盆栽樹形の種類
更新日:2019/02/11
第14回きらく会展示より(東京)
盆栽には基本の樹形がいくつかあります。
それらは全て自然の樹の姿から習って作られるもので、長い年月をかけて出来た造形美を盆栽に映そうとするもの。
剪定や針金整枝によって好きな樹形に作ることはいくらでも出来ますが、そこに自然が感じられなければ盆栽とは言えません。
逆に自然の姿を想像できるようになれば、観賞するときの楽しさも増し、自分のセンスが活きた盆栽作りも出来るようになります。
C o n t e n t s
盆栽樹形の考え方
その樹らしく作るのが大切
直立性の杉を無理に曲げたり、屈曲が魅力の樹を一直線に作ろうとしても、不自然な作品になってしまうだけではなく植物の生育を悪くしてしまうことになります。
杉は杉らしく、松は松らしく作るのが一番です。
樹作りの基本は、決めた樹形に樹を当てはめるのではなく、先ず樹をよく観察して適した樹形を決めること。
それぞれの樹の性質を理解しておくのはもちろんですが、苗木や若木を入手したときには、その樹の個性を活かした無理のない樹形作りをしてください。
樹形は「風」で決める?
杉のように立ち上がりからてっぺんまでがまっすぐに立っているものを直幹(※1)といいますが、これは無風の状態で育った樹を表現したものと思ってください。
そこに一方向から風が吹くと、幹が傾き斜幹(※2)となります。
さらに風が吹きあれる高山や海岸沿いに生えている植物は、極端に斜めに傾いた吹き流し(※7)。断崖の縁では今にも底に落ちそうな懸崖(※12)の樹が幹ごと枝を垂れています。
このように樹形は、風向きや地形などの自然環境の中で生きている老樹の姿が現れていて、盆栽樹形の基本がそこにあります。
盆栽展などで作品を観賞する時も、それぞれがどの樹形に当たるのか考えながら観賞すると見る目も変わり楽しみが増します。
樹形のいろいろと代表的な樹種
1.直幹【ちょっかん】
立ち上がりから梢までがまっすぐに伸び、広々とした山野にしっかりと根を張ってそそり立つ姿を現したもので、盆栽の基本的な樹形です。
幹はまっすぐ空に向かって立ち、枝は前後左右にバランス良く配置されています。
直幹の豪壮さを引き立てるために、鉢は長方形や楕円形の鉢が似合います。
どっしりとした黒松などは深さのある鉢で重量感を、杉のような根の浅いものは浅く広い鉢が雰囲気がよくなります。
2.斜幹【しゃかん】
樹木が倒れかかって生えている姿を現した樹形。
強風に煽られて幹が斜めに傾き、今にも倒れそうな姿は厳しい環境で生きる老樹の趣を感じさせます。
直立性の杉や檜の他、松柏類や花物、実物などほとんどの樹種は斜幹にできます。
今にも倒れそうな姿を出しながら、枝や根張りなどでバランスを取り不安定さを出さないようにするのがポイント。
枝の配置は、幹の倒れている方に枝を長く伸ばすと一層倒れそうな印象に。幹の倒れている反対側に長い枝を配置すると安定感がとれます。
植え付ける位置も傾いている方に余裕を取るなどの工夫をします。
3.模様木【もようぎ】
幹に曲がりを持ちながら立つ植物の姿を現し、直幹に比べ荘厳でどっしりした印象。
曲がり具合に大小はありますが、直幹性の植物を除いて自然環境の中で生えている木のほとんどが最終的にはこのような樹形になります。
他の樹形にも言えることですが、枝の配置は曲がっている外側の幹から枝を出すと自然。
幹模様は正面から見えるように、枝は幹が見え隠れするように配置するとよく、梢にいくに従って正面へ前傾しているようにすると力強く迫ってくる感じになります。
この樹形は、針金かけや剪定によって作ることになります。枝や幹肌を傷つけないように和紙やゴムなどをかませて曲げ、自然で柔らかい線を出すようにしましょう。
4.文人木【ぶんじんぎ】
文人好みの木というのが名前の元で、水墨画などに描かれている姿を連想させます。
なんとなく侘しさも漂う華奢で軽妙な作りが洒落た樹形。
比較的細い幹が適度な曲がりを持ちながらヒョウヒョウと伸び、枝数を極端に少なくすることで、朽ち果てていく古木の感じを表現しています。
下枝はほとんど付けず、上部の枝も下げて調和を取ります。
鉢は、樹高の割に浅くて小さめの楕円や四角のものを使うと似合います。
5.双幹【そうかん】、双樹【そうじゅ】
双幹は1本の植物の下枝や根が発達して、2本の幹が立っている姿です。
主幹は太くて高いことが条件で、2本の幹の高低には調和がとれていないといけません。
また見た目は双幹に似ていますが、種類の異なる樹種を2本寄せて植えたものを「双樹(そうじゅ)」といいます。
双幹は1本の木の枝分かれで2本の幹が立つのに対して、双樹の場合は樹勢や幹質、樹種など性質の似た樹を選んで仕立てます。
双幹も双樹も、幹が離れていたり向きがバラバラだと別々に生育している印象に。
寄り添い、長短と強弱が調和した姿に仕立てることが大切です。
双樹に向く植物:楓と紅葉、長寿梅と五葉松、柿と檜など
6.寄せ植え【よせうえ】
森や林の様子を現したものです。
同じ種類の植物を植えるたのと、違う植物を植えたものとがあります。
寄せ植えの場合、数えられるくらいならば奇数の数の樹を使うことが習慣になっています。
3・5・7という風に10本く以内ならば奇数の株になりますが、それ以上になるならばあまり気にしなくていいでしょう。
樹の配置は主木となる樹はを左右どちらかに寄せ、それに寄り添うように周りの樹をおきます。枝同士が込みやすいので、全体をみて必要な枝を残します。
寄せ植えは全体の樹の配置だけでなく、枝の配置や奥行きまで感じられるように作る必要があるので、難しい樹形の1つです。
使う樹は同じ樹種ならば問題ありませんが、違うものならば樹勢の近いもの選び、全体の強弱や調和を忘れないようにしてください。
7.吹き流し【ふきながし】
幹や枝が一方向にだけ傾いて風になびいているような姿です。
風の強い海岸に生えている植物はこのような姿になります。
盆栽として仕立てるには片枝の苗を選んで寄せ植えにします。
その場合も長短や強弱で全体の調和を図り、枝は文人作りのようにあまり付けないようにするのがポイントです。
8.根連なり【ねづらなり】
姿は寄せ植えに似ていますが、1株の植物でそれぞれの幹の根が繋がっているものをいいます。
本来1本の植物ですので、幹肌や葉性なども揃っています。
使用する樹種は、根からもよく芽を出してヒコバエもよく出やすい性質の木です。
作り方は、ヒコバエを適当なところまで地表に沿わせ、そこから幹を立てる方法や、太枝を縦に割りねかせて発根させる方法など。
五葉松でもこのような手法で作られたものが見られます。
発根しやすい物では、幹の所々に傷をつけて発根させると、より自然です。
9.筏吹き【いかだぶき】
根張りが発達して根が一枚板のように癒合し、数本の幹を支えている姿をいいます。
亀の甲羅のように見えることから「甲羅吹き」と呼ばれることもあります。
作り方は片枝の植物を伏せて幹を根張りに仕立てたり、取木して根元を太らせる方法などがあります。
基本的には生育の早い雑木類が適しますが、時間をかけて仕立てるならば寄せ植えでも作ることができます。
10.株立ち【かぶだち】
1株から多数の幹が立ち、地際から分かれている姿です。
ヒコバエの出やすい性質の植物を使う場合と、高木性の植物を取り木して仕立てることができます。
多数の幹の中でも、最も太くて高いものを芯とし、他の幹は主幹より高くならないようにします。
交差したり重ならないようにすることも大切で、全体の調和も乱さないように作られます。
11.蟠幹【ばんかん】
蛇がトグロを捲いたように立ち上がりの部分が太くできていて、幹の部分はそれほど太くないものを言います。
自然界では薪用に切られた切り株から芽吹いたものが成長して幹になり、切り株の部分だけが太く残った状態のものを見ることができます。
根元が塊のように見えることから『たにし』とも呼ばれます。
蟠幹に仕立てる場合は長く伸びている苗の根元に近い部分を1~2回巻いたり、結んだりして低くします。幹が複雑に巻かれたものは、タコの足になぞらえて「タコ作り」と言われ、やがて幹同士が癒着して1つの塊になります。
蟠幹は立ち上がりの部分が強いので、根元が細くならないように一曲目を地際まで下ろして太さを補ったり、根張りを十分に露出させるようにすると調和がとれます。
12.懸崖【けんがい】、半懸崖【はんけんがい】
岩山の崖や浜辺の断崖から乗り出すように枝を垂らしている植物に見られる姿です。
植物の梢の部分が鉢縁(根元)より低い位置にあるものを「懸崖」、梢がそれほど下がっていない位置にあれば「半懸崖」と言います。
鉢から外に幹が大きく垂れ下がっているので、バランスを取るため深めの鉢に植え、高飾などに配置して観賞します。
懸崖作りの枝は弱々しくただ垂れ下がっているのではなく、枝の先にまで生気が溢れていないといけません。
また、バランスの取りにくい樹形であるため、樹種の選択や倒れている反対側の根張りを強くするなどに配慮する必要があります。
13.石付き【いしつき】
岩山や島などに生育している景色を表そうとした樹形です。
岩の間に根を這わせながら垂れ下がり、根が鉢土に達しているものを「石付き」、根が鉢土に達していないものを「石上樹」と呼びますが、総じて「石付き」と呼ぶことが多いです。
これらの樹形では植物の姿だけはなく、石やその上を這っている根に観賞点があります。
人工的でない適した石の選択はもちろん、水分を吸い上げられる通路の確保など、植物の生育を維持するための仕立てが重要です。
14.根上がり【ねあがり】
根の部分が露出し幹の様に立ち上がる姿。
自然界では巨木の根元の土が雨風で浸食され、根だけむき出しになった状態で上部を支えて立っている姿を見ることができます。
長い年月で露出した根は老樹の趣で、盆栽に作る場合でも徐々に表土を払って根を出す時間のかかる樹形と言えます。
一番の観賞点ははやはり根の部分ですが、幹模様や梢にかけての枝の配置も重要で、全体的な強さのバランスを取ることが大切です。
15.箒作り【ほうきづくり】
平野部に生育する欅の姿から習った典型的な樹形です。
1本の芯から枝分れする「芯立ち」と、幹が2叉に分れてそこから枝分れする「芯なし」があります。
まっすぐに伸びた幹から、逆さにした箒のように枝が広がった姿は、寒樹の頃が一番の観賞時期。
根が浅いので薄い長方鉢や楕円鉢に植えると良く、左右どちらかに寄せて余裕も持たせると平野に立つ欅の姿を思わせます。
先に行くほど細かくほぐれた小枝は鋏作りによるもので、手間と技術が要るため銘木は溜息がでる美しさです。
コメント
- kita さん 2019年05月07日22時55分
- 盆栽の流れに付いて教えてください。
右流れ・左流れの見分け方がもうひとつ分かりません。幹・頭部・第一枝の位置などを如何見て、この盆栽は○○流れと決めるのでしょうか出来るだけ細かく教えて頂きたいです。よろしくお願いします。 - きみ さん 2019年05月08日13時34分
- kita さんへ
決めるというか、そう見えるといいますか
まず正面というものがあるので、どこから見たら一番綺麗に見えるか、かっこよいかという場所があるので
それを基準に考えてみてください。
実際に知りたいお手持ちの樹などあれば写真を載せてください。 - kita さん 2019年05月09日21時56分
- きみ さんへ
返信有難うご座いました。
盆栽に興味を持ち、購入の参考にと思いお尋ねした次第です。
家の庭で数鉢置いて一人楽しむのであれば、流れまで気にせずに楽しめば良いのでしょか?
また、違う質問がありましたら相談に乗って下さい。よろしくお願いします。 - きみ さん 2019年05月10日08時10分
- kita さんへ
始めたばかりなら、おっしゃる通りまずは楽しむことだと思います。
好きな樹種、ご自分が好みの姿でいいと思います。流れとか樹形は、飾ってそのよさが改めてわかるものですから、次の段階というか
段々と分かるようになる部分、知りたくなる部分なので急がず楽しんでください。 - むろひめ さん 2019年09月08日11時24分
- こんにちは、
カエデ盆栽の枝がだいぶ間伸びしました。
写真の位置で切り詰めたいと思います。
来春に新芽が出るでしょうか?
選定時期はいつがいいでしょうか? - きみ さん 2019年09月08日20時34分
- むろひめさんへ
だいぶ間延びしていますね、枝を太らせる目的ですか?
それならそのまま伸ばしてもいいし、切るにはすこし遅いですけど切ってもいいかなと。
今切ると、写真の芽は今年中に動き出しますね。 - むろひめ さん 2019年09月09日19時33分
- ご連絡ありがとうございます。
ただ単に剪定をし忘れていただけです。
剪定(切り詰め)の適切な時期は
休眠期になるでしょうか? - きみ さん 2019年09月11日20時32分
- むろひめ さんへ
お返事おそくなりすみません。
今切ってもいいですよ。枝数があるようですし、来年の芽数的にも影響ないと思います。 - 岡 捷代 さん 2020年06月14日14時55分
- 盆栽 「曲幹」の読み方を教えてください。
よろしくお願いいたします。
- きみ さん 2020年06月14日15時52分
- 岡 捷代 さんへ
「きょくみき」でいいと思います。