
キミのミニ盆栽びより > 基礎知識 > 盆栽樹種の分類 > 葉物類の仲間 > 蔦(ツタ)の魅力
更新日:2019/07/28
蔦(ツタ)はブドウ科ツタ属の蔓性の落葉性木本。
「ツタ」という名前はツタ属の植物を総称して呼んでいて、自然界では塀や樹に吸盤状の巻きひげで巻き付き「つたう」様子がその名の由来であると言われています。
園芸でよく使われる常緑の木蔦(冬蔦)に対して、小葉で紅葉するブドウ科の蔦は夏ツタと呼ばれています。
流れる蔓の姿や紅葉を楽しむことが多いですが、秋には小さいブドウの様な果実がなり、真っ赤な紅葉と青い実を同時に楽しむことができます。
蔦にはブドウ科で落葉性の「夏蔦」といわれるものと、ウコギ科で常緑の「冬蔦(木蔦)」といわれるものがあります。
夏蔦の葉蔓(左)と吸盤(右)
どちらも蔓性で見た目が似ていますが、夏蔦は吸盤のついた巻きひげで樹や岩に付着します。
花期は初夏(6月~7月頃)で、黄緑色の小さな花が多数咲き、表面に粉を吹いたような黒紫色の葡萄のような実がなります。
ミニ盆栽では紅葉が美しく葉形の整った夏蔦が主で、「紅葉蔦(モミジツタ)」「錦蔦(ニシキツタ)」「地錦(ジニシキ)」「甘蔦(アマヅラ)」などの別名があります。
冬蔦の葉蔓(左)と不定根(右)
常緑の冬蔦は「西洋木蔦(セイヨウキヅタ)」や「アイビー」「ヘデラ」などが知られていて、秋に開花し青紫の実を付けます。
一年中葉を付ける冬蔦は、庭の柵などを飾るアクセントやグランドカバーとして使われていて、やや肉厚で光沢のある葉が特徴です。
夏蔦のように吸盤や巻きひげのような器官はなく、細い不定根を茎から多数出して這い上り、旺盛に繁ります。
木蔦と言われるだけに蔓が太く木質化する木本で、古いものは樹のようになります。
鉢で育てると地際に近い蔓から不定根が下がってくるので、根元から切っておきましょう。
盆栽で使う蔦は、常緑の冬蔦よりも紅葉するタイプの夏蔦が季節感があって好まれています。
盆栽で使う蔦の仲間には「紅葉蔦」などと言われる葉が薄く紅葉が綺麗にでる一般的な夏蔦や、「アメリカ蔦」や「ヘンリー蔦」「高麗蔦」「鬼蔦」の他、ウルシ科の「箱根漆蔦(ハコネウリシツタ)」や、クワ科の「姫蔦(ヒメイタビ)」、矮性変種の「龍神蔦(リュウジンツタ)」なども定番の品種。
アメリカ蔦やヘンリー蔦には斑入りもありますが、紅葉はあまり綺麗にでません。夏の涼しい葉姿を見るものとして楽しまれます。
また、常緑の蔦でも「オカメ蔦」など葉形の整ったものは盆栽に向いています。
アイビーの園芸品種の中には極小葉性(ヘデラ・ヘリックス・スペチリー)や縮れ葉、モミジ葉などの代わり葉品種も沢山ありますから、それらの盆栽仕立てにチャレンジしても面白いかもしれません。
アイビーの仲間(極小葉性と縮れ葉)
蔦の葉の縁は鋸歯になっていて、形には多様性があります。
花の付く短枝の葉は大きめで、先が大きく3~5裂に分かれているものが多いです。
花の付かない蔓に付く葉は比較的小さく、ハート型や先が浅く3裂したものなど、形に変異の出やすいのも蔦の葉の特徴です。
一本の株でも葉形は多様になる
蔦の新芽は4月~5月頃になると伸びてきます。
蔦類の新芽は蔓(つる)になって伸びてきますので、枝数を増やす目的ならこの伸びてきた蔓を1~2節(葉を1~2枚)残して切ってください。
ただし枝が細いうちは冬の間に枝枯れしてしまうことがほとんどで、毎年姿が変わるものと思っていたほうがいいかもしれません。
大きな葉だけが出て蔓が伸びない時は、部分葉刈りをします。
葉が固まる7月頃に大きな葉を葉柄の所で切っておくと、蔓が伸びてそこに付く葉も小さくなります。葉刈りで組織が更新されるため紅葉も美しくなり、蔓が垂れ下がる姿は高卓に置いたり地板で這わせると景色が現れます。
蔦の花
蔦の花は緑色の小花で、5枚の花弁が多数散形状に付きます。
夏蔦の花期は初夏(6月~7月頃)で、冬蔦は秋(10月~12月頃)。
結実すると黄緑色の子房が徐々に丸く肥大し、秋には葡萄に似た濃青色の実が熟します。
冬蔦の実は夏蔦よりも大きめで、垂れずに立ち上がって付くので樹に成っているような印象を受けます。
蔦は葉物として紅葉だけでも充分観ることができますが、赤く染まった葉と実のコントラストも綺麗です。
挿木や取木が容易で、実生もできます。
伸びた蔓のシュートの部分を挿しておくと新しい株ができます。
夏蔦は蔓が木質化して古色が出るまでには数年かかりますが、伸ばしては切り戻しを繰り返しながら長く持ち込んで楽しんでください。
蔦は、長くなる蔓や幹の流れを活かした樹形にすると蔦らしさが出ます。
蔓を懸崖風に垂らして高卓で飾ったり、下に這わせて流れを演出したり、実物として飾ったりと表現は自由です。
蔓や細枝は冬の間に枯れてしまうことがほとんどなので、毎年姿が変わると思ってください。
冬蔦は蔓が幹化しやすいので、太幹の雑木のような作り方もできます。
春から梅雨までは明るく風通しのよい場所で育てます。夏の強い日差しにあたると葉焼けしやすく、紅葉が美しくならないので明るい日陰に移してください。秋以降はしっかり日……
蔦の葉刈りは、葉の大きさのバランスが悪い時や葉焼けして美しい紅葉が望めない時、蔓を伸ばして全体に流れが欲しいときなどに行います。丈夫な樹なので、思い切って葉刈り……
都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。
動植物好きの猫飼いです。歴代猫は『アロ』『アズロ』。現在は雄のアビシニアンと一緒です。
ほとんど籠って盆栽いじってますが、盆栽教室やミニ盆栽屋「てのひら盆栽しんとう」も定期的に企画、出店しています。
更新履歴
最近のコメント
おすすめ文献