アオツヅラフジ(青葛藤)の育て方

投稿日:2014/12/03 更新日:2022/10/25

アオツヅラフジ(青葛藤)の育て方

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アオツヅラフジ(青葛藤、学名:Cocculus orbiculatus)はツヅラフジ科アオツヅラフジ属の蔓性落葉木本。雌雄異株。

北海道から沖縄、東アジアの広い範囲に分布していて、人里近い道端や林の中、草地などに普通に見られる身近な植物です。

実はブドウ科のエビヅルと似ていて、根茎には沈痛や利水作用などの薬効があるため(実は有毒)、霊験あらたかな意味の「神のエビヅル」からカミエビという別名があります。また、ピンピンと跳ね上がるように伸びる蔓の姿から、「ピンピンカズラ」や「チンチンカズラ」などの地方名もあるようです。

万葉集では「黒葛」の名で登場しており、古くから親しまれている植物ですが、盆樹として使われるようになったのは小型の盆栽(小品、小物、豆)が注目されるようになった1970年代以降で、ミニ盆栽向きの秋の実もの樹種として好まれています。

樹形は木質化した根茎を活かすようにしますが、蔓性の植物なので、実の重さで自然に蔓が下垂し、懸崖や半懸崖に落ち着きます。

1.アオツヅラフジの培養の基本

アオツヅラフジの管理場所

林縁の青葛藤

日当たりのいい小道脇の林縁に自生していたアオツヅラフジ。背丈ほどの草木に蔓を巻きつけていた。

アオツヅラフジは日当たりのいい山野の林縁や道端に自生しているので、なるだけ日当たりのいい場所に置くようにしましょう。

薄暗い林床などにも見られるので、日陰でも問題なく育つのかもしれませんが、真夏以外はよく日に当てた方が丈夫に育つと思います。

蔓が伸びて他の樹に絡むので、手前に置いて蔓を垂らすなど、置き場所を工夫してみてください。

アオツヅラフジの水やり

普通の灌水でいいです。実が止まってからは水切れのないようにしてください。

春秋は1日1~2回、夏は1日2~3回、冬(ムロ内)は1~2日に1回を目安に、表土が乾いてきたらしっかり水やりするようにしてください。

深鉢に植えているものは、案外に鉢中の湿気が滞りやすいので、ゴロ土を多めに入れるようにしましょう。

アオツヅラフジの施肥

多くは必要ありませんが、実を付けると力を消耗して幹(根茎)が痩せたり、枝(蔓)枯れしやすくなるので、特に実がとまってからは肥料を切らさないようにしましょう。

春は控え目でよく、芽出し後葉が固まってきてから6月頃までに固形肥料や薄い液肥を少しあげるくらいで十分です。

秋肥は実持ちと樹勢回復のためにも重要なので、9月~10月の間に春の倍量おく感じで、実もの向けの肥料(リン酸多め)を与えてください。

追肥ではリン酸が効きにくいので、植替えの際には元肥もしっかり入れるようにしてください。

2.アオツヅラフジの苗木の入手と繁殖法

根がたくさんあるものなら株分けが可能です。

挿し木もできるようですが蔓を挿してもいい素材にはなりませんので、充実した根を活かしたほうがいいと思います。

実生も可能ですが、花が咲くまでには実生後4年~5年ほどかかります。また、ほとんどは雄木なので、実のついた状態の素材を購入したほうが近道です。

3.アオツヅラフジの病害虫と対策

梅雨頃からハダニがつきやすいので、葉水や殺虫剤で防除してください。大きな被害にはなりませんが、時々ガの幼虫が葉を食害することもあります。

また、ゾウムシの仲間(チョッキリゾウムシ)やカメムシの仲間が実を吸汁することもあるので注意してください。

注意すべき病気は特にありません。

4.アオツヅラフジの適期作業

アオツヅラフジの作業カレンダー

植替え(3月~4月)

植替え適期は芽出し前の3月~4月頃です。

蔓性の植物は太根を強く切ると暫く花が咲かなくなったり、最悪は枯れたりするとがあるので、雑木のような強い根処理はしないで、できるだけ根を切らずにたたみ込むようにして古土を更新してください。

蔓ものですから、合わせる鉢は深めのものがバランスを取りやすく、根も無理なく入ります。深鉢は鉢内に湿気が意外と停滞しますので、ゴロ土を多めにいれておいてください。元肥も忘れずいれておきましょう。

太根がいくつか充実して、小根もたくさんでている場合は、株分け(根伏せ)で増やすことができます。

植え替えは根詰りがなければ2~3年に1回の間隔で十分です。

芽摘み(5月下旬)

基本的には芽摘みは必要ありません。

アオツヅラフジのような蔓性の植物は、伸びる蔓はそのままにして落葉後に切り詰めるようにするだけで自然と姿が整います。

ただし、ミニ盆栽などで実を短いところで付けたい場合は、5月頃に1~2節で芽摘みをして、2番芽に花芽を付けさせる方法もあります。

春から伸びる蔓はそのまま伸ばしておくか5月いっぱいまでに切り戻し、その後は長く伸びて樹形を乱すものだけ必要な所で切り戻してもいいと思います。

実を休ませる年の樹(裏年の樹)は、蔓はそのままにして葉数を確保しておきましょう。

剪定(落葉後)

アオツヅラフジは、古くなった根や蔓が木質化して幹や役枝となるので、基本樹形作りは「蔓を育てながら秋(落葉後)に切り戻す」が基本になります。

5月の芽摘み後も蔓は伸びてきますが、基本的には秋までそのまま伸ばしておいてください。無理に形を整えようとせず伸ばしたままの方が、実の重さで蔓が垂れて自然味がでます。

あまり強く伸びて他の枝に絡まるものがあれば軽く切り戻すか、蔓をくるくる巻いて束ねておきます。

地際から伸びるヤゴ芽や不要な場所から伸びる蔓は、古枝を枯らす原因になるので早めに根元から切っておいてください。

針金かけ(5月~7月)

伸びる蔓の自然な樹形がいいので一般的にあまり行いませんが、蔓に流れを持たせたり、基本の幹模様をつけるためには針金かけが有効です。

実を休ませている(裏年)の樹は、重しがなく蔓がピンピン伸びるので、枝元だけでも多少模様付けをしておくと来年の枝として使えます。

観賞のために補助的に針金をかける場合は、針金は緩めに巻いて方向を修正する程度にしておきましょう。生長期にかけておけば、観賞前にはクセがついているので外して眺めることができます。

開花と受粉(7月~8月)

雌雄異株なので雄木との交配が必要です。

花は今年伸びた蔓の葉の基部から花序を伸ばし数個まとまって咲きます。雄花は雌花よりも花数が多く、花期も長いので太めの株が1鉢あれば交配には苦労しません。

■アオツヅラフジの雌花(左)と雄花(右)。6本の雌しべ(柱頭)の下にそれぞれ子房が付いていて、受粉すると数個の実が膨らんできます

株を寄せておけば虫や風が花粉を運んでいくつか実を付けますが、実数は少なくまばらになるので、人工交配をした方が確実です。

雌花は一斉には咲きませんので、開花したものから順番に受粉させてください。雄花をピンセットでつまんで直接めしべに接触させてもいいですし、小筆などで花粉を採取して、めしべに付けてもいいです。

結実したばかりの実

受粉が完了すると数日で子房が膨らんできます

受粉すると花弁が取れ、だんだんと子房が丸く膨らんで10月頃から色づいてきます。

実はあまり遅くまで付けていると樹が弱るので、展示などの予定がなければ11月中には摘果したほうがいいでしょう。

樹勢を維持するために、毎年実を付けずに樹を休めるようにしてください。

5.関連ページ

作業中

コメント

川島寛 さん 2020年08月04日14時14分
盆栽屋さんが出版した本の中に(図書館で借りた本で気になる記事コピーしています) 『アオツヅラフジの培養』に鉢があまりにも小さいと、花芽が付かない、小品なら2号か3号の駄鉢(深鉢)で肥料多めに仕立てると良く実が付きますが、これでは鑑賞になりません。鑑賞するには、実のなったものを鉢替えすることになります。このときの注意 なるべく根を切らないようにするため水で根を洗い小鉢に植え替える・・・・・。等とあります。 私も小さな鉢(直径4cm位)だとなかなか花芽を持たないアオツヅラフジが多かったのですが、素焼きの3号鉢で多肥で育てると花芽がつき実も多く留まるようになりました、小鉢に植え替える時根は水洗いせず根をあまり切らないように小鉢に植え替えています。 しかし、どの樹種でもそうですが性が良いと小さな鉢で育てていても実が留まるものもありますね。 全部私が35年以上前に同じ親木から採取して実生した盆栽ですけど1本1本性が違います。 
清重明佳 さん 2021年06月18日17時39分
お久しぶりです。

私ども、このアオツズラフジの花についてご存知であればお教えください。
1本の樹で開花結実します。なので、
混乱してきました。
雌雄異株でなく両性花ではないかと思っていますが。

この花の拡大写真をお送りしますので、ご判断ください。
花粉、雄蕊、雌蕊などの御判断を解明して下さい。
きみ さん 2021年06月19日10時55分
清重明佳 さんへ

普通雌雄異株(雌雄異花)でも、美男カズラやロウヤ柿など性によって1本で実のなるものはありますよね。でもアオツヅラフジで自家受精するものがあるのは初めて拝見させてもらいました(゜_゜)

写真みたところ、異常に雌しべが発達しているように見えるので、そういう種類なのでしょうね(雄しべと描かれているのは花弁だと思います、後ろに付いているクリーム色のものは萼です)。
雌雄が分かれるのは遺伝的に生存できる可能性を高める進化の過程ですから、その個体は祖先の遺伝子を強く継承したものなのかもしれません(あるいは園芸種か)。

入手先が気になります、うらやましいです。
上原盆太 さん 2022年10月13日18時57分
青のつずらふじは取り木。挿し木可能でしょうか。。
きみ さん 2022年10月14日15時34分
上原盆太 さんへ

すみません、根伏せしかしたことないですのでわかりません。
何事もやってみないとわかりませんね
でも細い蔓を挿し木してもあまり良い素材にはなってくれそうにないですね。
夢一心 さん 2023年07月26日19時30分
アオツヅラフジを挿し木で増やしたいのですが、挿し穂にできる部分、また時期について教えてください。
きみ さん 2023年07月27日09時47分
夢一心 さんへ

アオツヅラフジの挿木は経験がないのでわかりません
すみません。
でも蔓を挿しても付かないと思いますから、挿木するなら木質化した部分だと思います。

時期は他の樹種同様、梅雨時期から遅くても7月いっぱいか、休眠枝も挿せるかもしれないと思いますが、これも経験がないのでわかりません。