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老鴉柿(ロウヤガキ)の魅力

老鴉柿

老鴉柿(ロウヤガキ)はカキノキ科カキノキ属の落葉~半落葉低木。

萼が羽子板の羽根の様な形をしていることから衝羽根柿(ツクバネガキ)とも呼ばる灌木で、第二次世界大戦中に日本に入ってきた中国原産の矮性柿です。

枝を作りやすく、分岐の数だけ実が成るので盆栽向きの樹種。愛好家による作出種が多く、実の色形も多様です。

盆栽樹種としては新しい樹種ですが、秋の人里の風景を思わせる親しみ深い樹として欠かせないものになっています。

老鴉柿の特徴

盆栽界に衝撃を与えた「ちいさい柿」

今や盆栽界での「柿」と言えば老鴉柿が主ですが、老鴉柿が一般に知られるようになったのは昭和の終わり頃からです。

もともと老鴉柿は中国が原産で、日本には第二次世界大戦中に京都府立植物園初代園長である菊地秋雄氏により持ち込まれた渋柿の仲間。小品にも作られる常緑の常盤柿も、ほとんどは日本原産種ではなく昭和40年代に中国から導入された小さい甘柿の仲間「四川常盤柿」です。

日本には「次郎」や「富有(ふゆう)」「太秋(たいしゅう)」などの甘柿の他、「山柿」や「豆柿(日本の自生種の常盤柿)」などのやや小さい柿はありましたが、どれも枝打ちが粗く小枝も出来にくいため、盆栽仕立ての難しいものでした。

ところが、1984年に開催された第4回日本盆栽大観展で初めて老鴉柿が飾られた時は、その実の小ささと小枝の多さが盆栽界に大きな衝撃を与えたと聞きます。

五葉松「瑞祥」の産みの親であり、翁と呼ばれた鈴木氏が飾った柿(品種名:天朱煌)は、『翁柿』という名前で紹介され、後に「老鴉柿」「姫柿」という名前で一般に普及しました。

もともと天朱煌はやや実付きの悪い性質でしたが、多くの人が樹作りや新品種の作出に着手し、実付きや実持ちに優れた様々な品種が作出されています。

切り込みに強く、小枝が増えた分だけ実も多くつく性質の老鴉柿。

盆栽界では歴史の浅い樹種ですが、これまで文人調の大物盆栽くらいしかなかった柿界において「老鴉柿」は瞬く間に浸透しました。

老鴉柿だけの展示会もあるほどで、珍品種の苗木は高値で取引されています。

愛好家により作出された多彩な品種

老鴉柿が盆栽界に知れ渡るや否や、複数の業者が中国から原木を手に入れ、その原木を祖として多くの品種が作出され始めました。

自然交配を繰り返すことで新たな品種が生まれるので、各地の栽培家や愛好家から作出された人気種も数多くあります。

色は馴染みの柿色から紅、黄、黒、ゴマ斑と言われる模様があり多彩。形も丸実や長実、細実と100を裕に超えるバラエティに富んだ品種があります。

観賞期は10月~1月頃で、実持ちのいいものは初秋から春先まで艶っぽく堅い実を付けたままにしています。

原木品種と初期の代表的な交配種

関西を中心に広まった「曙」、丸い赤実の「宴」、橙実に渋みのある斑がでる「黄砂」、翁柿として第4回日本盆栽大観展で展示された「天朱煌」、上品な形の「美美紅(びびこう)」、真っ赤な丸味の「紅小町」、実の形も綺麗で枝性も盆栽向きの「卑弥呼」など。

山口安久氏による登録種(姫柿ブランド)

山口安久氏は1944年東京都豊島区生まれ。1985年に中国より姫柿を導入し多くの姫柿ブランドを作出した「姫柿を育てる会」主宰。23歳から大宮市盆栽町の盆栽園で修業し、後に千葉県柏市に「柏芳園」を開園。日本初の庭園盆栽美術館「瑞祥園」設立にも携わった人物です。

黒実の「暁天目(ぎょうてんもく)」、節が詰まり小品向きの「楊貴妃」、世界最小の柿の実とも言われる「木守(きまもり)」、鮮やかな丸実が人気の「紅陽」、二度咲きで橙実の「四季」、やや黒みのある赤実の「紫陽(しよう)」、実や葉が丸い「真紅」、交配なしで結果する「長寿鳳(ちょうじゅほう)」、観賞期の長い黄実の代表種「長寿」、赤実系の中で最も実持ちのいい「萬寿」 など。

京都の双樹園による交配種

小実で丸い紅色の人気種「祇園小町」、和の風情のある長実で橙色の「京美人」、大実で上品な紅色の人気作「御所車」、上品な形の柿色の実が人気の「大覚寺」、扁平に丸い赤実が珍しい「高雄紅」、橙色で大実の「都の大駒」、四季咲きの「都の四季」、双樹園の有名種「都紅」など。

群馬老鴉柿育成会による登録品種

濃紅色の「希望の星」、姫林檎のような丸赤実の「旭光丸(きょっこうまる)」、黒実の「悟空」や「妙義黒天目(みょうぎくろてんもく)」、極小型の丸実がかわいらしい「鈴姫」、赤実で萼片がピンとはねる「宝舟」、艶のあるひょうたん型の赤実が印象的な「鶴びょうたん」、大きく反った長い萼片が綺麗な赤実の「舞扇」、果柄が長く、実が鈴のようにぶら下がる「美鈴」など。

その他各栽培家によって作出された品種

愛知県作出種の「愛知の輝き」、群馬県作出種の「赤城の誉」や「赤城美人」「日本一」「小次郎」、関東地方作出種の「足助堤灯(あすけちょうちん)」、岐阜県作出種の「岐阜提灯」、東海地方作出種の「華王(かおう)」や「紅豊(こうほう)」「紅王朝」「彗星」「豆千代」、埼玉の愛好家により常盤柿との交配で作られた「王冠」など。

老鴉柿の花(3月~4月)

老鴉柿の花

老鴉柿の雌花(左)と雄花(右)

老鴉柿の雌花は壺形で花弁の先が丸くめくれて4~5裂開し、先が窄んだスズランの花のような形をしています。

花は葉の基部に1つずつ付き、よく見ると中央に雌しべが突起しているのが分かります。将来ヘタになる萼が大きいのも見分ける特徴。

一方、雄花は色形は雌花に似ていますが、大きさは少し小さめ。

葉の基部に2~3個まとまって咲き、花弁の中に雄しべが並んでいます。萼は小さく、ほとんど目立ちません。

受粉させるには花弁を取り、ピンセットで柄をつまんで雌しべに付けると確実です。

雌雄異株ですが「長寿鳳(ちょうじゅほう)」や「都紅(みやこべに)」など交配しなくても結果する品種もあり、ジベレリンで人工的に結果させることもできます。

老鴉柿の繁殖法

老鴉柿は実生や挿木、取木のほか根伏せでもよく増えます。

植え替えの時に出た根を根伏せしておくと面白い曲がりの素材が簡単にできるので挑戦してください。

実生はいろいろな形の素材をたくさん得ることができ、新品種出現の可能性も大。

取り蒔き、春蒔きどちらもできます。

春に播く場合は種子を取り出し殺菌剤に浸して乾かしたものを冷暗所に保存し、3月下旬頃に播いて下さい。

老鴉柿の主な樹形

斜幹、模様木、懸崖、半懸崖などいろいろな形にできますが、実とのバランスを考えて樹形作りをします。

剪定につよく、強く切り戻しても芽吹いてくるので樹作りの楽しいものです。

早いうちに幹模様を作ったら、あとは鋏作りで小枝を増やしていきましょう。

                                                   

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都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

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