神と舎利

更新日2018/07/05

神と舎利

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自然の中で自生している樹木には、枝や幹の一部が枯れて白骨化したものが見られます。

これらは強風や落雷などで枝幹が引き裂かれて風化したもので、盆栽界ではこの朽ちた部分が樹芯や枝先にあるものを神(ジン)、幹にあるものを舎利(シャリ)またはサバ幹と呼びます。

神(ジン)は名前の通り「神仏」を意味し、舎利(シャリ)は釈迦の遺骨の事。

白く風化した幹枝とわずかに残された水吸いとの対比に「生と死の同居」を見出し、敬う心は死生感を説く仏教と通じます。

樹木の枯れた部分に敢えてこの名を付けたのは、厳しい自然の中で、朽ち果てた部分を抱えながら生き抜く樹木の生命力の強さへの畏怖や敬意の念の現れなのかもしれません。

神、舎利に適する樹種

神や舎利は、幹枝の一部を人為的に壊死させ、適切な方法で風化させることで古さや生命力を表現しようとします。

小さい盆栽でも神や舎利を施すことで雰囲気が格段によくなり、ミニサイズとは思えないほど山木の味わい漂う姿に作り込むことができます。

ですが、本来役割を持つ生きた部分の樹皮を剥ぎ、彫刻等を施すことは植物にとって大手術。

そのため神や舎利入れができるのは、樹脂が多く傷がついても朽腐しにくい樹種に限られます。

松柏類ではほとんどの針葉樹が適していて、「真柏」「杜松」「黒松」「五葉松」「蝦夷松」「一位」「米栂(コメツガ)」「杉」「檜」など。

木質部の硬い「梅」や「柿」も神や舎利入れが可能で、木質部が朽ちて立派なウロが出来た老木も見かけます。

神、舎利入れの方法

作業の適期

生きた幹枝を神や舎利にする場合は、樹液の流動開始後の3月中旬~4月中旬頃が適期。この頃になると樹皮に水分を含んでくるので、手で簡単に剥ぐことができます。

時期に拘らない人もいますが、この頃が一番負担が少なく済みます。真柏なら5月~7月頃も可能で、剥皮部分の肉巻きが早いと言われています。

枯れ枝を神にする場合は、時期に決まりはありません。ただし太枝を彫刻する場合は成長期は避けた方が安心です。

構想をたてる

神は不要枝や枯れ枝を利用して作りますが、あまり数が多いといや味になってしまいます。

真柏や杜松など神や舎利で魅せる樹種は特に、どの位置にどのくらいの長さの枝を残せばいいかを事前にじっくり構想することが大事です。

全体の枝配りをみて、その位置や大きさなど、不要枝の中でも神として利用すべき幹枝を見定めてください。

神や舎利幹は単に不要な枝を削って終わるのではなく、そこに曲や捻転した部分があれば面白い樹になります。

1度樹皮を剥いでしまうと木質部が固まってしまうので、癖を付けたい場合はすぐに針金で模様を付けるか、前もって神にする予定の枝に針金で模様を付けておいて、癖がついてから削っても構いません。

神や舎利入れは、盆栽を創作する上で個人の技法やセンスが最も問われる部分。

自然さを出すことはもちろん、正面から見て最も見せ場となる部分を神舎利で表現できるようになれば大したものです。

神、舎利入れ

神や舎利入れの方法には、単に樹皮を剥いで仕上げる方法と、さらに彫刻などの整形を施して仕上げる方法があります。

小さい盆栽では樹皮を剥いてヤスリで仕上げることが多いですが、太枝の神や太幹の舎利にはある程度の整形が必要。大きい盆栽では神も舎利も美的な彫刻が施されています。

彫刻は自然味があることはもちろんですが、作り手の美観や技量が問われる難しい作業。

盆栽を創作する中で最も醍醐味のある技術だけに、盆栽の価値を決める重要な部分でもあるので、多くの作品を見て研究し、経験を積むことが大事です。

神の入れ方

まず不要枝の中でも比較的太さがあり、神として利用できそうな枝は、長さを残して樹皮を剥ぎ木質部分を露出させます。

屈曲に富んだ枝が作れる真柏は、立ち上がり付近の太枝や不要枝を切り込まずに枝先まで活かして神にすると面白いものができます。

皮を剥くだけでもいいですが、比較的太さのある枝には彫刻を施したり、枝先をペンチなどで潰して自然に朽ちた雰囲気を出すのもいいです。

舎利の入れ方

舎利を入れる場合は、全体を見て一番見せ場となる位置や大きさを決め、根元近くに切り出しナイフを入れて上方へ向かって皮を剥いでゆきます。

作業の前日は灌水を控えて乾き気味にし、水揚げ線を切断しないように注意しながら剥皮してください。

水揚げ線とは、下から上に向かって平行に伸びる水吸い(生きた幹の部分)のこと。根から必要な水分や養分を吸い上げている重要な部分で、走り根や太根の上方を走り、充実した枝や太枝の下を通っています。

切り出した樹皮は水揚げ線に沿って持ち上げるようにゆっくり剥がし、残す枝がある場合は角度を調整しながら枝が残るように進めてください。

不要な枝があった場合はその枝も神に仕上げるのもいいでしょう。

幹に舎利を入れる場合、剥皮した部分は当然枯れるので負担も大きいです。特に大きく剥皮する場合は数年かけて徐々に完成させる気持ちで作業してください。

彫刻、ヤスリかけ

神や舎利は樹皮を剥くだけで仕上げる方法もありますが、彫刻を施す方法もあります。

彫刻には彫刻刀やノミ、喰い切り鋏、電動ミニルーター、時にはチェーンソー等の道具を使い、木質部に細工していきます。組織の流れに沿った自然な彫刻が基本ですが、引き裂かれた幹を表現する場合はナタや喰い切り鋏で幹を大きく割ることも。

彫刻は単に樹皮を剥ぐよりも樹に負担がかかるので、水吸いを傷付けないこと、樹勢の弱い樹には行わないことはもちろん、数年かけて徐々に仕上げるつもりでいてください。

彫刻がある程度終われば、ヤスリを丁寧にかけて仕上げていきます。

ただ表面を滑らかにするだけではなく、先端にいくにつれて細くしたり、板状に薄く(板神)してもよいです。

作業後の保護、管理

生き幹や生き枝を神にした枝は、水溶性の樹脂製接着剤や保護テープ(接合テープ)を巻いて3ヶ月~半年そのままにした後、20~30倍に薄めた石灰硫黄合剤を塗って下さい。

原液を使う人もいますが石灰硫黄合剤は浸透性が強いので、取り扱いには注意が必要。

剥皮直後に使用すると傷口から傷み、水吸いまで影響することがあるので、傷口が癒合してから加工部分にだけ塗るようにしてください。

すぐに石灰硫黄合剤を使いたい時は、先に傷口に癒合剤を塗っておくことです。

石灰硫黄合剤を塗ると乾いた時に真っ白になりますが、その不自然さが気になる人は墨汁を少し混ぜておくと自然な白さになります。

その後もムロ入れ前の消毒のついでなど、1年に1回は石灰硫黄合剤を塗り、朽腐を防ぎ維持します。

神や舎利を入れた部分は、水吸いとの溝に汚れや害虫が溜まりやすくなります。石灰硫黄合剤の白さを嫌味に感じる人は、定期的に歯ブラシ等で掃除して自然な色味を楽しんでください。

コメント

やすゆき さん 2020年08月17日15時38分
初めまして?

一週間ほど前に購入したジン、シャリ施工済真拍ミニ盆栽ですが購入時には気が付かなかったですですが幹に亀裂が入っています。
適切な対処あれば教えて頂きたくメールしました。
一方的な文になって申し訳ありません。
よろしければアドバイスお願い致します。
きみ さん 2020年08月17日17時55分
やすゆき さんへ
肝心の3枚目ボケすぎててよくわかりませんでしたけど、作ったひとはこういうつもりでジンにしたんじゃないでしょうか。もともと死んでいる部分なので、生育には影響ないですし、これはこれで裂けた感じが自然味があって悪くないと思いますよ
好みでないなら削ったり彫刻をさらにいれて目立たなくするといいかもしれないですね

それよりも、針金のかかっている天ジンや幹のシャリ部分は最近削り直されたものだと思うのですが、シャリを入れたあとは傷の境目から特に腐りやすいので、保護しておいたほうが良さそうです
肉が巻けば石灰硫黄合剤を使う(今、白くなっているところは石化硫黄合剤で化粧してあります)のですが、初心者の方が入手するにはハードル高いと思うので、取り敢えずの腐れ防止で墨汁の原液とか園芸用の保護剤を塗るとかしたほうがいいと思います。
人によっては自然に乾燥させて風化させてから化粧するので(←わたしはコレ)すが、接木テープで巻いて傷口の肉巻きを早めたり、あんまり水がかからないようにするとかちょっと気をつかいます。

最終的に見るときには石灰硫黄合剤を使ったほうが綺麗ですけどね、、、
やすゆき さん 2020年08月18日03時40分
きみさんへ
回答ありがとう御座います。

割れていても育成に支障無いなら安心です。

適切なアドバイスありがとう御座います。
現在、石灰硫黄剤を購入検討中です…
ホームセンターで見つけたのですが、
容量が多過ぎて尻込みしてしまいます。

今後とも宜しくお願い致します。?
友晴 さん 2021年08月21日21時51分
こんばんは。ジン、シャリに石灰硫黄合成を塗布するのに適した時期はいつ頃ですか?今の時期はやらない方が良いですか?
きみ さん 2021年08月22日08時58分
友晴 さんへ
すでにジンシャリがあるものなら、傷は塞がっていますし石化硫黄合剤塗っても大丈夫です。
幹に傷入れてすぐ合剤塗ったりするのはやはり、回復のいい時期を見越して行ったほうが安心と思います^-^
0suke3 さん 2022年02月20日15時44分
きみさんへ

こんにちは。
ホームセンターで買った梅に舎利を入れようと思っているのですが、
石灰硫黄合剤をもってません。
何か身近な代用品はありませんでしょうか?(殺菌目的の代用品)
よろしくお願いします。
きみ さん 2022年02月20日17時30分
0suke3さんへ

シャリ彫刻した後には石灰硫黄合剤は使わない(生きた組織に浸みてしまうから)ので、今回やる場合は、トップジンMペースト(保護殺菌剤)を形成層の部分にぐるりと塗って、すこし待って乾いたら、木質部の部分にパテタイプの保護剤(カットパスターやキヨナールなど)をくっつけておけば充分と思います。
一応、病気が多いとされるバラ科の樹種なので、殺菌効果のある保護剤を使うようにしています。

まずは、削った所に肉を巻かせることが先ですね。

露出した木質部はそのまま風化させて、傷周りにトップジンを塗るだけでもいいです。
木質部は腐っても徐々に彫刻を足してウロみたいにできますし、もともと材は硬いのでそうそう腐るものではないです。
0suke3 さん 2022年02月20日19時55分
きみさんへ

こんばんは。

ご回答ありがとうございます。
お聞きしてよかったです。
シャリ彫刻した後に石灰硫黄合剤は使わないのですね。
まだ初心者ですので、わからないことだらけです。

トップジンMペーストもカットパスターも持ってますので、
大丈夫ですね。

何かわからないことがあれば、いつもHPで勉強させてもらってます。
大変ためになるHPをありがとうございます。