみてください。

肥料には油かすの置き肥がメイン。秋は春肥よりしっかり効かせることが大事で、骨粉を2~3割追加して冬越しと翌年の芽吹きのための力を蓄えさせてあげましょう。

2. 蝦夷松の病害虫と対策

ほとんど病害虫の被害にあうことはないですが、新芽にハマキムシや葉ダニ類が付くことがあります。

風通しの悪い場所では虫もつきやすくなりますから、培養環境を見直し、発生時期にはベニカやマラソン乳剤などの有効薬剤を散布して予防してください。

病気はほとんどなく、むしろ夏場の無遮光や過湿、過乾による根腐れで調子を崩す場合が多いようです。

3. 蝦夷松の適期作業

蝦夷松(エゾマツ)の作業暦

3月 4月 5月 6月
 
冬期保護
 
 
芽吹き
 
 
 
 
 
 
 
植替え
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
芽摘み
 
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
施肥
 
 
 
 
 
 
7月 8月 9月 10月
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
古葉取り
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
 
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
施肥
 
 
11月 12月 1月 2月
 
 
 
 
 
 
 
冬期保護
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
 
 
 
 
 
 
 
 
剪定
 
針金かけ
 
 
 
 
 
 
 
 
施肥
 
 
 
 
 
 

植替え(3月中旬~4月中旬)

蝦夷松の植え替えは通常若木で2年に1回ですが、小品になるほど根詰まりしますので、鉢底穴を確認し根鉢の様子をみて植え替えします。

生育活動が始まる時期なら根の負担や回復が早いので新芽が動き出す直前に行います。

芽摘み(5月上旬~6月中旬)

蝦夷松の新芽は4月中旬頃から5月中旬頃にかけて伸びてきます(関東基準)。

蝦夷松の芽出しの美しさは唐松(カラマツ)に引けを取らない程で、つい芽摘みを惜しんで適期を逃してしまいますが、芽摘みをしないと枝が間延びして胴吹き芽も動かず、小枝も増えませんから惜しまず摘むことが大事です。他の松柏樹種ほど伸びる力は強くないので、春の芽摘みだけで一年の小枝作りが済んでしまいます。

蝦夷松の芽出し

伸びてきた蝦夷松の新梢(5月東京)

芽摘みの時期は5月上旬から6月中旬頃。

丸味のある黄緑色の新芽は下の方から徐々に開きながら伸びてきますから、その芽が全て伸びきらないうちに必要な長さを残して芽摘みしてください。

爪を立てると芽先が赤茶色に変色して見た目がよくありませんから、摘みたい所を親指と人差し指の腹でつまんで引き抜くように持ち上げて引き抜きます。

枝数を増やす段階の養成木の芽摘みは、新芽を少し伸ばし気味にしてから摘むのが基本で、新梢の1/2くらいを目安に摘みます。一旦伸ばして勢いを付けてから摘むことで、基部からの胴吹きを促して枝数を増やす効果が期待できます。

最初の芽摘み後にフトコロから伸び出す2番芽も、同じ要領で伸びたら必要な長さを残して摘んでください。樹勢の強いものは6月中旬頃まで2~3回の芽摘みを繰り返して小枝を増やすことができます。

維持の段階の完成木では、新梢の1/3を残すように短めに摘んで伸びを抑えます。ただし、下部の弱い枝や、伸ばしたい枝がある場合は長めに摘むか芽摘みを控えるなど、目的によって加減してください。

もともと伸びの弱い八房種は、細かい芽摘みよりも剪定に重点を置いた方が案外作りやすく、樹勢も維持できます。

剪定(2月下旬~3月、10月~11月)

蝦夷松は成長が遅く、他の松柏樹種ほど枝の伸びも早くないので、しょっちゅう剪定の機会があるわけではありません。剪定の適期も休眠期間(芽吹き前と厳寒期前)と限られているので、成長期の間は充分に枝に力を付けておいて、適期にしっかり切りすかすことが樹勢を落とさないポイントです。

蝦夷松の剪定はこれから樹形を作ろうとする養成木への「不要枝の剪定(切り込み)」が主で、完成木では時々「間引き剪定(切り透かし)」をする程度で大きな剪定は必要なくなってきます。

樹勢のついた養成木は切り込むと胴吹きもしますが、樹が古くなれば芽吹く力も弱くなるので、蝦夷松の枝を切り戻す場合は必ず芽や小枝のある部分で切るようにしてください。

適期以外に枝を強く切り込んだり、無理な矯正をすると樹がガッカリしていじけることがあり、そうなると回復までに2年以上かかるので注意が必要です。

まず1番大事な養成木の切り込み。

八房種のようにあまり大きくならないものは下手に作り込まずとも保ち込むだけでそれなりに見られるようになりますが、模様木や文人木にできる素材は枝が多いと反って盆栽らしさを失ってしまいますから、樹形作りの上で邪魔になるような不要枝や徒長枝から整理してください。

ただし蝦夷松の場合は無理をすると急にいじけることがあるので、一度に多くの枝を抜くのではなく徐々に整理していったほうが無難です。

不要な太枝がある場合は元から切らずに適当な長さを残しておいて、枯れてきたらジンに仕立てると古木の風韻が現れてきます。

針金かけ(3月~4月中旬、10月~11月)

蝦夷松の幹枝は粘りがありよく曲がるので針金掛けはしやすいのですが、その弾性が邪魔して針金が効きにい性質があります。

幹太りの遅い樹種なので2~3年は掛けたままになりますが、よく肥培した若木は案外に食い込みも早いですから、掛け直しが必要になる場合もあります。

適期は3月から芽出し前の4月中旬頃が1番よく、作業後の保護が万全にできれば10月~遅くとも11月いっぱいまでも可能。

針金をかけが出来るのは充分樹勢がついて枝もある程度充実した樹が対象で、その樹の個性(根張りや枝振り、もともとの模様や流れ)を活かした無理のない蝦夷松らしい整枝を心がけてください。

蝦夷松は枝を下げることには強く、どちらかというと男性的な幹枝が持ち味となる樹なので、「雪落ち」の風情を出すように枝を鋭角にしっかり下げると古木の風情を現すことができます。

その反面、持ち上げたり捻ったりすると枝枯れしやすい特徴があるので、どうしても捻る必要がある場合は、長い区間で大きく捻るようにしましょう。

古葉取り(7月~8月)

古葉取り

3年枝についた古葉はやや黄変して取れやすい状態に。そのまま自然落葉するが適宜掃除して蒸れを解消し、生育の手助けを。

葉刈りや葉すかしは基本的に不要ですが、フトコロに古葉が多く残っている場合は、7月~8月頃に古葉取りをすることがあります。

蝦夷松の古葉取りは主に古々葉(3年葉)が対象で、若い葉より少し黄味かかり褪せた色をしている葉をピンセットで落としてください。

ピンセットでつまんで少し揺すれば簡単に落ちる状態になっているはずですが、取れない場合は時期に拘らず気がついた時に掃除するようにしてください。

古葉取り

古々葉(3年葉)を落とす前と後。やり過ぎると枝枯れする事があるので、無理せずこのくらいに留めておいた方が安全

古葉取りをすることで夏場の蒸れや、フトコロ環境を改善し、下枝や弱い芽を保護することができます。ただし無理に引っ張ると樹皮を傷付ける危険がありますし、一度に多くの葉を取ると樹勢を落とすこともあるので無理は禁物です。

針金掛けや芽摘み、剪定などの手入れ全般に言えることですが、樹の特性や樹勢を無視して自分の思い通りに作ろうとしないで、その樹の生育の手助けをする気持ちで手入れができれば樹も応えてくれます。

4. 関連ページ

蝦夷松(エゾマツ)の魅力

霧深い寒地に自生する樹で、黒褐色の幹は古くなると鱗状に細かく荒れ、短く密生した独特の葉が好まれます。特に芽出しの美しさは四季の変化に乏しい松柏類では葉物にも劣ら……

コメント

ゆぅ。 さん 2020年09月14日12時39分
蝦夷松盆栽を冬の保護を前提として秋に遅くても10月中旬までに
植え替えようと思うのですが、どう思いますか?
きみ さん 2020年09月14日17時10分
ゆぅ。 さんへ
蝦夷松の植え替えは、春の芽出し頃(3月中~4月中旬)が1番いいです。秋の植替え(10月上旬~11月上旬)もできますが、お察しの通りそのあと休眠期に入るので冬は霜に当てないなどの注意がいります。冬の管理ができるなら秋の植替えでも大丈夫です。
あまり植替える木ではなく、若い木でも3~4年に一度で充分です。
ゆぅ。 さん 2020年09月14日18時09分
お返事ありがとうございます。
植え替え周期が長いイコール成長がゆっくりなんですね。
みや さん 2020年09月15日14時24分
蝦夷松が好きで数本持つようになりました。
今の時期に、葉っぱが緑のままパラパラと落ちてしまってます。
何が原因だと思われますか?
はじめての事で焦ってしまってます。
枯れてしまうのでしょうか?
きみ さん 2020年09月15日14時36分
みや さんへ
こんにちは。わたしも蝦夷松大好きです。
蝦夷松は古葉も緑色のまま(たしょうくすんできますが)なので、もちかしたら古葉を落としているのかもしれません。
このページにも書いてますが、自然落葉を待たないで、取れそうなものから古葉を取ってください。
みや さん 2020年09月15日15時26分
あっそうなんですか!?
蝦夷松って古葉緑色なんですね!
きみ さん 2020年09月15日16時00分
みや さんへ
もちろん古古葉とかは茶色とかありますけど、離層作った古葉でも緑色しています。
触るとぽろっととれるのも古葉です

もしかして弱ってるとか見てみないと分かりませんが、元気そうなら古葉落としてますよ
みや さん 2020年09月15日16時51分
よく観察してみます!
ありがとうございます。

都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。

現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。

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