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皐月(サツキ)の魅力

更新日:2019/06/07

皐月(サツキ)の魅力

皐月(サツキ)はツツジ科ツツジ属の半常緑低木。

もともとは日本固有種のRhododendron indicumを指しますが、その近縁種や園芸品種を総称して皐月と呼び、皐月躑躅(サツキツツジ)や山石榴(サンセキリュウ)などの別称があります。

同じツツジ属の躑躅(ツツジ)とは開花期の違いから園芸的に区別されていて、5月~7月頃(陰歴の皐月)に一斉に咲くことからその名で呼ばれるようになりました。

江戸時代からすでに親しまれていて、昭和40年頃からの皐月ブームには多くの愛好家が好んで栽培し、これまで数多くの品種が作出されています。

幹が太りやすく枝も細かく吹くので、花だけでなく樹形の作り込みも楽しめる花物盆栽でも格別の存在。一樹種で「皐月盆栽」という1つのジャンルを作る程の魅力があります。

皐月の特徴

皐月と躑躅、石楠花(シャクナゲ)などは同じツツジ属の仲間で、日本ではこれらを分けて呼ぶ習慣がありますが学術的な区別ではなく、あくまでも園芸上の呼称。

他の多くのツツジ属は4月頃に新葉が展開するのに先立って開花するのに対して、皐月は新葉が開いてから5月~7月頃に開花するのが特徴です。

皐月はツツジ類としては葉が小さめで硬く、花弁は普通5中裂の漏斗型。

本来はあまり高く伸びずに株立ち状になりやすく、這い性の性質が強いものが多くあります。

また加湿を嫌う躑躅(ツツジ)とは対照的に、皐月の根は水に強い性質を持ちます。

皐月の自生地

皐月躑躅(サツキツツジ)とも言われる原種に近い皐月の仲間は、関東以西から近畿地方、九州の渓流沿いに多く自生していて、増水すれば濁流に流されるような渓谷や岩場に根を張り、這うような低い姿勢で生育している姿を見ることができます。

高山や火山帯などの酸性の痩せた土壌や岩場に自生するものもあり、厳しい環境の中で可憐に咲く姿は盆樹としての素質を備えた樹種といえるでしょう。

たくさんの品種があり、山野や林縁のほか、庭園の植え込みや庭木、緑道沿いなどにも植樹される身近な樹となっています。

盆栽界での皐月の位置づけ

皐月と躑躅の呼び名は花期の違いによる園芸上の呼称ですが、花期が同じで見た目も皐月に似ていても、「餅躑躅(モチツツジ)」や「山躑躅(ヤマツツジ)」など和名に○○躑躅と付く品種も多く、皐月と躑躅の区別には曖昧な所があります。

植物学上は皐月も躑躅の仲間ですが、盆栽界の「皐月」は特別な位置づけで、根強い皐月愛好者の多さからも伺えます。

今や数え切れない程の品種は、業者よりも愛好家によって作出されたものがほとんどで、皐月は盆栽愛好者によってその価値が見出されたものかもしれません。

豊富な品種と園芸種

皐月は品格のある漏斗形の花や多彩な花芸が人気でたくさんの品種があり、亜種や変種、枝変わり品種のほか、愛好家から作出された新品種が盛んに作出されてきました。

花後に結実しやすいため実生による自然発生種や品種改良も盛んで、その数は現在2000種を超えています。

いろんな皐月の花

花色は赤や紫、白色無地の他、底白、覆輪、多彩な絞り柄などいろいろな花が咲く品種があり、1つの枝でそれらが咲き分けたりと花芸が豊富。

代表的なものには、「大盃(オオサカズキ)」、大盃の枝変わり品種「鹿山(カザン)」「珍山(チンザン)」、暁光 (ぎょうこう)と 松波(まつなみ)の掛け合わせ「煌(キラメキ)」、松波(まつなみ)と玉織姫(たまおりひめ)の掛け合わせ「好月(コウゲツ)」、紫龍の誉 (しりゅうのほまれ)と鶴翁 (かくおう)の掛け合わせ「星の輝き」など。系統不明な古花の「晃山(コウザン)」やその枝変わり品種の「日光(ニッコウ)」なども。

深山霧島(ミヤマキリシマ)は、九州の九重山、阿蘇山、雲仙山、霧島山など風の強い火山性土壌に群生している種で、亜種や変種も多く、主に実生や挿木による繁殖がなされています。

皐月盆栽の歴史

江戸時代から好まれた皐月

皐月は江戸時代から好んで栽培されていて、園芸品種も盛んに作られていましたが、皐月を鉢で育てるのは困難と言われていました。

そのため当時の皐月は盆栽としてではなく、庭木の植え込みに使われるくらいで剪定整枝もされない暴れた樹形のままの苗が流通していたようです。

昔からある古花は現在の園芸品種の元ともなっていて、「大盃(オオサカズキ)」や「貴公子(キコウシ)」「金采(キンサイ)」「紅牡丹(ベニボタン)」「博多白(ハカタジロ)」などがあります。

皐月の花

皐月の花:大盃(左)と金采(右)

皐月の一大ブーム到来

昔から親しまれていた皐月ですが、盆栽としての人気は高度経済成長の頃から。

それまで皐月は鉢での保ち込みが難しいと言われていましたが、昭和になって一般に流通した鹿沼土が皐月栽培に最適であることが分ると、盆栽作りが一気に広まりました。

その後、培養方法の研究進み、針金整枝の技術によって盆樹としての評価が高まり、昭和44~47年(1969~1972年)には空前の大ブームに。

当時登録された品種には大輪から中輪のものが多く、代表的なものには「浮雲の月(ウキグモノツキ)」 「光琳(コウリン)」「寿姫(コトブキヒメ)」などがあります。

昭和48年には年間の生産量300万本にも達するほどで、多くの愛好家が夢中になって栽培、改良を重ね、新種のいい苗がでれば細い苗木でも驚く程の高値で取引されたと聞きます。

ですがその人気も長くは続きません。

昭和48年のオイルショックで日本の高度成長期が終わりを告げると、日本経済の混乱と共に皐月の生産量も停滞し、皐月ブームは去ってしまいます。

世田谷さつき愛好会の展示会(世田谷妙法寺:2017年)

世田谷さつき愛好会の展示会(世田谷妙法寺)

皐月の現在

昭和48年以降から衰えを見せた皐月ブームですが、豊富な花芸や盆栽作りのしやすさは花物盆栽の中でも格別。

挿木や実生での繁殖が簡単で、新種も発現しやすいため今も多くの新花が生まれ、絞りやぼかし、斑、飛び入りなど数え切れない花型にもバリエーションがある皐月は、今も多くの愛好家を惹き付けています。

盆栽界では花の大きい品種が流行ったり、小輪種が注目される時代があったりと時代により流行がありますが、原種に近いほど花は小ぶりで形もよく変わらぬ人気。

当時は中品~大物サイズで枝棚毎に見事に咲き分けた模様木に作り込まれたものが多い印象ですが、斜幹や懸崖風の軽い樹形に数輪の花を付けたミニ盆栽仕立てもいいものです。

皐月のミニ盆栽

花が咲きにくい品種は葉の小ささや、樹姿を楽しむ

また「早乙女(サオトメ)」や「早乙女小町(サオトメコマチ)」などと言われる早乙女系(小葉性)の皐月は花は咲きにくいものの、幹肌や細かい枝葉だけでも見応えがあり、葉姿や紅葉を観たりいろいろな楽しみ方で愛されています。

皐月の樹形

皐月は幹が太りやすい性質で、剪定に強く、枝も細かく出るのでいろいろな樹形に作り込むことができます。

直幹や模様木、懸崖の他、挿木したものを寄せ植えにして叢生樹形を目指したり、根の曲を活かして根上がりや石付きにしてもいいです。

ミニサイズの盆栽なら優しい幹流れに1~2輪の花で見るのも良。小さくとも取木で太幹の模様木風に仕立てることもできます。

皐月の病害虫

葉に付くグンバイムシ

グンバイムシ(周りの黒い点は排泄物)

皐月は他の樹種に比べても特に病害虫が発生しやすく、特にグンバイムシの被害が深刻になります。他にも葉ダニ、アブラムシ、スリップスによる食害やその二次被害(ウィルス性の病気)も多発します。

一旦被害にあうと葉や花が汚くなって観賞価値を著しく下げてしまうので、生育期間中は毎月の薬剤散布による防除が必須です。

有効な薬剤にはアグロスリン乳剤やディプテレックス乳剤、浸透性のオルトラン水和剤など。スミチオンやマラソンの多用や高濃度散布は葉が縮れる原因になることがあるので注意してください。

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都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

動植物好きの猫飼いです。歴代猫は『アロ』『アズロ』。現在は雄のアビシニアンと一緒です。

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