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ウメ(梅)の魅力

投稿日:2016/03/16 更新日:2021/01/24

梅

ウメ(梅、学名:Prunus mume、英: Japanese apricot)はバラ科サクラ属の落葉小高木。

中国原産種で、実ウメは水田稲作技術と共に日本に持ち込まれ、観賞用の花ウメ(白梅)は奈良時代になって伝わりました。

かつては唐の芸術文化として貴族階級で珍重されていましたが、鎌倉時代以降は庭木としても普及し、日本の風土や文化にしっかり馴染んでいます。

華やかさを愛でる桜の花と違い、洗練された清楚な梅の花は「清廉潔白」を良しとした当時の精神に沿い、万葉集の時代には既に百首以上の梅に関する詩が掲載されています。

盆栽には花に気品のある野梅系の品種が人気。幹に老樹の趣が早いうちい出るので、樹姿やジン・シャリの芸も大きな見所の1つです。

多彩な品種と分類の歴史

もともとは20種前後であったと言われる梅は、江戸時代以降盛んに品種改良が行われ、明治初期に作出された梅の品種数は400以上に登ります。

江戸時代中期の大名・松平定信の「浴恩園櫻譜(よくおんえんさおうふ)」は、自身の下屋敷に植えた120種以上の桜を画家の谷文晁に描かせた図譜として知られていますが、春田久啓の「韻勝園梅譜(いんしょうえんばいふ)」は梅の品種目録として極めて有名です。 

韻勝園梅譜

神代植物公園所蔵「韻勝園梅譜」模写帖
:東京都公式HP 報道発表資料「神代植物公園 梅まつり」より引用

徳川家に仕えた旗本であった春田氏は、梅の研究家・育種家としても知られていて、「韻勝園」と称した自身の庭に数百株の梅を収集栽培し、写生した97種の梅に解説を添えてまとめました。

その摸写帖は調布の神代植物公園に所蔵され、例年2月上旬~3月に開催される梅まつりに合わせて一部公開されています。

ウメの分類の動き

数百にも登った新品種作出の動きは明治以降も続きましたが、当時はまだ梅の培養法が確立していなかったために淘汰された品種も多く、異名同種も少なからず含まれていたために品種の同定が非常に難しかったようです。

そういった背景から、明治34年に出版された「梅譜(小川安村著)」では、初めて梅の品種を野梅性、紅梅および緋梅性、豊後性、難波性、摩紅性、寒紅性、紅筆性、唐梅性、杏性の9つの性(生)に分類しようとする説が提唱されました。

当時の試みとしては非常に科学的な小川氏の分類法は、その後の園芸類別の基となり、のちに高木孫左衛門氏(梅芳園)が発表した梅の銘鑑では、318種の梅の品種を野梅性、紅梅性、豊後性、難波性、紅筆性、緋梅性、摩紅性、杏性の8つの性に分類。

昭和24年に発行された「園芸大辞典」の梅の頁では、平尾彦太郎氏(万芳園主)によって、いくつもの性に分れた210種の梅の品種をその特徴別に「野梅性」101性、「豊後性」58性、「紅梅性」39性、「杏性」12性の4つに大別しています。

この考え方を元に、多くの梅の品種を選抜した増井徳三郎氏(群芳園主)によって、これらの性をまず3つの「系」に大別してその下を「性」で分けるようになりました(梅花群芳譜)。

園芸上は諸説の分類がありますが、現在主流となっているのは、まず「実ウメ」と「花ウメ」で大別し、花ウメは野梅系(野梅性、難波性、紅筆性、青軸性)紅梅または緋梅系(紅梅性、緋梅性、唐梅性)豊後系(豊後性、杏性)に分けた3系9性。

ウメは近縁種であるアンズと自然交雑しやすく、アンズの形質を強く受け継いだものも多くあります。その度合いにより純粋梅、杏性梅、中間梅、梅性杏、純粋杏と分けることができますが、植物学的に系統を追うのは遺伝子解析でもしない限り難しいようです。

盆栽の世界では、花色や葉の形状、新梢の色や枝の細さなどの見た目の特徴や過去の書籍などを頼りに区別されますが、売り出された時の手違いなどで、「鴛鴦」と「八重唐梅」、「塒出の鷹」と「東錦」のように名前は違うがほとんど見分けが付かない、実は同じものであったという話も聞かれます。

梅の品種

野梅系(やばいけい)―野梅性、難波性、紅筆性、青軸性

ウメの原種の野梅の系統で、その特徴を多く現すもの。木質部の随は白色で、枝と切った時にその断面が赤色を呈しない。小葉性で枝つきよく、花弁は中輪~小輪、盆栽向きの性質を備えています。

野梅性(やばいしょう)

野梅の花

野梅性は中輪の白~淡紅の花が多く、香り強めの早咲き種です。枝は細く密生し、時にトゲ状の小枝を出します。新梢は緑色で随は白。挿木が容易でこれを台木にした接木も多く生産されています。

野梅性は品種が特に多く、開花の早い正月用品種として知られる「冬至」や「紅冬至(こうとうじ)」、「初雁(はつり)」を始め、極小輪の「米良(めら)」など。珍しい品種には花弁が退化した「酈懸(てっけん)」や、花裏が淡紅の「朱鷺の舞(ときのまい)」などが有名です。

吹き掛けや絞り、紅白などに咲き分ける「輪違い(別名:思いのまま)」のほか、八重系の「八重野梅」「玉牡丹」「黄金鶴」「八重寒紅」などもあります。

※野梅性の品種は特に数が多いので以下に追記します

一重品種:一重野梅、古今集、日月、塒出の鷹(とやでのたか)、茶青花、新茶青、新登、通い小町、田毎の月(たごとのつき)、一重寒紅、舞扇(まいおうぎ)、道知辺(みちしるべ)、芳流閣(ほうりゅうかく)、烈公梅(れっこうばい)、曙、二月の雪、渓間の月、満月、三国の誉、宝合わせ、黄金梅、玉の台、星下り、八つ藤、浜千鳥、三吉野、風流、雪月花、雪見車、重梅、白鷹、白縮緬、一歳白、残雪、雲の曙、谷の雲、田子の浦、自覚、世界の図など

八重品種:八重野梅、八重寒紅、淡路、一流、明石潟、月宮殿、芳流閣、宇治の里、香花紅、座論、大名、玉垣、長寿、玉絞り、玉簾、調布玉川、筑紫紅、吹上梅、都錦、明星、八重旭、八重茶青、柳川絞り、鶯宿(おうしゅく)、見驚(けんきょう)、春日野、水心鏡、花座論、無類絞りなど

難波性(なにわしょう)

難波性

玉拳(ぎょくけん)

難波性は矮性気味で小枝が多く、トゲも少ないのが特徴です。野梅性と同じく、休眠は浅いため早く咲かせることができます。

丸葉で、花弁は淡紅の波が多い八重咲き。野梅性と同じく、挿木が容易で活着しやすい性質です。

淡紅中大輪で花弁の先がやや波打つ「浮牡丹」や「遠州しだれ」」「難波紅(なにわこう)」「玉拳(ぎょくけん)」のほか、「旭牡丹」「御所紅」「更紗梅」「白雲梅」「白難波」「虎の尾」「故郷の錦」「蓬莱」「文殊」などがあります。

紅筆性(べにふでしょう)

紅筆性

紅筆(べにふで)

豊後性に近い品種で、葉や枝は野梅にも似ていますが、蕾の先が尖って紅くなる性質。

花弁は先端や裏に紅色を帯び、淡紅色のボカシが入ることが多くあります。

節間の詰まる「紅筆(べにふで)」を始め、枝が太りにくく小品向きの「古金襴(こきんらん)」や「西王母(せいおうぼ)」のほか「内裏」「紅雀」「八重西王」「八重海棠」などがあります。

青軸性(あおじくしょう)

若枝の色は緑~緑白色で、蕾や萼も緑色をしています。花色は青白色で枝はやや太くなりやすい性質。

月影

月影(つきかげ)

普通梅の若枝は落葉後日焼けして紅茶色に変色しますが、この性は陽に当たっても変色せず冬でも緑色です。

一重中小輪の「月影(つきかげ)」や、中国渡来種の「緑萼(りょくがく)」「白玉梅(はくぎょくばい)」のほか「金獅子」「月の桂」「錦」「竜門」「白砂」「夜光の玉」「大輪緑萼」などがあります。

緋梅系(ひばいけい)

鹿児島紅

鹿児島紅(かごしまべに)

野梅系から変化した系統で、花だけでなく枝の随も赤いのが特徴。

紅花が普通ですが白花種でも随の紅いものは緋梅系に分類され、小枝も多く小葉性の性質が表れています。

緋梅系には花色が紅く日焼けしないものを紅梅性(こうばいしょう)、濃紅色で矮性種が多く日焼けしやすい緋梅性(ひばいしょう)、色味が薄く花弁の脈が明瞭でうなだれて咲く唐梅性(とうばいしょう)と細分できますが、ほとんど区別が付かないためあまり細かく分けて見ることはありません。

一重咲きには大輪の「大盃(おおさかずき)」や「夏衣(なつごろも)」、中輪の「東雲(しののめ)」「関守(せきもり)」「紅千鳥」「蝶千鳥」「雪の曙」、小輪には花型が端正で美しい「緋梅」や「鹿児島紅」「姫千鳥(紅千鳥の矮性種)」「旭貝」「一歳」「森の関」「紅鶴」など。

八重咲き品種も多く、1花に2つの果実がつき夫婦梅とも呼ばれるや三重の「光輝(こうき)」「五節の舞(ごせちのまい)」の他、花型に気品のある「蘇芳梅(すおうばい)」、「鴛鴦(えんおう)」「緋の司」「黒雲(くろくも)」「吉事野」「唐錦」「唐梅」「紅牡丹」「幾夜寝覚(いくよねざめ)」「八重源氏」「蓮久」などがあります。

豊後系(ぶんごけい)―豊後性、杏性

杏やスモモとの交雑によって生まれた系統で、野梅系に近いものを豊後野梅性と呼ぶこともあります。

大輪~中輪で花色は桃色に近いものが多く、遅咲きで香りは控えめ。

花底はツボ型で深く、萼の色は焦茶色。樹勢剛健で枝が太りやすく、葉も大きいのが特徴。

豊後性(ぶんごしょう)

豊後性

桃園(ももぞの)

特に杏に近い性で、淡紅色のものが多く大輪の花をつけます。樹勢が旺盛で枝はやや太め。葉は丸くて大きく毛があり、とくに新芽は細毛に覆われ白く見えます。

一重品種には野梅系に近い淡紅色の「労謙(ろうけん)」や「入日の海」「薄色縮緬(うすいろちりめん)」、蕾の先が尖る「大湊(おおみなと)」、大輪八重咲きの「千歳菊」「江南所無(こうなんしょむ)」「旭の海」「巻立山」「桃園」「五大力」「文鳥」「桃千鳥」「千代鶴」「園の雪」「日の出沖」「乱雪」など。

八重咲き種には白色大輪の「叡山白(えいざんはく)」、梅の中でも最大の「武蔵野」、うつり色の「駒止(こまどめ)」「乙女の袖」「楊貴妃」「八重揚羽」「未開紅(みかいこう)」「有明」「男石」「猩々紅」「白牡丹」「大和牡丹」などがあります。

杏性(あんずしょう)

杏性

千歳菊(ちとせぎく)

こちらも杏との交雑によって生まれた系統ですが、豊後性よりも小葉で枝が細く、表面に毛がありません。

遅咲きのものが多く、香りも弱め。新梢は日焼けすると灰褐色に変化します。

一重咲きには小輪で可憐な「一の谷」や、花弁の並びが家紋のように美しい「紋隠し」「桜梅」など。

八重咲きには「獅子頭」「江南所無(こうなんしょむ)」「記念(きねん)」「千歳菊」「淋子梅」「八朔(はっさく)」「仙境」「緋の袴」「御手の海」「築地九重」「玉孔雀」「置霜」などがあります。

梅の繁殖法

梅の古枝挿し

落葉後の剪定枝は捨てずに挿しておくと発根の可能性が高い(ルートン使用)

梅の種木は接木や挿木で増やされていて、市場に出回るものは野梅を台木として接木で作ったものが多いです。

地植えで太らせた台木を鉢上げして太幹を切り戻し、接いだ枝は年に数回切り戻して小枝を増やしていきます。

そうして5~6年かけて幹模様や枝作りがなされたものに花芽を付けさせ、正月用に販売される場面をよく見かけます。

挿木は野梅系なら好成績で特に野梅性や難波性の品種はよく発根します。発根しにくい品種は接木で作るか、落葉後(2月上旬~3月頃)に休眠枝を挿してみてください。生長期に挿木をすると芽は伸びても根が出ずにそのまま枯れることがありますが、休眠枝だと古枝でも発根する可能性があります。

細い挿し穂でも小品サイズなら2~3年もすれば充分な苗木になりますから、剪定した枝を挿木して素材を増やして楽しんでください。

梅の主な樹形

直幹、斜幹、双幹、模様木、懸崖、文人、寄せ植えなど様々な樹形に作られています。古木感あふれる幹肌とやさしい花との調和もよく、文人作りにすると水墨画さながらの風情がでます。

シャリ入れ

灼けの入った箇所はシャリを入れると見所になる。梅の材は硬いので、丸ノミや電動工具での加工が便利。

材も硬く腐れにくいので、ジンやシャリをいれると一層よくなります。わずかな水吸いでも生きているので、徐々に彫刻を施して(硬いので工具の使用がお勧め)野性味あふれる姿にしても良いと思います。

梅や桜などの花を楽しむ樹種は、樹形よりも花が重要視されますが、基本的な樹形ができていたほうが花が終わった後も盆栽としての楽しみが増すというもの。

鑑賞用に品種改良されたものは花付きがよいのですが、花芽ばかりできて葉芽ができにくい性質です。樹形や樹の生育を維持するためにも、花を諦めて枝作りの年を設けることも大事です。

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コメント

ta28 さん 2018年02月27日14時06分
こんにちは、
うちの梅も満開です。
樹形が乱れていますが、見ているとこれもなかなかだなぁ、なんて思えてきますね。

これは、「みちしるべ」だったかな?
香りも最高です。
きみ さん 2018年03月01日09時20分
ta28さん
画像も投稿してくださってありがとうございます!満開で綺麗ですね~。モニターから香りも漂って来そうです。
うめ さん 2021年01月21日18時45分
後の昭和13年に発表された「梅花品目集(万芳園・平尾彦太郎著)」では、308種の梅を4系統に大別する説が提案されます。
梅や桜の接木名人として有名な平尾氏の分類は、野梅系(野梅性、難波性、紅筆性、青軸性)、紅梅系(紅梅性、緋梅性)、豊後系(豊後性、摩耶紅性)、杏系の4系8性。
とあるのは、
昭和13年に発行された「梅花名品集(万芳園・平尾彦太郎撰)」に、野梅性(野梅性、難波性、紅筆性、青軸性)、紅梅性(紅梅性、緋梅性)、豊後性(豊後性、摩耶紅性)、杏性の4性9性。
ではないでしょうか。
系としたのは、昭和55年、三友社、月刊「自然と盆栽」編集部編p74に、世田谷にあった群芳園の増井徳三郎氏の談として、平尾さんが四つの性に分けたのですが、私はそれを更に大きくわけて、性と言わずに系と言う言葉を使って「野梅系」「緋梅系」「豊後系」の三色にしたんです。そして、系の下に性をつけてまた幾つかに分類したんです。
とあります。
増井徳三郎編の梅花群芳譜が昭和四十年十二月に発行されています。
私見ですが、紅梅系は、緋梅系としたほうが、白梅・紅梅と少しでも区別できるので良いと思います。
平尾氏も増井氏も紅梅性、緋梅性をあげてはいますが、品種をどちらか区別はしていません。ちなみに、鴛鴦と八重唐梅は見分けが付きません。
ご参考までに
きみ さん 2021年01月22日08時40分
うめさんへ

コメントをありがとうございます!詳細にご意見くださり感謝いたします。
分類の考え方はいくつかあるようですね、内容を再度確認してみます!

都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。

現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。

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