蝦夷松(エゾマツ)の魅力
投稿日:2014/02/21 更新日:2020/07/30
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エゾマツ(蝦夷松、学名:Picea jezoensis )はマツ科トウヒ属の常緑針葉高木。
霧深い寒地に自生する樹で、黒褐色の幹は古くなると鱗状に細かく荒れ、短く密生した独特の葉が好まれます。
特に芽出しの美しさは四季の変化に乏しい松柏類では葉物にも劣らない存在で、冬姿はもちろん夏はどこか避暑地の涼を感じさせる雰囲気を持っています。
C o n t e n t s
1. 蝦夷松の特徴
蝦夷松の自生地
蝦夷松は北海道や樺太、千島列島の他、シベリアや中国東北部に分布しています。
北海道ではトドマツ(椴松、学名:Abies sachalinensis )に並ぶ針葉樹林の主要樹種で、亜高山帯の山地や山麓(さんろく)、山間部の平坦地や湿地帯に広く分布しています。
盆栽界に蝦夷松が登場したのは大正時代の初期頃で、千島列島の湿地帯に自生していた矮性のものが発見されてからは大変な人気となり、以来盛んに山取りされました。
しかし大東亜戦争で千島列島がソ連領となってからは、山取り素材の入手が皆無となり、八房種の人気が台頭。
現在は実生や挿木で増やしたものが盆栽種木として出回っています。
2. 蝦夷松の仲間
黒エゾマツと赤エゾマツ
北海道には「エゾマツ(※黒エゾマツ)」と「赤エゾマツ」の2種があり、両者を総称して「エゾマツ」と呼ぶことがあります。どちらもトウヒ属の仲間ですが、自生地や樹皮の色、葉形を見るとかなりの違いがあり、相当に縁遠いものであることが分かります。
まず樹皮の色は、エゾマツは黒褐色であるのに対して、赤エゾマツは赤褐色を呈しています。前者は総称としてのエゾマツと混同されやすいため、赤エゾマツと対比して黒エゾマツ(※)と呼ばれています。
葉は黒エゾマツは扁平で下面に白く目立つ気孔帯を持つのに対し、赤エゾマツは断面が菱形でその四面にそれぞれ気孔帯を持っていますがそれほど白くありません。
どちらもトドマツやタケカンバ、水楢などと混生していてほぼ自生地は重なりますが、赤エゾマツは火山性の砂礫や砂地などのガレ地の他、温泉の周辺や海岸の砂丘などの特殊環境にも純林を作っています。
昔は黒エゾマツも盆栽仕立てにされていたようですが、葉が長くて枝打ちも粗いため大物盆栽に作られることがほとんどでした。葉の短い赤エゾマツが知られてからは黒エゾマツの盆栽は次第に作られなくなり、現在の盆栽界では蝦夷松と言えば赤エゾマツのことを指しています。
八房蝦夷松の発見
赤エゾマツの中でも、特に葉形が小さく芽掛けの細かい変わり枝や株が発見され、それを選別し挿木で増やした「八房蝦夷松」の苗が珍重されています。
自生の蝦夷松は近縁種との自然交雑によって葉性の異なるものが出ることがあり、戦後一時は赤芽の八房種が流行ったようですが、現在では白芽の八房種がそれに取って代わり盛んに栽培されています。
白芽の八房種の中で代表的なものには、愛好家によって発見された「笹野性」と「佐藤性」という2つの品種があり、八房種の中でも格別の存在として小品の世界で好まれています。
中でも笹野性の蝦夷松は特別に葉が小さく、芽数も多いので正に小品向きですがやや樹勢が弱く、保ち込まれた銘木はほとんど見かけなくなりました。
3. 蝦夷松の種木の入手と繁殖法
山取り素材は入手困難で、今は挿木したものを畑で4~5年程太らせた種木が流通しています。
挿木繁殖は個人でも可能で、梅雨~9月頃まで挿木できるので不要枝を挿して増やしてください。
ただし発根はゆっくりで、しっかり根が伸びるまで1年はかかります。最初は数本の走り根が伸び出すだけなので、数年そのままにしておいて、鉢上げの時に太根や走り根を整理してください。
実生は更に年月を要しますが、立ち上がりには挿木にはない味わいがあり大変貴重です。実生から育てたものは自分の棚場環境に適応して丈夫に育ちますから、性のいい親木の種が入手可能なら寄せ植えからチャレンジしてください。
4. 関連ページ
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コメント
- 征 さん 2020年03月28日22時59分
- きみこさん こんばんは。
蝦夷松の挿し木についての質問です。
挿し木する時期と注意を払うことはなんでしょうか。
宜しくお願い致します。 - きみ さん 2020年03月29日10時02分
- 挿木の適期は春の芽出し前か、新芽が固まった梅雨~9月頃まで(日本)です。
新梢に2年枝を少し付けた挿し穂が発根いいですが、3年枝くらいでも根はでます。ただ充分に発根するまでには半年以上かかり、1年おいても2本とかそのくらいなので数年は鉢上げしないでください。
挿木には湿度が重要です。用土の種類はなんでもいいですが、微塵を取った細かいものを使ってください。
挿し床はビニールなどで覆って、空中湿度も確保してください。 - 征 さん 2020年03月29日11時13分
- きみこさん ご丁寧に説明していただき、ありがとうございます!
ビニールで覆って空気湿度を確保とありますが、発根まで被せ続けたほうがいいですか。それとも定期的にビニールを取り換気したほうがいいですか。
覆い続けたら、カビとか大丈夫でしょうか。
すみません、初歩すぎる質問で。
宜しくお願い致します。 - きみ さん 2020年03月29日17時54分
- 征 さんへ
少し口を開けておくくらいはしますが、とくに換気しなくても屋外管理でカビが生えるようなことはほとんどないです。
枯れ葉やゴミがあれば綺麗にしておくことも大事です。
半年くらいは被せていたほうがいいですね、私は透明なドーム状の蓋を被せて時々様子をみています。 - 征 さん 2020年03月30日11時15分
- きみこさん こんにちは。
屋外管理で良さそうなら、そのようにします。
あと、落ち葉とゴミはなるべく取るようにします。
本当にご丁寧に説明していただき、有難うございます!
大きなお世話かもしれませんが、コロナウィルスには
お気をつけください。ぺこり - きみ さん 2020年03月30日11時32分
- 征 さんへ
コロナは今世界的な脅威ですね。悲しいことばかりで報道を見るのが辛くなってきました
早く世界が日常に戻れるようにと思います。
そしてまた同じことが起こらないように多方面から考え、努力したいですね。 - yo さん 2020年07月29日09時20分
- きみさん。
はじめまして。こんにちは。
エゾマツの剪定と挿し木のタイミングについて質問させて下さい。先日エゾマツの若木を購入したのですが、画像の通り芽や枝がこんもりと生い茂っております。なので少し枝の整理をしたほうが良いのかなと思うのですが、どうせ整理するならとった枝は挿し木して増やすことが出来ればと思います。ただ、エゾマツの剪定のページでは7月と8月は剪定の適期ではないとも書いてあったのですが、今の時期に剪定→挿し木をしてしまっても大丈夫なものなのでしょうか。
宜しくお願い致します。 - きみ さん 2020年07月29日17時52分
- yo さんへ
剪定の適期は2~3月と10~11月頃ですが、不要な枝を整理するくらいなら今剪定してかまいません。挿木は芽出し前と、今時期(梅雨頃から9月頃まで)が適期ですから、どんどん挿してください。
蝦夷松は寒い地方に自生する樹種で、乾燥を嫌い、とくにこの写真の赤蝦夷は葉が小さくてとてもいいんですが平地での培養にきを付けないとどんどん弱ります。
夏は日よけの下で涼しく管理し、葉水を多めに与えて空中湿度を保ってください。 - yo さん 2020年07月29日18時56分
- きみさん。
早速コメント下さりありがとうございます!
エゾマツの管理の仕方についても教えて頂きありがとうございます。湿度を保ってあげるようにします。