病害虫と対策

更新日:2019/08/05

盆栽の病害虫

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街路樹や庭の生け垣に目をやると、葉が食べられていたり、白くなっていたり、縮れている樹を見かけます。

盆栽として作られている植物は丈夫で強健な樹種がほとんどですが、環境条件や樹の状態によって害虫や菌・ウィルス病が棚場全体に蔓延することがあります。

病害虫が発生しないよう、また発生しても大きな被害にならないように、対策と防除をしっかりしておきましょう。

1. 病害虫に強い樹種と弱い樹種

盆栽樹種の中には、病気や害虫が付きにくいものやついても大きな被害にならないものがあり、被害にあっても回復が早く致命的になることは希です。

反対に、一度病気や害虫が発生するといつまでもその対策に苦労するものもあります。

病害虫が発生しにくい樹種

一般的に病害虫に強いものは、生育旺盛な松や針葉樹などの松柏類や、雑木類などがあります。ただし、新芽には害虫や病気が付きやすいので春先や葉刈りの時期は注意しましょう。

黒松、錦松、五葉松、真柏、一位、合歓木(ネムノキ)、蔦、柿、縮緬葛、美男葛、銀杏、楓、ブナ、楢、四手類、山茱萸(サンシュユ)、満作、椿、唐種招霊(カラタネオガタマ)、木通(アケビ)など

病害虫が発生しやすい樹種

病害虫が比較的発生しやすい樹種には、葉の組織が柔らかい葉物類や水分の多い花物実物類などがあり、一度病気になると回復が難しく枯れてしまうこともあります。

躑躅や皐月、モミジ、桜、柑橘類、藤、木瓜(ボケ)、長寿梅、山査子(サンザシ)、百日紅(サルスベリ)、薔薇、下野(シモツケ)、石榴(ザクロ)、空木(ウツギ)、葉の柔らかい山野草など

2. 感染経路と要因

全ての病害虫には一定の生活環があり、一般に気温が高くて降雨量の多い5月から夏場にかけてと少し涼しくなる秋9月~10月頃の長い間に発生します。

その感染経路は、害虫の場合は主に飛来によるもの。病気の場合は空気感染や土壌感染、種子感染の他、傷口からの感染や害虫を媒介にした伝染があり、害虫の唾液や排泄物などによる二次被害が深刻になります。

害虫による被害は葉の食害など見つけやすいもの以外にも、幹に潜り込んで樹液を吸ったり根を食害するものもいるので調子の悪い樹はまず葉裏や根の状態を気にしましょう。

盆樹に発生する主な害虫には、アブラムシや葉ダニ、グンバイムシ(躑躅、皐月)、スズメガの幼虫(柑橘類)、スリップス(アザミウマ)の成虫幼虫などがあります。

ウィルスや細菌、糸状菌(カビ)などは目に見える被害がなくとも菌糸等の状態で潜伏している可能性があります。

代表的なものにはスス病や葉縮れ病、うどん粉病など葉に異常を来すものや、腐爛病や根頭癌腫病など幹や根に障害がでるものがありますが、原因の特定が難しいものも多く未然の防除が求められます。

病害虫発生の3要因

病害発生の3要因

病害虫による被害は、病害虫そのもの(主因)に、病害虫にとって好適な環境条件(誘因)と、対象植物の性質・状態(素因)が重なることによって発症します。

主因となる害虫や菌がいても、繁殖に適した気温や湿度条件が揃っていなかったり、寄生する植物の性質が病害虫にとって好ましくなければ大きな被害にはならないのです。

まずは主因となる病害虫を近づけないこと、感染経路を絶つこと、そして病害虫が発生しにくい棚場環境の整備と、被害が深刻化しないような健康な樹の培養が大事です。

3. 病気にならないために

病害の防除は、病害生物の生活環を断ち切り、新たな侵入を許さないことが基本。

ウィルス性の病気は害虫の排泄物や環境悪化により発生する事がほとんどなので、まずは棚場の環境を最善に整え、定期的な薬剤の使用で害虫の被害を未然に防ぐことが第一であると考えます。

培養環境を整える

病害虫は冬の間は活動が鈍くなるものの、年間を通じて潜伏している可能性があり、灌水や施肥、植え替え後の管理不足などで樹勢を弱らせてしまうと被害が拡大していまします。

また、風通しの悪い環境に置いたり、水はけの悪い用土で樹を育てていると病害虫が発生しやすく、発見が遅れて被害も大きくなってしまいます。

害虫は弱った樹を好んで食害すると言われていて、植物自体から発せられる防御遺伝子(エチレンやジャスモン酸等)が病害虫を寄せ付けているのではないかとも考えられています。

日頃から元気な状態を維持できるように、肥培管理はもちろん樹の配置には余裕を取って、風通しと日当たりのいい棚場作りを心がけてください。

また、毎日の水やりと一緒に葉裏や鉢底、幹の汚れやゴミなどを掃除する習慣を付ければ、病変を早期に発見できるので被害の拡大を防ぐことに繋がります。

侵入経路を作らない

病気を引き起こす原因となる病原菌は、植物組織上で繁殖し周りの葉や株に蔓延します。

また、接木の際に使う穂木や、剪定で出来た傷口や強風による折損跡も病原菌の侵入経路になり得ます。太枝を切った場合は必ず保護剤を塗るなど、細菌が侵入する可能性を少しでも無くす努力も大切です。

植物を新しく入手する時には、葉や根の状態をよく観察し病気にかかっていない健全な株を選び、棚に上げる前には殺菌殺虫剤を散布するようにしましょう。

入手した樹は、できればすぐに植え替えをしてください。古い用土の中に害虫や病原菌がいると、他の鉢にも感染する可能性があるので一度曝いて状態を確認したいのです。

植え替えの適期を過ぎているものは、根洗いだけでも構いません。水圧で古い土を洗い飛ばして、使い慣れた配合の清潔な用土で管理できればトラブルが発生しにくくなります。

人間の風邪予防と同じで、原因となるものの侵入をできるだけなくして被害を未然に防ぐことが第一です。

定期的な薬剤散布をする

病害虫がついてもついていなくても、定期的な薬剤の散布は「予防」の意味で必ずやっておきたいところ。

特に病害虫が発生しやすい時期には、殺虫剤と殺菌剤を月に2回は散布できるように準備していたほうが安心です。

冬の間は活動が弱まるとはいえ、害虫や病原菌は植物組織上に残っている可能性があり、「ムロ」の中で快適に越冬出来てしまいます。

そのため、盆栽の世界では冬期の薬剤散布も最低2回は必須で、ムロ入れ前と寒中に石灰硫黄合剤やサンヨールなどの殺菌殺虫剤が使われます。

つまり、薬剤の散布は一年を通じて行う作業。

日頃の管理を工夫することで頻度を減らすことは出来ますが、定期的な薬剤使用は必ず必要であると心得ておきましょう。

盆栽の病害虫に効く薬剤

薬剤の種類や効き目はそれぞれで、殺虫効果や殺菌効果のあるものや、その両方を備えた混合剤があります。害虫や病原菌は薬剤への耐性を持つことがあるので、殺菌剤でも有効……

4. 主な病害虫と症例

盆栽の主な害虫

盆樹に害を及ぼす害虫は、春から秋までに発生し成長期の盆栽に悪影響を来します。害虫も種類によって葉を食べるものや幹を食害・寄生するもの、樹液を吸うものなどいろんな……

盆栽の主な病気

樹全体を侵すような病気はウィルス性のものがほとんどで、土壌中や宿主(害虫)の体内で繁殖したものが樹に感染します。感染経路は様々ですが、一般に吸収口を持つ害虫によ……

コメント

ルパン さん 2016年11月30日19時12分
こんにちわ。
サツキがどうやらグンバイ虫にやられ、オルトランを数回散布しましたが
全部の葉が茶色になり落葉始めました。花芽はいくつか確認できています。
今後の注意点を教えてください。
このまま枯れてしまうことはありますか。
盆栽はマンションの9階、ベランダに置いています。
アドバイスよろしくお願いします。
きみ さん 2016年12月01日10時16分
ルパンさん
サツキはオルトラン粒剤を使いすぎるとよくない気がします。ちなみに長寿梅もオルトランは使わない方がいいと聞きました。
去年は石灰硫黄合剤を散布して退治したのですが、今年オルトランを使ったものがあっというまに枯れてしまいました。一度水切れさせてしまい弱っていたのも原因だと思いますけど...
花芽が生きていれば枯れないと思いますよ。
根詰まりや水切れなど他の原因もあるかもしれないので、ハッキリわかりません。鉢を緩めて寒さ冬の保護をしておいて様子みたらどうですか
ルパン さん 2016年12月02日18時38分
わかりました、ありがとうございました。
川島寛 さん 2020年09月16日20時45分
盆栽世界 8月号の肥料藍藻の発生対策について。 今まで 発生したときはピンセットで取り除いていましたが(特に小さい鉢に藍藻が発生)ネットで調べると水槽に発生したときの対処法で過酸化水素水の使用がでていました。 実験してみようかと思いますが、どう思います?
 参考に 植物に使用で南澤究先生のコメント添付しておきますね。 使用結果は、そのうちお知らせします。
 オキシドールは過酸化水素 2.5~3.0%を含む水溶液で、確かに殺菌作用があます。作物の根圏や土壌には沢山の微生物が生息しており、オキシドールの希釈水を根元に巻くことにより、土壌微生物や土壌根圏の一部の微生物は死滅する可能性はあります。
しかし、一部の根圏の微生物が植物に感染する過程で、植物は過酸化水素などを局所的に生産し植物側でそれを防ぐ手段として利用している場合があります。それに対して、微生物側はカタラーぜという過酸化水素を無毒化する酵素をしばしば生産しそれに対抗します。植物の共生微生物は、このカタラーぜ遺伝子をしばしば持っております。植物根圏の多数の微生物と植物の関係は大変複雑で未だに十分科学的に解明されておりませんが、根圏微生物の元となっています土壌側の微生物をコミュニティとして見ますと、この微生物コミュニティは種々の環境変化や刺激に対して極めて頑強でそう簡単には変化しません。
したがいまして、オキシドールの希釈水の散布は、一過的な根圏微生物の変化は起こりうるとは思いますが、ご心配になるような「根圏の有効な細菌などにとって害になる」という可能性は低いと考えられます。

 南澤 究(東北大学大学院生命科学研究科)
きみ さん 2020年09月17日18時35分
川島さんへ

お返事遅くなりましてすみませんでした。
過酸化水素水溶液は面白そうですね。植物に害がなく岩くらげが撃退できるならありがたいですね~
私は発生したらブラシで払うくらいで満足していました。

探究心大事ですよね...
結果報告楽しみにしています(いい結果だったら記事にしてもいいですか?笑)
川島寛 さん 2020年09月17日20時31分
 夏の間 肥料を控えていた為、藍藻の発生がありません。発生したらオキシドールを希釈してスポイドでかけてみようかと思います。 
(ピンセットで取り除いてから消毒し1週間後に又消毒)
 以下の資料から繰り返し消毒が必要かと思われるので アブラムシの駆除と同じですね。ただ藍藻の発生が少なくなるのではと予想・・・・。ともかく、発生したらオキシドールで消毒して結果報告しますね。

 効果はあるが根絶はできなかった
オキシドールを添加して数日すると、明らかに藍藻が減ってくるのは確認できました。そこでとりあえず10日ほどオキシドールを添加した後一旦オキシドールの添加をやめてみると、数日で藍藻は復活しだしてまた水草を覆うようになりました。

その後は、もう一度オキシドールを添加→藍藻がほぼ消えたのを確認して添加をやめるとまた藍藻の再発、ということを数度繰り返しましたが、遂に根絶には至りませんでした。理由としては、

藍藻が完全に無くなる前にオキシドールの添加をやめてしまった
オキシドールで弱らせた藍藻を取り除かなかった
この辺りが大きいと思います。オキシドールの添加は藍藻が完全に目につかなくなってから1週間~10日くらいは継続したほうが良さそうです。また、オキシドールによって白く変色した藍藻は、できれば放置せずに何かしらの手段で取り除いたほうが良いみたいです。
川島寛 さん 2020年09月20日14時43分
盆栽棚の防腐について
棚板に木材防腐剤塗布なんてぜったいにだめと思っていましたが、4年ほど前 友人(盆栽屋さん1人含む)から防腐剤塗布を勧められました。彼らは棚板には、もちろん塗布し盆栽に直接水をやるように蒔いて実験したそうです。結果 異常は無いのでと勧められ私も1~2年に1度塗布していますが良いように思います。 棚板は杉→松→ヒバと変更になり現在家の基礎に使うヒバ材を使用しています。 木材防腐剤の品名は友人が使っている商品を使用しています。ここに商品名書くとさしつかえあるかなーと思い書かずにおきます。 きみさんの判断に任せます 私へのメールでもOKです。

真柏等のジンの傷み予防
ジンの傷み防止のため石灰硫黄合剤を塗りますが、小品・ミニ盆栽のジンには木固めエース(樹脂塗料・専用シンナーあり)を塗ってから石灰硫黄合剤に白の絵の具を混ぜたものを塗ります、小品盆栽の小さいジンだと石灰硫黄合剤だけでは10~15年で傷みが生じます。

上記の実施は自己責任でお願いします。 
きみ さん 2020年09月20日15時50分
川島寛 さんへ
商品名はサイトポリシーにのっとって公開しますので、気にせず書いてください。お気遣いをありがとうございます。
木固めエースも愛用している方多いですよね、欲しいな~
川島寛 さん 2020年09月20日20時11分
木材防腐剤の商品名は、クレオトップです。私の近所のホームセンターには、違う防腐剤は販売されていすがクレオトップは無かったので、友人に教えてもらった店まで買いに行きました。 他の防腐剤でも。植物に影響は無いかもしれませんが心配なので私はクレオトップを使用しています。
木固めエースはインターネットで検索して買い求めました。木固めエースを塗ると初め濡れた感じになりますが乾けば大丈夫です。何度も重ね塗りをすると濡れた感じのままで失敗? 割り箸等に塗ってみてから盆栽に塗ってくださいね。
川島寛 さん 2020年10月14日14時36分
藍藻の発生対策について
過酸化水素水の効果について下記の3つで検証してみました。
①過酸化水素水を藍藻に直接かける
②藍藻をピンセットで取り除き過酸化水素水をかける
③藍藻をピンセットで取り除く
過酸化水素水は、1回目は2倍に希釈して使用しましたが、変化が無いので2回目から希釈せずそのままスポイドでかけました(1週間に2~3回を3週間)。
効果は、
①1週間くらい藍藻に変化なし、その後藍藻が縮小し2週間目位から あまり気にならない程度になる。
②と③には藍藻を取り除いてからの発生なし。
私の結論 過酸化水素水で藍藻駆除に効果は認めるがピンセットで取り除いた方が早くきれいにできる。 でした
今、荒皮まゆみの幹に発生した藍藻?をピンセットで荒皮を痛めないよう取り除けるだけ取り除き過酸化水素水をかけ効果に期待しています、(今日でまだ2回目) 荒皮まゆみの幹の汚れはスプレーガンで掃除すると綺麗に皮まで無くなってしまいますから、(1回失敗しました) 
(もっと効果があると思いマクロレンズを使って写真まで撮ったんですけど・・・・。笑い)
きみ さん 2020年10月14日16時08分
川島寛 さんへ

検証ご苦労様です!
期待するほどの効果は無かったようですが、こういった実験は仮説を立ててそれに向かってただ頑張るのみですよね。
これはこれで1つの結果になってヨカッタですね
しかしマクロレンズまで買ったんですね。私も持ってるんですけどね、顕微鏡ポチりそうになっています。
盆栽のためにマクロレンズ買うひとは、きっと良いことあると思います。
kyo さん 2021年04月27日10時42分
いつも貴重な情報をありがとうございます。
丁寧なお人柄にとても好感を持っております(^ ^)

YouTubeでバラ科の消毒拝見させていただきました。
このwebページにあるような内容をYouTubeで見たいです。
一般的に日常ではどのような病害虫対策をすればいいのかが知りたいです。
お忙しいとは思いますが、ご検討よろしくお願いしますm(_ _)m
きみ さん 2021年04月27日11時29分
kyo さんへ

動画みてくださっているということで、ありがとうございます!
薬剤使いについての動画のリクエストは他の方からも頂いていたので、次回に撮影したいと思います。
ちなみに、薬剤については次号の盆栽世界で2本立てで記事をかきましたので、興味があれば読んでみてください(宣伝...)

まさか動画のリクエストを頂くようになってくるとは思いませんでした。
くじけそうになる時が多いのですが、お陰様で力になりました。かしこ
hitochan さん 2021年07月02日16時43分
キミさん こんにちは
3月には綺麗な花を咲かせてくれた桜なのですが、近頃、葉の色がくすんできたり、周囲が赤茶けてきたり、新しく出た葉がちぢれていたり、元気がないように思います。
病害虫のせいでしょうか。教えてください。
きみ さん 2021年07月02日16時59分
hitochan さんへ

明らかに葉ダニの被害にあっているみたいですね、結構繁殖してしまっていますね。
ちょっと粉っぽくなっているのは、ダニの排泄物(脱皮した殻とか糞とか)で、他の病気もよんでしまうので早く対処してあげてください
まずは殺ダニ剤の散布が必要です。ベニカXファインスプレーとか、バロックなどの殺ダニ剤を使って駆除してください。
サクラは薬害が出やすいので、強い薬はできるだけ使わないほうがいいです。

根元の水苔?のようなものも腐っているので一旦綺麗にはずしてあげてください
hitochan さん 2021年07月02日19時44分
キミさん ありがとうございます。

さっそく、処置します。
そこで、もう一つおききしたいのですが、ベニカXをスプレーした時、どれくらい開けて、例えばバロックを散布すればいいのでしょうか。

殺虫、殺菌剤の散布は週1回程度かとは思いますが、この場合もそれでいいでしょうか、お教え下さい。
きみ さん 2021年07月03日09時52分
hitochan さんへ

殺ダニ剤は同じものをなんども使うと耐性を持つので基本的には年1~2回の使用がすすめられています。バロックの場合は、成虫を殺す効というよりは繁殖不能にさせることで結果的に全滅させるものですから、幼生が成虫になる前とか、成虫が卵を産む前とか、発生初期が最も効果的だと思います。
ベニカをまず散布して(卵に効くかはわかりません)、1週間とか10日くらいしてバロックつかってもいいかもしれません。
だいたい私は殺虫剤や殺菌剤は10~20日に1回でローテしています。葉ダニの場合は増える前に気づいて早めの駆除しないと葉も汚くなって残念なことになります。予防には葉裏への葉水も効果的です。