ムラサキシキブ(紫式部)の育て方
投稿日:2014/12/03 更新日:2023/06/12(現在更新中)
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ムラサキシキブ(紫式部、学名: Callicarpa japonica、別名:ミムラサキ、コメゴメ)はクマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。
一般に流通している「ムラサキシキブ」は、全体的に小型で実付きのいいコムラサキシキブ(小紫式部、学名:Callicarpa dichotoma、別名:コムラサキ、コシキブ)であることが多く、盆栽樹種としてのムラサキシキブも、コムラサキや一才性の品種で作られている場合がほとんどです。
紫色の美しい果実と、黄色した葉とのコントラストが秋を感じさせる実ものの定番樹種。落葉後の実だけになった姿もよいもので、展示の際には実を見せるために葉を切り取ることもあります。
あまり大きくならないため、庭木や公園樹としての扱いも多く、暑さや寒さに強く土壌条件も拘らないので育てやすい樹種です。
C o n t e n t s
- ムラサキシキブの培養の基本(管理場所、水やり、施肥)
- ムラサキシキブの苗木の入手と繁殖法
- ムラサキシキブの病害虫と対策
- ムラサキシキブの適期作業
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1.ムラサキシキブの培養の基本
管理場所
ムラサキシキブは日本を始め中国、台湾、朝鮮半島に自生し、日本では北海道から沖縄まで広く分布しています。雑木林や、やや明るい林床、山野、林縁などに自生が見られます。
コムラサキシキブも古くから日本に自生がある樹種で、ムラサキシキブよりもやや奥深い、山地の湿地や森林などに分布が多いようです。
基本的には明るく風通しのいい場所が好ましいですが、分布域が広く、自生地の環境を考えると半日陰でも十分育ちます。
花付きや枝の間伸びを防ぐためにも春からはよく陽に当てる必要がありますが、葉が薄く、夏の強い日差しで葉焼けや高温障害を起こしやすいところがあるので、梅雨明け頃からは日除けをつけてあげましょう。
特にコムラサキは湿地を好む性質で、乾燥に弱いので注意が必要です。
葉が茂りやすく、葉ダニやカイガラムシなどの害虫被害にあいやすいところがあるので、風通しの良さも需要です。間隔を空けた配置や葉すかしをして、フトコロの風通しや日当たりを確保しておいてください。
水やり
水をよく吸い上げる性質で、とくに葉が展開してからは乾きの早いので、水切れのないようにしてください。
春秋は1日2回、夏は1日2~3回、冬は1日1回(ムロ内)を目安に表土が乾いてきたらたっぷりと水やりしましょう。
葉が萎れるくらいの軽い水切れならすぐに回復しますが、落葉するまで乾かすと枝枯れや株ごと枯れてしまうこともあります。
小鉢で培養しているものは特に乾きやすいですから、2重鉢にしたり、葉が茂っているものは部分葉刈りや葉切りをしたりして、葉からの水の蒸散量を調節してください。
開花中は花に水がかからないように株元に散水してください。
施肥
肥料を好みますが与えすぎると枝に勢いが付きすぎてしまうので、やや控え目を心がけてください。
特に春肥は「遅め・控え目」が基本で、新芽がある程度伸びてきた4月頃から6月頃の間に、油かすなどの緩効性肥料を少量置き、葉色に応じて追肥してください。一度にたくさん与えるのではなく、効きに応じて少量を小まめに与えることがポイントです。
ムラサキシキブは肥料の過不足が葉色に現れやすく、全体に葉色が薄くなる場合はチッ素不足、葉脈意外が黄変する場合はマグネシウム(苦土)不足である可能性があります。
葉色の異変は肥料不足以外にも、肥料過多(肥料やけや拮抗作用による他の栄養素の吸収阻害)や水の過不足、日照不足や日照過多(高温障害)、土壌酸度の他、病気によるものなどさまざまな原因があるので、管理面での問題点があるかどうかを考えることも大切です。
春肥はチッ素分も重要ですが、花実もの向けのリン酸分も多めの肥料を使うと余計な間伸びが抑えられ、花付きもよくなります。
秋肥は実持ちと樹勢回復のためにも重要なので、9月~10月の間に春よりは多少多めに与えましょう。落葉後の肥料は必要ありませんが、観賞のために実をたくさん付けているものは引き続きおいてもいいでしょう。
追肥ではリン酸が効きにくいので、植替えの際には元肥(マグァンプK)も入れるようにしてください。
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2. ムラサキシキブの種木の入手と繁殖
ムラサキシキブは挿木や取木が簡単です。
挿木は枝が固まる6月頃がよく、葉が多い場合は部分葉刈りや葉切りをして葉量を減らし、余計な水の蒸散を防ぐようにしてください。
枝が真っ直ぐですから、予めアルミ線で模様つけしてから挿すといい素材になります。古枝やエンピツ程の太さの枝までなら挿木でも十分発根します。
取木する場合も、少し葉量を減らしておいてください。
発根がいいので、落葉後の休眠枝を挿し木しても根付きます。
3. ムラサキシキブの病害虫と対策
新芽にアブラムシがついたり、夏の高温乾燥期には葉ダニが付きやすくなったりします。
また、温かくなってくるとハマキムシ(ムラサキシキブツツヒメハマキなど)の被害にも遭いやすいので、よく観察して対処するようにしましょう。
葉がかすれたようになったら葉ダニの寄生が考えられるので、そうなる前に葉ダニ剤を定期散布して発生を防いでください。
病気は特にありませんが、環境(日照不足、風通し)の悪化に高温多湿の時期が重なるとうどんこ病が発生しやすくなります。
4.ムラサキシキブの適期作業
植替え(2月下旬~3月頃)
植替えの適期は、芽動き前の春先。今年植替えする予定であったもので、うっかり適期を逃したものは梅雨頃に葉刈り剪定と合わせた植替えもできます。
根の成長が早くすぐに根詰りするので、1~2年に1回の間隔で植替えをしてください。樹の大きさ(鉢の大きさ)にもよりますが、何年も植替えずにトラブルになるよりは、定期的に植替えをして根を更新させる余地を作ったほうが維持しやすいと思います。
切り込む強さは全体の1/3~1/2くらいを目安に幹下や鉢周りの古土を落とし、伸びている根をザックリと整理してください。
若木なら半分くらいは切り込めますが、古木はやや多めに根を残すようにしましょう。切込みには強い反面、あまり強く整理すると幹枝が若返り、花付きも悪くなることがあります。
特に小さく持ち込んだ古木では、根を切りすぎたり鉢を無駄に緩めたりしてしまうと、幹肌が割れて古色が失われてしまうので注意が必要です。
用土はゴロ土も敷いて、水持ちと排水性のよいものを使います。赤玉土を基本に、桐生砂や日向土など排水性を助ける用土を2割ほど混ぜて使ってください。葉がある間はとにかく乾きやすいので、保水性と通気性を上げるために、赤玉土の配合に鹿沼土を少し加えてもいいと思います。
用土の粒の大きさは細かめのものを選びましょう。粒径が大きいと余計に根が走り、それに伴って枝も暴れやすくなります。小品サイズなら極小粒、ミニサイズなら細粒と、細かい粒のものがお勧め。肥大を目的としている場合は粗めの用土でも構いません。
芽摘み
養成木(5月下旬~6月)
枝作り段階のものは、新梢が4~6節に伸び固まった所で1節の所で芽摘み(切り戻し剪定)をして小枝を増やしましょう。
芽吹きがよくすぐに2番芽が伸びてくるので、これも一旦伸して切り戻しをします。チッ素を主体にした春肥を効かせておけば夏頃までに2~3回の芽摘み(切り戻し)で小枝を増やすことができます。
2番芽の勢いが強すぎる場合は、切り戻しと同時に、1番枝の元葉を葉刈りしておくと、幾分か芽の勢いを抑えることができ、枝分かれもスッキリします。
ただし、あまり芽摘みを繰り返すと段々枝が弱ってきて、役枝として残したい枝が冬枯れしてしまうことがあります。
新梢の伸びは7月頃には止まるので、それまでに多くても3回、理想は2回くらいを目安に、枝が太りすぎないタイミングで芽摘みするようにすると良いでしょう。
完成木(徒長枝以外はできるだけ控える)
ムラサキシキブの花芽は今年伸びた新梢の葉腋に5月頃に分化し、6月頃に開花します。花芽は長く伸びた新梢(6~7節くらい)の上半分くらいに付きやすいので、花や実を見ようとするとどうしても枝が間伸びした印象になってしまいます。
これも野趣味を持つムラサキシキブらしさですから、ある程度は芽をつぶって、芽摘みはできるだけ控えるようにしてください。
実がとまったら枝元の花芽を残して切り詰めてコンパクトに眺めることが出来ます。
あまりにも勢いが強い枝(徒長枝)には花芽は付きにくいので、枝が太らないうちに短く切り詰めておきましょう。花芽分化に間に合えば、2番芽に花芽を付けさせることも可能です。
出荷に備えて矮化剤を使う生産業者もあるようですが、あまり効果がなかったり薬害がでたりすることもあるようです。
春からの肥料にチッ素を控えたものを使うと、余計な徒長を防ぐ効果が期待できます。
剪定(落葉後)
実を見たい場合は、花がらを摘まずに観賞に備えてください。実がとまれば、枝元の実を残して短く切り詰めましょう。
全体の剪定は落葉後(または実の観賞後)で、徒長枝や強すぎる枝を短い枝に切り替えるようにして、全体をちいさくまとめておきましょう。
翌年の姿を想像しながら、太すぎる枝は少し長さを残して切り戻し(灼け込みを防ぐためで、自然に枯れたら切り直します)、向きの悪い枝は針金で矯正するか剪定して基本の姿をだしておいてください。
ムラサキシキブの冬芽には、頂芽付近にできる比較的大きな裸芽(モミジのように、鱗のような組織(鱗芽)に包まれていない芽で、葉の形をしているもの)と、小さい側芽の2種類があります。
花芽は春から伸びた新梢に作られますので、落葉後の剪定で花芽を飛ばしてしまう心配はほとんどありませんが、このときできるだけ古枝まで切り込まず、前年枝の枝先を切り詰める程度にしておきましょう。
芽のあるところならどこできっても芽吹きますが、強剪定をすると樹が若返り、強い枝ばかりがでて花芽や実は当分期待できなくなるので注意してください。
針金かけ(生長期、落葉後)
ハサミ作りもできますが、枝が直線的にでますので、基本の幹枝の模様は針金を使ったほうが早くよくできると思います。
2~3年枝くらいまでは曲がりますが、太枝や古枝は折れやすいので、針金で曲げる場合は比較的若い枝や新梢への芽おさえを基本にしてください。
針金かけはいつでも可能で、生長期の芽おさえや、葉刈り後または落葉後でも枝ぶりが見えやすく作業がしやすいです。
自生のコムラサキは枝が下がるように落ち着きますが、ハサミ作りですと枝がつんつんと上下に伸びやすく、全体に暴れた印象の姿になってしまいます。
それもムラサキシキブの特徴なので、かっちりと枝を作る必要はありませんが、重なった枝や交差した枝は剪定するか矯正し、上下についた枝も枝先に向かって枝が水平に広がるように少し捻るなどして、全体を整えておいてください。
針金で全体の枝振りを整えることで、花や実がついた姿が映え、各枝への日当たりや風通しも改善されてフトコロからの胴吹きも期待できます。
落葉後の針金かけは春先までかけたままにできますが、生長期にかけた針金は1ヶ月くらいで食い込んでくるので、きつく巻きすぎないようにして傷になる前に外してください。
開花と受粉
ムラサキシキブの開花期は5月下旬~7月頃で、秋頃(9月~11月頃)に実の観賞期となります。
受粉形式は虫媒(マルハナバチ)による羽音の振動受粉に頼るところが多く、自家不和号性もあるため、実を付けさせるためには異なる品種同士を近くに寄せておきましょう。
ムラサキシキブの実はまばらに付きやすいですが、コムラサキは実がまとまって付くので見応えがあります。
近縁種や園芸種など花付き、実付きのいい品種もあるので、いくつか集めて培養することをお勧めします。
開花時期は急な豪雨や長雨の季節と重なりますから、開花中は花に水がかからないように棚下に避難してください。
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ムラサキシキブは虫媒花ですが、その受粉を助けているのは主にミツバチの仲間のマルハナバチで、高い震動数を持つマルハナバチの羽音によって雄しべが共振し、穴から花粉が……
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