紅葉するものとしないものの違い
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秋が深まると、深山の木々たちの葉が鮮やかな紅や黄色、茶色に色付いて見事な紅葉の景色をみせてくれます。
しかしよく見てみると、紅葉している樹と緑色のままの樹があることに気付きます。
紅葉しない樹はマツやヒノキなどの松柏類(一部を除く)に代表される樹種などで、一年中常緑の葉を保っています。
一方、紅葉するものはモミジやカエデ、シデ類などの落葉樹で、雑木や葉物類に分類される樹種たちです。
葉の色素
緑→黄色→紅へと色付くハゼ
植物の緑葉には複数の光合成色素が含まれていて、光合成によって光を吸収してエネルギーを作り出しています。
緑葉の大部分を占める緑色の光合成色素(葉緑素)はクロロフィルと呼ばれる化学物質で、青緑色のクロロフィルaと緑色のクロロフィルbに分けることができます。
クロロフィルは光合成の反応中心色素であり、光エネルギーを効率よく吸収して、生体維持のための化学エネルギーに変換する光アンテナの役割を持っています。
オレンジ色の光合成色素はカロテンとかカロテノイドと呼ばれる光合成の補助色素で、トマトやニンジン、甲殻類などにも含まれる天然色素の1つです。
他の補助色素には、カロテン由来の黄色い光合成色素を総称したキサントフィル類があり、ルテインやゼアキサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチンなどの中間体が存在しています。
クロロフィルはとても不安定で、光照射で発生する活性酸素による分解や、寒さによる変成、失活が起こりやすい物質です。
生育期は常に分解と生成が繰り返されることによって植物体内の色素濃度は一定を維持しているので、私たちはいつでも緑色の葉を見ることができています。
紅葉のしくみと条件
葉の色が落葉前に変化する現象は、葉に含まれる光合成色素がいくつかの要因で減少または生成されることによって見られる現象の1つです。
葉が紅葉(黄葉)するためには主に以下の4条件があります。
紅葉(黄葉)が進む要因
- 乾燥(葉から水分がなくなり葉の機能が低下する)
- 気温の低下(外気温が8度以下)
- 寒暖差(昼夜の気温差が大きいほどコウヨウが進む)
- 太陽光(秋以降は充分に光を当て、色素の分解と糖分の生成を促進、アントシアニン生成)
条件1:乾燥
モミジやカエデなど、紅葉の美しい代表的な樹種の葉には、常緑の葉と異なる特徴があります。
両方の葉をよく観察してみると、松の葉の表面は硬く厚みがあって艶がありますが、モミジやカエデなどの紅葉する樹種のほとんどの葉は比較的柔らかく、薄くて艶もありません。
落葉樹の葉の表面はこの厚みや表面を覆っている層があるお陰で乾燥に強く、強い日差しにも耐えることができます。
一方モミジやカエデの葉は乾燥しやすく、夏の日差しですぐ葉焼けを起こしたり、冬の外気にあたって乾燥しやすい性質があります。
秋、気温が低くなり空気が乾燥しはじめると、葉の水分が奪われると共に働きが弱まり、葉の大部分を占めていたクロロフィルの分解や変成が進んでいきます。
条件2:気温の低下
乾燥に加え、気温の低下も紅葉を進める大事な条件の1つです。
最低気温が8度を下回る頃になると紅葉が始まり、さらに気温が下がるにつれて進んでいくと言われています。
クロロフィルは非常に不安定な物質で、光による分解や寒さで変成を起こしてなくなっていきます。
すると次第に補助色素であるオレンジの色素(カロテン)や黄色い色素(キサントフィル類)が残り、葉が黄色く見えてきます。
イチョウやシャラ、シデ類などの葉が黄色くなるのはそのためです。
条件3:寒暖差
昼夜の気温差も紅葉を進める条件の1つです。
最低気温が8度を下回るようになる11月頃は、天気のいい昼間は気温が15度以上になります。
年間の気温のグラフ(東京都):
time-j.net気温と雨量の統計データの一部を元に作成
紅葉を進めるためには、昼間はよく陽のあたる場所でたっぷり光合成をさせ、夜は寒さに当てる必要があります。
晩秋の展示に合せて綺麗に紅葉した樹を飾りたいときは、日中は日陰におき、夜間は室内に取り込むなどして寒暖差を抑え、紅葉の進行を人工的に調整する方法も効果的です。
紅葉する葉は乾燥しやすく痛みやすいので、夏は葉焼け対策も重要ですが、秋以降は葉が乾燥しすぎないように外の乾燥した風に当てないなどの対策をしてください。
強い紫外線や乾燥、病害虫などで葉を傷めないように注意することで、より綺麗な色付きを楽しむことが出来ます。
条件4:太陽光
光に当たらない部分は紅葉しにくい
クロロフィルは光に当たると、光合成により糖を生成する過程で分解されていきます。
多くの植物は、秋になるとより多くの養分(糖分)を体内に蓄積して越冬に備える必要があるので、秋以降はしっかり太陽光に当て、光合成させてください。
寒さへの耐性は、植物体内に蓄積される糖分ととても深い関係があり、耐寒性の強い樹種ほどより多くの糖を体内にため込む事ができます。
光合成によって得られる糖は、越冬のためノエネルギーに使われるためだけではなく、紅葉にも関係しています。
モミジやカエデ、ニシキギなどの葉が紅くなるのは、紅色色素のアントシアニンによるものですが、アントシアニンは光合成で生産された糖から作られます。
普通、光合成で作られた養分は葉から植物全体へ運搬されますが、落葉樹は秋になると葉を落とす準備をするために葉柄の付け根にコルク質の離層を作るので養分の流れは葉で遮断されます。
なので、糖分は葉に留まり、多くのアントシアニンが生成されていきます。
黄色から紅色へと変化するものは、クロロフィルが分解されたあとに残ったカロテノイドの量よりも、糖から生成されるアントシアニンが増えていく過程を見ているのです。
ちなみに紅い色素のアントシアニンは老化防止や長寿の物質と言われ、化粧品などにも使われますが、紅葉する樹種としない落葉樹では、紅葉する樹種のほうが葉を付けている期間が長いそうです。
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