野バラ、ミニバラの育て方

投稿日:2011/02/17 更新日:2022/10/02

野バラの育て方

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野バラ(野茨)はバラ科バラ属のつる性落葉低木。 日本原産の房咲き性の野生薔薇で、世界の房咲きの園芸品種の交配親となっています。

盆栽では日本に自生する原種の野バラ系が人気で、葉が小さく一重の小花が可憐な印象。

中国原産の庚申(こうしん)バラ(学名:Rosa chinensis minima)を原種とするミニバラ系の四季咲き園芸種も多く、他種バラとの交配によって様々な花芸のものがあります。

挿木繁殖が容易で、一重咲きの野バラなら交配させれば実もの盆栽として秋に飾って楽しむこともできるのも魅力です。

1.野バラの培養

野バラの管理場所

バラの仲間は陽樹で日当たりを好みますが、日差しの強くなる梅雨明け~夏場は日よけを設置しましょう。

花芽や実付きを良くし、枝を短く作るには十分な光が必要ですが、小鉢ものは乾きが早く、葉焼けや落葉の原因になるので夏の直射日光や西日は避けたほうが良さそうです。

葉が込みやすいので風通しに注意し、樹の間隔を離したり間引き剪定、葉すかしなどをして内部を定期的に掃除してください。

寒さに強いので特別な保護は必要ありませんが、冬の乾燥した風は根を傷めるので外気にさらさないよう保護が必要です。

野バラの灌水

水が好きなので水やりは多めです。軽い水切れなら落葉してもすぐに吹き直しますが、乾き過ぎは禁物です。

一方で、土がいつも湿っている状態だとシュート(徒長枝)ばかり伸びて花数が減ったり、根腐れの原因になったりするので注意してください。

春の芽出し頃からは1日1~2回、夏は1日2~3回、冬は1~2日に1回(ムロ内)を目安に、表土が乾いてきてからたっぷり灌水してください。

野バラの施肥

肥料は好みますが、多肥にするとシュートが出やすくなるので、控えめ(少なめ、薄め)を継続的に与えるのがポイントです。

梅雨~夏場を除く生長期と、秋を中心に施肥してください。

肥培すればよく太るので、枝作り段階のものは水はけのいい用土に植え付け、多めに施肥してもいいでしょう。

秋肥は翌年の芽出しや冬越しの力を蓄えさせるのに重要ですから、春よりやや多めに効かせてください。

肥料は油かすで十分ですが、花芽をつけるためにはリン酸やカリウム分も大事なので花物用のプロミックやチッ素が少なめの肥料を与えるようにしてください。

2.野バラの病害虫と対策

バラ科樹種は病害虫が多い

チュウレンジハバチ

野薔薇に飛来するチュウレンジハバチ(左)と孵化した後の幹の裂傷(右)

バラの仲間に発生する病害虫は比較的多いので、培養環境(日当たりや風通し)の整備や定期消毒は欠かせません。

春から高温多湿の時期は葉にアブラムシや葉ダニが発生しやすいので、生長期の間に月1~2回程は薬剤散布をして防除してください。発生してから慌てて農薬を使うよりも、定期防除のほうが農薬の使用量も結果的に節約できると思います。

また、5月頃から年に3~4回くらいチュウレンジハバチが飛来して茎に産卵し、孵化した幼虫は茎を縦に裂いて葉を食べ尽くしてしまうので注意が必要です。

これらの害虫に効く農薬はたくさんありますが、オルトランやベニカXガード粒剤、ダントツ水和剤など作用スペクトルが広く浸透移行性のものが効き目も長くお勧めです。

サビ病

バラの葉に発生した病斑(サビ病)。なるべく発生前~発生初期のうちに対処しましょう。

バラが罹りやすい病気には、地上部(葉)ではサビ病(赤星病)、地下部(根)では根頭癌腫病などがあります。

サビ病や赤星病は中間宿主となるビャクシン類(シンパクやトショウなど)と離して培養し、定期殺菌すれば発生しても大きな被害にはなりません。葉に黄橙色の病斑があったら棚場全体に広がる危険もあるので、全葉刈りして殺菌してください(樹勢を付けておくことが前提)。

根頭癌腫病について

根頭癌腫病

地際にみえる癌腫

根頭癌腫病は治療が難しい病気なので、発生させないように植え替え時期(気温が低くなる秋か早春)には必ず殺菌するように習慣をつけることをお勧めします。

地際などに黄白色~黒褐色の癌腫をみつけたら、正常な組織のところまでできるだけ深く切除し、根洗いをして古土も全て落とし、殺菌剤溶液に浸漬してください。道具類も同時に殺菌ししっかり水分を拭き取っておきましょう。

根の深切りは負担になるのでできるだけ避けたいのですが、感染した細胞のDNA分子(プラスミド)を残すと再発してしまうので荒治療ですが仕方ありません。

根頭癌腫病の特徴

根頭癌腫病を治す薬剤はありませんが、被害の軽いものは進行を抑えて「寛解状態」にもっていくことは可能です。薬にはストレプトマイシン系の雑菌剤が習慣的に使われていて、実際、予防の意味である一定の効果が期待できます。

家庭園芸用に使いやすいところでは、アグレプト水和剤、アタッキン水和剤などがあり、石灰硫黄合剤(50~60倍液くらい)や木酢液(20~30倍液)に数十秒浸漬するなどして土壌中や組織表面に付着している癌腫病菌を殺菌する方もあります。

ただ、殺菌剤は殺虫剤と同じで、有用細菌まで殺してしまう可能性があります。バラの菌根菌資材や、キトサン活性剤など、有用菌を活発にして病原菌の繁殖を抑える方法も有効ですから、日頃の培養にぜひ取り入れてください。

海外(フランスなど)では残留農薬基準によるポジティブリスト規制により、農薬にストレプトマイシンの使用が禁止されていて、代わりに重曹液やシナモン紅茶を治療薬として使うところもあるようです。

根頭癌腫病株の対処方法

根頭癌腫病株の殺菌手順の例。株が元気であれば癌腫をしっかり切除し殺菌して経過観察してください

3.野バラの適期作業

野バラの適期作業

植替え(2月、9月~10月)

バラの殺菌

バラは植替えの時に殺菌も行いましょう(道具類も要殺菌)

根頭癌腫病の予防のためにも消毒を兼ねて秋(9月中旬~10月上旬頃)に植え替えをするのが普通ですが、芽動きが始まる2月上~中旬頃も好機です。

秋に植え替えると冬の保護に気を遣うところがあり、春先に植え替えをしたほうが負担が少なく済むという考え方もあります。ただしこの場合も気温が上がらない2月中に済ませるのがよく、保護がきちんと出来ていれば冬でも植替えは可能です。

根の処理は古根を半分以上処理しても全然平気です。古木になるほど根を切る量は減りますが、根の生長が早いのでしっかり処理したほうが生育期のトラブルが起こりにくいようです。

切る根の量に比例して、枝もしっかり剪定します。外芽残し1~2節で切り詰め、不要な所の芽かきや不要枝の整理もやっておきましょう。

若木や小さいものは1~2年に1回、古木は2年に1回を目安に植え替えしてください。赤玉土を基本に桐生砂や日向土などを2割ほど配合して保水性と排水性をよくしておいてください。

枝作りのための剪定(切り戻し剪定)4月~8月頃

萌芽力の強いバラは、生長期の間は新梢が勢いよく伸びてくるので、伸びたら切る「切り戻し剪定(広義では芽摘み)」を適宜行います。

枝を伸ばしたままにすると太くなりすぎてしまうので、必要な太さになったら枝向きを考えながら外芽残し1~2節のところで新梢を切り戻してください。

まだ枝が細いうちに短く切り戻すと、2番芽に勢いがついて枝のコケ順を悪くしたり、反対に枝が弱ってしまったりと、期待通りの結果にならないので、支障のない程度に伸して切ることがポイントです。

枝の流れを自然にするためにも、姿が崩れるのはある程度目をつぶって、最初に伸びる枝はある程度伸ばしてから切るようにしましょう。

薔薇のシュート

このようなシュートは、放っておくと古枝が枯れる原因になる

株元から伸びるヒコバエ(シュート)や、不要な場所から出た不定芽などは、大事な古枝の力を奪ってしまうので、見つけ次第掻き取っておいてください。

バラ剪定の絶好のタイミングは花後で、花がらを摘む時に伸びすぎた枝を必要な長さで切り戻すようにしてください。一般的な実バラの開花期は5月~6月頃ですが、四季咲き性は7月下旬~8月上中頃まで剪定ができます。

花後の剪定なら品種や性(一才咲き、四季咲き)にあまり影響なく、花芽分化を迎えることができます。

整枝のための剪定(10月~12月頃、2月頃)

整枝のための本格的な剪定は、芽出し前の2月と秋で、植え替えと一緒に行います。

適期の剪定なら強い剪定も可能で、成長期の間に伸びた枝をコンパクトに作り込むチャンス。剪定の適期になったら伸びた枝を外芽残し1~2芽の所で剪定してください。

太枝を切る場合は傷跡から病原菌が侵入する危険があるので殺菌効果のある保護剤を塗るようにしてください。

針金かけ(6月~7月、休眠期)

野バラは剪定で形ができてくるので、あまり針金かけをしませんが、基本の幹模様を作るときには針金を使うことがあります。

この場合もあまりグネグネを曲げるようなことはしないで、枝を下げたり広げたりといった無理のない矯正をしてください。

バラは株立ちや、太く発達した根を幹に見立てて(根上がり)作ることもできるので、幹模様に関しては素材の個性を活かした作り方をした方が自然です。

生長期の針金かけは主に新梢への芽おさえですが、ある程度枝が伸びてからでないと枝の方向や流れに予測がつかないので6月頃まで伸してから行ってください。

作業中は棘に注意しましょう。

開花と受粉(5月~7月)

実物としても愉しめる野バラ

盆栽に作られているバラは一重咲きや八重咲きまで品種が多く、その花芸だけでも充分愉しむことができますが、交配できるもの(野バラ系)なら秋には実物としても観賞することができます。

雌雄同花で、自家受粉することもあるようですが、多くは自家不和合性の性質を持つので交配が必要です。

花粉を使った交配の場合は、受粉を助けるために品種の異なる花を数株寄せておくと実付きがよくなります。

種なしブドウの着果剤としても知られる「ジベレリン」も効果的で、25~50ppm程に希釈して花(シベ)に散布すれば実が付きますから試してみてください。

野バラの花は一斉に咲かないので、開花中は4~5回程、開花したものから順番に散布するようにしましょう。

ジベラ錠

バラやローヤ柿の交配に使っているジベラ錠(ジベレリン)。1錠を100mLに溶かせば50ppmです

4.関連ページ

野バラの魅力

薔薇の仲間は雑種や変種が多く、観賞用に改良された園芸品種は4万種以上にも及びます。ガーデニングに人気なのはボリュームのあるオールドローズ系の品種を始め、柵のカバ……

コメント

橙丸 さん 2022年06月28日10時52分
初めまして。
はじめてのコメントです。

数年前、盆栽関連施設の設計監理に携わったことがキッカケで盆栽にどっぷりハマってしまいました…
とはいえまだまだ趣味レベルで独学なので色々教えていただきたいと思っています。

6月初旬に購入した野薔薇です。
6輪ほど花を咲かせてくれて今はもう花終わりです。
剪定についての質問です。

①来年の花芽はどこに付きますか?
 花終わりの剪定が良いということですが、来年の花付きを考えた時に、形が気に入らないからと言ってどんどん剪定してもいいものでしょうか…

②この左に伸びた新しい花のついた枝は根本から切っても大丈夫ですか?
 今年花をつけた枝は全て幹から直接伸びた新しい枝のみです。
 これを根本から切ってしまってもいいものでしょうか…
 全体のバランスを崩してるので、なくしたいなと思っています。

③これはひょっとして徒長枝でしょうか?
 根上り?のすぐ上から力強く伸びて花をつけています。
 でも徒長枝には花つかないですよね…

③普段の剪定は他と同様2,3枚残しの外芽カットでガンガンコンパクトにしていいですか?
 これは秋の植替えと同時の方がいいのかな…

よろしくお願いします。
きみ さん 2022年06月28日17時52分
橙丸 さんへ

こんにちはコメントありがとうございます。
かわいい野バラですね^^幹(根)の模様も面白くてとてもいい木ですね~

>①来年の花芽はどこに付きますか?

花芽はその年に伸びた新梢の先に順次つきます。品種によりますが、花後の剪定をしても、また伸びてくる芽の先にまた咲いたりします。

>②この左に伸びた新しい花のついた枝は根本から切っても大丈夫ですか?

いらないなら根元から切ってもいいですし、枝として残したいなら2節くらいのところで切り詰めてもいいと思います。

>③これはひょっとして徒長枝でしょうか?

わりと元気な枝にも花がさくことはよくあります。
これを伸したままにすると、他の枝よりも異常に太くなってしまうので、これ以上太くしたくないというタイミングで切り戻すか、枝元から切ってください。
2番芽も強く伸びてくることがあるので、それは早めに芽摘みしてしまいます。

>④普段の剪定は他と同様2,3枚残しの外芽カットでガンガンコンパクトにしていいですか?

基本的には伸びたら切るでいいですが、あまり切込みを繰り返すとさすがの野薔薇も枝が弱って枯れたりしますので、弱い枝や、伸び止まりそうな枝はそのままにしてください。
わたしは6月中旬頃に1回葉刈りと刈り込みをしていますが、小さい樹は結構伸したまま(③のように、太くなりすぎないうちに適宜切り戻しはします)です。
橙丸 さん 2022年07月06日13時42分
ありがとうございました。
勉強になりました。
早速すっきりさせました。

もうひとつ農薬について教えてください。
(カテゴリー違いですが。。。)
野ばらに限らず、
植え替え時の根の消毒にヤシマストマイ液剤がよいということでいろいろと探しましたが、
もう販売終了なのかどこにもありません。。。
根を漬け込んだり、用具の消毒にも使えるということで、
そういった使い方のできるものが欲しいです。
おすすめの代替品を教えてもらえませんか?

成分的には明治のアグレプト液剤というのが代替品かなと思いましたが、
これもどこの店頭にもありません。。。
(ネットにはありましたが送料が。。。笑)

よろしくお願いします。
きみ さん 2022年07月08日16時05分
橙丸 さんへ

お返事が遅くなり申し訳ありません。
ヤシマストマイ製造中止になってもう買えなくなっていますよね。
わたしもアグレプトに切り替えるつもりですが、アタッキン(トップジンMとストレプトマイシン)があるのでそれを今は使っています。
ただ粉を調整しないといけないので、少量しかつかわない人は面倒だと思います。

ほかには、バラ専用のキトサン活性剤というのもあり、結構いいですので調べてみてください(私は手造りしています)。化学農薬でアグレプト以外は思い浮かばない(実際にはいろいろあると思います)ので、なんともいえないです。すみません
橙丸 さん 2022年07月26日15時53分
こんにちは。
アドバスいただきとりあえずネットでアグレプト液剤を購入したのですが、
その後近所のホームセンターで見つけてしまいました笑
送料が。。。

さて、先日野ばらの結実を目的にジベレリンを試してみました。
住友の粉末のものです。
説明書通り200ppmの噴霧

ところが、翌日にはおしべが黒く変色し、花びらが落ちてしまいました。
実も肥大せず小さいままで青いままです。
他二つあった咲きそうな蕾も成長が止まってしまっているようです。

これは、
ジベレリンの濃度が濃いのか、噴霧時期が早すぎたのか(開花二日目)。
はたまた他の原因があるのか。
蕾についても、ジベレリンが付くと成長を止めるような効果があるのでしょうか。

せっかくなのでローズヒップが見たいなぁと思い行動しましたが、
結果がこれでは寂しすぎます。。。
来春には所有している結実しないアメリカンチェリーや紅秀峰にも
ジベレリンを試してみようかなと思っているところです。

よろしくお願いします。
きみ さん 2022年07月26日16時59分
橙丸 さんへ

<アドバスいただきとりあえずネットでアグレプト液剤を購入したのですが、
その後近所のホームセンターで見つけてしまいました笑
送料が。。。

近くにあってよかったですね^^
送料は自宅に届けてもらえたということで,,,次回からはお買い求めください^^;

わたしはジベレリンは住友化学園芸の「ジベラ錠5」という錠剤のものを使っていますが、人からきいた感じですとどれを使っても実成り(単為結実)はいいようです。
濃度も、濃くても薄くても大丈夫のようなので、子房(実になるところ)が黒く変色していなければ大丈夫だと思いますよ。

ジベレリンの効果はいろいろありますが、どちらかというと生長を促進する働きをもちますので、ジベレリンのせいで生長がとまったということはないでしょう。
生長点やつぼみの部分に噴霧しても単為結実するので、おそらくその影響で開花までいかないのかもしれません。
橙丸 さん 2022年07月26日17時26分
早速の回答ありがとうございます。

ということはこのまま蕾にも噴霧し続ければ結実する可能性はあるってことですか?
花が咲かなくても実が成るってことか。。。不思議。

もうしばらく噴霧続けながら様子を見ようと思います。

小さめの霧吹きを買ったけど、もっと小さいのを買った方が良さそうですね。

ありがとうございました。
きみ さん 2022年07月26日17時39分
橙丸 さんへ

わたしも小さいアトマイザーを使っています^^
夢一心 さん 2022年10月12日12時41分
剪定は、花芽分化期の1月以前にせよと聞いているが、ノバラの花芽分化期は7~8月とのことであるので6月には、終えている。しかし、2芽残して切っている。花が少ない。友人に聞いたところ、花芽は3分の1以上の先端につくので切りすぎているからだとのことだった。伸ばしておいてよいか?
きみ さん 2022年10月14日15時33分
夢一心 さんへ


剪定するときは1~2芽残しで問題ないはずです。

>伸ばしておいてよいか?

今は伸しておいて、11月~12月頃に最終剪定すればいいと思います。

>花芽は3分の1以上の先端につくので切りすぎているからだとのことだった。

よくわからなかったですが、前年枝から伸びる枝に花芽が付くのでその前年枝を大事にしなさいということなのかもしれません。