ロウヤ柿(老爺柿)の魅力

投稿日:2012/08/21 更新日:2023/11/24(4)

老鴉柿

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ロウヤ柿(老爺柿、学名:Diospyros rhombifolia)はカキノキ科カキノキ属の落葉~半落葉低木。

実の「へた」にあたる萼(ガク)が羽子板の羽根の様な形をしていることから衝羽根柿(ツクバネガキ)とも呼ばる灌木で、第二次世界大戦中に日本に入ってきた中国原産の矮性柿です。

枝に付く熟した実がカラス(鴉)のように見えるということから、「老鴉柿(ロウアガキ)」の字が正式とされていたようですが、盆栽界では鈴木佐市氏の「翁柿」の援用か、単に呼びにくいからか、ロウヤを老爺の字に当てて呼ぶようになっています。

実が小さく、栄養繁殖(根伏せ、接木、挿木)や交配実生による品種作出も容易なので盆栽としての人気が高く、実の色や形、大きさのバリエーションが豊富。

盆栽樹種としては比較的新しいものですが、秋の人里の風景を思わせる親しみ深いカキノキとして、日本の愛好家によって改良が重ねられ、海外からも熱烈な注目を集めています。

ロウヤ柿の特徴

盆栽界に衝撃を与えた「小さい柿」

ローヤ柿の実

今や盆栽界で「カキノキ」と言えばロウヤ柿が主ですが、ロウヤ柿が一般に知られるようになったのは昭和の終わり頃からです。

もともとロウヤ柿は中国が原産で、日本には第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄氏により持ち込まれた渋柿の仲間です。小品にも作られる常緑の常盤柿も、ほとんどは日本原産種ではなく昭和40年代に中国から導入された小さい甘柿の仲間「四川常盤柿」です。

日本には「次郎」や「富有(ふゆう)」「太秋(たいしゅう)」などの甘柿の他、「山柿」や「豆柿(日本の自生種の常盤柿)」などのやや小さい柿はありましたが、どれも枝打ちが粗く小枝も出来にくいため、盆栽仕立ては難しいと言われていました。

ところが、1984年に開催された第4回日本盆栽大観展で初めてロウヤ柿が飾られた時は、その実の小ささと小枝の多さが盆栽界に大きな衝撃を与えたと言われています。

五葉松「瑞祥」の産みの親であり、翁と呼ばれた鈴木佐市氏が飾った柿(品種名:天朱煌)は、『翁柿』という名前で紹介され、後に「老爺柿」「姫柿」という名前で一般に普及しました。

もともと天朱煌はやや実付きの悪い性質でしたが、多くの人が樹作りや新品種の作出に着手し、現在では実付きや実持ちに優れた様々な品種が作出されています。

切り込みに強く、小枝が増えた分だけ実も多くつく性質のロウヤ柿。

盆栽界では歴史の浅い樹種ですが、これまで文人調の大物盆栽くらいしかなかった柿界において「老爺柿」は瞬く間に浸透しました。

老爺柿だけの展示会もあるほどで、珍品種の苗木は高値で取引されています。

愛好家により作出された多彩な品種

ロウヤ柿が盆栽界に知れ渡るや否や、複数の業者が中国から原木を手に入れ、その原木を祖として多くの品種が作出され始めました。

自然交配を繰り返すことで新たな品種が生まれるので、各地の栽培家や愛好家から作出された人気種も数多くあります。

色は馴染みの柿色からミニトマトのような紅、黄、黒、斑点(ゴマ斑、渋斑、油滴斑)と言われる模様があり多彩。形も丸実や長実、細実と100を裕に超えるバラエティに富んでいます。

観賞期は10月~1月頃で、実持ちのいいものは初秋から春先まで艶っぽく堅い実を付けたままにしています。

いろんなロウヤガキの実

原木品種と初期の代表的な交配種

関西を中心に広まった「曙」、丸い赤実の「宴」、橙実に渋みのある斑がでる「黄砂」、翁柿として第4回日本盆栽大観展で展示された「天朱煌」、上品な形の「美美紅(びびこう)」、真っ赤な丸味の「紅小町」、実の形も綺麗で枝性も盆栽向きの「卑弥呼」など。

山口安久氏による登録種(姫柿ブランド)

山口安久氏は1944年東京都豊島区生まれ。1985年に中国より姫柿を導入し多くの姫柿ブランドを作出した「姫柿を育てる会」主宰。23歳から大宮市盆栽町の盆栽園で修業し、後に千葉県柏市に「柏芳園」を開園。日本初の庭園盆栽美術館「瑞祥園」設立にも携わった人物です。

黒実の「暁天目(ぎょうてんもく)」、節が詰まり小品向きの「楊貴妃」、世界最小の柿の実とも言われる「木守(きまもり)」、鮮やかな丸実が人気の「紅陽」、二度咲きで橙実の「四季」、やや黒みのある赤実の「紫陽(しよう)」、実や葉が丸い「真紅」、交配なしで結果する「長寿鳳(ちょうじゅほう)」、観賞期の長い黄実の代表種「長寿」、赤実系の中で最も実持ちのいい「萬寿」 など。

京都の双樹園による交配種

小実で丸い紅色の人気種「祇園小町」、和の風情のある長実で橙色の「京美人」、大実で上品な紅色の人気作「御所車」、上品な形の柿色の実が人気の「大覚寺」、扁平に丸い赤実が珍しい「高雄紅」、橙色で大実の「都の大駒」、四季咲きの「都の四季」、双樹園の有名種「都紅」など。

群馬老爺柿育成会による登録品種

濃紅色の「希望の星」、姫林檎のような丸赤実の「旭光丸(きょっこうまる)」、黒実の「悟空」や「妙義黒天目(みょうぎくろてんもく)」、極小型の丸実がかわいらしい「鈴姫」、赤実で萼片がピンとはねる「宝舟」、艶のあるひょうたん型の赤実が印象的な「鶴びょうたん」、大きく反った長い萼片が綺麗な赤実の「舞扇」、果柄が長く、実が鈴のようにぶら下がる「美鈴」など。

その他各栽培家によって作出された品種

愛知県作出種の「愛知の輝き」、群馬県作出種の「赤城の誉」や「赤城美人」「日本一」「小次郎」、関東地方作出種の「足助堤灯(あすけちょうちん)」、岐阜県作出種の「岐阜提灯」、東海地方作出種の「華王(かおう)」や「紅豊(こうほう)」「紅王朝」「彗星」「豆千代」、埼玉の愛好家により常盤柿との交配で作られた「王冠」など。

ロウヤ柿の花(3月~4月)

老鴉柿の花

ロウヤ柿の雌花(左)と雄花(右)

ロウヤ柿は雌雄異株(雌雄異花)で、花の形は「壺形」。花弁の先が丸くめくれて4~5裂開し、先が窄んだスズランの花のような形をしています。

雌花は葉の基部に1つずつ付き、よく見ると中央に雌しべが突起しているのが分かります。将来ヘタになる萼が大きいのも見分ける特徴です。

雄花は色形は雌花に似ていますが、大きさは少し小さめ。萼も小さく、ほとんど目立ちません。葉の基部に2~3個まとまって咲き、花弁の中に雄しべが並んでいます。

受粉させるには、小筆などで花粉を取り、雌しべの先端に付けてください。

雌雄異株ですがジベレリンで人工的に結実させることも可能で(単為結果)、交配しなくても結実する品種もあります。

ロウヤ柿の繁殖法

雌雄異株のロウヤ柿は根伏せで増やすのが多いですが、実生や挿木、取木も可能です。

植え替えの時に切った太めの根を根伏せしておくと、意外と早く実も付きますから挑戦してみましょう。ただし接木のものは根伏せをしても親木の遺伝子を継承しませんのでご注意ください(オス木の可能性もあり)。

実生はいろいろな形の素材をたくさん得ることができ、新品種出現の可能性も大です。

取り蒔き、春蒔きどちらもできます。春に播く場合は種子を取り出し殺菌剤に浸して乾かしたものを冷暗所に保存し、3月頃に播いくといいようです。

雌雄別ですから、実生の場合はメスの出る確率は1~2割で、花芽が付くまでに5~7年ほどかかります。

ロウヤ柿の主な樹形

斜幹、模様木、懸崖、半懸崖などいろいろな形にできますので、実とのバランスを考えて樹形を考えてみてください。

剪定に強く、強く切り戻しても芽吹いてくるので作り直しも可能です。幹が古くなると硬くて曲げられませんので、早いうちに幹模様を作っておきましょう。

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コメント

ともちゃんt さん 2020年04月05日10時13分
毎日コロナのニユースばかりで気が滅入りますね。
開けない夜がないのと同じでいつの日にかコロナの終息が来ることを祈ります。

我が家の老爺柿の新芽も開き始め、
花芽のついた樹も何本か出てきました。

昨年2月に小品盆栽用に購入した30本ほどを5~6CMのところでバッサリ切り、
その後にするする伸びた枝(長いものは50CM)のうち2本に花芽がつきました。
が、しかし、2本ともオス花でした。ガックシです。

通常、3~5年ほどで花芽が付くといわれているようですが、
早く着くのはオス花なんでしょうか?

まだ葉の開いていない樹に花芽は来ますかね?
期待半分の日々が始まりました。
きみ さん 2020年04月06日18時21分
ともちゃんt さんへ
そういわれれば、雄花は早く咲きますね。どうしても交配用の樹は棚下などに追いやられるので、遅く咲きがちですが逆ですね。
私はほぼジベレリン頼みなので、あまり気にしていませんでした。

<まだ葉の開いていない樹に花芽は来ますかね?
どうでしょうか、わかりませんが、今時期また芽がほころんでいないのは遅いですね。

コロナ蔓延がより深刻になってきましたね。どうぞ細心の注意でお過ごしください。
わたしもほとんど引きこもり状態で(もともとですが)、ジッとする作業が多く運動不足なので運動でもして免疫上げたいと思います。
ともちゃん さん 2020年04月16日13時17分
お世話になっております。

今日は気持ちの良い空模様です。
老爺柿の新芽もどんどん開いてきました。

昨年2月に切り込んだ30本ほどの樹のうちから雄花が2本咲き、
がっかりしましたがようやく3本雌花(1~4輪)が遅れて開きました。

実が生るのは3~5年の枝と書かれている書物が多いようですが、
我が家の後のほとんどの樹は知らんぷりしているようなので
2~3年はそうなんですかね?

中でも10年ほど前に買った樹はいまだに咲いたことがないので
疑心暗鬼になっております。
この樹は2年前から先端を少し詰め、そののちに葉刈りして
芽数を増やしています。
花の咲かない樹というものがあるのでしょうか?

よろしくお願いします。
きみ さん 2020年04月17日08時55分
ともちゃん さん
葉刈りとか時期ハズレの剪定をしているうちは花芽はこないです
実をつける段階になったら、その辺の植物生理を考えて手入れしないとですね

個体差によっても、いつまでも花芽こないものと3年くらいでくるものがあります。
どうしてか詳しいことは解りませんが、梅もそのようなものがあります。
実生より根伏せの方が早いですね
ともちゃん さん 2020年04月17日13時02分
教えていただきましてありがとうございます。

>この樹は2年前から先端を少し詰め、そののちに葉刈りして
>芽数を増やしています。
実は
5月後半までに開いた芽先を摘んで、6月中頃までに葉刈りしています。
これは実を成らすための剪定としては間違っているのでしょうか?

なんせ、書物が頼りの身ですから、微妙なところがわからん事ばかり???

よろしくお願いいたします。
キミ さん 2020年04月17日17時49分
ともちゃん さんへ
葉刈りは主に枝作り段階の養成木におこなう作業です。
葉刈りをしているうちは、花芽を使う力が葉芽に使われるので実はつきません。
花芽を付けたい場合は芽おさえくらいまでにしておかないとです。

近日中に新しく更新するつもりですが、一応こちらも読んでみてください。
ロウヤ柿の育て方
ともちゃん さん 2020年04月19日08時53分
おはようございます。

>ロウヤ柿の育て方
>葉刈りをしているうちは、花芽を使う力が葉芽に使われるので実はつきません。

改めて読ませていただきました。上述のような微妙なところを知らないままに
剪定しておりました。目からうろこです。

いま咲いている5本の花の箇所を観察しましたら、
2年目のするする伸びた幹から出た小枝の葉の脇から花が咲くのですね。

30本のうち5本花が付きましたがあとは知らんぷり。
やはり3年目以降に期待でしょうね。
或いは5年になるかもしれませんね。

そのほかの樹も花芽がたくさんついたものや、
去年たくさん咲いたのに今年はパラパラ。

樹に聞いても経験不足で、答えてくれませんし、
わからん事が多すぎ・・・

>ロウヤ柿の育て方、
から分かりそうで、わくわくします。

ありがとうございます。
きみ さん 2020年04月20日08時35分
ともちゃん さんへ
いつもありがとうございます。
この頃はロウヤ柿への質問が多くなっているので、きちんと書いておこうと思っていました。
だけど最近タスクが溜まっていてなかなか更新できません。
100パ私の要領の悪さのせい...現在取り組み中なので、どうかお待ちください。