剪定の目的と効果

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剪定の目的や原理は芽摘みと似たところがあり、樹形作りの上でもこの2つは切り離せない関係にあります。

盆栽の剪定にはおおきく分けて、樹形を作るための剪定樹形維持のための剪定樹勢の調整、回復のための剪定の3つがあります。

樹形を維持するための剪定は、強い枝は強めに剪定し弱い枝は葉を出来るだけ多く残して、全体の枝の強弱を均等に保つことが大事です。

樹勢の調整、回復のための剪定は、生育上悪い枝を取り除いたり、間引き剪定によって各枝の日当たりと風通しを良くすることで樹全体の生育環境をよくする目的で行います。

剪定による効果は他にもいくつかあり、その目的によって時期や方法が異なります。

樹形を作るための剪定

樹形を作るための剪定は、まず樹形を決め、その樹形のために必要な枝を決め、いらない枝や美観上よくない枝を整理します。

樹形を決めるには、苗木の時代からその樹形を目指していくのと、ある程度姿ができたものにその木の特徴を活かして最もいい樹形に仕立てる2つの道筋があります。

苗木から作る場合は、まずは幹を太らせ、数年かけて枝数を増やしながら樹勢を付けてから樹形を整えて行きます。

盆栽の基本樹形はいくつか決まりがありますが、樹種や植物の特性によって適した樹形があります。その植物の特性を活かし、その植物らしく見えるような整枝を心がけてください。

教科書通りに枝を決めるのではなく、もともとあるその木の良さ(根張りや幹肌、曲の付き方)や性質を活かした樹形作りができるようになれば大したものです。

時には仕立て中に役枝が枯れてしまったり、考えが変わって樹形を変更したくなったり、大胆に改作したいと思う日が来るかもしれません。

将来ずっと同じ正面とは限らないので、時には見る角度を変てみることも考えてみてください。

不要枝、忌み枝の剪定

樹形作りの上で必要のない枝や、美観上好ましくない枝は基本的には早めに取り除きます。

剪定すべき枝をそのままにしていると全体の調和を乱し、剪定が遅くなるほど枝が太るので切り口が大きくなってよくありません。

まず不要な枝は、車枝、かんぬき枝のように付けたままにしていると枝の付け根が異様に太って美観を損ねる枝です。

込みすぎている枝も間引き剪定をして日当たりと風通しをよくする必要があります。

忌み枝の図

図:主な不要枝、忌み枝の種類

将来役枝として使う可能性がある胴吹き枝やふところ枝など、急いで取らなくてもいい枝もありますが、立ち枝や逆さ枝、幹切り枝など美観を損ねるような忌み枝は早めに剪定しておきましょう。

不要枝を整理することによって、全体の樹姿がスッキリ見え、樹形作りの構想を練りやすくなります。

徒長枝、ひこばえの剪定

チョウジュバイ

長寿梅のヒコバエを整理するところ

特に急いで取り除く枝は、徒長枝やヤゴ芽(ヒコバエ)です。

ヒコバエは伸びる力が強いので、これに力が集中して大事な枝が弱くなることがあります。

特にバラ等はヒコバエや胴吹き芽が出やすいので、早めに処理しておかないと残したい枝が枝枯れを起こしてしまいます。

また、枝になってからでは切り口から肉があがって、幹元が異常に膨れてしまうこともあるので芽のうちに取ってください。

ただし徒長枝や胴吹き芽は全て処理するばかりではなく、残して力を持たせたまま全体の樹勢を抑える目的で処理を遅らせることがあります。

胴吹き芽も、枝の欲しい位置から出たものは枝作りに使うことができますが、不要な部分の芽なら指で掻き取れるうちに取っておきましょう。

薔薇の他、梅擬や香丁木、長寿梅、ロウヤ柿などは萌芽力が強くヒコバエの出やすい樹種です。

枝数を増やす剪定

外芽残しの剪定

外芽残しの剪定

不要枝の剪定が終われば、今度は残した枝を充実させるための剪定が必要です。

剪定はただ不要な枝を切るだけでなく枝を切り詰めて腋芽を動かし、そこから枝数を増やす目的があります。

植物の潜伏芽は、今ある枝の葉の付け根の部分(葉の付いていた部分)にあります。

枝の上部に付いている芽は、下部の芽よりも強く伸びる性質(頂芽優性)があるので、強風や獣害による枝折れなどの事故が起こらないかぎり下部の芽は眠ったまま終わってしまいます。

そこで伸びる枝を切り詰めて腋芽の活動を促進することで、小枝を増やして各枝先を充実させることができます。

枝数を増やす剪定は、ただ要らない枝を切って終わるのではなく、残した枝のどの位置からどのように芽が伸びてくるかを予想できていないといけません。

残す枝の芽の位置や向きを見て、外芽残しの2~3芽の位置で剪定するようにしてください。

樹形維持のための剪定

樹形を維持する上で大事なのは、「強い枝を作らない」ということです。

そのために上部の枝の強い枝は短く切り詰め、下枝は力を付けるためにより多くの葉を残すように剪定する必要があります。

植物には枝が上へ上へと伸びる立性と、反対に下枝が強く伸びる這性の性質を持つものがあります。

立性の植物は梢の部分が特に強く、剪定をしないと次第に下枝が弱って樹全体の強弱のバランスが崩れ、盆栽としての観賞価値を落としてしまいます。

反対に這性の植物は下枝が強く伸び、上枝から弱って枯れてきてしまいます。

盆栽としての形を維持しながら各枝を弱らせないためには、強い部分の枝を強く切り、弱い部分の枝は長めに残して全体の力のバランスを平均化する剪定が必要です。

樹形維持の剪定の適期

一般に、基本樹形を維持するための剪定は秋から冬の間に行われます。

特に落葉樹は、落葉後に全体の姿がよく見えるので剪定がしやすい時期です。

生育期間中は基本樹形に沿って伸びる枝の剪定をして形を整えながら枝数を増やし、秋から冬の間にまた全体を整える剪定をします。

常緑樹では生長期の春から夏の間は枝がよく伸びるので、葉が込みすぎて日当たりや風通しが悪くなりやすく、芽摘みや間引き剪定をする必要があります。

ですがこの時期はまだ葉の組織が柔らかく、樹液も多いので、手入れの時に葉や幹を傷めてしまうことがあります。

常緑樹でも、葉が固まり樹液の流れも止まる秋に基本樹形を作る剪定をします。

樹勢の調整、回復のための剪定

強い枝と弱い枝の剪定

植物には頂芽優性の力が働いているので、上部の枝は上へ上へと真っ直ぐ伸びていきます。

一方下枝は栄養が届かなくなり、日照権や風通しの問題も加わって次第に弱り枯れていきます。

自然界ではこのような現象が普通に見られますが、盆栽では鑑賞上、下枝がとても重要な役割をしているので、下枝に力を付ける剪定をしないといけません。

全体を整える剪定では全部の枝を同じように切り詰めるのではなく、上部の強い枝は強めに切り、下部の弱い枝には出来るだけ葉を多く残して長めに整理することが基本です。

こうすることで各枝の力を均等に維持し、盆樹としての寿命を長く保つことができます。

通風と採光をよくする剪定

枝を空かして風通しや採光を良くし、各枝の力を調節する目的で行う剪定です。

剪定を繰り返していると当然枝が混み合ってきますが、混みすぎると次第に環境が悪化してしまいます。

枝が混みすぎていると風通しや光は入らなくなって、懐の小枝が枯れたり弱い枝ばかりが伸びることになります。

そこで間引き剪定をすることによって、混みすぎている枝をすかし各枝に均一に光や風が入るようにします。

間引き剪定は基本的に生育中に行いますが、植え替え前や冬の間に行うこともできます。

不要枝や忌み枝をまず最初に間引き、全体をみながら混んでいる枝を見つけて剪定してください。

その他の目的の剪定

不定芽を出させる剪定

ロウヤガキ

切り戻し剪定後に吹いてきた芽

秋~早春のうちに太枝や幹を強く切り戻しておくと、春先になって芽のない所からプツプツと芽が出てくることがあります。

葉がなくなると、植物は生きるために芽のない部分から新しく芽を作ろうとします。

これを不定芽といって、若木の時代に葉の付いていた部分が目覚めて芽を出してくるのです。

この性質を活かして、太幹で樹高を抑えた盆栽に改作することができます。

根や立ち上がりがしっかり出来ているものや、腰高になってしまった盆栽などは大胆な切り戻しをすることによって根張りや幹の良さを活かした樹形作りを楽しむことができます。

ただし、全ての樹種がこのような切り戻し剪定に強いわけではありません。

実生モミジや楓、欅などの雑木類、ロウヤ柿、梅擬、長寿梅、海棠、薔薇など芽を出す力の強いもので事前に十分な肥料を与えて樹勢のついたものに行えるものです。

古木感を出すための剪定

剪定によってより自然に近い古木の姿を表現することができます。

植物の枝の出方は、樹種によって交互に出るもの(互生)と、対になってでるもの(対生)と、1カ所から数本でるもの(輪生)があります。

しかしほとんどの樹は古木になるにつれて重さで枝が下がってきたり、日当たりの悪い枝が弱って枯れ落ちたりして、最後には互生に近い姿になっていきます。

自生樹の枝の出方

盆栽ではこの簡素化された古さを表現するため、枝の配置を交互にでるように剪定したり、針金で枝を下垂させる方法があります。

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