コメツガ(米栂)の魅力
投稿日:2015/08/03 更新日:2020/12/12
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コメツガ(米栂、学名:Tsuga diversifolia)はマツ科ツガ属の常緑針葉樹。ツガの仲間は世界に10種ほどが確認されていて、日本にはツガとコメツガの2種の固有種が見られます。
本州の亜高山帯針葉樹林を構成する主要樹木で、標高の高い山岳地帯や亜高山帯などの気温の低い山岳地帯に分布しています。
和名の由来は「葉の小さいツガ」から来ていて、古木感のある幹肌と葉の細かさは盆栽向き。の芽出しは花が咲いたかと思うほど美しく、1番の見所といっても良いかもしれません。
C o n t e n t s
1. コメツガの特徴
コメツガの自生地
コメツガは本州の青森(岩木山~八甲田山)から紀伊半島、四国と九州(大分~宮崎県境の祖母山系)の亜高山帯に分布する針葉樹林の主要樹種で、同じく中部山岳地帯に自生するマツ科モミ属のシラベやオオシラビソなどとしばしば混生が見られます。
亜高山帯下部ではコメツガの独占樹林が広がり、中上部に行くにつれてシラベ(シラビソ)やオオシラビソ(青森トドマツ)が多くなってゆきます。
比較的温暖地を好むツガの自生地(九州~関東地方)と混生することはありませんが、栃木や群馬の高山帯や関東南部に水平分布が重なるところがあります。
コメツガはツガと同じく土壌の浅い急傾斜地や岩石地に多く自生していて、環境のいい所では20m程の大木になります。
対して標高の高いところでは低木のまま育っている姿も見られ、高山の岩上では幹が岩の隙間を這う様に屈曲し、枯れた枝や幹の一部が厳しい環境で耐えてきた様子を無言のうちに物語っています。
コメツガの葉と性
コメツガの葉
コメツガの葉の付き方は互生で、長い葉と短い葉が左右2列に密生し、頂芽や日当たりのいい枝などの力の強い部分は螺旋状に並びます。
葉の大きさは0.5cm~1.0cm程と小型で、「米粒のように小さいツガ」と言われる所以がここにあります。
新葉は淡緑色で艶があり、段々と濃緑色になります。葉先は凹み、丸みを帯びていて、葉裏には主脈の両側に白い気孔帯があります。
ツガとコメツガの葉は良く似ていて、若枝の毛の有無(コメツガは有毛)で見分けられるという話ですが、素人目には難しく、やはり葉が小さいということが区別の決め手になります。
その葉の大きさも自生地によって差があり、中でも山形県産のコメツガは小葉で知られていて、吾妻山の北にいくほど葉性のいいものが出るようです。
ツガは種間交雑でいくつかの代わり種が見つかっていて、八房性や石化性、荒皮性などの他、白芽や黄縞などもあります。
2. コメツガの苗木の入手と繁殖
一般に流通しているコメツガの苗木は、若い山取りものや挿木苗が主で、個人で増やす場合は実生や挿木を行います。
実生の場合は自生地が限られる上に、成長も非常に遅いですから、親木を入手して挿木で増やした方が簡単です。
発根しにくい石化性のものは接木も可能で、芽動き前の3月頃が適期。コメツガは太りが悪いので、挿木から台木に使えるまでの太さになるには4~5年かかりますが、機会があれば是非挑戦してみてください。
実生
コメツガの実はクロマツのような球果で、包鱗が開くとその中に翼のついた種子が入っています。実が熟して自然に落ちる頃には種が飛んでしまうので、球果が褐色に色づく9月末~10月頃に採取して天日干しし、種子を取り出してください。
実生の場合は貯蔵せずに取り播きするとよく発芽します。種は小さく、覆土すると用土の重さで芽がでなくなるので、ミズゴケの上からパラパラと播き、ビニールなどを被せて乾燥させないようにしましょう。
発芽は翌年の5月頃ですが、成長がとても遅く3~4年経ってもなかなか太りません。肥料は2年目から少しずつ多くして、移植は3年目の春に行い、芽摘みなどの基礎作りは5年目頃から始めることになります。
コメツガの種子は毎年採取できるものではなく、4~5年に1度くらいしか収穫できません。種子を採取する場合は管理者に許可を取ることも忘れないようにしてください。
挿木
コメツガは挿木がしやすい樹で、親木が1本あれば実生よりも早く素材を増やすことができます。若枝でも古枝でも発根しますから、将来の樹形を考えながら挿し穂を取ってください。
挿木の適期は芽出し前の3月~4月上旬頃と、葉が固まる梅雨頃の年2回あります。1ヶ月ほどで発根しますが、移植は2~3年目くらいの春先に行ったほうが安全です。
過湿による根腐れを起こしやすい性質なので、挿し床にはゴロ土を必ず敷いて、発根後は乾いてから水をやるようにしてください。肥料も1年目は必要なく、2年目から少しずつ増やすようにしましょう。
3. コメツガの主な樹形
コメツガは亜高山地帯の針葉樹林を代表する直立性の樹種で、自生地でも真っ直ぐに伸びた姿を見ることができます。
盆栽でも自然の姿を活かして直幹や斜幹、寄せ植えにしてもよいと思います。
一方、高山の岩場に自生するものは低く育っているものがあり、腰の低いものは石付きにすると景色がでます。コメツガを始め、ゴヨウマツやエゾマツなどの高山性の樹種は石付きとも相性がよく、根がよく呼吸できるので培養面でいい影響があるようです。
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