盆栽の害虫
更新日:2019/08/16
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害虫の多くは、春から秋までに発生し成長期の盆栽を食害します。
害虫には葉や木部を食べる食害性害虫と樹液を吸う吸汁性害虫がいて、唾液や排泄物がウィルスを媒介して他の病気にかかる原因ともなります。
またウィルスや細菌と同様、冬期も死滅せず植物組織上で越冬するものが多いですから、薬剤散布や環境の整備など、被害が出る前の防除が大切です。
C o n t e n t s
1. 盆栽につく主な害虫
食害性害虫
イモムシ、ケムシ類(蝶・蛾の幼虫)

蝶や蛾の幼虫であるイモムシやケムシにはたくさんの種類があり、食欲が旺盛で1日で盆栽の葉や芽のほとんどを食べ尽くしてしまう勢いです。
比較的大型になるのは金豆(キンズ)などの柑橘類の葉を食べるアゲハ類の幼虫、梔子の葉を好んで食べるオオスカシバ(スズメガ)の幼虫など。
蛾の仲間は蝶よりも圧倒的に多く、ハマキガ科やヤガ科、カレハガ科、イラガ科、シンクイガ科、ヨトウガ科、ドクガ科、メイガ科など3000種を超える仲間がいます。
桜や梅などに付きやすいオビカレハ(カレハガ科)や大量発生するヨトウムシ(ヤガ科)、樹木の芯を食べるシンクイムシ(メイガ科)などが発生期にたびたび問題になります。ハマキガの幼虫のハマキムシ類もよく見かける害虫で、糸を分泌しながら葉をつづり合わせ、巻いた葉の中で食事をしながら成長し、越冬します。
これらの食害性の害虫は、見つけ次第駆除してください。予防には浸透移行性の殺虫剤が有効で、スミチオンやマラソンの他、オルトランDX粒剤など汎用性の高い薬剤を散布してください。
ただし、ドクガ科にはドクガ、マイマイガなど毒毛をもつ幼虫がいて特にツバキ科の植物の葉に発生するチャドクガ(ドクガ科)の幼虫は危険です。風で飛散した毒毛に触れるだけでも皮膚炎を起こすので発生させない、近づかないようにしましょう。
コガネムシ・ネキリムシ(成虫・幼虫)
コガネムシ成虫(左)と幼虫(右)
コガネムシはコガネムシ科に属する昆虫の総称で、同じ科には小型のハナムグリや通称カナブンがいます。
毎年大発生することが多く成虫は葉を旺盛に食害し、幼虫は地中で植物の根や腐植物を食べて成長します。
地中に潜み、強い顎で根を切って食べてしまう幼虫は俗称「根切虫(ネキリムシ)」や「地虫(ジムシ)」といわれていて、昼間は土中に隠れ、夜間にでてきて苗の根や地上部の茎葉を食害するため、農作物やガーデニングでも毎年問題になる害虫です。
本来「ネキリムシ」はタマナヤガとカブラヤガの他にオオカブラヤガやセンモンヤガの4種類の蛾の幼虫の事をいいますが、その食性が似ていることからコガネムシの幼虫もネキリムシと言われています。
キクイムシ(幼虫・成虫)
キクイムシに侵入された跡(駆除済)
キクイムシ(木食い虫)はキクイムシ科(ゾウムシ科)に属する甲虫の総称で、日本には300種以上の仲間がいます。
成虫・幼虫ともに1mm~数mm程度と小さな虫で、樹皮を食べて下に潜り込み、細孔をつくって木部まで食い荒らしてしまいます。
特に衰弱した木や老樹での被害が深刻になりやすく時には枯れることになります。
幹や枝に成虫が侵入した小さな穿孔と、そこから排出された木屑や小さいフンをみつけたらキクイムシの被害にあっている可能性があります。
キクイムシの被害を見つけたら、穿孔にスミチオンやマラソンなどの原液を詰めてティッシュや保護パテ材などでフタをしてください。キンチョールEなど市販のピレスロイド系の殺虫剤も効果があります。
ウリハムシ(成虫・幼虫)
クロウリハムシ成虫
ハムシ科のウリハムシ属の害虫で、ウリバエとも呼ばれます。小型の甲虫で体長5~7mm。全体にオレンジかかった黄色で腹部と後脚は黒く、近縁種のクロウリハムシはボディ(前翅)が黒いのが特徴です。
動きは活発でよく飛び、成虫はなかなか捕まりません。
名前の通りキュウリやカボチャなどのウリ科の作物の葉を主食としますが、雑食性で果実や柔らかい葉の盆樹にも来訪し、毎年問題になります。
浅い土中で孵化した幼虫(体長2~3mm)は樹や山野草の細根を食べ、成長すれば茎や芯まで侵入して株が萎凋(いちょう)、枯死します。
繁殖期が長く、産卵数も多いので寄りつかせないことが第一。ウリハムシ成虫を見つけたら補殺し、スミチオンやマラソン、ダイアジノン、ダントツ、ベニカ、モスピランなどの浸透移行性の殺虫剤で防除してください。
土中の幼虫は株元灌注やドボ漬けで駆除できます(※浸透性の強いものは避ける)。
カミキリムシ・テッポウムシ(成虫・幼虫)
タラノキに付くセンノキカミキリと幼虫(テッポウムシ)
カミキリムシ科に属する甲虫の総称で、日本には800種以上の仲間がいます。
細長いボディに長い触角と大顎が特徴的で、葉や花、花粉、茎、花粉、木の皮、樹液などを食べます。
樹皮の中に産み付けられた卵から孵化した幼虫は、「鉄砲虫(テッポウムシ)」と呼ばれ、頭が大きく体にいくにつれ窄まってやや平たい形。
木の幹を喰い進んで直径1cm前後のトンネルを作り、大顎で植物の組織を食べながら2~3年かけて成虫となります。
カミキリムシの成虫を見つけたら補殺し、5~7月頃の成虫の発生産卵期にはベニカファインスプレーやスミチオン、キンチョールE、ダーズバンなどで殺虫・予防してください。
ハモグリバエ・エカキムシ(成虫・幼虫)
ハモグリバエ(左)とエカキムシ(右)
ハモグリバエ科の小型のハエで、体長は2~3mm程。葉の組織中に産卵し、幼虫は野菜や草花の葉から樹液を吸汁します。
種類も多く、世界には2500種の仲間がいると考えられていて、ハモグリバエとハモグリガの幼虫は通称「エカキムシ」と言われています。
エカキムシは葉の中を蛇行しながら食害し、絵を描いたように白い線が残るため見た目を損ない、葉の変形や落葉、生育不良の原因となってしまいます。
ハモグリバエは防除が大事。マラソンやオルトランDX、ダントツ、ベニカファインスプレーや水和剤などの浸透移行性の薬剤を定期散布し、幼虫は見つけ次第潰して補殺してください。
クロバネキノコバエ(成虫・幼虫)
クロバネキノコバエ属の幼虫
双翅目クロバネキノコバエ科に属する昆虫の総称で、世界には一万種程の仲間がいると考えられています。
成虫の翅(ハネ)は透明~褐色、黒色で体長は1~5mmと小型の羽虫で、翅を振るわせて農作物の他、腐葉土や朽木、堆肥などに集ります。
幼虫も体長1~3mmと小さいですが、菌類や根菜類、ネギなどの葉や茎を食害する農業・衛生害虫として知られていて、特に梅雨の時期~秋に大発生します。
盆栽やプランター園芸でも被害が大きく、肥料を食べたり土や樹皮の間に潜り込んで幹や茎、柔らかい根を食害するようになります。
発生を防ぐことは難しいですが、成虫はスミチオンやマラソンなど、幼虫はオルトラン粒剤などの浸透性殺虫剤や、ダントツ浸漬などで駆除することができます。
ナメクジ
鉢裏に隠れたチャコウラナメクジ(左)と用土中にあった卵(右)
一般家庭では不快害虫でもあるナメクジは、農作物やガーデニングにおいても駆除対象の害虫の1つで、春先から梅雨頃に大発生します。
よく見かける種類はチャコウラナメクジやノハラナメクジ。
盆栽には適度な湿気が保たれているので、昼間は鉢裏や土中に隠れていることが多く、夜になると活動を始めて葉や新芽を旺盛に食い荒らします。
居心地がよければ用土中に卵を産み付け棚場内で繁殖を繰り返すので、鉢裏や棚下をチェックして見つけたら補殺して被害の拡大を抑えてください。
ビールを使った誘因や駆除剤撒布、銅線を張るなどの方法がありますが劇的な効果は低く、塩水や木酢液などを使った駆除が確実。ただしナメクジやカタツムリには寄生虫がいる可能性があるので、直接触らないこと。ピンセットやゴム手袋を付けて取ってください。
棚場がいつもジメジメしているような環境は、盆栽にとっても悪影響でありナメクジに住処を与えてしまうので、定期的な掃除と灌水頻度の見直しを検討してください。殺虫殺菌剤として使うサンヨールはナメクジ予防にも効果があるようです。
吸汁性害虫
アブラムシ類
アブラムシ(左)とワタムシ(右)
カメムシ目アブラムシ上科に属する昆虫の総称で、種類が多く大きさや模様に多様性があります。同じ仲間にはワタムシ(ユキムシ)がいて、体が白い綿状物質で覆われているものもいます。
植物の茎や葉裏の維管束部分に口針を刺して支管液を吸い、被害にあった葉はめくれたり縮れたりします。
アブラムシには翅(ハネ)のある有翅型(ユウシガタ)も出ますが、繁殖期は翅のない無翅型(ムシガタ)のメスだけで単位生殖(無性生殖)し、秋頃になると雄が発生して越冬卵を産みます。
棚場の風通しが悪かったり、樹勢の弱って入る樹に寄りつくので日頃の管理に注意し、共生アリが寄りついていたら葉裏をチェックしてアブラムシの被害を疑ってください。
唾液や排泄物はすす病を媒介する原因となるため、定期的な薬剤防除が基本。繁殖力は驚異的ですがアブラム自体は弱々しい虫なので、汎用性のある殺虫剤ならほとんど効果があります。
スミチオン、マラソン、オルトラン、ダーズバンなどの定番の殺虫剤の他、サンヨールやベニカなどの混合剤を定期散布してください。
カイガラムシ類

カメムシ科カイガラムシ上科に属する虫の総称で、世界では7000種以上の仲間が存在しています。
形態は多様で、体表に虫体被覆物質を分泌して硬い殻を持つものや、全体に粉を被っているもの、毛の生えたものなどがあり見た目や色、大きさに違いがあります。
多くの場合、幼虫の時は足があって移動しますが、定着すると足がなくなり体の表面にキチン質を分泌して硬い殻に覆われます。
枝や幹や葉、果実などの樹液を吸って成長しますが、その唾液や排泄物はときにすす病の原因となることも。
大量に寄生された植物の成長はとまり、樹勢が著しく低下してしまいます。
カイガラムシの甘い排泄物を求めて蟻が集まることがあるので、幹に蟻を見かけたらカイガラムシやアブラムシの寄生を疑ってください。
カイガラムシを見つけたら、歯ブラシなどでこそげ取り補殺してください。予防にはスミチオンやマラソン、ベニカなど汎用性のある殺虫剤で対処できます。
ハダニ類
赤ダニ(カンザワハダニ)
ハダニ科の極小さなダニで、繁殖力が高く作物や園芸、盆樹でも問題になる害虫です。
毎年夏の高温乾燥下で被害が大きくなり、植物の葉裏に寄生して樹液を吸い、繁殖するにつれ白い糸のようなものを分泌して植物体に膜を張り移動します。
被害にあった葉は白くカスリ状になり、白色化して植物の成長が止まってしまいます。
繁殖力が旺盛はハダニは、短期間で世代交代を繰り返しながら爆発的に増殖。薬剤耐性を持ちやすい害虫で、世代交代の中で薬剤に対する抵抗性を持つ個体群が新たに出てきます。
マラソンやバロック、ベニカ、ダニ太郎、マシン油乳剤などハダニに効く薬剤は結構あるので、有効成分の異なる薬剤を使い回して防除してください。
アザミウマ(スリップス)
アザミウマ目の属する昆虫の総称で、5000種を超える種類があり、英語からスリップス(Thrips)とも呼ばれます。
頭部が長いことから馬の名が付いていて、古い時代の子供の遊びでアザミを振って花粉に寄生したアザミウマの数を数えていたことからその和名が付きました。
体は1mm以下と小型で細長く、翅(はね)は棒状の筋に長い毛が生えたような独特の形。脚は短く動きは活発ではありませんが風に乗って遠くへ移動し、植物細胞の内容物や菌類、花粉の細胞壁に穴を開けて内容物を吸い取ります。
アザミウマの防除は主に薬剤散布で、スミチオンやマラソン、オルトラン、ベニカなど汎用性の高い薬剤はアザミウマに効果があります。
グンバイムシ類(幼虫・成虫)
菊の葉裏についたグンバイムシ
カメムシ目グンバイムシ科の虫の総称で、小型で羽根の形は名前の通り軍配のような形をしています。
皐月をはじめ、菊、紫檀など葉裏に発生する害虫で、幼虫や成虫は葉裏に寄生して樹液を吸い初夏から秋まで何回も繁殖を繰り返します。
最初は葉の表面に小さな白斑が現れ、次第に葉全体の色が白くカスリ状に抜け、葉裏には黒い排泄物がたくさんついて汚れ、成長を阻害してしまいます。
グンバイムシを見つけたら補殺し、スミチオンやマラソン、ベニカ、サンヨール、モスピラン、オルトランなどで防除してください。風通しが悪いと発生しやすくなりますから、鉢の間隔に余裕を取ったり、枝を間引くなどしておきましょう。
ネコナカイガラムシ
カイドウの根に寄生した
ネコナカイガラムシ
カメムシ科カイガラムシ上科に属するコナカイガラムシの一種で、主に花物類や実物類、カンキツ類の細根に寄生し内容物を吸い取ります。
白く小さなワラジムシのような形状で、カイガラムシの様な硬い殻はなく、成虫は脚があり歩くことができるので周りの株に移動して感染してしまいます。
ネコナカイガラムシに寄生されても土中なので見た目に分からず、最初のうちは樹も元気で花もそれなりに咲くため感染に気づきにくい害虫です。
重症化すると次第に生育が緩慢になり、特に葉や新芽が異常に萎縮するなどの形態が見られるようになります。
なんとなく生育が悪い状態が続き、特に新芽に異常が見られた時は一度土を曝いて根を確認してください。
ネコナカイガラムシは意外に繁殖場(盆栽園など)に蔓延していることがあり、新しく仕入れた苗木に既に寄生していることがあります。
見つけたら古土を落とし、根を水で洗い流して虫をできるだけ落とし、オルトラン水和やマラソン乳剤、ダイアジノン粒剤やオルトラン粒剤など浸透移行性のある薬剤で防除してください。
