葉物類の芽摘み
更新日2018/06/15
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芽出しや深緑、紅葉(黄葉)を楽しむだけでなく、枝先の細やかさが要求される葉物類は「寒樹」となった冬の姿も大切な観賞点となります。
この枝の細やかさを作るためには、芽摘みがとても大切な作業。芽摘みの目的や方法を理解して枝作りの参考にしてください。
葉物類の芽摘みの効果
1、小枝を増やす
春先から伸びた新芽を芽摘みすることで、2番芽の生長を刺激し小枝を増やしていきます。
葉物類の発芽力は旺盛なので、樹種によっては年に5~6回の芽摘みが可能。
1回の芽摘みで2本ずつ枝が出来ると考えれば、5回の芽摘みで1年間に32本の小枝を作る計算です。
不要枝や忌み枝は間引き剪定で整理しないといけませんが、半数近く枝が残せるとみてもいいでしょう。
2、間延びを抑える
春から動き出す新芽は枝を伸ばしながら葉を展開させていきます。
ここで芽摘みをしないでいると、第1節はますます伸びて全体の大きさと枝のバランスが悪くなります。
特に小さい盆栽では節の短い枝を作ることが大事なので、芽摘みの役割は大きいのです。
3、小さく作る
盆栽は、まずその大きさを小さくコンパクトに維持する必要があります。
さらに、それに比例して枝の長さや葉の大きさも小さくなければ盆栽として調和のとれた姿とは言えません。
芽摘みによって上に伸びようとする樹の力を人為的に抑え、次に伸びる枝葉を細かく小さく作る効果が期待できます。
4、全体の力の平均化
芽摘みは剪定と同じで、残す枝葉の量によって各枝の力を調整することができます。
盆栽は大事な下枝やフトコロ枝ほど枯れやすいので、これを守るための手入れが欠かせません。
普通芽摘みは2~3節残して摘みますが、外側の強く伸びる枝は1~2節、弱い枝は2~3節と多めに残しておきます。
1節残した葉の基部からは1本の枝ができ、3節残した葉からは3本の枝ができる計算。
残した葉数だけ枝を増やすことができるので、次第に各枝の力を均等にすることができます。
葉物類の樹種別の芽摘み
- 楓(カエデ)の芽摘み
- 紅葉(モミジ)の芽摘み
- 欅(ケヤキ)の芽摘み
- 楡(ニレ)の芽摘み
- 橅(ブナ)の芽摘み
- 銀杏(イチョウ)の芽摘み
- 四手(シデ)の芽摘み
- 姫沙羅(ヒメシャラ)の芽摘み
- 桑(クワ)の芽摘み
- 櫨(ハゼ)の芽摘み
- 蔦類(ツタ)の芽摘み
ニレの芽摘み(3月下旬~9月)
ニレケヤキの春から伸びた新芽は
2~3節残して摘む
ニレはケヤキと同じニレ科の仲間で、ケヤキより葉が小さく盆栽として作りやすい樹種ですから、芽摘みの方法はケヤキとほぼ同じと考えていいのです。
実際にはその年に伸びてきた枝が5~6節くらい(5~6cm)になってきたら2~3節(葉を2~3枚)残して切ります。
ニレもほかの樹種と同じように頂部の枝ほど勢いが強くなりますから、頂部より下部の葉を多く残すように全体の勢いを均等に作ってください。
枝作りも、ある程度伸ばしで太らせてから切り戻すようにします。
ただ、ニレはヤケキより不定芽や小枝がよく吹いてきますから、枝先をあまり混ませないためにも見つけたら早めに取っておく必要があります。
ブナの芽摘み(3月下旬~4月)
モミジと同じく樹勢の弱い樹種で、摘んでも芽の出が極端に悪いので、年に1回しか芽摘みを行うことができません。
芽摘みの方法は、その年に伸びた新芽があまり伸びすぎない頃に2~3節(葉を2~3枚)残して切るようにします。
下枝の弱いところは3枚、上部は2枚と、伸びの強さをみて摘む量を調整します。
新芽は柔らかいのでハサミを使わず指でつまんで取りますが、枝が固くなってしまったものはハサミを使って切ります。
頂部より下部の葉を多く残したり、完成樹では強めに芽摘みをして樹形を崩さないようにするのは他の樹種を同様です。
枝作りに関しても他の樹種と同じで、ある程度伸ばして必要な長さに切り詰めるようにします。
ただし徒長枝に関しては間延びして他の枝の成長を弱めてしまいますので、早めに処理するようにしてください。
ヒメシャラの芽摘み(3月下旬~8月)
ヒメシャラは樹勢が強く、芽摘みを怠ると、枝はすぐ太くなってしまい樹形が乱れてしまいます。
ヒメシャラの芽摘みも重要な作業で、芽摘みによって強い枝の樹勢を抑え全体の樹形を作って行きます。
芽摘みの基本は、新芽があまり伸びすぎないうちにピンセットや手摘みなどで2~3芽残して摘みます。
若木と完成樹で残す芽の数は違いますし、頂部と下部で同じような芽摘みを行っていてはいけません。全体の樹勢を見て芽摘みをするようにしましょう。
8月下旬頃には新芽の伸びも落ち着いてきますので、その頃までには芽摘みを終えるようにします。
クワの芽摘み(6月~)
クワの結実した実
クワはここでは葉物類に分類していますが、実を楽しむこともできますから、実物類としても楽しめます。
雌雄異株ですが同株のものもあり、盆栽樹種として好まれています。
実は美味ではないですが、熟したものは食べることもできます。
2~3節で切る
クワの花芽(雌花)はその年に伸びた枝の基部につきます。
実をつけたいならば花芽が確認できる5月頃まではなるべく芽摘みを控え、樹形を乱す枝のみ切る程度が安全です。
花芽の確認ができたら、花芽を残すように基本的には2~3芽残しで芽摘みし、花の付いていない枝も2~3節で切り戻します。
2番芽は切った葉柄の元から吹いてきます。
芽が伸びる方向を考えて、作りたい枝の方向に枝作りを図ってください。若木や仕立て中のものなら、一度枝を大きく伸ばしてから切り戻すようにします。
クワの葉刈りはあまり遅くまでやると樹勢を落としてしまいますから、葉刈りは7月いっぱいで終わらせるようにします。
また実も鑑賞したら早めに取ってしまいましょう。
ハゼの芽摘み(5月~6月)
ハゼの芽摘みは2~3枚残して切る
ハゼは他の葉物類のようになかなか枝が伸びてきてくれないので、すこし樹形が作りにくいです。
そのため寄せ植えにして、樹形そのものよりも全体の景色を観賞することが多いようです。
しかし新芽をそのままにしているとただ伸びるだけで、いつまでも枝数が増えませんので、できるだけ芽摘みで枝を作るようにします。
芽摘みの方法は、その年に伸びた枝の伸びが落ち着いてくる5月~6月頃に、芽の先を指でつまんでおきます。
2番芽が吹いてきましたら、そのままにしておくか、伸びが強いものは葉を2~3枚残してもう一度芽摘みします。
ハゼは切り口から樹液が出てきますが、これに触るとかぶれてしまうので注意してください。
ツタ類の芽摘み(4月下旬~5月)
ツタ類の新芽は蔓(つる)になって伸びてきますので、基本的にはこの伸びてきた蔓を1~2節(葉を1~2枚)残して切るようにします。
あまり長くしてしまうと枝や幹に絡んでしまい害虫がつきやすくなってしまいますから、そうならないうちに芽摘みをします。
しかし、仕立て途中のものなどは枝を作るために、一度枝を長く伸ばしてから切り戻す必要があります。
新芽を伸ばせばその分枝を太く作ることは出来ますが、せめて他の植物に絡みつかない程度にしておきましょう。