花見桜の代表的な品種と言えば「ソメイヨシノ」。桜に詳しくない人でも、その名前くらいはご存じと思います。
「染井吉野(ソメイヨシノ)」は自然交雑によって生まれた品種で、江戸末期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木屋が「吉野桜」と名付けて売り出したのが始まり。
今では北海道から沖縄まで日本各地に植樹され、花見の時期には多くの人を楽しませてくれます。
名所と言われる公園や歩道、寺院だけでなく、庭木や鉢植え、街路樹など生活に密接な桜として親しまれ、海外にも寄贈されるなど日本を代表する桜として世界的にも有名です。
日本人に最も馴染みのあるソメイヨシノ。
実は江戸彼岸桜と大島桜の雑種が複雑に交雑してできた1本の樹を始原とした桜であることが分かっています。
全国各地に植樹されているソメイヨシノは、自家不和合性が強いため同種間での自然交配がありません。
他の品種と交雑して種が得られたとしてもそれはソメイヨシノとは異なる品種になるため、その繁殖方法は接木が主となっています。
これまで多くの研究機関がこの桜についての遺伝子研究をしていますが、森林総合研究所と岡山理科大学による共同研究では、現在あるソメイヨシノは元をたどると全く同じ遺伝子を持つクローンであることが確認されています。
ソメイヨシノの最大の特徴はその成長の早さ。苗木のうちから花を咲かせ、40~50年もすれば手も付けられないほどの巨木になります。
成長が早い反面その寿命は短く、何百年と生きる山桜に比べて半世紀も生きられないものがほとんどだと言われています。
戦後植えられた全国のソメイヨシノの名所が消えてしまうのではと懸念される中、日本のいたるところに植えられているため、自生桜との交配による遺伝子汚染の心配も。
遺伝子的な免疫汚染による病害虫被害の拡大や、巨大化した桜の老朽化による危険性も問題視され、伐採を余儀なくなれる樹も少なくありません。
ですが、盆栽がそうであるのと同じようにソメイヨシノもきちんと管理すれば何倍も長生きできる筈。
東京都内の砧公園のソメイヨシノは1935年に植えられすでに80年以上が経過していますし、神奈川県秦野市の小学校には樹齢120年を超える2本の老木が存在ています。
里山で生きる桜に比べ、街路樹として植えられる場合が多いソメイヨシノは排気ガスに晒される機会も多く、根元を堅く舗装された状態のため、生育に大きな悪影響を及ぼしていることは間違いありません。
花見客による土壌の過剰な踏みしめや枝折り行為など、人間のモラルやマナーに欠けた行動が桜の寿命の縮める要因にもなっています。
春は満開の花、真夏はその大きな体で強い日差しから私たちを守ってくれるソメイヨシノ。
花見の時だけでなく、みんなが日頃から桜を慈しみ大切に思う気持ちが、日本の桜の未来を繋げると思います。
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