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残された盆栽、どうしますか?

更新日:2018/09/30

残された盆栽、どうしますか?

ある日、問い合わせページから「盆栽を引き取ってもらえないか」というメールが届きました。

盆栽愛好家だった父親が亡くなり、庭に残された沢山の盆栽をどうしたらいいか困っているという相談です。

家族を亡くした悲しみも束の間、突然任された盆栽の世話。自分で育てるべきか、引取先を探すべきか刻々と選択が迫られます。

昭和初期は盆栽最盛期。当時は皐月(サツキ)を含め大きな盆栽を熱心にやっていた人がたくさんいて、後始末に関する遺族からの相談件数は年々増えています。

盆栽界での社会問題となっているこの相談について、相談者の承諾を得て少しだけ詳しく紹介することにしました。

1. 盆栽は天下の回り物

こちらのお宅には持ち込みのいい松柏類やサツキが沢山ありました

小さくても上手く育てれば人間よりも長生きする盆栽は、時にはその姿形を変えながら一代目、二代目、三代目...と持ち主が代わっていくものです。

鉢も同じで、銘品は人から人へと渡り、時には海外の愛好家の元へ届くことも。

古色を増す程に価値があるとされる盆栽は骨董品と同じで、長い年月をかけて大切に管理されていきます。

2. 盆栽が「廃棄物扱い」に?処分にお金が掛かるケースも

盆栽はゴミに出せない

枯死した盆栽をやむを得ず処分することになった場合、一般ゴミとして処理していいのでしょうか。

答えは「ダメ」。大抵の自治体では、盆栽を植えている大量の土は処理上の問題から「廃棄物」として扱われ、回収してもらえないケースが多いのです。

樹本体も大きなものは一般ゴミとして出すことはできませんが、庭木の剪定枝と同じ扱いで、短く切って紐でくくれば無料で回収してくれる自治体もあるので事前の確認が必要になります。

土については、引き取ってくれる販売店もありますが、レシート持参の必要や回収できる量に限りがある場合も。

専門の処理業者に処分を依頼する方法もありますが、有料でのサービスなので注意が必要です。

少しずつなら燃える?愛好家は実際どうしているのか

盆栽を育てる過程でも、植え替え時期には結構な量の古土がでます。

愛好家に実際の話を聞いてみると、「少しずつ燃えるゴミに混ぜて出している」のが現実のところのようです。

ですが少しずつでも本当はいけないこと。出来るだけゴミを減らす努力として再利用も考えてみてください。

古土の再利用

川砂の再利用

粒の硬い川砂は洗って再利用

広い庭がある家では敷地内に埋めたり、2~3日天日干しして殺菌消毒したものを腐葉土と混ぜ、畑や花壇、プランター植物の土として再利用することができます。

川砂など硬いものは基本再利用が可能なので、できるだけ捨てずに洗って保管しておいてください。

盆栽用土に使うことはなくても、鉢底石や小さい盆栽用の「サンドベット」の材料になります。

枯れた盆栽の再利用

枯れた樹もゴミに出さずに燃やして灰にしたものを盆栽や庭木の側に播き、酸性化した土を中和する「くん灰」代わりとして再利用することができます。

ゴミに出すのではなく自然に還すことで、枯れた樹の供養にもなるという考え方。

ただ、個人宅でゴミや木材を燃やすのは法律で禁止されていて、発生する煙やガスは近所迷惑やトラブルの原因になるので現実は難しいようです。

最近は郊外を中心に家の中に暖炉を置く家庭が増えていて、薪を購入している人もいます。大量に枯れ木を処分する場合は、迷惑にならない範囲で心当たりに声をかけてみるものいいかもしれません。

3. 盆栽界の「土払い」って何?

一般に「土払い(つちはらい)」とは、牛車の簾の下にかける布帛(ふはく)と呼ばれる織物のことで、泥よけのために付けられているものです。

盆栽界での土払いは「どばらい」と読み、元の所有者から手放された盆栽や鉢など全ての品物の売買のことをいいます。

売買の理由は所有者の死去の他、病気や経済的な事情で盆栽を続けることができないなど。

出される品は「土払いの品」として愛好会の仲間や親しい知人などの間で売買や譲渡が行われ、新しい愛培者に引き受けられます。

泥だらけで汚い鉢でも、意外と価値のあるものであったり、培養にはちょうどいいものだったりします。

遺族の課題:土払いに備えておくこと

特に生きた盆栽に関しては、時期が遅くなるほど状態が悪くなるため早めに手放さざるを得ないのが現実。

もしもの時に途方に暮れないように、生前のうちに盆栽の始末のつけ所を話し合っておくことが大切です。

生前のうちに話合いができなくても、故人が所属していた愛好会や、親しい盆栽仲間の連絡先などを家族で把握しておくといいでしょう。

また、法要で忙しくしている間でも、せめて水やりだけは出来るようになっておきたいもの。施肥や剪定など難しいことはできなくても、水さえ切らさなければ枯れることだけは免れます。

4. 盆栽をどうするか?3つの選択肢

選択肢1:自分で育てる

植物が好きな人は、自分で育てる選択肢があります。

難しい手入れの技術は分からなくても、水やりや肥料くらいならできるはずです。

故人の大事にしてきた盆栽の世話を引き受けることで供養にもなり、自分の心を癒やす効果もあるのではないでしょうか。

ただ、鉢のままではいずれ植え替えも必要になりますし、専門的な手入れなしでは見た目や樹勢の維持が難しくなります。

新しい趣味として盆栽を学ぶもよし。それが出来なければ、庭に地植えして庭木としての新しい人生を歩ませるのも1つの考えです。

水や肥料が安定して供給されていた盆栽時代より環境は悪くなるかもしれませんが、松柏類や雑木はよく根付いてあっという間に大きくなります。

折角作った盆栽、少しもったいない気もしますが、時々眺めて故人を偲ぶ良い機会にもなるのではと思います。

選択肢2:売る

オークションに出品する

ヤフオクに盆栽を出品する

YAHOO!JAPANのオークションサービス「ヤフオク!」は盆栽の出品数も多く、初心者から経験者も利用しています。

完成樹はもちろん、苗木、草、道具類までいろんなものに買い手がつくので、予想以上の値段で売れる可能性もあります。

ただ、落札があるまでは自宅で管理しなければいけませんし、時間が経つほど状態が悪くなっていつまでも買い手が付かないことも。

掲載のための写真撮影や入札・落札者への対応、梱包や発送の手間を考えると、時間に余裕のある人でないと難しいかもしれません。

盆栽園に買い取ってもらう

故人の通っている盆栽園や盆栽業者があれば買い取りの相談をしてみましょう。買い取りを積極的に行っている盆栽園もあるので、探して問い合わせてみてもいいでしょう。

故人が名のある愛好家や収集家であったなら、驚くほどの値がつく樹や鉢、道具があるかもしれません。

ですが、普通の趣味者ならば情勢は厳しいかも。盆栽にも流行のサイズや作りがあるので、その市場価値には変動があります。

売れるものならば値は付きますが、大盆栽や完成品は買い手が付きにくく、買い取りを断られるケースもあります。

故人が長年大事に育ててきたものだから、それなりの価値があるだろうと思っていても現実は厳しいもの。

盆栽園なら管理培養は間違いないはずですから、「無料引き取りなら良い方」と考えて託すのも、1つの解決への道です。

交換会に出す

あまり知られていませんが、盆栽の交換会が盆栽協会や愛好会の中で定期的に催されています。

盆栽の「交換会」というのは、ブツブツ交換ではなく競りのこと。

会員になっている趣味者や業者が荷(盆栽や鉢、飾り道具など)を出し、買いたい人が発句人に向かって値段を言います。

参加者は一般の趣味者だけでなく盆栽業者もいますから、価値の分かるひとに値踏みしてもらえるメリットもあります。

一般の人も参加可能なので、事前に連絡しておけば荷を出すことも可能です。

ただし買い手が付かなければ持ち帰ることになってしまいますし、売り上げの一部は手数料として協会に支払う必要があるので注意してください。

上記を踏まえ、運搬などが苦でなければ利用してもいいでしょう。

買い取り業者に買い取ってもらう

いわゆる便利屋さんに買い取りを依頼する方法ですが、正直こちらはお勧めしません。

盆栽に関する知識のない業者にとって、盆栽は「処分の対象」に過ぎず、買い取りどころか逆に処分料を求められることがあります。

場所の確保や水やりが必要な盆栽は、在庫としていつまでも残しておく訳にはいきません。

生きていても廃棄物として処理されてしまうので、遺族としては悲しい結果に。

どこかに転売されたとしても、まったく分からない所に引き受けられるのは気持ちのいいものではないはずです。

選択肢3:譲渡する

愛好会に譲る

毎月届いている冊子や雑誌等があれば愛好会や協会から届いているかも

もし故人が所属していた愛好会や盆栽協会があるなら、そこに連絡をして土払い品の引き取り相談をしてみてください。

ほとんどの場合無償で譲る形になると思いますが、知り合いの人に貰われる安心感があります。

盆栽のほか、鉢や道具、土、肥料、盆栽関連の雑誌なども引き受けてくれるかもしれないので聞いてみましょう。

ものによっては買い手も付くかもしれません。

友人、知人に譲る

引き取った盆栽の手入れ

引き取った盆栽の植え替え。葉色も冴えず、長年植え替えされていなかったのが分かる。

最近は盆栽を趣味にする若い人も増えているので、意外と盆栽をやっている人が周りにいるかもしれません。

故人が愛好会に所属していなかったり、所属していたかどうかも分からない場合は知り合いに聞いてみてもいいかもしれません。

まったくの素人では不安ですが、ある程度理解のある人なら大事に育ててくれるはずです。

わたしの棚にも相談者から引き受けた樹が何本かあり、大切に育てています。

5. 後悔しない選択を!

故人の残した盆栽をどうするかは、遺族のみなさんの考え方次第です。

自分で育てるのもいいし、売るものいいし、譲渡や寄付という道もあります。

ただし、買い取りの場合はタイミングや時間との戦いでもあるので、なかなか思うようにはいかないことが多いのです。

大事なことは、自分が納得できる選択をすること。

どうしたら故人が喜ぶかを考えれば、後悔しない道が見えてくるはずです。

後悔しない選択を

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世田谷のバルコニーで盆栽を始め、現在は盆栽のための広い土地を求め都外へ移住計画中。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

動物好き。初代愛猫の名前は『アロ』。現在は雄のアビシニアンを飼っています。

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