イチョウ(銀杏)の育て方
更新日2018/06/13
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イチョウ(和名:銀杏、学名:Ginkgo biloba)はイチョウ科イチョウ属の落葉高木の落葉高木。
イチョウと言えば秋の味覚でお馴染みの樹ですが、晴れた秋の青空に映える黄葉は格別に綺麗で、全国各地の秋の銀杏並木は絶好の行楽スポットです。
身近な存在の樹種ですが、中生代に最も栄えた裸子植物の生き残りで「生きた化石」とも呼ばれ、生物学的にも貴重な植物の1つ。日本最古と言われるものは長崎県上対馬町にある琴(きん)の長松寺にある大銀杏で、樹齢は1500年以上と言われています。
春の瑞々しい芽出し、秋の黄葉、寒樹姿まで四季を通して観賞でき、古い雌樹であれば盆栽でも実を付けることができます。
C o n t e n t s
- イチョウの培養の基本(管理場所、灌水、施肥、植替え)
- イチョウの病害虫と対策
- イチョウの増やし方
- イチョウの適期作業
- 関連ページ
1.イチョウの培養の基本
イチョウの管理場所
高木の中でも特に樹高の高くなるイチョウは、日当たりのいい場所を好む「陽樹」ですが、松柏類ほどの日照は必要ありません。置き場所は他の葉ものや雑木類と同じでよく、半日陰~日当たりの良い場所を確保してあげましょう。
夏の日差しで葉焼けをするということもほとんどないので、夏の管理も難しくありません。
明るく風通しのいい場所で育てれば、特に手間のかからない樹ですが、全く陽の当たらない環境では葉色が悪くなったり、葉が大きくなったりして生育が悪くなります。
イチョウの黄葉(カロテノイド色素)は、カエデやモミジの紅葉(アントシアニン色素)のようにその年の環境(寒暖差、肥料、日照、湿度など)に左右されることがなく、気温の低下に伴って毎年同じ発色を見せます。
毎年10月~11月頃になれば綺麗な黄葉を見せてくれる秋の棚場の主役です。
イチョウの灌水
イチョウは幹枝や厚い葉に水分を多く含んでいるので、「燃えにくい木」として防災を兼ねて、街路樹や火除地に利用されてきました。
自然のものは樹高30メートルにもなる樹なので、それだけ水を吸い上げる力も強く、比較的乾きやすい性質です。
ただし鉢中に水がずっと多い状態ですと、根が軟弱になり、さらに気温が高くなってくると根腐れを起こしやすくなります。イチョウの灌水も他の雑木類同様、鉢土が半乾きくらいになったらたっぷり水やりするように意識しておいてください。
春の芽出し頃からは1日1~2回で、夏は1日2回か多くて3回、冬は2~3日に1回(ムロ内)を目安にするといいと思います。この回数は1つの目安で、風の強い日や午前中から日差しの強い日、空気の乾燥した季節などは乾き方も早いですから、自分の棚場環境ではどのような乾き方をするのかを、よく観察することが大事です。
特に夏場の水切れには注意。時々葉水をあげると綺麗な葉を保てます。
イチョウの施肥
春肥が多いと枝が徒長しやすいので春は控え目に、秋肥は春より多めに与えましょう。
早く太らせたい若木や養成木は多め、古木感を維持したい完成木は控え目など、仕立て段階でも与える量は工夫が必要と思います。
古木に必要以上の肥料を置くと、勢いがつきすぎて枝が余計に伸び出したり、幹が割れることがあるので注意してください。
実際には4月~6月頃と、9月~10月頃に肥料が効いていれば十分です。有機油かす肥料やIB肥料などの緩効性のものをメインに、時々液肥を与えてもいいと思います。
実のついたものは疲れやすいので、秋肥はしっかり施してあげましょう。
2.イチョウの病害虫と対策
病害虫はほとんどなく手間のかからない樹ですが、日当たりや風通しが悪いと葉ダニやハマキムシ、ミノガ類の幼虫がついたり、稀にすす病にかかったりすることがあります。
環境さえ整っていれば病害虫は発生しませんが、他の樹種同様に適期消毒は行いましょう。
葉色が悪い場合は肥料不足や高温障害、過湿による根の酸欠などが原因かもしれません。チッ素分が足りていない(根が吸収できていない)と葉緑素が減少し、全体に黄色っぽくなります。この場合は病気ではなく培養を見直す必要があるかもしれません。
3.イチョウの増やし方
イチョウは実生の他、挿木(新梢、古枝挿し、コブ挿し)や取木、接木ができます。
実生
実生は秋に実を拾って果肉から種を取り出し、そのまま取り播きしてください。撒く前には水に浸けて、浮いてきた種(シイナ)は除いておきましょう。
幼苗時代は特に真っ直ぐ上に伸びようとする力が強いので、覆土せず網やネットで押さえておくと(網伏せ実生)、幹に曲がりが入り、抑制も効いて小さく作ることができます。
さらに、6月~7月頃に鉢上げて、その際に直根を切り詰めておくと伸長が抑えられ、切った先から根が分岐します。網を夏の間もかけたままにしておくと、蒸れて状態が悪くなることがあるので置き場所を工夫するか、クセがついていれば外してくだださい。
大きく育てたい場合は、そのまま伸ばしておきましょう。なにもしなければどんどん上に伸びます。この場合も幹が柔らかいうちにアルミ線で基本の幹模様をつけておくといいと思います。
挿木(新梢、古枝、コブ)
イチョウは挿木も簡単です。時期は6月頃、葉が固まってきてからがいいと思います。新梢(今年伸びた枝)の他、古枝でも発根します。
切り口は綺麗に切り、できるだけ斜めに挿して、足元に曲ができるようにしてください。
もともと発根のいい樹種なので、、古い樹の幹の途中の芽当たりの集合(コブ)も挿木ができます。コブ挿しが上手くいけば太くて腰の低い「株立ち」にできます。
ただし、気温が高い時期の挿木は雑菌も繁殖しやすく失敗におわることもよくあります。特に切り口の大きいコブを挿す場合は、落葉後の気温の低い季節が適しています。
接木
イチョウには斑入り品種や実付きのいいもの、葉に実がつく「オハツキイチョウ」、気根が発達した「乳イチョウ」、小葉性、細葉性など変種や園芸種がいつくかあり、そのような品種の太幹素材はほとんど接木で作られています。
太めの台木があれば、そのようないい枝を接いで作るといい素材になると思います。
時期は2月頃が好機です。
イチョウの適期作業
植替え(3月~4月)
銀杏は根の成長が早く根詰まりしやすいので、若木や小さいものは1~2年に1回の間隔で植え替えをします。成木は2年~3年に1回を目安にしてください。
太くて長い根は早めに整理すべきですが、あまり強く根処理すると弱るので、落とす根土は全体の1/3程度にしておきましょう。
長い根ばかりで分岐が少ない場合は無理に処理せず、根を鉢に巻き入れるようにして収めてください。
銀杏は八方に伸びた根張りも見所の1つ。植え替えの時には根を広げて植え付け、浅めの鉢で培養するといいです。
芽摘み(4月~5月)
葉刈り(6月~7月頃)
大きい葉を葉刈り
銀杏は基本的に葉刈りしませんが、葉が多い場合はそのままだと内部が蒸れて害虫が寄ってきたり、採光や風通しが悪くなって枝が弱ることがあります。
場所によって葉の大きさにばらつきがあるので、6月~7月頃になって全体の調和を乱すような大葉を葉柄の元から切り取ってください。
剪定(芽出し前、落葉後)
成長期の間に伸びてくる長枝は適宜芽摘みをします。
全体の剪定は芽出し前か落葉後に行いますが、あまり小枝はできないので不要枝を整理する程度です。
水分の多い銀杏は切り口から腐れが入りやすいため、太枝を切ったときは特に保護剤を塗っておいてください。
針金かけ
3年生の実生苗を曲げたところ
銀杏は直立性の植物なので無理に曲げない方が好ましいですが、盆栽として育てる以上は多少なりとも模様付けする必要があります。
銀杏の枝は比較的柔らかく曲げやすい反面、水分が多い樹なので曲げると折れやすい性質があります。
慣れないうちは力加減が分からないので、1本長く伸びたものは一度で決めず時期を分けて徐々に畳むように癖をつけて下さい。
太枝に針金をかける場合の適期は芽出し前か秋頃。1年生の苗や新梢にかける場合は時期に拘らず、まだ枝の柔らかいうちに癖つけしておきましょう。
銀杏は幹を強く曲げるとその部分から胴吹きしやすいので、これを活かして小さく作ることも可能。
ただし幹が古くなるほど厳しい癖付けは難しくなるので、若木のうちに幹模様を付け、あとは素直に作るか取木を考えてもいいかもしれません。
コメント
- ミィ さん 2017年05月14日15時08分
- はじめまして ^^
拾った銀杏を植えましたら先月から少しずつ芽が出てきて伸びています。
小さな盆栽にしたいのですが、このまま放っておくと大きくなりすぎそうで不安に思っています。
まだ10cmぐらいの赤ちゃんなのですが、これから短く切ったり鉢に植え替えるのはいつ頃がいいのか、もしご存知でしたら教えてください。
厚かましく申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。 - きみ さん 2017年05月16日10時37分
- ミィ さん
実生苗はずーっと真っ直ぐ伸びていきますから、針金で軽く癖を付けておいたり網伏せで曲をつけるとまぁ見られる姿になると思います。
挿木しても付くので、そのうち適当な箇所で挿して短く作りなおすのもいいかもしれません。
真っ直ぐの若木を短く剪定したことがないですが、もしかしたらドングリみたいに第2芽でるかもしれないですね...もしかしたらですが<(_ _)>
直根を短くするのは、今ならできると思います。 - ハマのおんたた さん 2018年05月11日00時18分
- 前略
拾った銀杏から芽が出で3年目になります。
高さ40cmの鉢に植えています。
毎年この頃から段々と葉の色が薄い黄緑色になってしまいます。今年こそ青々した元気な銀杏を見たいのですが、どうしたらよいか全く分かりません。
アドバイス等ありましたら宜しくお願い致します。 - きみ さん 2018年05月11日14時34分
- ハマのおんたた さん
こんにちはー。イチョウは3年やそこらで花が咲く物ではないですよ。若木は自身を大きくするのに必死ですから。さらに雌雄別なので雌じゃないと実もなりませんからね~汗
こちらもどうぞ
https://bonsai.shinto-kimiko.com/kiso/jyuyu/hamono/icyou.htm
葉色が悪いのは肥料不足か、チッ素分が足りていないのかも。 - まつはぴ さん 2022年06月20日06時03分
- こんにちは。去年拾った銀杏から芽が出ましたが、2つの芽が近いところにあり、早いうちに植え替えたいのですが、枯れないか心配です。今の時期に植え替えても大丈夫でしょうか?今5cmくらいです。
- きみ さん 2022年06月21日10時50分
- まつはぴ さんへ
根を切らなければ植替えが原因で枯れることはないと思います。
植替えはたしかに春が適期ですが、土の状態が悪かったり植替えが必要と思ったものはいつでも実行しています。
小根が充分にあれば強い根は切ったりもしていますので、今単植えにすること自体は問題ないと思いますよ! - あけ さん 2022年12月19日14時48分
- こんにちわ。今年春頃から盆栽を始めた超初心者です。
いつもこのHPとYouTubeを見て勉強させていただいております。
さて、銀杏の盆栽を購入したのですが30センチ位あるのでとり木をして短くしたいと思っています。
とり木をする季節を教えて下さい。
ろうや柿もとり木したいのですがその季節も教えて下さい。
とり木をするにあたって注意点なども教えていただけると助かります。
よろしくお願いいたします。 - きみこ さん 2022年12月19日17時39分
- あけ さんへ
こんばんは。いつもありがとうございます^^
銀杏の幹は結構太いのでしょうか?取木できるいい場所があれば取木したほうがいいですが、素材によってなにがベストか分からないので...
挿し木も取木も適期は葉が葉が固まる6月頃がいいと言われています。
わたしは挿し木に関してはいつもやってますが、取木は伸長生長が盛んな時期にやると(急に水が絶たれるため)上部が萎れたりしてそのまま枯れることもありますので、葉が固まるころか休眠期(2月頃とか)にしかけたほうが失敗はないかと思います。
ロウヤ柿も同じ時期でいいと思いますが、挿し木に関しては休眠枝(冬挿し)を挿したほうがわたしはよく活着しました。
人によって違うと思うので参考になったか不安ですが、何事もチャレンジしてみてください♪ - あけ さん 2022年12月20日17時03分
- 早々にお返事頂きありがとうございます!!!
色々挑戦したくてウズウズしています!
また取り木のことなのですが、2月にしてみようと思っているのですが、取り木した時はやはり日陰に置いておいた方がいいのでしょうか?もし日陰ならどの位の期間でしょうか?日向に置いてもいいのでしょうか?
それと取り木する時の土なのですが赤玉でいいのでしょうか?他のYouTubeで水苔だけでやっているのを見たのですが....水苔と赤玉を混ぜるのもアリなのかなと思っているのですがどうでしょう?
取り木をする時に徒長枝の剪定をした方がいいのでしょうか?根が出たのを確認してから剪定した方がいいのでしょうか?
質問だらけですみません
よろしくお願いいたします。 - きみ さん 2022年12月21日18時18分
- あけ さんへ
お返事おくれてすみませんでした。
>取り木した時はやはり日陰に置いておいた方がいいのでしょうか?
2月の取木ならまだ冬期保護中(イチョウもロウヤ柿もまだ葉も出ていない状態)だと思いますので、ムロ内(日陰?)での管理でいいと思います。
6月頃の取木なら明るい方がいいと思いますよ^^
>それと取り木する時の土なのですが赤玉でいいのでしょうか?
取木かけした部分は乾くといけないので、赤玉を使う場合は細粒くらいのやつを使ったほうがいいかもしれないです。でも細かい赤玉だけにすると土が硬くなって通気性を悪くするかもしれないので、ミズゴケも混ぜたほうがいいかもしれないです(「水苔と赤玉を混ぜるのもアリなのかなと思っているのですがどうでしょう?」=ご質問の回答になってますか?)。
ミズゴケは乾燥防止にもなりますし、出たばかりの柔らかい根を傷めないので、おもちでないなら持っておいたほうがいいですよ。
植替え後など何かと使えますし。市販のミズゴケは粗いので、揉んでバラバラにするかハサミで細かく刻んでおいてください。
大きな塊のまま使うと、ミズゴケを外す時に根を引っ張っていためてしまいます。
>取り木をする時に徒長枝の剪定をした方がいいのでしょうか?根が出たのを確認してから剪定した方がいいのでしょうか?
発根を促進するホルモンは葉で作られます(葉がない休眠期は蓄えたエネルギーが使われます)ので、生長期の場合は葉はできるだけ多いほうがいいと思います。
ただめちゃくちゃ多いと今後は蒸散が多くなってバランスが崩れて萎れることがあるので、枝葉が多すぎるかな?と感じたら適度に減らすということはします。
強い枝は切った方が周りの枝の生長を促進しますし、それだけ小根もできるということですから、適当なところで切っておいて問題ないかと思いますよ^^