ムロの工夫

投稿日:2017/02/10 更新日:2021/01/23

初めて盆栽に冬を越させようとする人にとって、そもそも保護は必要なのか、その具体的な方法も含めて大きな壁にぶち当たる気持ちかもしれません。

「盆栽に過保護は禁物」といわれるように、夏は夏の暑さ、冬は冬の寒さに樹を慣すことは大事です。ですが、限られた環境で生きている盆栽は野生の植物よりも環境変化に敏感ですから、冬越しにも少し工夫が必要です。

1. ムロの定義

盆栽界の室(ムロ)は決まった形があるわけではなく、冬の乾燥や北風、凍結、積雪などから樹を保護するための設備のことを指します。

樹の状態を観察しやすく、換気や灌水、消毒が簡単で、強風や寒さの厳しい時には移動や増設もできるような構造が好ましいでしょう。

理想的なムロ内の状態は室温3~7度、湿度40~60%くらいと言われていますが、日本の様に四季がある土地に自生している植物なら、一定の低温と湿度が保たれていれば氷点下になっても問題なく冬を越させることができます。

ムロは樹をゆっくり休ませ、正しい時期に芽吹かせることが目的ですから、天気がいいからと出し入れしたり温室のように加温する必要はありません。

凍てつきが厳しい寒冷地ではストーブなども使いますが、熱汚染現象(ヒートアイランド現象)がみられる都市部などでは、保護せずに冬を越せる場合もあります。

ムロ内での灌水の様子

冬期保護中でも水やりや寒中の消毒などは必要なので、管理のしやすい工夫を

2. いろいろなムロの例

盆栽園や生産者のように必ずしも立派な囲いやビニールハウスを用意する必要はありませんが、自分の持つ樹の耐寒性を把握した上で適切な防寒対策が必要です。

寒さに強い樹種でも、小さいものは体力がないですし、根が完全に凍って弱ってしまうので注意してください。

鉢数が多い人は限られたスペースでいかに効率よく収納できるかもポイントですから、引き出しや重ねられるコンテナなども便利です。

室内に取り込む

カバー付きのトレイ

玄関や作業場などに取り込んだものは、カバー付きのトレイに入れておくと湿度も保てます

寒さに弱い樹種は室内に取り込んで越冬させるのが1番安心。加温する必要はなく玄関や縁側、倉庫や作業場など空いた場所に取り込むくらいで充分です。

トレイに乗せた盆栽をラックや棚に並べておけば省スペースで樹の管理もしやすくなります。

氷点下5度を下回るような寒冷地では、棚に毛布を被せたり過湿加温装置を設置する場合もあります。

ビニールハウスを作る

ビニールハウスの例

ビニールフレームの例。日中はビニールを開けて暑くなり過ぎないようにすること

やや大がかりですが、棚場全体をフレームで囲ってビニールで覆い、保護室にする方法です。農業用の本格的なハウスの他、園芸用ガーデンハウスや単管パイプ等を組立てて作る方法などがあります。

大量の資材が必要で労力もかかかりますが、棚上に置いたままでよく、管理がしやすいというメリットがあります。一度フレームを立てれば夏はビニールの代わりに寒冷紗を張るなど1年中使えるのも良い所。

ビニールハウスで注意するべき点は、温度調整と暴風対策です。陽が射すとハウス内の温度が高くなりすぎるので、換気をして温度を一定に保つ工夫をしてください。

ビニールは風を受けやすいですから、置き場所には注意を。ビニールはたわまないようにピンと張り、風が強い日は煽られないようにロープを張るなどの対策も万全にしておきましょう。

棚下、軒下を利用する

棚下を利用した保護

コンクリートブロックやコンテナなどを台にした棚下に樹を収納する方法

最も簡単で一般的な保護の方法で、棚下の空きスペースに樹を下ろし、ビニールやトタン板などで横を覆う方法です。

換気できるように簡単に開閉できる構造にしておき、寒冷紗を二重にかけるなどして急激な温度上昇を防ぐようにしてください。

棚から全ての樹を片付けるついでに、病害虫の温床になりやすい棚板の掃除と防腐剤処理を忘れずに。

棚板が霜よけになるので、寒冷地でなければ棚下や軒下に盆栽を移動させるだけでも充分です。

ビニール温室を利用する

簡易温室

組み立て簡単で4000円くらい(3段)で売っているビニール温室。換気と防風対策が出ればとても使いやすく、ベランダ向き

市販の園芸棚に、ビニールを被せた簡易温室もムロ代わりになります。

昼間はビニールを開いて換気をし、夕方冷え込む前に閉めて防寒してください。

温室棚は使い勝手はいいですが、日中陽に当たっていると内部が予想以上に高温になり、休眠状態の樹に大きな悪影響を及ぼします。

遮光シートを被せたり、日陰に設置するなど昼夜の寒暖差があまり出ないように工夫してください。

また、軽量で組み立ても簡単なのですが、ビニールを張った状態は少しの風でも煽られて倒れてしまうので、支柱と柵を紐で結ぶなどしっかり固定してください。

いろいろな容器を利用する

発砲スチロール

発砲スチールのムロ入れ

発砲スチロール箱の利用方法。雪を中に入れておくと水やりの必要がほとんどなくなる

ミニ盆栽には、適当な大きさの発泡スチロールをムロ代わりにする方法がよく採用されます。

汚れているものは水で綺麗に洗い、底には水抜きのための穴をいくつか開けておきます。排水をよくするため、角材やブロックなどを下に敷いて箱を傾けたり、穴の位置を工夫してください

樹の大きさや耐寒性の強さでグループ分けしておくと管理がしやすくなります。

発砲スチロールのムロ

半田ゴテやパイプ等で排水用の穴を開けておく

天気のいい日中は蓋をずらして乾き具合を確認し、換気と灌水をして、冷え込む前(午後3時~4時頃)にフタを閉めてください。

寒中、完全に蓋をしている間は1週間程は水やりしなくても平気ですが、慣れないうちは2~3日に1度は状態を確認してあげるようにしましょう。

発砲スチロールはホームセンターやインターネットでも手に入りますが、近くのスーパーでもらえる場合もあります。魚用は匂いがあるので、野菜用を探してみてください。

自分の持っている樹の樹高を考えて、奥行きだけでなく高さにも余裕が取れるものを選ぶこと。それでも入らなければ倒して入れても大丈夫です。

収納ボックス

収納ボックスでムロ入れ

収納ボックスを使ったムロ。重ねられるので省スペースですが開け閉めは少し面倒になるかも

市販の衣装ケースや収納ボックス、食器用の蓋付き水切りバスケットなどをムロ代わりにする事もできます。

天気の良い日中は蓋を開けて換気し、夕方冷え込む前に蓋を閉めておきます。

水抜き穴を開ける加工が必要ですが、水切りカゴを底に敷いたり、人工芝で底上げしたりと人により工夫をしています。

コンテナ

コンテナを使ったムロ入れ

コンテナを使った保護

農業用に使われるコンテナもムロ代わりに使えます。

上には板などを乗せて蓋をし、側面をビニール(ラップや梱包用のフィルムテープなど)で囲えば吹き込みを防ぐことができるので立派なムロになります。

丈夫で軽いので移動も簡単で、底面もメッシュなので水が抜け、重ねて使うこともできます。

使用しない時は棚の台代わりにもなり、道具や消耗品の収納にも使えるので便利です。

3. ムロ出し

ムロ出し

新芽が伸び出しても3月いっぱいは保護が必要

「ムロ入れは遅め、ムロ出しは早め」というのが冬期保護の基本で、芽出しの時期になれば通常管理の準備を始めますが、春になったからと急に通常管理に戻すことは出来ません。

実際には春の彼岸前後から芽動きが活発化しますが、4月を過ぎても遅霜が観測される所もありますから、ムロ出しは慎重に行ってください。

2月下旬~3月は植替えのシーズンですが、植替え後も引き続きムロ内に取り込み、乾燥を防ぎながらゆっくり外気に慣していきます。

気温が暖かくなれば蒸れてくるので、日中はシートや蓋を開け、棚上で鉢を温め根の成長を促してやりましょう。

夜間の冷気にも少しづつ慣していきますが、遅霜の可能性があるうちはシートや蓋をずらしたままにしたり、棚下などに下ろしたりして、新芽が霜や強風で傷まないようにしてください。

完全に通常管理になるのは、遅霜の心配がなくなる3月下旬~4月上旬頃(関東)です。

ムロ出しの時期は季節の変わり目で風が強く、用土の乾き方も早くなりますから、植替え後は水苔やネットを張るなどして水切れのないように注意してください。

ムロ出し後の水やり

新芽が膨らみ芽吹きが始まる頃はそれほどでもありませんが、新芽が伸び出すようになると急に水を吸い上げるようになります。

外気から保護されているムロ内と外の環境は乾き方も違い、植替えをしたものは水はけも良くなっていますから、一瞬の不注意で水切れさせることが多くあります。

春先は風も強く、その分乾きも早くなるので、1日1~2回を目安によく観察して水やりしてください。

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コメント

としたろお さん 2021年12月01日08時19分
ムロについて質問です。
倉庫兼車庫があるのですがそこをムロとして使用できますか?
環境的にはほとんど日光は当たらず、その場所での水やりはできません。
2,3日に1回(又はもっと)全て出して水やりする必要がありますか?
アドバイスをお願いします。
きみ さん 2021年12月01日18時05分
としたろお さんへ
ムロの定義は、冬の乾燥した外気や冷気を遮断できる構造のもの(極寒地意外は加温の必要なし)なので、倉庫でも玄関でも適当な場所があればよいと思います。
寒さというより霜や乾燥した強い風がよくないので、そういうものから守ることができれば充分です。

ただ、冬も水やりは必要なので、水やりが苦痛になるような場所は好ましくないと思います。常緑の樹でも休眠期は光に当てる必要はないのですが、ときどき換気をしてやる必要はあります。
2~3日に1回とは目安であって、その人の管理のしかたで乾き具合は違います。
乾いていなければ水やりの必要ないですが、樹種によっても乾き方はちがうので、よく観察することが大事かなと思います。