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真柏(シンパク)の魅力

真柏(シンパク)の魅力

第14回きらく会総合展示「シンパク樹形百態」

真柏(シンパク)はヒノキ科ビャクシン属の常緑針葉高木で、海岸沿いの崖上や砂地など日当たりのいい乾燥した場所に自生している伊吹(イブキ)の仲間。

「松柏」の松に並ぶ柏(カシワ)とはヒノキの仲間のことで、古くから日本人の生活に密接なものとして親しまれ、神社の御神木としても崇敬されてきました。

この「柏」に「真」の字を付けられる「真柏」は、盆栽においても欠くことの出来ない高名な樹として広まり、世に知れるようになって百年以上。

自然の中で枯れた枝や幹の一部が長い年月の間に風化し、茶褐色の幹との妙がなんともいえない風情を醸し出し、生と死が同居した独特の魅力は時が経っても多くの愛好家の心を捉えています。

真柏が松柏類の中でここまで特別な存在になり得た理由は、やはり葉性のよさと材の堅固さ。針金整枝に強くあらゆる造型に仕立てることができ、挿木で容易に増やすことができるのも魅力です。

山木のような荒々しい姿を追うに留まらず、作り手の気風によって変幻自在な姿を創造する面白さを持った真柏は、まさに盆栽趣向の神髄ともいえる存在です。

真柏とは?

「真柏」という名前は盆栽界の呼び名で、伊吹(イブキ)の仲間の深山ビャクシンのことをさします。

イブキの仲間は丈夫な性質で園芸品種も多く、排気ガスに強いカイヅカイブキは生け垣や庭木として浸透。

ヨーロッパから入ってきたコニファー類を始め、斑入りや黄金色など色や葉性の異なる園芸品種が数多くあります。

イブキの園芸品種

イブキの園芸品種

盆栽に使われるのはその中でも高山性のもので、葉が小さく材が堅固なことがよいとされています。

有名な山地が全国に存在し、北海道産、紀州産、四国産などがありますが、盆栽においてもっとも有名な自生地といえばやはり糸魚川

糸魚川真柏は海外の愛好家の間でも「イトイガワ」で通じる程高く評価され、不景気と言われる盆栽界で今もなお流通が衰えることがありません。

糸魚川だけが注目される盆栽界ですが、やや葉が太い紀州産や、枝が間延びしやすいと言われる北海道産の真柏も上手く持ち込むほどに葉が締まりいい樹になります。

また、同じビャクシン属の仲間には常緑低木の「ソナレ(ハイビャクシン)」や、杜松(トショウ)があり、盆栽に仕立てられます。

山採り真柏の今

自然の真柏

高山に自生する真柏
Nature of Bonsai

真柏の素材は当初はそのほとんどが山採りによって得られていました。

昔は四国産の真柏が多く採れていたようですが数が少なくなり、自生真柏を求めて幾人もの山取り氏が全国を回っていました。

糸魚川真柏は新潟県糸魚川市にある明星山や黒姫山の断崖絶壁に自生していたもので、明治の末に1人の山採り氏であった鈴木多平氏が発見したのが「糸魚川真柏」の始まり。

糸魚川周辺の山は石灰岩で出来ており、目当ての真柏は高さ数百メートルにもなる断崖絶壁にまるで宝の山のように自生していました。

当時は真柏に何の感心も持たなかった地元住民たちも、破格の報酬を求めて次々と山に入りました。

命綱1本でほぼ垂直な岸壁を下り、巨大な原木を掘り出す作業は危険極まりなく、滑落によって命を落とした人も少なくありません。

めぼしい樹がなくなっても山採り師たちは入山を続け、昭和58年に明星山で最後に下ろされた樹は樹齢2000年を超え、最後の銘木と謳われました。丹念に手入れされ、後に「飛龍」と銘々されたこの真柏は盆栽界を代表する銘木として世界的にも有名です。

飛龍

第8回世界盆栽大会でお披露目された最後の銘木「飛龍」

明治の末から70年以上にわたって続いた原木の採取により、昭和初期頃にはついに取り尽くされて山採り素材は枯渇状態になりました。

現在の糸魚川周辺の山々の岸壁にはわずかな実生苗やツガ、五葉松が所々に見えるだけとなっていて、かつて一大自生地であった真柏の姿は見る影もありません。

新たな原木の供給がない今、既に希少な存在となっている糸魚川真柏。

その素材は挿木に頼るのみですが、郷土の誇りとしてしっかりと次代に受け継がれていこうとしています。

「金性」や「絹糸性」と言われるものは糸魚川真柏の中でも更に葉が細かい小葉性もので、枝の節も短く小さい盆栽に向きます。

ただ小葉性は杉葉になりやすい性質があり、取木や挿木の成果も低く成長が遅いため枝作りには時間がかかるようです。

真柏の特徴

真柏の葉

真柏の葉性

糸魚川産(左)と紀州産(右)真柏の葉性

真柏は全国に山地があり、葉性も様々。

やや葉が太く濃緑色の紀州真柏、枝が間延びしやすいと言われる北海道真柏もそれぞれに良さがありますが、葉が細く枝分れの細かい糸魚川産の真柏は「真柏の王様」と言われます。

「金性」や「絹糸性」と言われるものは糸魚川真柏の中でも更に葉が細かい小葉性もので、枝の節も短く小さい盆栽に向きます。

ただ小葉性は杉葉になりやすい性質があり、取木や挿木の成果も低く成長が遅いため枝作りには時間がかかるようです。

真柏の葉は普通は紐状の「鱗片葉」ですが、強く切り込んだり衰弱すると針状に尖った「杉葉」が出ます。杉葉は先祖返りの現れとも言われていて、荒い芽摘みや根の強剪定、多肥でも出ることがあります。

真柏の鱗片葉と杉葉

写真:真柏の鱗片葉(左)と杉葉(右)

紐葉は鱗片が並んで紐状に伸びた独特の葉で、不規則に分岐して小枝が充実。盆栽としては紐葉のものがよく、杉葉の出にくいものが好まれます。

先の尖った杉葉は盆栽としてはよくないものですが、肥料を控えて水を多めに与えながら培養すれば数年で自然に紐葉に戻ります。

ジンとシャリ

シンパクの幹

人工的に施されたシャリ幹

自然界では積雪や強風などで押しつぶされ木部が露出し、朽ちて白骨化したものが見られます。枝の一部が白骨化したものを神(ジン)、幹の場合は舎利(シャリ)といいます。

盆栽では人工的にジンやシャリ入れをすることによって、厳しい自然の中で生る真柏の姿を連想させます。

ただし人工味が出るのはよろしくなく、センスが問われる作業。同時に、作り手の自由な感性で変幻自在な造型に作るのも反っていいのです。

盆栽樹形にはある程度の決まりがありますが、想像の姿や好みに片寄らず、実際に山野へ出かけ様々な姿の樹に目を向けてみましょう。盆栽作りの参考になるはずです。

真柏の繁殖法

真柏の種木は主に挿木で作られています。

発根がよく、剪定枝を挿しておいても根付くので種木作りには困りません。針金で幹模様を付けておけばいろいろな樹形を楽しむことができます。

取木もできるので、幹模様や枝配りがよければすぐに樹形の出来上がった素材ができます。

真柏の主な樹形

真柏は針金による整枝も簡単で、取木や挿木もできるのでいろいろな樹形に仕立てることができます。

直幹や斜幹、模様木、懸崖、双幹、石付きのほか、痩せた文人姿も似合います。

胴吹きするので小さく作り直すのも可能。小さい樹でも持ち込むほどに古木感のある良い樹になります。

関連ページ

真柏(シンパク)の育て方

ほとんどの植物は中性~弱酸性の土を好むのに対して、真柏はアルカリ性土質を好み、自生地でも石灰岩質の所でよく生育します。 盆栽用土ならば赤玉土(小粒)の単用でも...

コメント

おに さん 2018年05月10日22時45分
キミさん、

こんばんは。
また久しぶりの投稿です。
GWに埼玉の盆栽祭りに行って来ました。
凄い規模で、いくら時間があっても足らない感じでしたね。
色々迷ったのですが、どうも目?芽があってしまい、ついに小さな真柏に手を出してしまいました。
他にも山野草など購入しましたが、まだ撮影する時間ぎないので、今日は真柏の自慢だけ(^^;)

あ、前に投稿させていただいた桜の事で相談があります。
撮影したら桜のコーナーで相談させてください。
きみ さん 2018年05月11日14時27分
おにさん
いいお買い物ができたようで何よりですね~わたしも初日いきました^^
左の枝は落として角度を変えたら更によくなりそうですね
羽鳥義直 さん 2018年07月24日11時12分
軽井沢の知人から樹木を1~1.5cm厚に輪切りしたものを、美しい片寄った年輪とピンク色がすばらしいものを頂きました。
樹皮を剥ぎ、ペーパーヤスリで磨き、コースターなどとして、使っています。
譲ってくれた知人も樹種は不明ながら高山から採取されたものだと言っています。

貯蔵してある原木を見せてもらうと、根本は太さ20φくらい、真に盆栽の真柏のようにくねくねと曲がり大きくなったものです。樹皮は杉皮の様、こんな曲がって伸びる材は何だろうと、「真柏」で検索しましたら貴掲の詳しい解説の中に、「高山で巨木に」を拝見、これは真柏であろうと結論付けられる情報となりました。

他に考えられる樹種がありましたら、ご教示下さい。よろしくお願い致します。
きみ さん 2018年07月24日11時45分
羽鳥義直さん
ぜひその原木を見てみたいですね~
樹皮は檜や杉に似ていますし、ほぼ伊吹の仲間だと思います。
直径20cmというともう100年は裕に超えていると思いますし、厳しい環境で生き抜いた立派な樹だったんでしょうね。
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世田谷のバルコニーで盆栽を始め、現在は盆栽のための広い土地を求め都外へ移住計画中。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

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