赤松(アカマツ)の魅力
更新日2018年05月30日
赤松はマツ科マツ属の常緑針葉高木。
古くから建材として利用され、植林も盛ん。赤松に含まれるグルタミン酸は、食品にうま味を増す効果があるとされ、食品を包む経木の材料にもなっています。
黒松に比べて樹皮が薄く、古くなるほど茶褐色になるのが特徴。葉は淡緑色で細く、柔らかい印象で「男松」と呼ばれる黒松に対して「女松」と呼ばれています。
黒松に比べて大気汚染や潮風に弱く、内陸に多く自生しています。
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赤松の自生地と文人趣向
赤松は日本のマツの中で最も広い範囲に分布していて、薪燃料や建材として盛んに植栽されてきた日本人にとって最も身近な松。
遷移の始めに定着する先駆植物で、乾燥したやせ地や表土の薄い尾根筋、岩山などの不毛な場所に自生しています。
その姿は悲壮感を感じさせる痩せた姿で、幹枝の一部は枯死していたり、足場を失って大きく傾き今にも倒れそうなものなど。
盆栽はその長い歴史の中で、人気の樹種や樹形が変移していくものですが、江戸時代から明治にかけての盆栽黎明期は文人趣向が強く、山採り素材が多く取れた当時は赤松が爆発的な人気を誇っていました。
ところが培養技術の向上や繁殖法の進歩により文人趣向は影を潜め、剛健で力強い樹形の黒松が注目を浴びるように。
華奢な赤松の作り手は減り、一時期は黒松に負けず劣らずの剛健な樹形の赤松が評価される時代もありました。
近年は多彩な樹形を楽しむ中で赤松盆栽への関心も高まり、赤松らしい文人樹形も見直されています。
赤松の特徴
菌根菌と松茸菌
松は菌根を形成する菌根菌と相利共生する植物です。
菌根菌は主にリン酸や窒素を吸収して宿主植物に供給し、代わりに宿主植物が光合成により生産した炭素化合物を吸収して生きています。また多くの菌根菌には共生植物への成長促進効果があり、菌根菌が存在することによって植物の寿命が長くなることが分かっています。
マツの根に共生する菌根菌
赤松といえば松茸の生える樹と知っている人も多いはず。
松茸菌も赤松の根に共生する菌根菌の仲間(担子菌)で、比較的乾燥した単相林や混合林の土壌を好むキノコです。
ただし温度や土壌pH、他の共生真菌とのバランスなど、松茸菌が共生できる環境を人工的に作ることは難しく、盆栽はもちろん庭木から松茸が発生することはまずありません。
盆栽でも生育のいい樹の根には菌根菌がびっしり着生し、白い糸状菌が鉢穴からこぼれる程に成長していることもよくあります。
植え替えの時に菌根菌の生えている鉢から菌株を少し取って用土に混ぜる人もいますが、効果の程は不明。日頃の管理が上手ければ自然発生するもので、人工的に混ぜるのはおまじないと思っていていいでしょう。
赤松の葉
赤松の葉
赤松の葉は淡緑色で、黒松の葉に比べて細くて柔らかいところが女性的な印象を受けます。
あまり太らせず、優しく軽妙な姿が似合う樹種です。
痩せ地で生きるたくましさを持つ赤松ですが、スモッグなどの空気の汚れに弱い性質があるので、時々葉水をしたり幹に水をかけてあげましょう。
赤松の芽
赤松の冬芽は赤みを帯びていて、ミドリの頃には将来葉になるトゲの部分が離れて伸びていきます。
赤松の冬芽(左)とミドリ(右)
さらに赤松は強い芽摘みや剪定に弱いので、芽摘みするときにどうしても長めに残す必要があり、芽摘みだけでは間延びしがちです。
芽摘みをしない場合はそのまま伸ばしておいて、6月~7月にミドリを元から切り(芽切り)、後から伸びてくる2番芽を2芽ずつ残して不要な芽を摘み取るといいでしょう。
赤松の繁殖法
赤松は主に実生や挿木で作られています。
赤松実生の楽しみ方は、種をたくさん捲いてそのまま数年培養したものを寄せ植えにすると、繊細な印象の松林を楽しむことができます。
赤松や黒松は新梢挿しも可能で、4月頃に伸びた新梢を切って挿木すると発根が良いようです。
ただしマツ類に多く含まれる樹脂は発根を阻害するため、接ぎ木や取木が難しいものがあります。
赤松の主な樹形
赤松の優しく女性的な印象は、文人作りなどの軽妙な作りが似合います。
他には斜幹や吹き流し、懸崖や半懸崖なども。実生したものはそのまま寄せ植えにして楽しむこともできます。
模様木などどっしりした樹形の盆栽も見られますが、華奢な作りも赤松の魅力を引き立てます。
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