枝先の細やかさが要求される葉物類。
中でもケヤキやカエデ、モミジ、ニレなどの雑木類は寒樹といって、落葉してしまった冬の間でも、枝先の繊細さを鑑賞される程です。
この枝の細やかさを作るためには、芽摘みはとても大切な作業です。
春先から伸びた新芽は2~3枚の葉を残して摘み取り、次の枝を作る腋芽の生長を刺激します。
葉物類の発芽力の旺盛なので、芽が伸び次第芽摘みを繰り返し理想の樹形に仕立てていきます。
葉物類は年に5~6回の芽摘み作業が待っています。1回の芽摘みで2本ずつ枝が出来ると考えれば、5回の芽摘みで1年間に32本の小枝を作る計算です。
ただしこれらの枝も位置が悪かったり、他の枝と交差して混みすぎるようでしたら間引き剪定を行わなければいけませんが、半数近く枝が残せるとみてもいいでしょう。
カエデの樹形作りは芽摘みなしには難しく、芽摘みは欠かせない作業になります。
また他の葉物類にも言えることですが小枝を増やし葉を細かくする効果に加えて、紅葉を美しく見せるのに葉刈りがあり、芽摘みも同様に重要な作業になります。
カエデの芽摘みは、今年伸びた枝を1~2節(1節に葉が2枚付きます)残して切るようにします。あまり長く伸ばしてからになってしまうと、枝が間延びしてしまいますから、目安としては枝が5~6cm伸びてきた頃に芽摘みをします。
ただし全ての枝で1~2節残せばいいのではなく、勢いの強い上部は一節でも下部の方は2~3節残して切るなど、全体のバランスを考えながら芽摘みを行ってください。
また最初の芽摘みの後も、8月頃までは次々に次の枝が伸びてきますので、同様に芽摘みを繰り返すことになります。
若木の場合や新しく枝を作りたい場合は、弱い枝を大切にしながら芽摘みを控えて枝を伸ばし、ある程度の枝組みができたら、その先からの芽摘みを丁寧に行います。
カエデは立性なので枝はどうしても上に立ってきます。
そこで横に張るように枝を作るためには、次に出る芽の方向を見ながら芽摘みを繰り返し、細やかな枝先に仕立てていくことが重要です。
完成樹の場合は樹勢を保つことが基本になりますから、2~3節残しが基本になりますが必ず下枝は、上枝よりも残す葉を多くするようにしてください。
木が大きくて1日で芽摘みが終わらない時は下枝から芽摘みを行って先に次の芽吹きの準備をさせ、あとから上枝の芽摘みを行って下枝を守ってやるようにします。
カエデとほとんど同じです。
枝を作りたい時は、やや長めに枝を伸ばしてから芽の先を摘んだり、柔らかい芽だけを爪や指でつぶして成長を止める方法がとられています。
ただ、モミジは雑木類(カエデ類)の中でも比較的樹勢の弱いものですから、芽摘みもあまり回数多く行うことができません。
デショウジョウモミジの芽摘み
細かく柔らかな枝を作るためには、新芽が伸びないうちに芽を摘んで、節間が短いうちに伸びを止めてやると、次に伸びる枝がつまってきます。
新芽は3月中旬頃から順次伸びてきますから、新葉を2葉残して真ん中の芯を指やピンセットで摘み取ります。
この時、葉のしたにある袴の部分は絶対に痛めないようにしましょう。
この時期には毎日のように新しい芽が伸びてきますから、こまめに芽摘みをして細かい枝作りを目指します。
ケヤキの細かくて繊細な枝配りは芽摘みなしでは作ることができません。
そのためには、カエデやモミジと同じように、枝があまり伸びすぎないうちに芽摘みをすることがポイントです。
新芽は4月下旬~5月上旬頃になると、新芽が伸び出し葉が開き始めます。
芽吹きの力は強く、芽摘みをしっかりしていないとすぐに樹形が乱れてしまいますので、基本的に新芽が開かないうちに2芽残して先を指先で摘んでおきます。
芽摘みは一度に全部を行うのではなく、勢いよく伸びてきた枝から順に切り、反対に勢いの弱い枝は切らずに残しておき、元気になってきたら全体を見て芽摘みを行うくらいでいいのです。
また、不定芽や胴吹き芽、不要な枝を見つけたら早めに処理しておきましょう。
ケヤキは冬でもその幹肌を鑑賞する寒樹ですから、傷が目立たないうちに対処しておくのが安全です。
ケヤキは芽摘みの後からどんどん芽が伸びてきますので、8月下旬~9月いっぱいまで数回芽摘みを繰り返すことになりますが、あまり遅くまで芽摘みをやっていると樹勢が弱って冬越しができなくなりますから、ある程度伸びが止まった時点で早めに芽摘みは終わらせておきましょう。
ケヤキの樹形のほとんどは箒作り(ほうきづくり)がほとんどで、バランスよく広がった1本1本の枝がとても大事な鑑賞点になります。
しかし長年短い芽摘みを繰り返していては、次第に枝の樹勢が弱ってくるものですから、樹形を保つために一度大きく枝を伸ばしてから切り詰めるという方法を取ります。
数年に1回、枝を作り替える気持ちで新しい枝作りを図ってください。
この箒作りの簡単な芽摘みの方法に、一気に半円形に刈りとったり、片手で枝を束ねてまっすぐ切るやり方がありますが、これでは全部の枝の樹勢の状態を無視してしまうことになります。
芽摘みはできるだけ1本1本丁寧に行うようにしたいものです。
ニレケヤキの春から伸びた新芽は
2~3節残して摘む
ニレはケヤキと同じニレ科の仲間で、ケヤキより葉が小さく盆栽として作りやすい樹種ですから、芽摘みの方法はケヤキとほぼ同じと考えていいのです。
実際にはその年に伸びてきた枝が5~6節くらい(5~6cm)になってきたら2~3節(葉を2~3枚)残して切ります。
ニレもほかの樹種と同じように頂部の枝ほど勢いが強くなりますから、頂部より下部の葉を多く残すように全体の勢いを均等に作ってください。
枝作りも、ある程度伸ばしで太らせてから切り戻すようにします。
ただ、ニレはヤケキより不定芽や小枝がよく吹いてきますから、枝先をあまり混ませないためにも見つけたら早めに取っておく必要があります。
モミジと同じく樹勢の弱い樹種で、摘んでも芽の出が極端に悪いので、年に1回しか芽摘みを行うことができません。
芽摘みの方法は、その年に伸びた新芽があまり伸びすぎない頃に2~3節(葉を2~3枚)残して切るようにします。
下枝の弱いところは3枚、上部は2枚と、伸びの強さをみて摘む量を調整します。
新芽は柔らかいのでハサミを使わず指でつまんで取りますが、枝が固くなってしまったものはハサミを使って切ります。
頂部より下部の葉を多く残したり、完成樹では強めに芽摘みをして樹形を崩さないようにするのは他の樹種を同様です。
枝作りに関しても他の樹種と同じで、ある程度伸ばして必要な長さに切り詰めるようにします。
ただし徒長枝に関しては間延びして他の枝の成長を弱めてしまいますので、早めに処理するようにしてください。
イチョウの春から伸びた長枝
イチョウは小枝が出ない樹種で、長く伸びる枝(長枝)と、短いまま伸びない枝(短枝)があります。
太枝で樹形作りをすることになりますから、芽摘みは短枝でなく長枝に行います。
基本的な芽摘みの方法は、その年に伸びた芽を2~3節(葉は2~3枚)残し、二番枝も同じように2~3節で切ります。
イチョウは基本的に葉刈りをしませんが、7月頃になって全体の調和を乱すような大葉が目立つならば、その大葉だけを葉柄から切り取る(部分葉刈り)ことがあります。
イチョウは切り口から腐食しやすいので、カットパスタ-やトップジンなどの保護材を塗ってやることも忘れないようにしましょう。
ソロの花を楽しみたい場合、花芽は5月頃になると見て分かりますので、花芽の付いた枝以外の芽摘みをします。
苗樹や未完成樹など、まだ樹形作りの段階で、花をあきらめる場合は花芽がついている枝も芽摘みします。
枝作りの場合はある程度伸ばしてから必要な長さの芽数(3~4節)だけ残して切り戻します。
完成樹では樹形を崩さないように、もう少し辛めに(2~3節)切りますが、新しく枝作りをしたいときは必要に応じて伸ばしてから切り戻します。
ソロは枝先を柔らかく作るのがよいとされていますから、あまり太くなってから切り戻すと枝がゴツゴツしていけません。あまり太くならないうちに芽摘みを行うようにしましょう。
またソロは樹勢がよいと不定芽や胴吹き芽が出やすい樹種です、樹形作りに不要ならば早めに掻き取りましょう。
ヒメシャラは樹勢が強く、芽摘みを怠ると、枝はすぐ太くなってしまい樹形が乱れてしまいます。
ヒメシャラの芽摘みも重要な作業で、芽摘みによって強い枝の樹勢を抑え全体の樹形を作って行きます。
芽摘みの基本は、新芽があまり伸びすぎないうちにピンセットや手摘みなどで2~3芽残して摘みます。
若木と完成樹で残す芽の数は違いますし、頂部と下部で同じような芽摘みを行っていてはいけません。全体の樹勢を見て芽摘みをするようにしましょう。
8月下旬頃には新芽の伸びも落ち着いてきますので、その頃までには芽摘みを終えるようにします。
クワの結実した実
クワはここでは葉物類に分類していますが、実を楽しむこともできますから、実物類としても楽しめます。
雌雄異株ですが同株のものもあり、盆栽樹種として好まれています。
実は美味ではないですが、熟したものは食べることもできます。
2~3節で切る
クワの花芽(雌花)はその年に伸びた枝の基部につきます。
実をつけたいならば花芽が確認できる5月頃まではなるべく芽摘みを控え、樹形を乱す枝のみ切る程度が安全です。
花芽の確認ができたら、花芽を残すように基本的には2~3芽残しで芽摘みし、花の付いていない枝も2~3節で切り戻します。
2番芽は切った葉柄の元から吹いてきます。
芽が伸びる方向を考えて、作りたい枝の方向に枝作りを図ってください。若木や仕立て中のものなら、一度枝を大きく伸ばしてから切り戻すようにします。
クワの葉刈りはあまり遅くまでやると樹勢を落としてしまいますから、葉刈りは7月いっぱいで終わらせるようにします。
また実も鑑賞したら早めに取ってしまいましょう。
ハゼの芽摘みは2~3枚残して切る
ハゼは他の葉物類のようになかなか枝が伸びてきてくれないので、すこし樹形が作りにくいです。
そのため寄せ植えにして、樹形そのものよりも全体の景色を観賞することが多いようです。
しかし新芽をそのままにしているとただ伸びるだけで、いつまでも枝数が増えませんので、できるだけ芽摘みで枝を作るようにします。
芽摘みの方法は、その年に伸びた枝の伸びが落ち着いてくる5月~6月頃に、芽の先を指でつまんでおきます。
2番芽が吹いてきましたら、そのままにしておくか、伸びが強いものは葉を2~3枚残してもう一度芽摘みします。
ハゼは切り口から樹液が出てきますが、これに触るとかぶれてしまうので注意してください。
ツタ類の新芽は蔓(つる)になって伸びてきますので、基本的にはこの伸びてきた蔓を1~2節(葉を1~2枚)残して切るようにします。
あまり長くしてしまうと枝や幹に絡んでしまい害虫がつきやすくなってしまいますから、そうならないうちに芽摘みをします。
しかし、仕立て途中のものなどは枝を作るために、一度枝を長く伸ばしてから切り戻す必要があります。
新芽を伸ばせばその分枝を太く作ることは出来ますが、せめて他の植物に絡みつかない程度にしておきましょう。