
キミのミニ盆栽びより > 基礎知識 > 盆栽樹種の分類 > 松柏類の仲間 > 杉(スギ)の魅力
更新日2018年05月24日
杉はヒノキ科スギ属の常緑針葉高木で、日本各地の山地や沢筋などに多く自生している日本固有種です。
古くから植林されている日本人には馴染み深い樹で、人工林面積は日本最大。
盆栽では葉が細かく大きくならない八房性の杉が定番で、細かい原始的な葉と古木感が早く現れる幹は、盆栽に仕立てるとひときわ自然の縮尺を感じさせます。
杉は日本各地に自生栽培されていますが変種も多く、一般に山杉と呼ばれるものも産地により天竜杉、吉野杉、山武杉、屋久島杉などと呼ばれる地域品種です。
庭木にされる園芸品種には細い枝が紐状に垂れ、生け花の素材にも使われる「猿猴杉(エンコウスギ)」や、分岐しやすく自然に球状になる「玉杉(タマスギ)」などがあります。
全国に植林されている杉と盆栽に作られる杉は違うもので、スギ花粉症で嫌われる樹ですが、芽摘みを繰り返す盆栽では花が咲くことはほとんどありません。
伸ばし気味にする苗木の間は時々花芽が付くので、開花する前にピンセット等で取り去っておいてください。
盆栽では芽吹きが旺盛で小型なまま成熟する矮性や八房性の品種が向いていて、サワラの園芸品種「檜榁杉(ヒムロスギ)」や、本州以南の太平洋側に自生する「表杉(オモテスギ)」の他、「八房杉」と言われる矮性の杉が好まれます。
また、同じ八房杉でも盆栽園や業者によって葉性が異なり、ヒノキ科特有の変種の多さが伺えます。
杉は挿木が簡単で、流通している苗や素材のほとんどが挿木や取木で作られています。
深根性が強いため植林には向きますが、直根や片根を嫌う盆栽では、細根が多く出やすい挿木苗の方が都合がいいのです。
芯の立った枝を挿さないと幹が曲がりやすいので、苗の時から直立するものを選んで挿してください。
直立性の樹なので樹形は限られますが、芽摘みと枝の切り込みだけで古木感溢れる盆栽に仕立てられるのが魅力。
まっすぐ立つ直幹が代表的ですが、これを応用した斜幹、双幹、三幹、株立ち、寄せ植えなどを浅鉢に植え付けたり、根洗いなどに仕立てるのも合います。
杉の根は幹同様にまっすぐ伸びる直根性ですが、自然界では体を支えるために横によく分岐し最終的には浅く広がるようになります。
若木のうちは片根であったり直根が出やすいので、最初は深めの鉢で培養しながら樹作りをし、徐々に根を整理して浅鉢にしていきます。
下枝が弱りやすいので、下枝に力を付けさせるように芽摘みや剪定を行い、頂部に向かって鋭角な不等変三角形になるように作ると杉らしい樹形になります。
芽吹きが旺盛なので、こまめに芽摘みや枝抜きをして樹形を維持して下さい。
丈夫で病気や害虫はほとんと発生しませんが、風通しが悪かったり樹勢が弱っているものはハダニが付いたり、すす病や赤枯れ病などが発生することがあります。
芽吹きが旺盛でフトコロに多くの不定芽が生じますが、これを放っておくと内部が蒸れて枝枯れや害虫の温床にもなります。間引き剪定や秋の葉すかしで風通しよくするのも大事なことです。
他の盆栽と同様に、生育期や休眠期に定期的に薬剤を散布したり、葉水をしたりして病害虫の被害が出ないように予防してください。
杉は幼木のうちは日陰がよく、大きくなるにつれ日当たりを好みます。盆栽としては日当たりでも日陰でも育つので置き場所は拘りませんが、小さい樹は夏の強い日差しや冬の乾……
都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。
アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。
現在、盆栽世界にて「キミのMonthlyお手入れ講座」連載中です。
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