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水やり、灌水(かんすい)

更新日:2015/01/26

水やり・灌水(かんすい)

「水やり三年」「水やり一生」という言葉があるように、毎日行う盆栽への水やりは盆栽管理で一番難しいものかもしれません。

一言に水やりといっても奥が深く、水をあげなければ植物は枯れてしまいますが、あげすぎるのもいけないのです。

自然樹だと少々の日照りでも、土中深く下ろした根が地下の水を吸い上げることができますが、限られた環境の中で生きている盆栽は、環境条件が少しでも変化すると大きく影響してきます。

それぞれの樹種の性質を理解した上で、適した灌水を行うことが大切です。

1. 灌水に使う水

望ましい水質はなるべく清潔な中性の軟水です。

水道水をそのまま使っても問題ないのですが、葉や幹、鉢にカルキやミネラル成分がこびり付いて次第に白く汚れてきてしまいます。

汚れは定期的に掃除すれば綺麗な状態を保てますが、鉢に付いた汚れは放っておくと結晶化して簡単に取れません。

可能ならば、常時水溜めに雨水や水道水を溜めておき、カルキ抜きしたものを使うと心なしか葉色が鮮やかになり、生育が良いと聞きます。

2. 灌水に使う道具

如雨露(じょうろ)

じょうろ

じょうろにはステンレス、銅製、真鍮製、合成樹脂(プラスチック)製のものなどがあります。

盆栽用には昔から銅製の竿長じょうろが長宝されていて使いやすく工夫されており、高価ですが長く使える品物です。

プラスチック製のじょうろは値段も手頃で使い勝手もいいですが、屋外で使っているうちに紫外線や熱で劣化してしまうので、数年で買い換える必要があります。

じょうろの容量が少ないと灌水が大変ですから、持ち運べる範囲でできるだけたくさん入るものを選んで準備しておきましょう。

はす口(灌水口)

はす口

じょうろやホースの筒先につける散水ノズルです。

鉢数が多く毎回大量の水が必要な場合は、蛇口からホースを引き、その先にこのはす口を取り付けて使うと便利です。

こちらも材質によって価格幅がありますが、盆栽用には昔から銅製や真鍮製のはす口が愛用されています。

高級品ですが穴径が小さいので出る水はキメ細かく柔らかく、葉についた汚れを綺麗に洗い流すことができます。

各メーカーが園芸用に散水ノズルを扱っていて、シャワーや霧、ジェットなどに切り替えることができて便利です。価格も手頃なのでこちらもお勧め。

自動灌水装置

タカギ自動灌水装置

盆栽の数が増えると灌水に大変な時間と労力がかかってしまい、毎日の灌水が負担になってきてしまいます。

日中は仕事で外出している人も多く、夏には1日に2~4回の灌水が必要になってくるのでタイマー付きの自動灌水装置が便利です。

水はタンクや家庭内の蛇口から引くことが出来ます。

電池式が主流で、雨が降ると予約を自動キャンセルできる雨センサー付きの灌水装置もあります。

タイマー付きの本体に、別売りの散水ノズルやホースを付けるなど自分の棚場に合わせて自作することができます。

開花中のものは管理場所を別にしておき、下に水が溜まる仕組みのトレイに置いておけば花に水がかからなくて済みます。

ただ灌水のムラも出やすいので、水がかかっていない樹がないか、配置や角度をチェックしてから出かけてください。

3. 灌水方法

ほぼ毎日行う灌水は一番大事で、難しい作業なのかもしれません。

盆栽を枯らす原因は灌水方法に問題がある場合がほとんどで、水切れで枯らすことより、根腐れ(水のやり過ぎ)で枯らしてしまうことが多いようです。

灌水は毎日同じように行えばいいというのではなく、季節や地域、それぞれの盆栽の生育状況によって個人で工夫する必要があります。

灌水時間もバラバラではよくなく、最初の灌水は午前中に済ませてください。

人間も植物も生活のリズムが大切。

毎日決まった時間に盆栽を見回れば植物もその間隔に慣れ、灌水での失敗も少なくなります。

1回の灌水はたっぷりと

通常の灌水は、水が鉢底から滴ってくるまで根元にたっぷりと与えます。1回で終わるのではなく、水が浸みたら2~3回同じように水をかけてやります。

繰り返し水をやることによって用土中に新鮮な水分と酸素が通り、余分な水は鉢から抜けていきます。

保持された水分は、根から吸収され生命活動に利用されますが、同時に蒸発もしていきます。

この失われる水分が生命維持の限界の量に達したときに、再び灌水することが理想的ですが、季節や樹種、サイズ、培養場所や用土の配合、盆栽の状態などにより乾き方に違いがあります。

表土が白く乾いた状態

葉が萎れる前に次の灌水をするのがベストなタイミングですが、全ての樹の乾きの状態を見極めることは不可能です。

目安としては用土の上層が乾燥して白っぽくなってきたとか、寄せ植えしている草や苔が乾いてきたなと気付いた時に水をやるといいでしょう。

株元に水をかける

水は株元にかける

単に上から水を与えているだけでは、思ったほど根に水が届いていないことがあります。

また紫外線が強い時は、葉に溜まった水滴がレンズの働きをして葉焼けを起こすことがあるとも言われます。

しっかり水が届いているか確認する意味でも、水は株元に回しかけるようにしてください。

この時、水の勢いが強いと用土が流れ落ちてしまうので、ジョウロのハス口を上に向け、シャワー状になった水をふんわりとかけるようにしてください。

樹全体に水をかける葉水は朝夕の気温が低い時間帯に行うもので、植物に活力を与えるための作業ですから灌水とは別と思っておいてください。

花に水がかからないように

花に水をかけてはだめ

株元に水をまくのが基本ですが、とくに開花中の盆栽には花に水がかからないように注意してください。

花に水がかかると、花が傷んで観賞期間が短くなり、花粉が流れて実を楽しむことができなくなります。

他の樹と一緒にしているとうっかり上から水をかけてしまうので、特に開花期は花物・実物類と他の樹種の管理場所を分けておくことです。

さらに水が一定時間底に溜まるような工夫をしたトレイで管理できれば、灌水もれによる水切れや上からかけてしまうような失敗が少なくすみます。

葉水で盆栽の活力維持を

葉水

水を樹全体にかける葉水は、葉表面についた汚れや害虫を落としたり、空中湿度を保って植物の活力を維持する効果があります。

植え替え直後や樹勢の弱った盆栽などにも有効で、葉からの蒸散量の多い時期や、都会の住宅街や火山地帯など葉表面の汚れが目立つ地域で効果があります。

目の細かいハス口やじょうろなどで頭からたっぷり水やりしてください。

植え替えしたばかりのものや石付き盆栽などには、霧吹きやスプレーで霧水をかけてやるのもいい方法。

ただ日差しの強い時期の昼間に葉水をすると、急な温度の低下で植物に害がでたり、葉やけの原因になってしまうことがあるので気温の下がる朝夕に行ってください。

腰水の効果

腰水

夏の日差しの強い日に外出していて灌水できず、すっかり乾かしてしまうことは誰でも起こりえます。

そんな場合には腰水(こしみず)といって、水を張った容器に鉢ごと入れ、下から充分水を吸わせてあげてください。

乾害を起こした樹はとても弱っているので、腰水の後3~4日は必ず日陰に置いて回復を待ってください。

腰水は、植え替えや鉢上げを行ったものや、硬く根詰まりしたものにも効果的。

全部が浸るようでは酸欠を起こすので、鉢の底面が浸るくらいの水を張り、夕方にはほとんど無くなっているくらいがちょうど良いです。

夏と梅雨期、冬の灌水の注意点

夏の乾燥と過湿

春から夏場にかけての生育期間中は葉からの蒸散により多くの水分が失われていきます。

さらに表土や鉢面からも水分が蒸発していくので、すこしの油断で水切れを起こしやすいです。

ですが、夏はむしろ乾きが心配で水やりを忘れるようなことは少ないかもしれませんが、外出時間が長い場合は鉢を2重にしたり腰水をしたりと水切れ対策をしてください。

また、水はやりすぎも逆効果で、気を遣いすぎて過水状態が続くと、鉢内が酸素不足になり根腐れを起こす原因になってしまいます。

根詰まり気味の樹は、水はけをよくするために「千枚通し」で用土に穴を開けたり、鉢を傾けておくなどの対策をしておいてください。

小石やかまぼこ板、使っていない薄い鉢などを枕木代わりに鉢の片側に敷いて、少し傾けておくと水が流れやすくなります。

梅雨期の水切れ

葉が広がるものは水を弾いてしまう

葉が広がるものは雨が降っても水を弾いて土まで届かないことがある

梅雨期や雨の日は灌水の必要がないのではとサボりがちになりますが、成長期の樹は葉が傘のように水を弾いてしまい、土まで到達していないことがよくあります。

雨が降った日でも表土の乾きを確認し、株元にしっかり水がかかるように水やりしてください。

もみじや楓などの葉物類や、合歓木(ネムノキ)、花梨、椿など大きい葉がたくさん付いているものは水切れさせやすいので注意が必要です。

冬の乾燥

冬場はあまり灌水の必要はないだろうと長期間放置してしまいがちですが、地上部は休んでいても根は活動を続けています。

鉢内の水分を適度に保っておかないと細胞機能が低下し、後から水やりしても芽出しが遅れたり、元に戻らなくなってしまいます。

冬は空気が乾燥していて空っ風や霜で寒害が生じやすいので、ムロにいれて乾燥から守ってあげてください。

半地下式のムロは地中の水分で湿気が保持されるので、発砲ケースやハウスよりも乾きにくくなります。

ムロ内は吹きさらしの屋外よりも乾きが緩やかになるので、耐寒性の強い松類や大きい樹など半屋外管理の樹は1日1回、蓋をして管理している小さい樹や耐寒性の弱い樹は2~3日に1回乾き具合をチェックし、乾いていれば水をあげるようにしましょう。

4. 灌水量

盆栽の灌水は、その樹種の必要水分量の最小限度を補うように与えます。

それぞれの樹種の特徴や自生地を考え、どのくらいの水を必要とするものなのか事前に知っておくと失敗がありません。

水を好むものでも過水になると根腐れしやすい樹種もあるので注意が必要。鉢土の上層が乾いているのを確認してから次の灌水をするのが基本です。

樹種別の灌水量

松柏類の仲間でも黒松や五葉松は特に乾き気味がよく、乾きの早い夏場でも1日1~2回が目安です。

一般的に葉物類や花物・実物類は水を好む性質の樹種が多いですが、水分の日常的な充実は無駄な成長を助長して樹形を乱し、花芽もつきにくくなってしまいます。

多くの水を必要とする樹種

葉物類、実物類、一部の針葉樹

葉量が多く樹勢の強い葉物類や、花や実を付けるために多くの養分を必要とする花物、実物類。沢筋や森林など湿潤な土壌に自生する一部の針葉樹などは特に多くの水を必要とします。

特徴:水を求めて根がよく分岐し細根が多いもの。

欅(ケヤキ)、楡(ニレ)、榎(エノキ)、柏、ブナ、四手類などの葉物、雑木類
梅、桜、姫林檎、梅擬、木瓜、長寿梅、真弓、皐月などの花物・実物類
杉、檜、蝦夷松などの針葉樹
藤、蔦など

乾き気味を好む樹種

一部の松柏類、多肉、着生植物

乾燥した土壌を好む樹種や、着生植物、吸水力の低い樹種などはやや乾き気味がよく、過水による根腐れを起こしやすいので灌水は控えめにします。

特徴:主根が主で分岐が少なく、先端が白い(吸水部が極端に少ない)。葉が肉厚、艶のあるもの。

黒松、五葉松
ロウヤ柿、夜叉柄杓(ヤシャビシャク)、丹頂草(タンチョウソウ)、石斛(セッコク)
多肉植物

5. 季節による灌水量

季 節 灌水量のめやす


(3月~5月)

標準:1日1~2回

新芽が伸び始め、水分と養分を消費する時期ですが、夏の水切れに対する抵抗力が下がってしまうので多水は禁物。

また、この時期に水や肥料を多く与えすぎると新芽が伸びすぎたり葉が大きくなったりして樹勢を乱す原因になります。
春の多肥多水を控えるため、前年の秋にしっかり肥培をして春の芽出しを助けます。


(6月~8月)

標準:1日2~3回

葉からの水分蒸散作用に加え、鉢土表面からも水分が蒸発するのでとくに乾燥しやすい時期です。

鉢穴から水が十分滴るくらいまで水やりしてください。
ただ、高温の時期は一時的に樹の成長も弱まり、根の活動が低下しますから、夏でも乾いてからの水やりを心がけましょう。

2~3日に1回は日中を避けて葉水を与え、葉の活力維持に努めます。


(9月~11月)

標準:1日1~2回

実りの秋は植物の充実期で、肥大成長のために水分を必要とします。

必要な水分量は夏に比べ格段に少なくなりますが水切れには注意。1回の灌水でたっぷりと与えるようにしてください。


(12月~2月)

標準:2~3日に1回

水分の消費量が少ない時期で、ムロに入れると乾きも緩やかになり灌水頻度も落ち着きます。
ですが空気は予想以上に乾燥していて、観察を怠ると水切れしやすいので注意してください。

冬の灌水は、夕方までに鉢内の停滞水分がなくなるようにできるだけ日中の早い時間帯に済ませます。鉢の中に水分が多く残っていると、夜間の冷え込みで根が凍結してしまい寒害を起こす可能性があります。昼間溶ければ大事ないですが、何度も凍らせるのはよくありません。

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都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

動植物好きの猫飼いです。歴代猫は『アロ』『アズロ』。現在は雄のアビシニアンと一緒です。

ほとんど籠って盆栽いじってますが、盆栽教室やミニ盆栽屋「てのひら盆栽しんとう」も定期的に企画、出店しています。

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