根腐れの原因と対策
投稿日:2022/10/20
本ページに記載の商品・サービスは広告を含むことがあります。
盆栽を弱らせてしまう原因はいろいろありますが、1番多いのは水やりの失敗で、慣れないうちは水切れよりもむしろ水が多すぎて根腐れさせてしまうケースが多いようです。
根腐れしている樹はがいつまでも乾かず、表層の土が黒く酸化した状態になっていることが多く、鉢から抜いてみると根が腐って、ドブをさらったような腐敗臭がします。
なんとなく葉色が悪い、芽の生長が止まっているなど、生育に異常を感じた場合は根腐れを疑ってください。
根腐れを起こす要因
1、根詰り
長年植替えをしていないものは、鉢中にぎゅうぎゅうに根が張り、新しい水や酸素が通りにくい状態になっています。
根詰りして水はけが悪い状態ではなかなか内部まで必要な水や空気が入らず、見た目はジメジメしているのに中の根は水切れが起こってしまうことがあります。
単に根詰りをしている段階(適度な抑制)なら盆栽としてはむしろ好ましい状態で、植替え適期まではドボ漬けや通気穴を開けるなどの対策ができますが、一度根が傷んでしまうと水やりの度に根腐れを進行させてしまうので注意が必要です。
2、水のやり過ぎ
盆栽の水やりは乾いてきてからたっぷりやるのが基本ですが、水切れを恐れてつい過水になりがちです。
常に水が多い状態だと鉢中が酸欠状態になりやすく、徐々に根が傷んでしまうので乾かす時間も大事にしてください。
根は水を求めて生長するので、少々水が不足しているほうが樹も慣れて乾きに強くなります。
3、肥料のやり過ぎ
肥料が多いと土中の肥料濃度が濃くなり、「肥料負け」「根焼け」を起こす原因になります。
肥料を好む樹種でも、一度に多量の与えるのではなく、少量を継続的に与えたりして余剰な肥料分が残留しないようにしましょう。
特にチッ素質肥料の硫安(硫酸アンモニウム)や塩安(塩化アンモニウム)、塩化カリなどの生理的酸性肥料は、分解されて残った硫酸イオンや塩素イオンが鉢土中のpHを下げて酸性化させるため、根の生育を阻害したり、有用菌の不活性を引きおこしたりして、悪影響を及ぼす可能性があります。
肥料負けの心配があまりない緩効性有機肥料をメインにすることも昔ながらのいい方法ですが、最近はIB肥料など有機固形肥料のような効き方(ゆっくり長く溶け出す)をする化学肥料もたくさんあるので、両方を正しく使うとより効果があがると思います。
また、水はけさえよければ多少水や肥料が多くても根が痛むことはないので、植替えの際には必ずゴロ土を敷き(浅い鉢は使わない場合もあります)、排水性と通気性のいい用土を使うようにしましょう。
土が“ドブ臭くなる”現象の正体
土がドブ臭くなる原因物質は、硫化水素や硫化メチル(ジメチルサルファイド)、メタンチオール(メチルメルカプタン)などの揮発性の硫黄化合物です。
卵やタマネギが腐ったようなむわっとするような腐敗臭は、用土中が酸欠状態になることで嫌気性細菌が増殖し、用土中の有機物やデンプンを分解して、硫化水素等を発生している状態になっています。
盆栽では習慣的に、表土が鉄イオンの酸化等によって黒く変色したり、ドブ臭くなる現象を「土が酸化している」と表現することがあります。
ここでいう盆栽用語としての「酸化」は科学的な土の酸化(酸素過多)ではなく、鉢中が根詰りや過水などで酸欠状態になることで根が腐り、同時に嫌気性細菌が繁殖し、有機物等を分解する際に腐敗臭を発生させているという意味を含んでいます。
腐敗臭がする状態では根腐れが相当進行している状態で、地上部も明らかな生育不良が見られるようになります。
水はけが悪いだけなら、水やりを工夫したり、鉢を傾けたり、用土に竹串などで通気穴を開けることでいくらかは改善しますが、根腐れした状態を放置しても改善する可能性は低いので、すぐに対処したほうがいい結果になると思います。
根腐れした樹の対処
適期に拘らず植替え処置をする
根腐れが進行したものは通常の植え替えでは改善されないので、適期に拘らずすぐに救済措置の植替え(根洗い)を行うと復活する可能性があります。
まず、生きている根をできるだけ傷付けないよう根かきなどで丁寧にほぐしたら、適当な水圧で根を洗って、根の間に残っている古土や腐った根をきれいに洗い落としてください。
図1:土がカチカチで崩せない場合は、数カ所くさび型に切り崩して新しい土に更新していきます
この時、歯ブラシなどで立ち上がり部分の根と根の隙間や幹の汚れも落としておくと、水はけ効率がさらに改善されます。
上層の土が硬い状態のものは、鉢中に水や空気や肥料(リン酸)が内部まで入りにくいので、数カ所くさび状に切り込んで、水と空気の通り道を確保しておいてください(図1)。
上根を多く処理すると樹に負担がかかるので、一度に処理せず、次の植替え毎にほぐす場所をずらして新しい根に更新していきます。
深~中深の培養鉢+ゴロ土を多めにいれて排水性UP
根洗いができたら、やや深めの培養鉢にゴロ土を多めに入れ、根を切らないように手で軽くまとめて植え付けます。
排水性を第一に、ゴロ土には大玉(小品なら小粒~中粒)の赤玉土や根腐れ防止のゼオライト、竹炭などを用い、植土もやや粗めのものを用いましょう。
樹はしっかりと鉢に固定し、1~2週間は強い風の当たらない棚下や明るい日陰において回復を待ってください。
ミズゴケは使わなくてもいいのですが、水やりに不安があるうちは薄く張っておいた方が安心です。
水やりは表土が乾いてきてからを基本に、メネデールなどの活性剤を時々与えるといいでしょう。
植替えできない場合もあります
根腐れした樹の植替えは、作業適期でない時期に決行しなければいけないことが多く、加えて樹も相当弱っている状態で負担も大きいですから、樹種によっては植替え(根洗い)ができない場合もあります。
五葉松や黒松など一部の松類や古木は回復に時間がかかり、根洗いをするとかえって樹勢を落とす場合もあるので、そのような樹はあまり根をさわらず、一回り大きめの鉢にそのまま植え付けるようにしてください。
休眠期や真夏など処置後の根動きがあまり期待できない場合も、急がずに、同様に一回り大きめの鉢にゆるめておいて、根動きがある時期に植替えをした方が安全です。
根腐れさせない管理
土壌に根を張る木々と違って、小さな鉢で育てる盆栽は、置き場所や水やり、肥料などを適切に管理する必要があり、少しの過不足でのちのちの生育に影響がでやすいものです。
特に水やりに関しては、多少水が多くても急激な樹勢の低下がみられるわけではないので、鉢中が慢性的な酸欠状態になりやすく、結果的に根を軟弱にしてしまうことがよくあります。
根の良好な生育には、新鮮な水と空気が必要です。そのためには酸素を循環させることを意識した灌水が重要で、水はけの良い物理的環境(鉢と用土)を用意することも大切になってきます。
根の生育に適した鉢は?
根の生長には通気性や保温性のよい素焼き鉢や駄温鉢、朱温鉢などがよく、適度な湿度も保てるサイズの深~中深鉢がベストです。
水やりが多い人(根腐れさせることが多い人)は、通気性が良くない釉薬のかかった化粧鉢や、鉢穴の径が小さいもの、穴数が少ないものは避けるようにしてください。
根の生育には排水性の良さが重要なので、サボテンや多肉植物にも使われるプラスチック製のスリット鉢やプラステラ鉢を使う愛好家もいて、市販の素焼き鉢にグラインダーなどでスリットを入れて使うのも良い工夫だと思います。
根の生育に適した用土は?
ミニ盆栽のゴロ土には、小粒の赤玉土と竹炭、ゼオライトを混合したものを使っています
ほとんどの盆栽樹種に共通して使われる基本用土は、赤玉土です。赤玉土は園芸店でも手に入りますが、1年以上植替えをしない盆栽の場合は、粒が潰れにくい焼成された硬質の赤玉土を使うようにしましょう。
硬質赤玉土は排水性に優れますが、劣化により水はけは段々悪くなるので、桐生砂や日向土などの排水性のいい用土を2~3割ほど混合したものを基本の用土にしてください。
粒径は大粒→中粒→小粒→極小粒→細粒と、細かくなるほど水はけが悪くなる(逆に言えば保水性が上がる)ので、樹種毎の水の要求度や鉢(樹)の大きさ、個人の可能な灌水頻度などを考えて、選びましょう。
また、ゴロ土も基本は必ず入れるようにしてください。粗めの赤玉土などでもいいですが、土の酸性化を予防する竹炭やゼオライトなどを使うのもお勧めです。
コメント
- devkase さん 2022年11月12日20時33分
- 改めて水やりと用土の関係は難しいですよね。風通しが悪く湿度も高い都内のベランダ盆栽(しかも1階)では、かなり水はけの良い用土のほうが良い気がしています。
真柏を例にとりますと、「盆栽1年目→赤玉土のみ」「盆栽3年目→赤玉土8桐生砂2」「盆栽4年目→赤玉土5桐生砂5に竹炭」というふうに用土を変えておりますが、現状4年目の感じが具合よさそうです。
まあ、シンパク自体が環境に慣れてきたこともあるかもしれませんが。
雑感コメント失礼しました。 - きみ さん 2022年11月15日13時36分
- devkase さんへ
コメントありがとうございました。公開するのが遅くなってすみませんでした。
そうですね、シンパク1つでも仕立て段階によって用土の配合を工夫したほうがいいですよね。