椿 (ツバキ)の魅力

椿の盆栽

本ページに記載の商品・サービスは広告を含むことがあります。

椿(ツバキ)はツバキ科ツバキ属の常緑性小高木。雌雄同株(雌雄同花)。

東アジア原産で、日本ではもともと太平洋側に自生していた暖地性の植物ですが、寒地にも適応し全国で変種や亜種が自生しています。

照葉樹林の代表的な樹種で、ツバキの名は「艶葉木」から転じたもの。茶席の花として親しまれ盆栽樹種としての歴史も古い樹です。

自生地にもよりますが寒さには比較的強く、真冬から咲かせる鮮やかな花や、形の整った常緑の照葉には長寿と再生の願いが託され、古から日本人に愛されてきたことがうかがえます。

成長が遅く、実生から花が咲くまで5年以上はかかるともいわれていますが、滑らかな樹皮や厚みのある艶やかな葉だけでも見応えがあり、じっくり育てて楽しめる樹種です。

椿の特徴

豊富な椿の品種

藪椿

藪椿の花

「椿」というのは多くの園芸品種や変種や亜種の総称で、本州から沖縄に自生している藪椿(ヤブツバキ)がその原種です。

藪椿は日本に自生する代表的な椿で自生地での樹高は6m~8m、海岸近くから山地まで幅広い標高や気温などの環境に適応し、変種や亜種が数多く存在します。

もともと日本の太平洋側に分布していた藪椿が、東北から北陸地方の日本海側の多雪地帯に適応した亜種に雪椿(ユキツバキ)があり、藪椿とともに多くの園芸種の母種になっています。

椿は赤花系や白花系、絞りや咲き分け、さらにそれらの一重咲きや八重咲き品種を含めると日本国内だけで2000種類を超える品種があります。

茶の木や山茶花との交配種も多く、経験者でも一目で何の品種か分からない程ですが、詳しくなくてもそれが椿であることはなんとなく分かると思います。

その特徴は、第一に雄しべの形状。花糸(雄しべ)の下半分くらいがくっついた状態で、花弁はほとんど平開しないカップ状が多いです。

同属の山茶花と花がよく似ていますが、花弁の開き方【椿はカップ状/サザンカは平開】や散り方【椿は花丸ごと落花/サザンカは花弁1枚ずつ落花】、子房や葉柄(ようへい)毛の有無【椿には毛がないがサザンカにはある】などに違いがあります。

赤花系

一重咲きには、原種の「藪椿」や藪椿の亜種である「雪椿」をはじめ、中国原産種の西南山椿に藪椿を掛け合わせた「太郎冠者(たろうかじゃ)」、出雲大社周辺の藪椿の選抜種「出雲大社」、人気の園芸品種「」。
筒咲き極小輪詫助系には暗紅花の「紺詫助(こんわびすけ)」、ピンク花の「紅詫助(べにわびすけ)」、白詫助の枝変り品種で淡い紅色の「雛詫助(ひなわびすけ)」、岡山で発見された詫助系品種「吉備(きび)」。出雲大社と姫山茶花の交配種「出雲香(いずもかおり)」など

八重咲きには、濃い赤色の「黒椿」、茶の木との自然交配種である「炉開き」、山茶花(さざんか)との交配種「寒椿」、「春曙紅(しゅんしょっこう)」などがあります。

出雲香と炉開き

出雲香(左)と炉開き(右)

白花系

白詫助

白詫助

一重咲きには、久留米で発見された筒咲き極小輪の「一休(いっきゅう)」、松江市自生種の選抜種「雪舟(せきしゅう)」、変り葉で先端が3裂する「梵天白(ぼんてんしろ)」など

八重咲きには、「白詫助(しろわびすけ)」や、雪椿の矮性品種「姫白雪」、外国産品種の「シナモンシンディ」など

絞り、咲き分けなど

春日山

春日山

白地にピンクの縦絞り模様の入った「尾張五色椿(おわりごしきつばき)」、筒咲きで桃色地にぼかしの入った「西王母(せいおうぼ)」、朱色地に白の絞りの入った「春日山」、球咲きで白~桃色地に紅い吹掛け模様の「玉霞(たまがすみ)」、姫山茶花との交配種で桃色地に底白ぼかしの入った「港の曙」、濃紅地に白の覆輪模様の「玉之浦(たまのうら)」、中国産の品種で黄色花の希少種「金花茶(きんかちゃ)」など

盆栽には小輪~中輪のものが人気で、藪椿や雪椿の他、太郎冠者や出雲大社、曙、炉開き、匂い椿、詫助系品種などをよく見ます。他の品種でも好きなものがあれば是非盆栽仕立てにして楽しんでください。

椿の葉

椿の葉

椿の葉

椿の葉は硬くてやや厚みがあり、表面は照葉の卵形。縁は細かい鋸歯状です。

新葉は柔らかくやや黄色味かかり、古くなると艶のある鮮やかな緑~濃緑色になります。

葉の付き方は互生で、新梢の頂部(先端や葉腋)には丸みのある大きな花芽が付き、葉芽はタケノコのような尖った形で花芽の脇や葉腋に付きます。

病害虫にも強いですが、たまに炭疽病やチャドクガが付くことがあります。大きな被害に成る前に病葉はすぐに取り去ってください。

江戸時代から愛好された「変わり葉椿」

錦魚葉椿と梵天葉椿の葉

錦魚葉椿(左)と梵天葉椿(右)の葉

椿は花だけでなく、葉の色形も多様です。

江戸時代には愛好家によって葉の突然変異株が発見され、今も愛培されています。

面白いものは、葉先が金魚の尾のように3つに分れた「錦魚葉(きんぎょば)椿」や、錦魚葉の葉のくびれが著しく主脈だけで繋がる「梵天葉(ぼんてんば)椿」「らんちゅう」。花弁も葉も笹の葉のように巾狭い「百合椿」のほか、葉のまわりの切れ込みが深い「桜葉椿」、さらに深い「鋸歯椿」「柊葉椿」など。

そのほか丸葉や斑入り、葉の中央がへこんだ「盃葉椿」などもあります。

椿の主な樹形

斜幹、双幹、模様木、石付き、懸崖など様々な樹形に作られています。

椿は幹模様も見せ所なので、優しい吹き流しや文人風にして花を少なめに付けてもよく合います。

若枝は勢いがあり、真っ直ぐ伸びてくるので若いうちに針金などで形を作ってください。

椿の繁殖法

椿は挿木や取木が簡単で、花後の剪定枝や成長期の徒長枝を挿しておくとほとんどが活着します。

1から作ることができる実生もお勧めですが、親木の性を100%受け継ぐ挿木や取木は、椿のような品種ものの繁殖に適しています。

挿し穂はできるだけ節間の詰まったものを選び、葉からの蒸散を抑えるために穂先の葉2枚だけ残して葉刈りしてください。葉をつけたままでも活着しますが、あまり多いと挿し穂が蓄えていた水分がなくなって枯れてしまいます。

残した葉も大きいようなら葉切りをして挿し床へ。風を避けた半日陰で管理し発根を待ちましょう。

椿は新梢のほうが発根しますが、適期なら古枝を挿しても根がでます。花芽の付いた枝を挿し穂にすれば、ミニサイズで花が見られるようになるので挑戦してみてください。

椿の花がら

椿の花がら。そのままにしていると結実する

実生の場合は採り播きを。実を採取したら果肉を取って一晩水に漬け、沈んだものを用土に撒いてください。

盆栽では普通花が終わったら早めに花がらを取って樹を休ませますが、大きい樹など実を観賞する場合は花がらをそのままにしていると結実します。

実生の場合は花が咲くまでに年月はかかりますが、実生ものは貴重です。好新種が発現する可能性もあり、立ち上がりから自分好みの素材を作ることができるのでお勧めです。

関連ページ

椿(ツバキ)の育て方

湿り気のある粘土質の土壌に自生し、水をとても好むので年間を通じて水切れに注意してください。春の芽出し頃からは1日1~2回で、夏は1日2~3回、秋は1日1~2回、……

椿(ツバキ)の剪定

椿はその成長段階により、樹形作りのための剪定、花芽を付けさせるための剪定、樹形を維持するための剪定の3つが剪定の目的となります。基本の樹形ができたら、花を咲かせ……

コメント

顧正知 さん 2022年04月22日14時59分
ありがとうございます参考になります